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16章

アールスローン戦記Ⅱ ピンクと青

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【 ART司令塔 】

グレイゼスが司令塔へやって来て言う
「お早う 諸君!」
司令塔の隊員たちが顔を向けて言う
「お早う御座います 中佐」 「あ!お早う御座います 中佐!」
グレイゼスが全体を見渡し苦笑して言う
「昨日は突然にゴメンな?何か問題は無かったか?」
グレイゼスがシーナの横を通りながら言う
「お早う シーナ君 どうした?元気ないな?」
シーナがハッとして言う
「あっ お、お早う御座います!中佐!いえっ 大丈夫です!失礼致しました!」
グレイゼスが自分の席へ向かう シーナが肩の力を抜き溜息を吐いて思う
(あぁ… そうよね 昨日のあの時も いつもみたいに 中佐が居てくれていたら あんな事には…)
シーナがコンソールへ向き直る オペ子Aがグレイゼスへ向いて言う
「いえ 昨日は 特に問題などはありませんでした」
グレイゼスが言う
「そっか?なら良かった」
オペ子Bが言う
「中佐の方こそ 何かあられたのですか?今朝も 普段の中佐でしたら この時間と言う事は…?」
グレイゼスが苦笑して言う
「あー いや?ごめんなぁ?ちょっと遅くなっちゃったな?もう少しは早く来られるように 気を付けないと… それこそ この司令塔主任の座が 頑張り屋のシーナ君に取られちゃうかなぁ?何てなぁ?」
シーナがハッとする 司令塔の隊員たちが笑う シーナが苦笑して言う
「そ、そんな事 有り得ないですから!?ちゅ、中佐は相変わらず ご冗談がお好きで…」
グレイゼスが言う
「堅い堅い~!シーナ君 いつも言ってるが このARTの隊員は 皆仲間なんだからさ?言葉も丁寧語で十分!それこそ 謙譲語やら尊敬語なんて やめてくれよぉ?」
シーナが言う
「は、はい… しかし 中佐は 中佐で主任ですから…」
グレイゼスが言う
「それこそ 軍階だって気にしてくれなくても 良いんだけどなぁ?それでもっとさ~?シーナ君の素のままで?」
シーナが疑問して言う
「え?す… 素のままでって?」
グレイゼスが軽く笑って言う
「俺は好きだけどなぁ?ART1の連中の不甲斐なさに 憤慨しているシーナ君の 心からの言葉がさ?プクク…ッ」
シーナが衝撃を受け慌てて言う
「あっ あれはっ!も、もう 忘れて下さいっ 中佐っ!?」
グレイゼスが笑う オペ子たちが疑問する シーナがコンソールへ向き直り 居た堪れない様子で思う
(いつもは口に出さないように気を付けているのに たまたま 一度 中佐にアレを見られてしまって…っ それからと言うもの 事ある毎に…っ)
シーナが横目にグレイゼスを見る オペ子たちが疑問から戻り オペ子Aが言う
「それで 中佐の御用の方は 本当に 大丈夫なのですか?」
グレイゼスが言う
「え?えーと?」
オペ子Bが言う
「中佐が 臨時休暇だなんて… それも当日に突然という事で 私たちも心配していたのですが?」
グレイゼスが言う
「あー そっか」
グレイゼスが思う
(そう言えば ハイケルやその近辺だけじゃなく マリが妊娠しているって事は この司令塔の皆にも隠していたんだ それじゃ 心配されるのも無理は無い)
グレイゼスが言う
「実はその… 子供が産まれてさ?」
オペ子たちが疑問して言う
「子供って…」 「もしかして 中佐の?」
グレイゼスが苦笑して言う
「そうそう 嫁さんが妊娠して居たんだ それで」
オペ子たちが喜んで言う
「なんだ そうだったんですか!?」 「おめでとう御座います!中佐!」
司令塔の隊員たちが微笑んで拍手をする グレイゼスが恥ずかしそうに微笑して言う
「ああ、ありがとう 何か 悪いな?隠してたみたいでさ?」
グレイゼスが思う
(まぁ… 隠してたんだけどな?けど こんな風に喜んでもらえるのなら 本当に)
グレイゼスが言う
「ごめんな 心配掛けて… やっぱ ちゃんと言っておくべきだったわぁ?」
オペ子Aが言う
「もうっ 本当ですよ!?中佐!?」
オペ子Bが言う
「それこそ 仲間として 失格ですよ?中佐?」
グレイゼスが軽く笑って言う
「仲間として失格かぁ そいつは 厳しいなぁ?」
皆が笑う シーナが何処か遠い様子で思う
(あぁ… 何だろう 皆が喜んでいるのに 皆でお祝いしているのに 何だか 私だけ 蚊帳の外って感じ… でも しょうがない だって 私は きっと…)
グレイゼスがシーナの様子に気付いて疑問する オペ男Aが言う
「なんだ そんな事なら ハブロス司令官も 一言言ってくれればなぁ?」
シーナがハッとする グレイゼスが疑問して言う
「ハブロス司令官が 何か?」
オペ子Bが言う
「いえ むしろ何も マスターグレイゼス中佐は 臨時休暇だから 何かあれば自分へ直接連絡を って それだけだったもので」
オペ子Aが言う
「もしかして何か悪い事があったのではと 皆で心配していたんです だから… あ?ひょっとして?中佐は ハブロス司令官にも 事情をお伝えしなかったのですか?」
グレイゼスが言う
「え?いや… ハブロス司令官へは もちろん 先に伝えていたよ?場合によっては こっちの作戦や任務なんかにも 干渉するかもしれないし」
グレイゼスが思う
(なにより 当日は それこそ こっちの作戦だか任務だかに ご協力までしてもらったもんな?)
グレイゼスが苦笑して言う
「ついでに 扶養家族の追加申請をしたらぁ~?いくら位給料が上がるかなぁ~?なんて?ははっ …まぁ これは冗談だけどさ?」
グレイゼスが思う
(…そう言えば いくら上がるんだろう?それこそ 最下層のマスターである俺にとっては ちょっと気になる所なんだが …流石に そこまでは聞けないな?)
グレイゼスが苦笑する 皆が笑い言う
「もうっ 中佐 一瞬 本当に聞いたのかと思いましたよ?」 「中佐なら 聞かなくても システムからチョイチョイっと!?」
グレイゼスが慌てて言う
「いやっ やらないって!どっちも 本当にっ!」
皆が笑う シーナが思う
(そうよね?中佐なら やろうと思えば出来るもの… 何て言ったって ナノマシーンを持つマスターだし… 男性だから… そうよ男性だったら 良かったんでしょう?私も…っ!)
オペ子Aが言う
「それで 中佐?お子さんは 男の子でしたか?女の子でしたか?」
シーナがハッとしてグレイゼスを見る オペ男Aが言う
「男の子なら 将来は 中佐の跡を継いで マスターグレイゼスになるんですよね?」
シーナが思う
(そうよ マスターだって… 男性だけでっ)
グレイゼスが微笑して言う
「子供は 女の子だったよ」
シーナが呆気に取られる オペ男Bが言う
「女の子か~ それじゃ マスターにはならないな?」
オペ子Aが言う
「でも 女の子良いなぁ~ 可愛いんじゃないですか?中佐の奥さんは とってもお綺麗ですし?」
グレイゼスが照れながら言う
「え?いや その~… 言わせないでくれよぉ~?」
皆が笑う シーナが視線を逸らして小声で言う
「…可愛そうに」
グレイゼスが驚いて言う
「え?」
グレイゼスがシーナを見る シーナはグレイゼスに背を向けた状態で小声で言う
「男の子だったら 良かっただろうに…」
シーナが思う
(中佐の子供よ?優秀なマスターの子供… だったら きっと マスターとして期待される でも その子は女の子だから マスターにはなれない… もしかしたら 中佐の その子も 私みたいに 辛い思いをする… 自分は 男の子だったら良かったのに!って…)
オペ子Aが疑問して言う
「中佐?どうかしましたか?」
グレイゼスが言う
「あ、いや… えっと…?」
グレイゼスがオペ子Aへ言う
「今日の シーナ君 本当に どうかしたのか?元気が無いって言うか …いつもの 彼女らしくないな?昨日 何かあったのか?」
オペ子Aが疑問して言う
「え?シーナですか?えっと… 昨日は 特に?…ねぇ?」
オペ子Aがオペ子Bへ向く オペ子Bが相槌を打って言う
「うん 特に 何も無かったと思うけど?」
皆がシーナを見る シーナが頭を押さえて思う
(…もう駄目っ 今日も来た時に メンバーボードで見た ハブロス司令官は出隊しているっ 今頃 私の除名を… 中佐にフォローを お願いしてみる?…無理よね?だっては相手は ハブロス司令官 いくら優秀なマスターの中佐の力を借りたって このARTのトップが相手では…っ だって マスターなんて 所詮は最下層 マスターの名誉だけで 超高位富裕層にして 元国防軍長として名誉も高い ハブロス司令官を相手には出来ない…っ!)
グレイゼスが気を引き締めて言う
「シーナく…」
アースがやって来て言う
「シーナ隊員」
シーナがハッと目を見開いて思う
(っ!!来た…っ!)
グレイゼスがハッとして言う
「あ、ハブロス司令官 お早う御座います 昨日は…」
アースが一度グレイゼスを見てから 視線をシーナへ戻す グレイゼスが疑問して言う
「え?ハブロス司令官…?」
アースがシーナの横に立つ シーナが思う
(ほらっ 本気になれば マスターなんか 相手にもされない…っ)
アースが言う
「ほう?”最低の司令官”が相手では 挨拶もなしか?」
グレイゼスと周囲の隊員たちが衝撃を受けて驚く シーナがうつむいた状態で強く目を閉じて思う
(あぁ…っ もう駄目っ 本当にっ!…でも こうなったら もうっ!)
シーナが立ち上がり言う
「お早う御座いますっ ハブロス司令官っ!」
アースが言う
「私に何か 言う事があるのではないのか?」
シーナが震える手を握り締めてから 意を決して言う
「さ、昨日はっ 失礼な言葉を用いた事は謝りますっ だけどっ …それでも 伝えようとした事はっ 私の想いは変わりませんっ!私はっ …私だって 出来るんですっ!彼らにだって負けない位っ 男性にだって負けない位 マシーナリーを使って 戦えるんですっ!…戦って見せますよっ 女性だって 戦えるんですからっ!」
グレイゼスと周囲の隊員たちが呆気に取られ隊員たちがグレイゼスを見る グレイゼスが皆の視線に驚き 慌てて知らないと顔を左右に振る アースがシーナの真剣な目を見ていた状態から言う
「良いだろう そこまで言うのなら 試してみるか?」
アースがシーナへキーネックレスを見せる シーナが驚き目を見開いて言う
「……っ!?え…?」
グレイゼスと周囲の隊員たちが衝撃を受け グレイゼスが慌てて言う
「ハ、ハブロス司令官っ!?」
シーナがアースを見上げる アースが言う
「言っておくが 機動隊員となれば 女性も男性も無い 指示に置いても 命令に置いても そちらの考慮は一切行なわないぞ?」
シーナが意を決して言う
「はいっ!構いませんっ!お願いしますっ!」
アースがキーネックレスの鎖を手放す シーナがキーネックレスを受け取る アースがグレイゼスへ向いて言う
「マスターグレイゼス中佐!」
グレイゼスが慌てて言う
「は、はいっ!ハブロス司令官っ!?」
アースが言う
「彼女を使った マシーナリーのデータを取れ 今 直ぐにだ!」
グレイゼスが驚いて言う
「えっ!?えっと… は… はっ!りょ、了解っ!司令官っ!」
シーナがキーネックレスを見て 表情を喜ばせて居る アースが言う
「期待しているぞ?シーナ隊員」
シーナがアースへ向き喜んで言う
「はいっ!必ず!ご期待に沿いますっ!ハブロス司令官っ!」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「一体 どうなってるんだぁ?」
周囲の隊員たちが呆気に取られて言う
「さぁ…?」
アースがグレイゼスへ向いて言う
「何をしている!?作業を急げっ マスターグレイゼス中佐っ!お前たちの就業時間は 既に始まっているぞっ!」
グレイゼスと周囲の隊員たちが衝撃を受け グレイゼスが慌てて言う
「りょ、了解っ!司令官っ!」
グレイゼスが慌ててて作業を開始して言う
「えーっと それじゃ 取り合えず… 今直ぐに 使えるマシーナリーは…?」
シーナがキーネックレスを強く抱きしめて思う
(本当に…っ!?本当に 手に入れたっ!?私のっ!私たち女性隊員への 希望っ!)
アースがシーナを見る

【 ART備品庫 】

グレイゼスが備品の箱を開けながら言う
「それから もちろん…?今のマシーナリーを動かしての データ取りって事は 当然 神経接合ユニットが… 機動部隊の制服が必要なんだけど …女性物なんて ある訳も無いし 作っても居ない 考えても居なかった…っ 相変わらず うちの御曹司司令官様は やる事もやらせる事も 突拍子無いと言うか 無茶苦茶と言うか 遊び過ぎと言うか …なんて言ってても しょうがないから えっと… なら?」
グレイゼスが振り返って言う
「シーナ君 身長いくつかな?」
シーナが言う
「はいっ 身長は165センチです!」
グレイゼスが言う
「165か… それなら やっぱ ハイケルが近いかなぁ?…あ、いや?アイツは神経接合ユニットは使っていないから 次に このARTで身長の低い機動隊員… ラミリツ攻長だな?」
グレイゼスが別の箱を漁りながら言う
「って言うと ART2の… あった これだ」
グレイゼスが新品の神経接続スーツを向けて言う
「男性物で悪いけど 今は とりあえず これを着てみてくれる?」
シーナが言う
「はいっ!大丈夫です!」
シーナが受け取る

シーナがスーツを着終える 隣の部屋からグレイゼスの声が聞こえる
「どうかな?何とか 着られそう?」
シーナがスーツの様子を確かめながら言う
「はいっ 大丈夫です 部分部分 キツかったり 緩かったりしますが 着られました!」
シーナが部屋を出る グレイゼスが様子を見て言う
「うん… そうだね?少し大きめだけど 身長さえ大体合ってれば マシーナリーとの接続には そんなに支障は無いから 後は これで キーネックレスを持って マシーナリーへ乗り込むだけだ」
シーナが言う
「はいっ!」
シーナがキーネックレスを付けて言う
「お願いしますっ!中佐!」
グレイゼスが微笑して頷いて言う
「よしっ」

【 ART第二訓練所 】

シーナがART2マシーナリーのコックピットに居る イヤホンからグレイゼスの声が聞こえる
『…で、シートベルトを装着したら 後は… えーと…?』
シーナが気を引き締めて言う
「はい!後はっ キーネックレスのナノマシーンへ意識を集中して そこからマシーナリーの起動を連想しますっ!」
グレイゼスが苦笑して言う
『あぁ そうそう キーネックレスを使ったマシーナリーに関しては むしろ 俺より シーナ君の方が詳しいよな?』
シーナが微笑して言う
「はいっ!ARTのマシーナリーは ハブロス司令官の国防軍管轄の時から ずっと見て来ましたからっ!」

ART第二訓練所 監視塔

グレイゼスが席に座っていて言う
「そうそう それこそ国防軍に いきなりマシーナリーが持ち込まれて ”とりあえず 常人が使えるように整備をしろ” 何て言われてなぁ?その常人の皆さんが怯える中 大喜びで飛び付いて来たのがシーナ君だった… それを考えると 今のこの状態は 必然の事だったのかもしれないが…」
アースがやって来て言う
「問題は その彼女が 前例の無い 女性によるマシーナリーの起動を 本当に行えるのかと言う事だ」
グレイゼスが衝撃を受け 苦笑して言う
「出来なかったら また 今度は とりあえず 女性が使えるように整備しろ と仰るのでは?ハブロス司令官?」
アースが近くへ来て言う
「残念ながら 今回は そこまで遊んでいる暇は無い」

訓練所

シーナのイヤホンにアースの声が聞こえる
『ウィザードやヴァンパイアの仲間まで揃った 奴との決戦は 目前だ』
シーナが一瞬驚いてから視線を強める アースが言う
『そうとなれば 既に 彼らで動かせている物を 彼女にも動かせるように などと悠長に行なっている暇は無い これで動かせなければ それまでだ』
シーナがキーネックレスを握り締め 目を閉じて思う
(お願いっ このキーネックレスに込められた 3人のナノマシーンたちっ 私にも力を貸して!例え女性でもっ 戦ってみせるからっ!)
シーナが視線を向けた先 監視塔のガラスの先に グレイゼスとアースが見える シーナが思う
(私にチャンスをくれた ハブロス司令官の 期待に答えるっ!)
シーナが操縦桿を掴み 意を決して言う
「ART2 マシーナリー!起動っ!」
アースとグレイゼスが息を飲む マシーナリーは動かない シーナが間を置いて驚いて思う
(そんな…っ 動かないっ!?)
シーナが操縦桿を動かしながら言う
「そんなっ!?どうしてっ!?お願い 動いてっ!動いてっ!?」

監視塔

スピーカーからシーナの声が聞こえる
『どうしてっ!?戦えるっ!私たちだって 戦えるのにっ!?』
アースが言う
「…駄目か」
アースがグレイゼスを見る グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「残念ながら マシーナリーにも神経接合ユニットにも キーネックレスからの信号は届いていないですね…」
シーナが言う
『そんな…っ ずっと… ずっと 貴方たちを見て来たのにっ!ずっと一緒に居たのにっ!貴方たちだって 私を知っているでしょうっ!?見ていてくれたでしょうっ!?』
アースが気付いて言う
「見ていた?ずっと一緒に…?」
アースがグレイゼスを見る グレイゼスが息を吐いて 無線スイッチを切って言う
「やっぱり駄目でしたね?こう言ってしまっては可愛そうですが 自分は正直 こうなるだろうと思ってましたよ?ハブロス司令官が彼女にキーネックレスを渡した時から …けど 彼女の長年の想いも知っていましたから やれる所まではやってあげたいと思いましたが… 起動すら出来ないとは」
グレイゼスが顔を向けると シーナがマシーナリーを動かそうと必死に何かを叫んでいる グレイゼスが表情を悲しめる アースが言う
「では聞くが マスター?」
グレイゼスが疑問して言う
「え?は、はい?」
アースが言う
「率直に お前はどう思う?女性の機動隊員は 使えるか?」
グレイゼスが呆気に取られてから言う
「え?えっと… そう ですね…?通常の機動部隊とは異なり マシーナリーであれば性別による身体能力の差はありませんが… やはり 違うでしょう?だからこそ アールスローン戦記でもアールスローン信書でも ペジテの姫やアールスローンの王女は 守られる存在です」
アースが言う
「だが その姫や王女を守っていた兵士や騎士が 男性であったと言う記述は無い」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
グレイゼスがアースを見る アースが言う
「実際に 現代の二世代目の悪魔の兵士 エリーナ少佐は 女性だ」
グレイゼスが言う
「は、はい…っ それはそうですが… いえ?それも ある意味 ハブロス司令官が 女子の遺伝子であっても作れと 命じられた事で そうなってしまった訳ですが…?」
アースが言う
「ならば 良いだろう?ARTの機動隊員が女性であっても?彼女の持つ知識や技術は マシーナリーを使えさえすれば 必ず このARTの力となる」
グレイゼスが苦笑して言う
「そ… それは 自分も 彼女の上官として 彼女の知識や技術が大したものだという事は分かっています ですが… 実際 マシーナリーが動かせないとあっては それを活用する事も出来ない訳で… その改善を行っている 暇は無いと仰ったのは ハブロス司令官では?」
アースが言う
「ああ そうだ マシーナリーの改善をしている暇は無い しかし… ”考え方を変えさせる事は” 出来るだろう?マスター?」
グレイゼスが疑問して言う
「は?考え方を?…っ!?」
アースがグレイゼスの襟首を掴んで言う
「まだ分からないかっ 根本的に馬鹿なマスターがっ!」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「はいぃい!?」
アースが言う
「今直ぐに 貴様の持つナノマシーングレイゼスを使い マスターの仲間たちの ”考え方”を変えさせろっ!命令だっ!」
アースが構える グレイゼスが慌てて言う
「なぁああ!?そ、そんな 無茶苦茶なぁっ!?それから それは命令じゃなくて 脅迫ですっ!ハブロス司令官っ!?」

【 病院 】

隊員Cが携帯で電話をしていて言う
「ああ、熱は下がったし 元々 怪我や病気じゃないんだから 調子が良ければ退院して それこそARTへ出隊しても良いってさ?」
携帯からラキンゼスの声が聞こえる
『えっ!?たったの1日で熱が下がったのかっ!?俺の時なんて 3日間高熱にうなされてて 母ちゃんも父ちゃんも すげぇ心配したって …って言っても 俺自身は覚えてないんだが』
隊員Cが言う
「兄貴の時は まだ子供だったからじゃねぇ?俺は大人になってからだったから 1日で回復したって事でさ?」
ラキンゼスが言う
『うん… まぁ それはあるかもしれないが… もしくは あれだな?』
隊員Cが疑問して言う
「あれって?」
ラキンゼスが言う
『つまり お前は…』
ノイズが入り ナノマシーンたちの声が聞こえる
『…女性が戦う?』 『戦えるのか?女性は…』 『女性は守るもの 姫は守るもの』 『守らないと 姫だから』
隊員Cが疑問して言う
「は?女性が何だって?姫がって… 何言ってんだよ?兄貴?」
ラキンゼスが疑問して言う
『は?お前こそ 何言ってるんだ?俺は お前が…』
ナノマシーンたちの声が聞こえる
『マスターは 姫を守るべし』 『ペジテの姫は…』 『ペジテの姫ではなくとも 女性は守らないと』 『守らないと 姫だから』
隊員Cが顔を左右に振って言う
「あぁっ!訳分かんねぇよっ!?そんな一杯 意味分かんねぇ事を言わないでくれよ 兄貴!?何が 姫なんだ?マスターは姫を守れって?大体 ペジテの姫なんて アールスローン戦記の…」
隊員Cがハッとすると言う
「姫を守るマスターが 再び戻って来た 今度こそ 俺は 奴に勝つ…」
ラキンゼスが言う
『え?…サキ?どうした?もしかして 今のはっ!』
隊員Cがハッとして言う
「な… 何だ!?今のっ!?俺の口が… 勝手にっ!?」
ラキンゼスが言う
『それは!ラキンゼスの言葉だよ サキ!』
隊員Cが呆気に取られて言う
「はぁあっ!?な、何だよそれっ!?だって お、おお 俺が しゃべったんだぞっ!?しかも 勝手に!?」
ラキンゼスが軽く笑って言う
『っはは だから それが ナノマシーンなんだって!』
隊員Cが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?そんな 勝手に言葉喋らされるとか!?ナノマシーン おっかねぇえっ!?」
携帯からグレイゼスの声が聞こえる
『戻ったか ラキンゼス』
隊員Cがハッとして言う
「え?今の声は… 中佐ぁ!?」
ナノマシーンたちの声が聞こえる
『ラキンゼスが戻った』 『お帰り ラキンゼス』 『良かった ラキンゼス』 『ラキンゼスは無事だった』 『無事だった ラキンゼスだから』
隊員Cが衝撃を受け苦笑して言う
「何だよ その最後の?無事だったの 理由になってないだろ?」
ラキンゼスが言う
『どうだ?ナノマシーンたちの会話は面白いだろう サキ?』
隊員Cが言う
「面白いって言うか… 何か 馬鹿みてぇだよ?はははっ …痛てぇえっ!?」
隊員Cが頭を押さえる ラキンゼスが言う
『あぁ そうそう ナノマシーンは怒ると 宿主に頭痛を起こさせるからな?気を付けろよ?めっちゃ痛ぇえんだ それ!』
隊員Cが怒って言う
「先に言ってくんないっ!?そう言うのっ!?」

【 脳外科 】

ローゼスが手術用手袋を装着している 音楽の流れているスピーカーから ナノマシーンたちの声が聞こえる
『それで 話は戻るが』 『戻さないと マスターだから』
ローゼスが苦笑して言う
「そうそう 早く戻してくれ これから難しいオペが一件入っているんだ …もっとも 例の ペジテ王の子孫殿からの 毎度の依頼程ではないのだがな?」
グレイゼスの声が聞こえる
『ではもう一度… 今 我らの姫を守る為 王は女性の兵士を遣わそうとしている 彼女は 悪魔の兵士では無い 神の兵士でもない』
ローゼスが目を閉じて軽く顔を上げる スピーカーから ローゼスの声が聞こえる
『力は 想いの上にある それこそが人の持つ力 そして それは』

【 メイリス家 】

シェイムがTVの上に手を置いていて 手を伝ってTVスピーカーからシェイムの声が聞こえる
『神の作りし 器の上に… それは かの神が作りし その器の上に置いても また 同じ…』
フレイゼスがやって来て 苦笑して言う
「シェイム殿 そろそろ 向かわれませんと… 本日からは ラミリツ殿も出隊されていますし そうなっては また そちらの上に置かれましても 比較をされてしまうと言う可能性も…?」
シェイムが言う
「私自身は そうと分かっているのですがっ シュレイゼスが 一向に 彼らの言葉から離れてくれませんのでしてっ!?」
フレイゼスが苦笑して言う
「あぁ… それはまた …恐らくではありますが 現行のナノマシーンらの会話に …”彼が” 関わっているのでは?と…」
シェイムが衝撃を受けて言う
「また あの悪魔のせいだと 言う事ですねっ!?」

【 ART第二訓練所 監視塔 】

アースが不満そうにタバコの煙を吐き捨てて言う
「フー…ッ」
グレイゼスが苦笑して居る グレイゼスのイヤホンからナノマシーンの声が聞こえる
『我らの神は 人に力を与えた それは男性とも女性とも言わず』 『人は男性も居れば女性も居る』 『姫も居れば王も居る』 『マスターは姫と王を守るべし』 『では…?』
グレイゼスが視線を向ける 視線の先ガラス遮へいの先 シーナの胸にあるキーネックレスが見える

訓練所

シーナが操縦桿を握り締め俯いていて言う
「私は… 私たちじゃ駄目なの?仲間として 認めてくれないの?どうして…っ 想いは同じなのにっ 一緒に戦う 仲間だと思っているのにっ これが… 貴方たち ナノマシーンの答えなのっ?」
キーネックレスがナノマシーンの光に包まれている シーナが涙を流し その雫がキーネックレスに落ちると キーネックレスが一瞬強い光を放つ イヤホンからグレイゼスの声が聞こえる
『シーナ隊員っ 聞こえるか!?マシーナリーの起動を!もう一度だっ!』
シーナが驚き顔を上げる 監視塔に居るグレイゼスとアースが見える シーナがハッとして涙を拭って言う
「は、はいっ!了解!中佐っ!」
シーナが気を落ち着かせ 目を閉じて思う
(これで 最後っ!)
シーナが目を開き言う
「ART2 マシーナリー!起動っ!」
ART2マシーナリーが起動する シーナが驚き思わず表情を喜ばせてアースへ向く アースが微笑するとコックピットが閉じ 周囲のシステムが起動して スピーカーからグレイゼスの声が聞こえる
『おめでとう シーナ隊員 ナノマシーンは君を受け入れた!ARTの機動隊員 アールスローンを守る 戦士としてな?』
シーナが言う
「はいっ!有難う御座いますっ!中佐っ!」

監視塔

モニターにシーナの姿が映っている グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「マシーナリーからも 神経接合ユニットからも キーネックレスの信号が届いている これならどのシステムも問題なく 通常通り動く筈だ それじゃ シーナ隊員 まずは そのマシーナリーを一歩 歩かせてみてくれ」
シーナが言う
『了解!中佐っ!』
アースとグレイゼスが訓練所へ顔を向ける

訓練所

シーナが思う
(大丈夫っ 集中して 神経接合ユニットを通じて感じる感覚を 自分で歩く時と同じ様に感じる事さえ出来れば それで平衡感覚を…っ)
シーナが表情を強め操縦桿を前方へ動かす マシーナリーの右足が動き出す シーナの右足のユニットに僅かな電流が流れる シーナがそれを感じて操縦桿を握る手を緩める マシーナリーの右足が一歩前に出た所で下ろされる シーナが思う
(分かるっ これなら…!)
シーナが逆側の操縦桿を握る

監視塔

グレイゼスとアースの視線の先 マシーナリーが一歩歩いて立ち止まる グレイゼスが呆気に取られて言う
「へぇ… 流石シーナ隊員!最初から マシーナリーを一歩を歩かせる事が出来るとは… よし それじゃ 続けて もう一歩…!って…」
グレイゼスの言葉の途中でマシーナリーが歩いて行く グレイゼスが呆気に取られて言う
「あ… あらまぁ?普通に歩いてるよ…?」
アースが言う
「伊達に マシーナリーを知り尽くしていると 言うだけの事はある」
グレイゼスが微笑して言う
「確かに 彼女を越える マシーナリーの有識者は このアールスローンには 現存していないかもしれません」

訓練所

シーナがマシーナリーを操縦しながら言う
「やった!歩ける…!思った通りに 歩けるっ!最高よっ!これなら…っ!?」
グレイゼスの声が聞こえる
『その様子なら 指示は要らないな?思う存分 動かしてみてくれ』
シーナが気合を入れて言う
「了解!中佐!…さぁ 行くわよ!?ばっちり キメるんだからっ」
Mシーナが歩いていた状態から 体勢を構え走り出す

監視塔

グレイゼスが呆気に取られて言う
「は… 走ってるよ…?たった今 マシーナリーを起動させた者が?」
アースが言う
「想定以上か?マスター?」
グレイゼスが苦笑して言う
「そう… ですね?とは言いましても 実際の所 最後に隊員たちの起動実験を行ったのは 大分前で その頃は神経接合ユニット その物さえ無かったですから 現状は そちらがあると言う事で 初期の頃と比べれば マシーナリーの挙動を操作する事は 大分 楽になっている事は確かです」
アースが言う
「その当時であっても 神経接合ユニットを越える 融合を行えたマスターたちでさえ 初期起動でここまで動かせる者は稀だった …特に 知能補佐能力のマスターは」
グレイゼスが衝撃を受け苦笑して言う
「きょ、今日のハブロス司令官は その… マスターに お厳しいですね?特に そちらの 知能補佐能力のマスターへ対する お言葉が…」
アースが言う
「常人の私が 一晩で変えられた アールスローンに置かれる 女性へ対する偏見だ ナノマシーンを使いこなす マスターのお前たちであれば もっと早くに 片が付くと思っていたのだが …随分と待たされた」
グレイゼスが苦笑して言う
「一晩で変えられた事も凄いですが 内容は このアールスローンの往年の常識を 覆す程の事なんですから むしろ この短時間で変えられたと言う事でも 十分でありませんかと…?」
アースが言う
「お前たちのナノマシーンは 全ての情報を機械的に保存しているのだろう?それなら 情報探索は数秒で済む 後は そちらの情報を持たないナノマシーンへ 伝達を行うだけだ」
グレイゼスが言う
「機械的にはそうですが 一応そちらには その… ナノマシーンたちの意識なんかも ありますからね?」
アースが言う
「ナノマシーンたちの意識?…そうか では あれはナノマシーンラキンゼスの意識であったと言う事か だとすれば ナノマシーンと言うのは 割と 臆病な性格の様だな?」
グレイゼスが言う
「臆病 …ですか?うーん そうなのかなぁ…?」
アースが言う
「ともすれば そうであるからこそ 彼らは 人と共に在るのかもしれない」
グレイゼスが気付いて言う
「そうであるからこそ?…なるほど 言われてみれば ナノマシーンは元々 その力だけで マシーナリーを動かせるのですからね?それを考えれば そのマシーナリーを動かすのに わざわざ重量増加となる 人間を使う必要は 本来なら無い訳ですから」
アースが言う
「その臆病なナノマシーンを認めさせたとあれば 次に行う事は 彼らのその期待に 我々人が答えるという事だ」
アースがMシーナを見てから グレイゼスへ向いて言う
「マスターグレイゼス中佐 シーナ隊員へ マシーナリー挙動16工程の確認だ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「えっ!?もう 16工程ですかっ!?いくらなんでも…っ」

訓練場

スピーカーからアースの声が聞こえる
『さっさと行えっ マスター!』
シーナが反応して言う
「マシーナリー挙動16工程…」
グレイゼスの声が聞こえる
『りょ、了解 司令官…っ それじゃ シーナ君… いや シーナ隊員 聞こえてるか?』
シーナが言う
「はいっ!無線状態良好!障害なし!」
グレイゼスが言う
『なら …マシーナリー挙動第3工程を 確認しているシーナ隊員へ 無茶を言う様だが…』
シーナが言う
「大丈夫です!主任!…あ、いえっ 中佐!お願いします!」
Mシーナの横の壁が開き武器が現れる Mシーナがそちらへ向く

監視塔

グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「マシーナリー挙動16工程 小銃による実弾訓練だ …だが 流石に非戦闘員だった シーナ君へ ターゲットを捕捉しての 撃破はキツイだろうから ターゲットの表示場所は先に伝える」
シーナの声が聞こえる
『了解 中佐!有難う御座います!』
グレイゼスが言う
「よし、では 今訓練使用武器は 小銃をメインアームへ設定するぞ?これなら…」
グレイゼスがコンソールを操作する

訓練所

Mシーナが小銃を構えている グレイゼスの声が聞こえる
『ターゲット D-6!』
Mシーナの構えている先 D-6の表示場所へ的となる素材が飛び出して来る Mシーナが小銃を放ち的を射抜くと的が大破する グレイゼスの声が聞こえる
『おみごと!それじゃ 続けていくぞ?』
Mシーナが言う
「了解!」
グレイゼスの声が聞こえる
『F-4!A-7!M-5!』
Mシーナが次々と的を射抜く

監視塔

グレイゼスが感心して言う
「おみごと!大した者だ 初めてのマシーナリーで 初めて実弾射撃とは思えない」
シーナの声が聞こえる
『有難う御座います!』
アースが言う
「では次だ マシーナリー挙動33工程へ移行しろ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「はぁあっ!?いや、ちょっと待って下さい ハブロス司令官!?」
アースが言う
「マシーナリー挙動33工程へ移行しろ マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが苦笑して言う
「うぅ… 何処までも ご自由な…」

訓練所

シーナが言う
「マシーナリー挙動33工程… 次はっ」
シーナが顔を向ける Mシーナが壁の武器庫へ手を向ける グレイゼスの声が聞こえる
『それじゃ… シーナ隊員?基本銃火器 小銃訓練を 終えたばかり… と言うか 試したばかりだが ここからは 実践仕様の…』
シーナが言う
「はいっ!了解!マシーナリー挙動33工程」
Mシーナがマシンガンを構えて言う
「GT700!装備完了ですっ!中佐!」

監視塔

グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「流石にGT700ともなると その反動がマシーナリー自体はもちろん 神経接合ユニットを通じても かなりの反動が操縦者へ加わるから… そうだな 少し ユニット信号を下げようか?」
シーナの声が聞こえる
『いえっ!大丈夫です!このままで お願いしますっ!』
アースが言う
「操作能力を上げる為の信号を 下げて確認をしては意味が無いだろう?」
グレイゼスが苦笑して言う
「そうは言いましても それこそ 現状は初期起動確認ですし それに 操縦者は…」
アースが言う
「操縦者は?何だ?それ以上を言ってみろよ?マスターグレイゼス?」
アースが握りこぶしを構えている グレイゼスが苦笑して言う
「…いえ これ以上を言いますと 自分が そちらの反動を直に受ける事になりそうなので 止めておきます… それに ひょっとすると ナノマシーングレイゼスにも 怒られるかもしれませんので」
アースが言う
「だろうな」
グレイゼスが苦笑する

訓練所

シーナが言う
「マシーナリー挙動33工程 試運転行きます!」
グレイゼスの声が聞こえる
『了解 目標物 被験者前方へセット』
Mシーナの前に大型の的がセットされる Mシーナが武器を構え シーナが意を決してトリガーを引く Mシーナが銃撃を行い反動でMシーナが後方へずれて行く 射撃を終えたMシーナが自身のズレを確認する

監視塔

アースが反応して目を細める グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「マシーナリーへの物理ダメージ0.2%を確認 同時に 操縦者への物理ダメージ1%未満を確認 …とは言え 数字上とは違って 今の反動はハッキリと分かっただろう?シーナ隊員?」
シーナの声が聞こえる
『…え?あ、はいっ 確かに 分かりました!小銃の時よりも ハッキリと 反動として伝わって来ました!』
グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「そうとは言え やっぱり大した者だ その反動に気付いていても ターゲットへの狙いにブレは無い いくらオート照準機能があると言っても それを使うのは生身の人間だからな?ここまで出来るというのには 正直驚いたが…」
アースが言う
「それが 彼女のマシーナリーへ対する 信頼だ」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「え…?」
アースが言う
「マシーナリーの作動確認は十分だ ここからは 実戦訓練を開始する」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「はいぃいっ!?」
シーナが言う
『了解っ!司令官っ!』
グレイゼスが慌てて言う
「ちょ、ちょっと待って下さいっ ハブロス司令官!いくらなんでも 危険過ぎますっ!」
アースが言う
「使用武器はGT700 及び M900 サブユニットに B手榴弾をセット」
グレイゼスが慌てて言う
「GT700とM900って!?それは どっちも メインアームですよっ!?しかも サブユニットにB手榴弾なんて あれはART1仕様のスペシャル設定なんですから 通常では…っ!」

訓練所

シーナが呆気に取られた状態で言う
「GT700とM900… それに B手榴弾… 了解…っ!了解!司令官っ!」
シーナが喜んで顔を向ける Mシーナが武器庫からそれぞれの武器を取り出す グレイゼスの声が聞こえる
『それこそ 万が一にもGT700の反動を抑え切れなかったりして そのB手榴弾へ銃弾が流れでもした日には そちらのB手榴弾が操縦者を巻き込んでの…っ』
アースの声が聞こえる
『うるさいっ グダグダと喚くな 唯でさえ 睡魔にイラ付いてるんだ 黙って ターゲットの設定でもしていろっ マスターグレイゼス中佐っ 命令だっ!』
グレイゼスの声が聞こえる
『つまり 一晩掛けて物理的に調べていて 寝ていないんですねっ!?そんな状態で 危険を伴う指令を出さないで下さいっ 司令官! 正常な頭で考えれば その危険性は 分かる筈ですっ!』
アースが言う
『黙れっ 現状の私が正常ではなくとも ナノマシーンは正常だっ その彼らが了承していると言う事ならば問題ないっ!グレイゼス!その男を黙らせろっ!命令だっ!』
グレイゼスが言う
『ナノマシーンは正常でもっ その貴方は…っ!…痛ぇえっ!?…グ、グレイゼスっ!?』
シーナが意気込んで言う
「使用武器のセッティングっ!完了しましたっ!」
MシーナがGT700とM900を片腕ずつに構えている アースが言う
『よし 隊員の準備は完了だ そちらはどうだ?マスターグレイゼス中佐?』
グレイゼスが言う
『は、はい… 一応…』
シーナが微笑する

監視塔

グレイゼスがコンソールを操作しながら言う
「では GT700及びM900のターゲット設定を 5:5の割合でセット …とは言っても 元々双方がメインアーム設定に置いての 簡易設定だから 場合によっては双方のターゲットが 同時に現れてしまう事もあると思うけど… まぁ その時は焦らずに どちらか片方でも撃破出来れば十分だからな?」
アースが言う
「両方の武器を持っているのなら どちらも破壊するべきだ シーナ隊員 期待しているぞ?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「ハブロス司令官っ!」
シーナの声が聞こえる
『了解っ!ご期待に沿いますっ!司令官っ!』
グレイゼスがアースを見る アースがグレイゼスを見下ろす グレイゼスが感情を押し殺して正面へ向き直って言う
「では… GT700及びM900 実弾訓練開始!」
シーナの声が聞こえる
『了解っ!』
グレイゼスコンソールのスイッチを押す

訓練所

Mシーナの前に複数のターゲットが表示される MシーナがGT700で撃破すると ターゲットが追加される Mシーナが空かさずM900で撃破すると 続いて ターゲットが複数表示され GT700で撃破する

監視塔

グレイゼスが状態を見ながらスイッチを操作している 一瞬間を置いて スイッチを切り替える その間にMシーナが弾倉を交換している アースがそれらを確認している モニターに数字が表示される グレイゼスが操作を止めて言う
「うん、十分だ 命中率73% 射撃精度に置いては100%だ」
シーナが言う
『ご期待に沿えず 申し訳ありません ハブロス司令官』
グレイゼスがアースを見る アースが言う
「問題ない マシーナリーの挙動範囲に置いての 限界であったのだろう?」
グレイゼスが一瞬驚いてからコンソールを操作すると モニターにマシーナリー挙動率が100%と表示される グレイゼスが呆気に取られる アースがコンソールの近くへ向かいながら言う
「マスターグレイゼス中佐の言う通り 2つのメインアームを用いた既存の訓練データを使用していては マシーナリー挙動の限界を超えてしまうのは当然だ そして お前は そちらを見逃さなかった そうとなれば…」

訓練所

シーナが呆気に取られている アースの声が聞こえる
『お前のデータ収集訓練は 次で最後だ シーナ隊員』
シーナがハッとして言う
「は、はいっ!」
アースの声が聞こえる
『発案技法11を試す 分かるか?』
シーナが驚いた後喜んで言う
「はいっ!大丈夫ですっ!行けますっ!」
Mシーナが武器の装填を行って構える

監視塔

グレイゼスが疑問して言う
「発案技法11…?えっと?それは…?一体何のお話で?」
アースがコンソールのスイッチへ手を向ける グレイゼスがハッとして言う
「えっ!?」
アースがスイッチを3つ同時に押す グレイゼスが慌てて言う
「ああっ!だ、駄目ですよっ!スイッチを同時に押したりしたら ターゲットも同時にっ!」

訓練所

グレイゼスの声が聞こえる
『3つ現れますっ!しかもそっちは… ああーっ!』
Mシーナの前に複数のターゲットが表示され MシーナがGT700で撃破しながら走行する 次々にターゲットが表示され MシーナがGT700とM900で撃破すると ターゲットが発射され向かって来るのを Mシーナが空かさずM900で撃破する グレイゼスの声が聞こえる
『ですからっ!3つとか4つとか 押しては駄目ですってっ!あっ!そっちは 攻撃性もあるターゲットですから もっと駄目でってっ!聞いてますかっ!?ああーっ!それを同時は駄目ですっ!それじゃ むしろ ターゲットではなく 彼女がターゲットにされていますよっ!?彼女を攻撃してどうするんですがっ!?』
アースの声が聞こえる
『黙れ マスターグレイゼス中佐っ!”実戦における訓練”であるから ”実戦訓練”だろうっ!?実戦時には ターゲットからの攻撃があって当然っ!そして 発案技法11は それらを全て撃破する 銃撃戦法だっ!』
Mシーナが襲い来るターゲットを全て撃破する アースが言う
『次!発案技法21!』
シーナが言う
「了解っ!司令官っ!」
襲い来る的と共に 遠くのターゲットが表示される Mシーナが襲い来る的をGT700で撃破すると共に 遠くのターゲットをM900で次々撃破する

監視塔

グレイゼスが呆気に取られる中 アースが次々にスイッチを押しながら言う
「次!22から23 その間に27だ 回避と共に 装填を間に合わせろ!」
シーナの声が届く
『了解っ!やってみますっ!』
グレイゼスが遮へいガラスの先を見ると MシーナがGT700を放ちながら M900を撃って 一度GT700を手放し その手でB手榴弾を放って M900を構える グレイゼスが驚いて言う
「ま、まさかっ!?」
シーナの声が届く
『ビフォアーバーストショットっ!』
グレイゼスが慌てて言う
訓練所ここでぇええーっ!?」
遮へいガラスの先でB手榴弾が盛大に爆発する グレイゼスが思わず身を守る シーナの声が聞こえる
『GT700装填完了っ!…出来るっ!やっぱり 出来るんだっ!さいっこーっ!』
アースが次々にスイッチを押しながら言う
「発案技法30の後 21へ戻れ 続いて24 28 最後に最終発案技法32だ 派手にキメろ!」
シーナの声が聞こえる
『了解!司令官ーっ!』
グレイゼスが苦笑して言う
「だ、駄目だ… やっぱり この人には付いていけない」

訓練所

MシーナがB手榴弾を3つ持って言う
「最後は派手にキメてやるよーっ!」
Mシーナが飛んで来た3方向からの大量のターゲットへB手榴弾をそれぞれ放ると GT700を前方上空へ構える

監視塔

グレイゼスが慌てて言う
「だ、駄目だっ!その距離でB手榴弾を破壊したら 爆風に巻き込まれ…っ!」

訓練所

Mシーナが後方へ滑走しながらGT700を放つと 銃弾が放物線を描いてB手榴弾へ向かう シーナが視線を向けて言う
「今よっ!ショットっ!」
MシーナがM900を後方へ放ち 通常のジャンプへ反動を利用してマシーナリーが上空へ飛び上がる 銃弾がB手榴弾に着弾して爆発する マシーナリーが宙を舞っている間に爆風が訪れ 衝撃が収まった場所へ GT700で衝撃を緩和しながら着地したMシーナがポーズを決めて言う
「どーだ!最高だろー!?」
視線の先で ターゲットを含む設備が全て撃破され残骸が散らばっている 

監視塔

アースが笑っている
「あっははははっ!」
グレイゼスが呆れて言う
「あぁ… 何処かで聞いた台詞が…」
アースが言う
「上出来だ シーナ隊員 共に 君の発案技法は 実現可能である事が証明された」
シーナがハッとして言う
『ハッ!…は、はいっ!そのっ!し、失礼致しましたっ!有難う御座いますっ!ハブロス司令官…っ』
アースが言う
「マシーナリーの起動 及び 作動に置いても問題は無い 従って 本日現時刻を持って ART1の銃火器サポート兼ART1担当オペレーターの シーナ・ヘレン隊員を ART1へ移籍させる」

訓練所

シーナが驚きに目を見開いている アースの声が聞こえる
『同隊員はマシーナリー及び 必要装備が整い次第 ART1の訓練へ参加しろ マスターグレイゼス中佐は 直ちに そちらの準備を開始しろ』
グレイゼスの声が聞こえる
『了解… 司令官…』
シーナが喜びに表情を綻ばせ言う
「有難う御座いますっ!ハブロス司令官!」

監視塔

アースが言う
「では そう言う事だ シーナ隊員 ご苦労だったな マシーナリーを降り ART1を含む機動隊員らの出隊時間まで 好きにしていろ」
シーナの声が聞こえる
『了解!司令官!』
アースが気付いて言う
「ああ、そうだった その前に一つ確認したい シーナ隊員?」
モニターに映るシーナが疑問して言う
『あ、はいっ?ハブロス司令官っ』
アースが言う
「お前たちARTの司令官は… ”最低”か?」
モニターのシーナが呆気に取られる グレイゼスが疑問して アースを見る

訓練所

シーナが微笑し張り切って言う
「私たちARTの司令官は ”さいっこー”ですっ!」

監視塔

グレイゼスが衝撃を受ける アースが笑う
「あっはははは!」
グレイゼスが苦笑して言う
「まさか…」
アースが言う
「気が済んだ 後は任せたぞ マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが言う
「そう言う事でしたか…」
アースが言う
「1時間 仮眠する 起こすなよ?」
アースが部屋を出て行く グレイゼスが苦笑して言う
「了解 司令官 …やれやれ 司令官が司令官なら 部下も部下でした様で…?」
グレイゼスが訓練所を見る Mシーナから降りたシーナが喜んで マシーナリーに触れている

訓練所

シーナが言う
「有難う マシーナリー やっぱり 私たちは最高の仲間よね?…もちろん 貴方たちも!」
シーナがキーネックレスにキスをして言う
「有難う ナノマシーン ラキンゼス、グレイゼス、シュレイゼス 皆…」
シーナが両手を挙げて言う
「最っ高ー!」

監視塔

グレイゼスが訓練場を見渡して言う
「これ 整備するの 誰だと思ってるんだか… ART3の連中に 怒られても知りませんよ?彼らのナノマシーンに へそを曲げられてしまっても?…って言っても その皆が認めた 王様の命令なら …良いのかねぇ?これで?」
グレイゼスが苦笑して 視線を向ける 視線の先シーナが喜んでいる グレイゼスが微笑する

【 ART女子トイレ 】

女性隊員たちが驚いて言う
「「えぇええーーっ!?」」
シーナがキーネックレスを手に喜んで言う
「ねっ!?これが証拠のキーネックレスっ!それに 私の神経接合ユニットも 早速 用意してもらえるって!それに何より ハブロス司令官から直々に ART1への移籍を命じられて!もう… 最っ高ーよっ!?」
女性隊員たちが言う
「ART1へっ!?」 「それじゃっ!?ハイケル少佐や あの元国防軍レギスト機動部隊の連中と一緒にっ!?」
シーナが言う
「昨日の終業時間後に ハブロス司令官に 私の発案技法のレポートを見てもらってたの!だから 多分 まずはあの技法をレクチャーしなさいって事だと思うけど でも レクチャーは 口頭や机上じゃないっ それこそ マシーナリーを用いた 実戦訓練そのもので 教える事になると思うっ!やってやるわよー!ハイケル少佐や 元国防軍レギスト機動部隊の連中を びっくりさせてやるんだからっ!」 
女性隊員たちが言う
「でも それって事は…」 「もしかしたら ただ レクチャーだけしろって事なんじゃ?」
シーナが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
女性隊員たちが言う
「実際に 実戦へ投入するかどうかは また別かもね?」 「そうよね?だって下手したら 超高位富裕層ハブロス家の汚点にもなりかねないし?女性に怪我をさせたって?」
シーナが表情を困らせた後 怒って言う
「もうっ!良いのっ ハブロス司令官を 悪く言ったら 私 2人が相手でも 怒るよっ!?」
女性隊員たちが衝撃を受け苦笑して言う
「あれ?そのハブロス司令官へは それこそ 面と向かって 最低って言ったんじゃなかったっけ?」 「そうよ?そっちは どうなったの?除名されるかもって言ってたのに?」
シーナが言う
「ハブロス司令官は 最高よっ!モニター越しではあったけど もう一度 面と向かって 今度は 最高です!って 言って置いたものっ!」
女性隊員たちが衝撃を受けて言う
「え?そういうもの…?」 「って 言うかさ?そもそも 除名所か 高位富裕層への名誉毀損罪で ラミリツ隊長の政府警察に逮捕されるんじゃ…?」
シーナが衝撃を受けてから困り怒って言う
「そ、それは…っ …もうっ なんで2人とも 一緒に喜んでくれないのっ!?2人共仲間でしょ!?私、2人の為にも 女性隊員代表として 頑張ったのにーっ!?」
女性隊員たちが苦笑して言う
「ああ、分かった分かった シーナは頑張り屋だから」 「シーナは 一直線だから…」
女性隊員たちが微笑して言う
「おめでとう!」 「頑張れ!シーナ隊員!」
シーナが微笑した後 拳を握って言う
「おうよーっ!…それじゃ!またねっ!」
シーナが走って出て行く 女性隊員たちが苦笑して言う
「やれやれ… 相変わらず 何だっけ?あのバンド?」 「ナックキラーでしょ?いくらなんでも 女性でアレの真似をするのは 止めた方が良いと思うんだけど?」
女性隊員たちが笑って出て行く

【 ART司令塔 】

ラミリツが言う
「えぇえーっ!?それじゃ 僕の新しい神経接合ユニットを その新入りにあげちゃったって事ぉ!?」
グレイゼスが言う
「ああ、そうなんだよ ごめんな?そんな訳で ART2の新作 神経接合ユニットは 今 ラミリツ隊長の分だけ無いんだわ?」
ラミリツが言う
「何それっ?折角 24時間休暇中に 個人訓練を思いっきり出来ると思ってたのに!?大体 何で僕のをっ?もう一つ上のサイズなら 対象者が多いから 予備だって用意してあるんだろ?」
グレイゼスが言う
「それはそうなんだが… その新入りの子に合う物が それしかなかったものだから?」
ラミリツが言う
「大体 新入りの試験運転なら それこそ サイズが合わなくったって …それこそ ユニットなしで 軽く動かしてみるだけでも良かったんじゃない?」
グレイゼスが言う
「いや 何しろそれが 今までとは違って その… 女性の操縦者を使った マシーナリーの試験運転だったもので」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「はぁあっ!?女性の操縦者って…っ?」
グレイゼスが苦笑して言う
「それで データ取りをしろって ハブロス司令官からの直々のご命令でな?そうとなると 適当な装備でやるわけにも行かないだろう?」
ラミリツが言う
「それは… ハブロス司令官の命令じゃ しょうがなかったかも… しれないけど…」
グレイゼスが言う
「そうそう そんな訳で その彼女のサイズに合うのが ラミリツ隊長のそれしかなくって…」
ラミリツが衝撃を受け言う
「うっ… それってつまり 他の機動隊員と比べて 僕がそれだけ 小さいって言いたいんだよね?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ま、まぁ… お陰様で?彼女のマシーナリー操作も順調だったみたいだし?よ、良かったじゃないか?新しい仲間に 協力出来たって事で…?な?」
ラミリツが息を吐いて言う
「はぁ… それじゃ しょうがない 神経接合ユニットは以前のままで マシーナリーの改良は終わってるんでしょ?僕のは隊長機なんだから とーぜん 優先してくれてるんだよね?」
グレイゼスが言う
「ああ!それはもちろん!」
ラミリツが微笑して言う
「そ?なら 早速 そっちの確認でも…」
グレイゼスが言う
「そんな訳で ART2で唯一整備の終わっていた ラミリツ隊長のマシーナリーもな?彼女のために 使っちゃいましたー!って事で?」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「はぁああっ!?なにそれ!?…って!?ちょっと 待ってよっ!?それじゃ まさか!?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ごめんなぁ?そんな訳だから 今 ラミリツ隊長の 最新の神経接合ユニットと共に そちらのマシーナリーも 彼女仕様に変更中なんだわ?」
ラミリツが怒って言う
「待ってよっ!?何でそこまで僕のを 使っちゃうんだよっ!?データ取りは仕方が無いにしても マシーナリーは別のを使えよっ!?あのマシーナリーは 僕の相棒だったのにっ!?」
グレイゼスが苦笑して言う
「俺もそっちは 変えようと思ってたんだが… あれほど完璧な同調を見せられちゃうとなぁ?ひょっとして あのマシーナリーも 彼女を気に入ったんじゃないかなぁ~?なんてさ?」
ラミリツがムッとしてグレイゼスを見る グレイゼスが慌ててて言う
「あっ いや!?もちろん!ラミリツ隊長の事も気に入ってるかもしれないが …ART2は今日は24時間休暇だった訳だし?だったら 整備が終わってる あのマシーナリーを使った方が早いって事で…」
ラミリツが言う
「24時間休暇であっても 僕は訓練しに来たんだけどねっ!?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ごめん… 悪かったよ けど、こっちの状況も分かってくれよ?何しろ あのハブロス司令官に 直ちにやれって 命じられてるんだ その上 それが揃ったら 早速にもART1の訓練に参加させろって… つまり ART1の訓練開始時間に間に合わせろって事なんだよ 相変わらず ご無茶なご命令だろ?」
ラミリツが言う
「ああ… そう言う事?」
グレイゼスが言う
「そうそう そう言う事… それで 今は 神経接合ユニットも そのラミリツ隊長のものを少し強引にサイズ調整をして マシーナリーに関しては 銃火器装備のART1とセイバー装備のART2のマシーナリーとは言え 元のマシーナリーは同じな訳だから データ上のみに置かれる そちらのメインアームの再設定と ART1の識別信号及び基本データの登録を行っている」
ラミリツが言う
「それじゃ やっぱ 神経接合ユニットは当然として そのマシーナリーは もう僕らのART2へは戻って来ないって事だよね?」
グレイゼスが言う
「まぁ どうしてもと言うのなら 改めて 彼女のマシーナリーを用意した上で またART2の仕様へ戻してって事になるが… そうすると ラミリツ隊長が もう一度 そのマシーナリーを使える頃には」
ラミリツが言う
「分かった そんなの待っていられないし… それに 彼女のマシーナリーになっちゃったって言っても 同じARTのマシーナリーで 同じ目的の為に戦う… 僕らの仲間である事は変わらないもんね?だったら 良い …壊されちゃったわけでは ないんだもんね?」
グレイゼスが微笑する ラミリツが言う
「…それで?それこそ僕の新しいマシーナリーは?用意してくれてるんでしょ?」
グレイゼスが微笑して言う
「はい、そちらは もちろん!」
ラミリツが微笑して言う
「そ?それじゃ… しょうがないから それで訓練して来る 第二格納庫にあるんだろ?待機場所は以前のマシーナリーと同じ?」
ラミリツが向かおうとする グレイゼスが言う
「ああーっと!いや、待機場所は同じなんだが 今は その…」
ラミリツが疑問して顔を向けて言う
「ん?今は?」

【 ART 第二訓練所 】

ラミリツが表情を引きつらせて言う
「…何これ?昨夜から今朝までに掛けて この第二訓練所に マシーナリーの襲撃でもあった?」
グレイゼスが苦笑して言う
「いやぁ~ まさかぁ?けど まぁ… そうと言われても可笑しくは無い… よな?はは…」
ラミリツとグレイゼスの前に大破した訓練所がある グレイゼスが言う
「一応 今 ATR3及びART4を使っての 大掛かりな補修整備作戦を構築している所なんだが… 何にしても ここを使えるようになるのは やっぱり 24時間休暇の終わった 明日辺りじゃないかなって…?」
ラミリツが怒って言う
「もうっ!何で 僕らの方でばっかっ!?大体 銃火器を使うって事は 最初からART1へ入れるつもりだったんだろっ!?だったら そっちの訓練所でやれよっ!そんなの常識だろっ!?」
グレイゼスが苦笑して言う
「いや まぁ それはそうなんだが… 何しろART2は24時間休暇だった訳で…」
ラミリツが言う
「だからっ それでも 僕は来たしっ 訓練するつもりだったのっ!」
グレイゼスが苦笑して言う
「分かった悪かった… 何なら それこそ ラミリツ隊長も ART1の訓練に参加してでも…?」
ラミリツが不満そうに言う
「む~っ!もう 良いっ!大体 その隊員が女性だって言うんなら 文句も言えないし 仕方が無いから…」
ラミリツが去ろうとする グレイゼスが気付いて言う
「おやおや?やっぱり ラミリツ隊長も 女性には そうと仰るので?」
ラミリツが反応して向き直って言う
「何それ?…ひょっとして 僕の事馬鹿にしてる?その彼女に 神経接合ユニットを貸せるほど 身長が低いから 男として認めていないとでも?そこまで言ったら いくら仲間でも 僕だって本気で怒るよ?」
ラミリツがグレイゼスへ向かって行く グレイゼスが困り苦笑で言う
「あぁ いやいや!?まさかまさか?このアールスローンの攻長閣下にして メイリス家のご当主様である ラミリツ隊長を認めないという事では… ただ その… やっぱり ”男性だから女性だから”って 考えますよね?」
ラミリツが言う
「はぁ?何言ってるの?そんなの当たり前だろ?アールスローンの男子の癖に 女性を大切にするって常識 分かってないの?」
グレイゼスが苦笑して言う
「いや そちらは 一応分かってはいたつもりですが… 今回はそれを覆す事態でしたもので?何しろ 女性の機動隊員の誕生ですからね?それも 超高位富裕層とも言われる ハブロス司令官のご命令で?」
ラミリツが言う
「うーん …まぁ それはそうだけど …ハブロス司令官の事だもん きっと何か考えているんでしょ?」
グレイゼスが言う
「え?あぁ まぁ そうかもしれないし …そうでもなかったり?まさか… なぁ?」
グレイゼスが思う
(最低と言われた事を 覆すために… だったりして?)
グレイゼスが苦笑する ラミリツが疑問した後言う
「なら ついでに聞いて来てあげようか?訓練所が使えないんじゃ ART1に合流するかどうかも あいつらの様子を見てからじゃないと なんとも言えないし その前に ハブロス司令官に報告して来ないと」
グレイゼスがハッとして言う
「ハブロス司令官に?…あ、いやっ!今はっ!」
ラミリツが去りながら言う
「メンバーボードの名前は点灯していたから 司令官室に居るでしょ?また 外出しちゃうかもしれないから 先に行って置かないと」
グレイゼスが言う
「ああっ いや しかし ハブロス司令官は 今は都合が悪いんじゃないかと!?」
ラミリツが言う
「大丈夫!僕は政府長攻長にして ハブロス司令官と 仲間である事はもちろん 個人的にも 友人だからねー?」
グレイゼスが言う
「ゆ、友人?まぁ それなら… 大丈夫 なのかねぇ?」
ラミリツが去って行く

【 ART 第一訓練所 】

ハイケルが言う
「ラミリツ攻長が?」
後方で ART1マシーナリー4機が自主トレしている グレイゼスが言う
「ああ、ひょっとすると 今日は彼がART1の訓練に参加するかもしれないから その時は 快く了承してやってくれ …頼むよ?お前の友人でもある 俺の顔を立てると思ってさ?」
ハイケルが疑問して言う
「お前が そこまで言うのなら その様にするが ART2が24時間休暇である為 訓練相手が居ないとでも?」
グレイゼスが言う
「いや、それが話すと長いんだが… けど そうだな?どの道 お前たちには関係する話なんだから しっかり順を追って話しておくか?実は 今朝…」

【 ART司令官室 前室 】

ラミリツがやって来て 秘書へ言う
「お早う!ハブロス司令官は在室かな?」
秘書が立ち上がって言う
「お早う御座います 攻長閣下 はい ハブロス司令官は 在室で御座いますが…」
ラミリツが言いながら向かう
「そ!ありがと!」
秘書が言う
「あっ しかし ハブロス司令官は1時間ほど ご休憩されると」
ラミリツが言う
「え?ご休憩?」
秘書が時計を見て言う
「はい 従いまして 只今のお時間は 私がご用件をお伺いして 後ほど ご連絡を致しますが?」
ラミリツが言う
「うーん… まぁ 用件はわざわざ伝えなくても …けど 休憩中とは言っても 中に居るんだよね?だったら 平気だよ!」
ラミリツが扉へ向かう 秘書が慌てて言う
「え!?あっ 攻長閣下っ!?」
ラミリツが言う
「良いの良いの!僕は攻長閣下だし?現状のアールスローンの名誉だけなら ハブロス司令官より上だもんねー」
ラミリツがIDをスキャンすると扉が開く ラミリツが秘書へ向いて言う
「ね?じゃ!そう言う事で!」
秘書が困って見つめる中 ラミリツが部屋へ入ると扉が閉まる

【 ART 第一訓練所 】

ハイケルが言う
「そうか では その隊員からは 銃火器を用いた 新たな戦術を伝授されるという事だな?」
グレイゼスが言う
「ああ、それに関しては 元 彼女の上官である俺も保障するし 何より 今朝のあの実戦訓練を見れば 誰の目にも一目瞭然で …とは言え やっぱり 少し抵抗があるだろう?」
ハイケルが言う
「抵抗が?それは… 新入りの隊員であるから と言う事か?」
グレイゼスが言う
「へ?…あ、いや?」
ハイケルが言う
「もしくは 元が非戦闘員であるという事に関してか?しかし そちらの実戦訓練の様子を伺う所 その者は 銃火器を通常の使用方法の他に 回避や移動の原動力として使用し 尚且つ マシーナリーの挙動に関しても 限界を熟知している …そこまでと有れば むしろ 非戦闘員ではあっても マシーナリーを用いた戦力に関しては 現状の我々を超えると言う可能性すらあるのでは無いかと 私はその様に認識しているが?」
グレイゼスが言う
「え?いや… それはそうなんだが… …そうじゃなくて …ハイケル?」
ハイケルが疑問する

【 ART 第二訓練所 】

Mシェイムが呆気に取られて言う
「こ、これは… この訓練所で 一体 何が起きたと言うのですか!?」
MシェイムとART3マシーナリーたちが訓練所内を見渡す シェイムの前のモニターに女性隊員が映り言う
『ART3及びART4は 本日は突貫で この訓練所の修復作業を行い 完了させて下さい』
シェイムが衝撃を受け慌てて言う
「なっ!?これを 今日中にっ!?出来る筈が無いでしょうっ!?」
女性隊員が言う
『そうなりますと ART2及び同隊長が 明日から訓練が出来ずに 困る事になりますが 宜しいのですか?マスターシュレイゼス隊長?』
シェイムが衝撃を受けて言う
「う…っ そ、それは…っ …大体 この事態は 一体何が起きたと言う事です!?そもそもART2は基本 セイバーを使用する部隊です しかし この有様は どう見ても 銃火器及びその他爆薬等を使用しての 破壊行為でしょう!?この修復作業を 我々が行うというのであれば せめて 一言 こちらの破壊行為を行った者からの言い訳か 謝罪の言葉でも聞きたいですねっ!?」

女性隊員が顔を逸らして言う
「はぁ… また 始まった …何でこう あの人は 与えられた任務に 素直に従うと言う事が 出来ないのかな?」
Mシェイムが女性隊員へ向いて言う
「外部集音機能を通じて 聞こえていますよっ!?マスターの聴力を侮らない事ですねっ!」
女性隊員が不満そうに舌打ちする
「チッ…」
Mシェイムが衝撃を受ける シーナが走って来て言う
「エミー!」
エミーが振り向いて言う
「シーナ!」
シーナがエミーの前にやって来て クルッと回って見せて言う
「どおっ!?私に合わせて調整された 神経接合ユニット!」
エミーが言う
「わぁ~!良い!良い!さいっこーだよっ!シーナっ!」
シーナが言う
「有難う!やっぱ エミーだけだよ!さいっこーって 言ってくれるの!」
エミーが言う
「あったりまえじゃないっ!何てったって 私とシーナには ナックソウルがあるんだから!」
シーナが言う
「おうよー!」
エミーとシーナが拳を合わせて 微笑み合う

シェイムが表情を引きつらせて言う
「な… 何なんですか!?あれが女性の言動っ!?恐れ多くも この女帝陛下のアールスローンに置いて あの様なっ!?」
シェイムが頭を抱えて言う
「とても 信じられない… しかも まさか!?あの神経接合ユニットの色という事は 彼女が エーメレスのART2へっ!?」
シェイムがモニターへ向く

シーナが言う
「それで!?エミー!?私のマシーナリーはっ!?」
エミーが言う
「シーナのマシーナリーは もう設定を終えてあるから 後は… あ、そうだった シーナ?マスターグレイゼス中佐がね?」
シーナが言う
「うん?中佐が 何?」
エミーが言う
「シーナのマシーナリーを ART1のマシーナリーたちと同じカラーリングするには 現状のART2のカラーの上に 上掛けする事になるから 重量比率にかなり変化が出てしまうんじゃないかって」
シーナが言う
「あ、そうだね?ART1は黒一色だから 現状の白一色をそれにするとしたら… 重量増加による速度低下率が0.9?ひょっとしたら1.0も上がっちゃうかもっ!?」
エミーが言う
「だから この際 同じカラーリングにするのは諦めて 取りあえず ART2との違いが分かる程度の色付けで良いんじゃないかって?シーナさえ良ければ?」
シーナが言う
「もちろーん 私は構わない!マシーナリーで銃火器を使って戦えさえすれば 色なんて 何色でも良い!」
エミーが言う
「それじゃ 整備室へ行ってみて?シーナのマシーナリーは 今 そこに置かれているから」
シーナが言う
「了解!有難う!」
シーナが走って向かう

シェイムがホッとして言う
「どうやら 彼女はART1の隊員でしたようで… ふぅ… それなら…」
シェイムが間を置いてからハッとして言う
「…っと 言う事は?まさかっ 今朝のナノマシーンたちの会話はっ!?彼女のっ!?」
シェイムがモニターを見る Mシェイムが第二訓練所を見て言う
「そして この状況… つまり これらの元凶は …やはりっ!?」

【 ART司令官室 】

ラミリツが覗き込んで言う
「…ハブロス司令官?ひょっとして …本当に寝てる?」
アースが椅子に座って眠っている ラミリツがアースの顔を覗き込んでいた状態から体勢を戻して言う
「休憩中とは聞いたけど まさか朝から寝てるって?いくら早くに来てても 出隊してから 1、2時間しか経ってないよね?それにARTは司令官であっても 泊り込みは出来ない設定だし… そうとなれば これはやっぱ無しでしょ?普通?」
ラミリツが振り向いて言う
「ね?エルムも そう思うよね?」
ラミリツの視線の先 エルムαが立っている ラミリツが間を置いて言う
「…あれ?『そうだな』じゃないの?エルム?」
ラミリツがエルムαへ向かい 顔を覗き込む エルムαは目を開けているが反応が無い ラミリツが疑問して言う
「エルム?もしかして …エルムも寝ちゃってる?しかも 目を開けたままで?流石に それは 無しでしょ?いくらデコイや人型マシーナリーでも ちゃんと 眠る時は目を閉じて …あ、ひょっとして 人型マシーナリーは目を閉じられない設定なのかな?」
ラミリツがエルムαの目を閉じさせる ラミリツが言う
「あれ?何だ 閉じられるじゃない?なら これからは ちゃんとそうしてよね エルム?ふふ…っ」
ラミリツがエルムαから離れると アースとエルムαを見てから言う
「…って それで…?」
ラミリツが周囲を見てから言う
「どうしよう?」
ラミリツが思う
(秘書が休憩を知っていたって事は 最初から休憩する… つまり 眠るつもりだったんだろうだから これを起こしたら …やっぱ 怒られるかな?)
ラミリツがアースを見る アースは寝入っている ラミリツが考えて思う
(怒られる分には良いんだけど 怒らせると本当に怖そうだし… 出直す?さっきの秘書に やっぱ連絡してって言って置いて…?)
ラミリツが視線を向けると デスクの上に携帯が置かれてる ラミリツが気付いて携帯を見て思う
(うん?これは もしかしてタイマーかな?残り12分 …それ位なら このまま待ってようか?ART1の訓練に参加するにしても たった10分かそこらで抜けて また来るって言うのもね?だったら このまま待って…)
ラミリツがアースを見てからエルムαを見て苦笑して言う
「…せめて エルムが起きててくれれば その間も暇潰し出来たのに …何か無いかなぁ?」
ラミリツがデスクの上を見て思う
(あれは 僕が提出した報告書だし… こっちは… 銃火器の資料みたい?他は… 経理っぽい感じの?そう言った資料?報告書?うーん どちらにしても 僕の興味のあるものじゃない …そう言えば 昨日 一週間振りに兄上やフレイゼスと夕食を食べながら話をしたけど 兄上はART3の活動は… というより マシーナリーを使った作業は あんまり好きじゃないみたい… やっぱ こう言うのも適性って言うの?)
ラミリツが言う
「僕が長官じゃなくて良かった…」
ラミリツが思う
(ホント そう思う… それこそ政府長長官は こう言った資料を処理するんだろうし?)
ラミリツが経理っぽい資料をぱらぱら見てから 銃火器の資料を見て思う
(まぁ… こっちなら 多少は見られるかも…?…にしても 一杯文字を読まなきゃいけないのは やっぱ苦手だなぁ… 政府警察の法律を暗記するのも すんごい苦労したもんね?)
ラミリツが息を吐いて言う
「…はぁ ホント 見てるだけで 目が痛くなりそうだよ…」
ラミリツがふと気付いてアースを見てから アースの顔を覗き込んで思う
(そう言えば 資料を読むにしたって… やっぱ 片目じゃ辛いよね?そもそも 片目じゃ 遠近感も掴めない訳だし… 普通に生活するのだって …不便だよね?)
ラミリツが表情を落として思う
(こうなってしまったのは 10年前のあの時… 初めて僕やハブロス司令官が帝国へ行った… あの時の怪我が原因で… それで …理由はハッキリしないけど 視力が戻らないって でも もしかしたら あの時の失血が原因じゃないかって だとしたら… もっと早く 僕らが助けていれば?)
ラミリツがアースの眼帯を見て思う
(あれから10年経っても 視力が戻らないの?その原因も判明しない?ハブロス家なら それこそアールスローン1の眼科医とか 呼んだりしたんだろうけど?)
ラミリツがハッとして言う
「あ… それなら?」
ラミリツが思う
(政府研究局は?あっちにハブロス司令官やハブロス家から依頼が有ったって話は 聞いてないし もし有ったのなら 政府長の僕に話が来てる筈 …それじゃ むしろ 僕の方から話を持ち掛けてみる?それなら…?)
ラミリツが言う
「今は… どういう状態なんだろう?」
ラミリツがアースの顔を覗き込んで思う
(確か あの時 目に外傷は無かった だから 眼球への傷とかはないんだよね?でも視力が戻らないって事は… 神経系?それは 見て分かるものじゃないだろうけど)
ラミリツがじっと見詰めて思う
(…それに 政府の研究局って言うだけでも 嫌がられそうだし?だったら先に僕が症状を調べて それで局へ話をして 何か良い話があれば それを伝えてみるとか?…何にしても 伝えるからには その僕が状態を知らないと 話にならないんだし …よしっ!)
ラミリツがアースに近付いて思う
(これだけ傍に居ても気付かないほど 深く眠っているなら… ひょっとして 今が そのチャンスなんじゃない?きっと 起きている時に 僕に見せてって言っても 見せてはくれないよね?だったら…)
ラミリツが一度アースの様子を伺ってから思う
(今なら…っ)
ラミリツがアースの眼帯の結び目に手を伸ばす

【 ARTマシーナリー整備室 】

Mシーナに部分部分シートが掛けられている 整備長がやって来て言う
「とりあえず 重量バランスを考えて 今シートが外されている あの辺りを着色しようと思ってるんだが…」
シーナが両手の指で四角を作って マシーナリーを囲って見て言う
「うーん …うん!良いと思います!あの位置なら 重量バランスの変化は許容範囲ですし」
整備長が軽く笑って言う
「そうだろ?マシーナリーに詳しいシーナ隊員なら そう言うと思った それで …何色が良い?」
シーナが疑問して言う
「え?」
整備長が言う
「ART2の全体的な白に ART1の黒を部分部分へ 取り入れるとなぁ?白と黒でパンダみたいになって ちょっと格好が付かないんじゃないかってな?それで …何とか他に塗料になるものを 探してみたんだが」
整備長が塗料の置かれた場所を示して言う
「あんまりにも急だったから 有り合せの塗料しかないんだ そんな訳で今選べるのは ART1純正の黒か もしくは 彼らの訓練用の銃弾に使われている 蛍光塗料程度なんだが… しかし 我らARTの 初の女性機動隊員!しかも 技術部門からの誕生だからな?俺たちも… お祝いって訳じゃないが 出来れば少しでも 華やかに出来たら… なんてな?思ってみたんだが?ははっ」
シーナが呆気に取られた状態から微笑して言う
「有難う御座いますっ!ランコック整備長!」
ランコックが微笑して言う
「頑張れよ?シーナ隊員!俺たち整備士一同は 君を応援してるからな!」
シーナが喜んで言う
「はいっ!頑張りますっ!」
ランコックが言う 
「それじゃ どうする?急がないと ART1の訓練開始時間に 間に合わなくなっちまう 蛍光塗料だと乾きは早いが クリア掛けしないと直ぐにハゲちゃうからな?」
シーナが言う
「そうですね それでは… …うんっ!やっぱり 私は ARTの女性隊員 代表ですからっ!」
シーナが塗料を見る

【 ART司令官室 】

アースの眼帯が外される ラミリツがアースを見てホッとして思う
(よし 起きてない それじゃ…)
ラミリツが改めて アースの顔を覗き込んで思う
(あ… 何か久しぶりに見た… それはそうだよね だって 10年ぶりだもん …人の顔って 眼帯一つで 凄い印象が変わるものなんだね?こうして見ると やっぱ こっちの方が… …優しそうに見えるよ?ハブロス司令官?…だから やっぱ…)
ラミリツが思う
(治してあげたい…)
ラミリツがアースの左目へ手を向けていると 背後にエルムαが居て ラミリツを摘み上げる ラミリツが驚いて言う
「わあぁあっ!?な、何っ!?」
ラミリツが振り向いて衝撃を受けて言う
「エ、エルムっ!?起きてたのっ!?」
エルムαがラミリツを下ろすと ラミリツの頭を両手で押さえ付けて固定する ラミリツが驚いて言う
「え!?な、何…!?」
ラミリツの背後でアースの声がする
「…人が眠っているのを 良い事に」
ラミリツが視線を向けようとして言う
「あ…っ うぐっ!?」
ラミリツの振り向こうとした頭が固定される ラミリツが正面のエルムαを見て言う
「は、離してよ!?エルムっ!?」
エルムαが言う
『無理だな』
ラミリツの後ろから ラミリツの頬が両側から引っ張られる ラミリツが衝撃を受けて言う
「なんで!?今ならあぁあっ!?い、いはぁあーーっ!」
アースがラミリツの両頬を引っ張りながら言う
「このクソガキがっ 眠っている私に悪戯をしようとは 良い度胸だなっ!?」
ラミリツが痛がりながら言う
「痛っ!いはいっ!痛ひっ!ひがうひょっ!違うったらぁあ~っ!…あっ!」
ラミリツの手から眼帯が引き抜かれる ラミリツの後ろでアースが眼帯を付け 軽く髪を整えて言う
「まったく…」
ラミリツの頭が解放される ラミリツが向き直るとアースを見て言う
「待って!あぁ… もうっ」
ラミリツがエルムαへ向いて言う
「もうちょっとだったのにっ 何で邪魔するのさ!?エルムっ!?」
エルムαが言う
『当然だ』
ラミリツが言う
「僕は悪戯しようとしていたんじゃないよ!本当だったらっ!?」
ラミリツがアースへ向く アースが携帯を手に取って言う
「秘書に聞かなかったか?私は休憩中だと?」
ラミリツが言う
「それは 聞いたけど… って そうじゃなくって ねぇ?ちょっと見せてよ?その左目!」
アースがラミリツを見る ラミリツが言う
「政府研究局の方で 診てもらうとかさぁ?何か 方法ないかなぁ?だって… 大変でしょう?片目だけじゃ 資料を読むにしても 普通に生活するにしたって…?それに…」
アースが言う
「問題ない もう慣れた」
アースが報告書を手に取る ラミリツが言う
「それよりっ」
アースが言う
「それより お前が私を尋ねたのは こちらの用件ではないのか?」
ラミリツが気付いて言う
「え?あ、うん そうだけど…」
アースが言う
「なら さっさとしろ この私を8分早く起こしてまで 任務の完了報告をしたかったのだろう?」
ラミリツが苦笑して言う
「それは… ちゃんと待つつもりだったけど …もう 分かったよ それなら」
ラミリツが思う
(誤解はされたみたいだけど 怒ってはいないみたい …それに もう慣れちゃったんだって?それなら 本当に …本当に 良いのかなぁ…?)
アースが言う
「報告をするのなら そんな所ではなく 正面へ立てよ?」
ラミリツが苦笑して言う
「了ー解 司令ー官!」
ラミリツがデスクの前へ向かう

【 ARTマシーナリー整備室 】

シーナが喜びの表情で見上げていて言う
「わぁ~っ!」
ランコックが高所台からシーナを見下ろして言う
「どうだ?こんな感じで!?」
シーナが喜んで言う
「最っ高ーっ!です!」
ランコックが満足そうに笑う Mシーナが白地に蛍光の濃淡ピンクで塗装されている ランコックが高所台から降りて来て言う
「よし!それじゃ 後は 乾いた所から クリアを吹き付けて完成だ …うん!蛍光弾の塗料を代用したとは思えない!我ながら 上手く出来たなぁ~?」
シーナが微笑して言う
「ランコック整備長の塗装の腕前は 50年間のガン●ムプラモデル仕込ですもんね?」
ランコックが衝撃を受け苦笑して言う
「うっ… それを言うなってっ」
シーナが笑う ランコックが苦笑した後 シーナの神経接合ユニットを見て言う
「うーん… それはそうと そっちはART2のままなんだな?」
シーナが気付いて 自分の神経接合ユニットを見てから言う
「あ、はい そうですね?元は ラミリツ隊長の物だったのを 急遽 サイズ調整をした 間に合わせなので 後日 新しいのを用意してもらえると マスターグレイゼス中佐が仰って下さいました」
ランコックが言う
「そうか それなら 早ければ 明日明後日にでも用意されるかもしれないが… 何だったら 残りの塗料で 塗れる所だけでも マシーナリーと同じ色にしてみるか?」
ランコックがハケを持って楽しそうに笑む シーナが呆気に取られた後軽く笑って言う
「え?…あはっ ランコック整備長 調子が乗って来ちゃったみたいですね?」
ランコックが衝撃を受け慌てて言う
「い、いやっ!?だって…っ ちょっと 違和感があるだろうっ!?外のマシーナリーがこの色なのに 中に乗ってる操縦者が白と黒って言うのはっ!?だからせめて そこら辺の肩のパーツだけでも コイツで…っ 元々 蛍光弾用の塗料だから 生地や肌に付いたって大丈夫だし 万が一 マシーナリーのシートに付着したって 通常の洗剤で直ぐに取れるって… 一応 そういう事を考えた上でだなぁっ!?」
グレイゼスがやって来て言う
「シーナ隊員 どうだ?そろそろ… おっ!?へぇ~!?これが あのART2のマシーナリーかぁ?まるで 別物!最新のマシーナリーみたいだ!カッコ良いなぁ!」
グレイゼスがMシーナを見上げる ランコックが得意げに言う
「どんなもんだいっ!俺様の実力は!だから 言っただろう マスターグレイゼス中佐?ART1やART2のマシーナリーも 単色カラーなんて詰まらない事はやめて もっと 派手にするべきだって!」
シーナが反応して言う
「っ!派手に…っ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「は、派手に… ねぇ…?」
グレイゼスが思う
(確かに 派手にキメたがる お方は居るが… そうは言っても…)
グレイゼスが言う
「そうは言っても マシーナリーはそもそも…」
シーナが言う
「そうですよねっ!やるからにはっ 派手にキメないとーっ!」
シーナがランコックの持つ塗料の入ったバケツを奪うと 頭から被る ランコックとグレイゼスが驚いて言う
「「なぁああーっ!?」」
シーナが自身のスーツを見て言う
「あ!良い感じ!どうですかっ!?ランコック整備長っ!?マスターグレイゼス中佐っ!?丁度 白かった部分と黒かった部分が 良い感じに マシーナリーのピンクの濃淡と同じ感じになりましたっ!」
ランコックが苦笑して言う
「そ、それはそうだが…」
グレイゼスが苦笑して言う
「シーナ君 その… 髪まで染まっちゃってるけど?それ 肌と違って …落ちないよ?」
シーナが衝撃を受けて言う
「えっ!?」

【 ART司令官室 】

ラミリツがデスクの前に立つと思う
(…よし、それじゃ ここからは 気を取り直して)
アースが言う
「既に報告書は読ませてもらったが その報告書には無い 昨日の あの後の報告を頼む」
ラミリツが思う
(あ… そっか 報告書は先に 目を通されているんだもんね?それじゃ…)
ラミリツが言う
「あの後は… 点検整備中のART2の様子と… 下手な訓練をしていたART1の様子を見せて その後は 司令塔を案内して… ARTの案内はそれで終わり マリアさんは時差を知らなかったみたいだから 今度は もう少し早い時間に来られたら アールスローンの街中を案内します って 言って置いた」
アースが言う
「お前の その言葉へ対する 反応は?」
ラミリツが言う
「うん 喜んでくれたよ?”楽しみにしてます”って?」
アースが言う
「そうか 分かった」
ラミリツが思う
(まぁね?昨日は本当にそれだけで 新たに分かった事なんかはなかったし… それより 今回の任務の報告を!)
ラミリツが言う
「それじゃ 改めて… 報告っ!」
アースが言う
「ART2の 今回の任務は 成功だ」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「…えっ!?いや?まだ 報告してないんだけどっ!?」
ラミリツが思う
(それなのに 先に ”成功だ” って… そりゃ)
ラミリツが言う
「マリアさんやそのウィザード様が ”こっち”まで遊びに来たりはしたけど…」
ラミリツが思う
(それで… ハブロス司令官に紹介したりとか?…って あれ?僕 マリアさんやウィザード様を ハブロス司令官へ紹介したっけ?…むしろ そのウィザード様の事やマリアさんの事は ハブロス司令官は 知ってた…?)
アースが言う
「ART2隊長 ラミリツ・エーメレス・攻長隊長 ご苦労だった 下がって良い」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「はぁあっ!?それだけっ!?」
アースが疑問して言う
「うん?何だ?他に何か 追加の報告でもあるのか?」
アースが報告書を見せる ラミリツが言う
「え?いや… それは 無いけど…」
ラミリツが思う
(ご苦労だった って… それだけ?それじゃ まるで…)
ラミリツが言う
「それって お疲れ様 みたいなものじゃない?」
アースが言う
「ああ、そうだな?そちらが良いというのなら そうと言っても構わないが?私は基本的に そちらは 挨拶の言葉として使用する事にしている 従って 任務の完了に関しては 命令を達成させた者へ 労をねぎらう意味を強調する そちらの言葉を用いている」
ラミリツが言う
「そうじゃなくてっ!」
ラミリツが思う
(そうじゃなくって 僕は… 良くやったな とか… Sランクだ とか… あっ!)
ラミリツが言う
「そうだよっ!それなら 達成ランクは!?」
アースが疑問して言う
「達成ランク?そちらは 国防軍の認識であって このARTでは使用していない 任務に対する評価は 成功か失敗の どちらかだ」
ラミリツが不満そうに言う
「だけど…っ ハブロス司令官だって 本当は達成ランクを 意識してるんじゃない!?言わないだけでさっ!?」
アースが言う
「そうだな?お前の言う通り 本心では 達成ランクを認識している」
ラミリツが言う
「だったら 教えて!?僕らのっ ART2の 今回の任務達成ランクは!?」
アースが言う
「そうか そうと言うのなら… この度のART2の 任務達成ランクは」
ラミリツがアースを見る アースがラミリツを見て言う
「Aランクだ」
ラミリツが驚いて言う
「えっ!?」
ラミリツが思う
(そんなっ!?)
アースが言う
「これで 満足か?」
ラミリツが言う
「何でっ!?どうして Sランクじゃないのっ!?」
ラミリツが思う
(与えられた任務は達成したっ!マリアさんと仲良くなったっ マリアさんのウィザード様とも仲良くなったと思うしっ レイ・アーク・フォライサーとコンタクトを取って… それこそ 一緒に戦って勝った!マリアさんだって守ったしっ ART2の皆はもちろん 隊長の僕もアールスローンへ戻って来たっ ついでに言っちゃえば あっち国の偉い人ともそれなりに友好は築いたと思うし…っ 支援作戦だって成功させたっ!それなら 当然っ!?)
ラミリツがアースを見る アースが言う
「Sランクでは なかった理由か?分からないのか?」
ラミリツが言う
「僕は与えられた任務は 全て成功させたしっ 達成ランクの低下になる事は 1つも…っ!」
ラミリツがハッとして思い出す

ラミリツが苦笑して言う
『任務達成ランクの 低下を確認…』
ラミリツが思う
《だね?エルム…》

ラミリツがエルムαを見る アースが報告書を見て言う
「お前は かの国を襲ったマシーナリーを破壊する際 任務の達成に携わる最重要事項を無視した 結果として マシーナリーの停止及び破壊が成功した事から 被害は免れたが そちらが失敗していれば 任務の成功は叶わなかった可能性と共に お前と最重要保護者 更にはその他 重要人物を巻き込んでの 最悪の事態を得る可能性すら有った」
ラミリツが視線を泳がせて言う
「それは… 確かにそうだけど…」
ラミリツが思う
(だけど それは… あの時は それしか方法が無くて マリアさんも マシーナリーを降ろしたって 逃げるつもりは無いって …それが分かったから 僕は…っ)
アースが言う
「…どうやら 分かっていない様だな?」
ラミリツが言う
「分かってるよ…っ だけど しょうがなかったんだ 他に方法が無かった マリアさんだって 逃げるつもりは無いんだって…っ だから…っ」
ラミリツが思う
(報告書には そこまでは書かなかったけどっ なら それさえ伝えれば!?)
アースが言う
「では 言っておくが そちらの際に マリア殿や彼女のウィザード殿が どうあったかという事は 達成ランクには関わっていない」
ラミリツが疑問して言う
「え?」
アースが言う
「お前は勘違いをしているようだが 国防軍の達成ランクと言うのは 言い換える所の どれだけ 仲間を守られたかと言う事だ」
ラミリツが言う
「は?仲間を?…それじゃ?」
アースが言う
「つまり 極端に言うのであれば 任務は成功であっても 達成ランクが最悪のFランクと言う事もあれば 逆に 任務は失敗であっても 達成ランクはSランクであると言う事も 有り得ると言う事だ」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「はぁあっ!?そ、そうだったのっ!?」
アースが言う
「そうだ 従って お前は プラズマレーザーを有する かのマシーナリーとの対戦作戦に置いて ART2隊長である お前自身の命を危険に晒したっ 結果として助かりはしたものの… それで1ランク低下の Aランクだ 分かったかっ!?ガキっ!」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「ぐぅっ… 折角 そう言われない様にって 頑張って来たのに…っ」
ラミリツが思う
(何だ… そうだったの?達成ランクって… つまり 仲間を守れって… ARTの…?)
ラミリツが気付いて言う
「それじゃ マリアさんたちは もうARTの仲間になったんだし これからは…?」
アースが言う
「そうだな?これからは 更に Sランクを取る事は難しくなるだろう …最も 仲間も使い様だ あのウィザードを使いこなせば お前であっても 彼らを含めたSランクを取られるだろう?期待しているぞ?ラミリツ隊長?」
ラミリツが苦笑して言う
「もう… 本当に 優しいんだか優しくないんだか 分かんないよね?ハブロス司令官って?」
アースが言う
「司令官だからな?」
ラミリツが軽く笑って言う
「だから それ… 理由になってないって?」
アースが言う
「では 報告が済んだのなら 下がって良い …ついでに お前は24時間休暇中だが 折角ARTへ来たと言うのなら 今日からART1へ入隊した そちらの隊員の訓練の様子でも見て置くと良いだろう」
ラミリツが言う
「うん 話は聞いたよ?僕の神経接合ユニットや マシーナリーを使っちゃったって?もう… ホント勝手なんだからさ?」
アースが言う
「そちらは私の指示ではないが その価値はあった」
ラミリツが言う
「ハブロス司令官に そこまで期待されてるって ちょっと 嫉妬しちゃうけど でも、相手は女性だもんね?その女性隊員に嫉妬してるなんて言ったら 僕の名誉が下がっちゃいそうだからさ?言わないけど?」
アースが言う
「装備に関しては ART2に… いや、お前に被害があったかもしれないが 許容範囲だろう?むしろ 今回は同じ銃火器を用いるART1の連中への被害が多く在るだろうが それも一時的なものだ 問題ない」
ラミリツが言う
「そうなんだ?まぁ 僕自身には被害あったけど… ART2の皆には 何も無かったからね?ハブロス司令官の言う通り 許容範囲って奴?」
アースが口角を上げる ラミリツが背を向けて言う
「それじゃ 様子を見に行ってみる それから 僕も今日は24時間休暇中だけど 訓練するつもりで来たから 出来たらART1の訓練に参加してみるし 彼女のその技術も… 何か ART2にも活用出来る事が無いか 探してみる じゃ…?」
アースが言う
「ああ …お前を見込んだ私の目に 狂いはなかったからな?」
ラミリツが驚き出口へ向かっていた足を止める アースが言う
「これからも 励めよ?ラミリツ・エーメレス・攻長 隊長?」
ラミリツが呆気に取られた状態から 喜びをこらえ 振り返って言う
「了解!司令官!」
アースが笑む ラミリツが笑顔で立ち去る

【 ART 通路 】

ラミリツが上機嫌で歩きながら思う
(ふふふ…っ 僕を見込んだ自分の目に 狂いはなかったって?それは 自分はやっぱ凄いだろ!って?自分には見る目があるだろう!って事?…だけど そのハブロス司令官に見込まれてる僕は 凄いって事!だから やっぱり ハブロス司令官は 僕を認めてくれてるって事!つまり もう…っ!)
ラミリツが言う
「相変わらず…!」
ラミリツが思う
(素直には 褒めて くれないんだよね?)
ラミリツが喜んで言う
「ハブロス司令官ってー!あはははっ!」
ラミリツの横をシーナが走り抜けて行く ラミリツが驚いて言う
「わあっ!?な、何!?今の…?」
ラミリツがシーナの後姿を見て思う
(あれは… 神経接合ユニット?けど あんな色は見た事が無いし 何より…っ)
ラミリツが言う
「彼女… 髪 ピンクだったよ!?」
ラミリツが思う
(あんな派手な髪色… 許可されてたんだ?)
ラミリツが首を傾げて言う
「まぁ… 国防軍でも政府でもないもんね?ARTは… だから」
ラミリツが思う
(ハブロス司令官が 許可さえすれば…)
ラミリツが首を傾げて言う
「許可… したのかなぁ?」
ラミリツがシーナの走り去った後を見る

【 ART第一訓練所 】

シーナが息を切らせつつ言う
「初出隊に 遅くなりっ 申し訳ありませんっ!…はぁ …はぁ」
グレイゼスが苦笑して思う
(あぁ… やっぱり 髪に付いた 蛍光塗料は落ちなかったかぁ… まぁ しょうがない)
グレイゼスがハイケルへ向いて言う
「ハイケル 彼女が さっき話した…」
ハイケルがシーナを見る シーナがハイケルを見て気マズそうに思う
(あぁ 最低… ART1隊長の… 元国防軍No1部隊 国防軍レギスト機動部隊の隊長にして 悪魔の兵士…っ そして あの ヴォール・アーヴァイン・防長閣下の養子でもある ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐に初めて顔を合わせるというのに…っ いくらハイケル少佐は中位富裕層だとは言っても こんな髪色で軍隊に出隊する隊員なんて 怒られる以前に…っ)
シーナが視線を変えると ART1隊員たちが呆気に取られてシーナを見て思っている
((ピ、ピンク…!?)) (頭 ピンクだ…!?) (しかも 蛍光っ!?) ((…そしてっ))
隊員たちが思わず息を飲んでハイケルを見る グレイゼスが苦笑して言う
「今日から 諸君ART1の機動隊員となった シーナ・ヘレン隊員だ 見ての通り…」
隊員たちがシーナを見て思う
((ピンク…っ)) (いや、そうじゃないだろう!?) (あぁっ そうだった!) ((ピンクはピンクだけど それ以上にっ!))
隊員たちがグレイゼスを見る グレイゼスが苦笑して言う
「我らARTに置いて 初めての女性機動隊員では有るが その実力は 彼女の元上官である私も保障をするし 我らARTの司令官 ハブロス司令官のお墨付きだ だから… 諸君も彼女を自分たちと同じ ART1の隊員として…」
グレイゼスが思う
(あぁ 女性の機動隊員だって事以前に 皆 ピンクだって思ってるよなぁ?あの顔は… それに)
グレイゼスがハイケルを見て言う
「…き、気兼ねなく 通常の… 隊員として…」
隊員たちが思う
((通常の… ピンク…))
グレイゼスが言う
「通常の隊員としてっ!同じ様に 接してくれて 構わないと… つまり その… ピ… いやっ!女性だからと言う 偏見は持たずにっ」
隊員たちが思う
((ピンク!?)) (ピンクって言おうとしたっ!?) (中佐も やっぱり 思ってる?) (女性だからの前に…) ((ピンクだってっ!?))
シーナが思う
(あぁ… 元直属の上官であった マスターグレイゼス中佐にまで気を使わせちゃって… こんな事なら 派手にキメるのはマシーナリーまでで 操縦者の私は 以前までの私と同じ様に 女性らしい女性を装っていれば…っ)
グレイゼスが苦笑して言う
「…まぁ そう言う訳だから 宜しくな?ART1の諸君?」
隊員たちがハッとして敬礼して言う
「「りょ、了解!中佐ぁー!」」
グレイゼスがハイケルへ向いて言う
「な!?ハイケルっ!?」
皆の視線がハイケルへ注目される ハイケルがシーナを見ていた状態からグレイゼスへ向いて言う
「了解」
隊員たちが転ぶ グレイゼスが苦笑して言う
「そ、そお?なら… 良かった …なっ!?シーナ君!?あいやぁっ シーナ隊員!?」
シーナがハッとして言う
「…は、はいっ!ありがとうごじゃっ あ、有難う御座いますっ!ハイケル少佐っ!」
ハイケルが言う
「問題ない」
隊員たちが顔を上げて言う
「も、問題ない…のか?」 「良いのか?あれ?」 「何の抵抗も問題も無いのか!?少佐は!?」
ハイケルが言う
「それで?シーナ隊員 お前のマシーナリーは?」
隊員たちが思う
((良いんだっ!?)) (女性でもっ!?) (いや、それ以上に ピンクでもっ!?)
シーナが思わずグレイゼスへ向く グレイゼスが言う
「あ… ああ!さっき ランコック整備長から 完成の連絡が入ったから ちゃんと運んでおいてくれって 頼んでおいたぜ?…な?」
グレイゼスが顔を向ける 皆がそちらへ向くと マシーナリーの足音と共に Mシーナが現れる 隊員たちが衝撃を受けて思う
(((ピンクーーっ!?)))
隊員Bが言う
「わー!すっげー カッコイイーっ!」
シーナが微笑して隊員Bを見る 隊員Bが続けて言う
「でもってー マシーナリーも ピンクだー!」
シーナと隊員たちが衝撃を受ける 隊員Aが苦笑して言う
「さ、流石 バイちゃん…」
隊員Iが苦笑して言う
「皆が口に出来なかった言葉を ハッキリと…」
ハイケルがグレイゼスへ向いて言う
「あれか?」
グレイゼスが言う
「ああ!カラーリングは ランコック整備長のシーナ隊員応援特注カラーだが あれは元ART2の最新改善仕様のマシーナリーだ スペックは現状の諸君ART1マシーナリーより0.4%の効率上昇仕様となっている …とは言っても データ上でも微量な数値だし そうとなればもちろん体感は無いだろうけどな?」
ハイケルが言う
「了解」
シーナが気付いて言う
「あ、あれ?中佐?あのマシーナリーは 中佐が動かしているのでは無いですよね?この距離では…」
グレイゼスが言う
「うん?ああ 俺が運んで来たんじゃない シーナ君のマシーナリーは…」
シェイムが現れて言う
「何故 この軟派なマシーナリーだけがっ 私であっても 遠隔操作が可能であるのかっ!?そちらの理由を お聞かせ頂けないですかねっ!?マスターグレイゼス中佐っ!?」
シーナが衝撃を受けてシェイムを見る ハイケルが疑問して言う
「軟派…?」
グレイゼスが言う
「ああ、それはもちろん」
シェイムがシーナを見て衝撃を受け言う
「なぁあっ!?何ですか?あのピンク頭はっ!?」
シーナが衝撃を受けて言う
「…ぐっ マスターシュレイゼス隊長にまで…っ」
シェイムが衝撃を受け怒って言う
「どういう意味ですっ そちらはっ!?大体 貴女はっ 女性でありながら機動隊員となりっ さらにはあの様な言動の上に 世界のために戦うARTの隊員でありながら その破廉恥な頭は何事ですかっ!?」
ハイケルが疑問して言う
「破廉恥?」
ハイケルがシーナの頭を見る シーナが羞恥にうつむいて思う
(もぉ…っ 最低…っ 何で 寄りに寄って 女子隊員たちの間でも 最低のマスターと名高い あの人が 私のマシーナリーを運んで…っ!?しかも ハイケル少佐が無言で了承してくれたというのに それを掘り起こすなんてっ)
グレイゼスが苦笑して言う
「そのマシーナリーは 某隊長の愛機だからな?ひょっとして そいつなら 使えないマスターと名高い マスターシュレイゼス殿でも 動かせるかと思ってさ?ちょっと 試してみたんだが?」
シェイムが衝撃を受け言う
「つ、使えないマスターとは…っ それは あの悪魔の台詞ではっ!?」
グレイゼスが笑いを隠す
「プクク…ッ」
ラミリツが現れ マシーナリーを見て衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?何 あの色っ!?僕の相棒だった あのマシーナリーが ピンクにっ!?」
シーナが衝撃を受けて振り向く ハイケルがラミリツを見て言う
「ラミリツ攻長 アレは お前のマシーナリーだったのか?」
ラミリツがやって来て言う
「うん… そうだったんだけどね?一緒に ウィザードたちの国へも行って 一緒に… それこそ命懸けで戦った相棒だったんだけど… もうすっかり 彼女の色に染められちゃったね?」
シーナが衝撃受け言う
「す、すみませ… いえ 申し訳ありません ラミリツ・エーメレス・攻長閣下…」
シーナが思う
(あぁ… そうだったんだ?あのマシーナリー… 神経接合ユニットに関しては 分かっていたけれど マシーナリーまで そうだったなんて… 流石に 申し訳ない… ラミリツ攻長が怒るのも 無理は…)
ラミリツが苦笑して言う
「けど 良いよ?何て言ったって ハブロス司令官の命令だからね?指定はされなかったと言っても 新しい仲間の為に 僕のマシーナリーやその他が 必要とされたんなら しょうがないよ 全部 君に譲ってあげる」
シーナが驚いた後 微笑して言う
「あ… 有難う御座います 攻長閣下…っ」
ラミリツが言う
「けど その代わり… シーナ隊員?」
シーナが疑問して言う
「は、はいっ!?何で御座いましょうか 攻長閣下!?」
ラミリツがシーナへ向いて言う
「その ”攻長閣下”って言うの やめてくんないっ!?仲間だろっ!?」
シーナが驚いて言う
「な、仲間…」
ラミリツが言う
「そ!同じ機動部隊の仲間なら 敬語も謙譲語もなし!役名は ARTのそちらを使用する事!そんなの 当然だろ!?ハブロス司令官のARTの仲間なら 言われなくても 分かれよ?普通!」
シーナが呆気に取られた後微笑して言う
「…は、はいっ 分かりました ラミリツ隊長!」
ラミリツが言う
「惜しい ちょっと 違うね?ここは 機動部隊なんだから 指示や命令に対する 了承の言葉は?」
シーナが言う
「了解!ラミリツ隊長っ!」
ラミリツが微笑して言う
「よし ”上出来だ”」
シーナが喜び笑む 隊員たちが顔を見合わせた後 苦笑して頷き合う グレイゼスが苦笑して言う
「なるほど?流石は…」
グレイゼスが思う
(あのハブロス司令官に 一番重要な任務を任された隊長だ 隊員たちをまとめる力も 率いる力も持ち合わせている そして それは…)
ハイケルが疑問して言う
「…そうか なら良いんだ」
グレイゼスが思う
(あいつには 理解が追い付かない… それこそ 本当の人間だけの力 …なのかもしれないな?)
グレイゼスが一度表情を悲しめさせた後 気を取り直して言う
「よしっ!それじゃ 後は任せたぜ!?ART1隊長 ハイケル少佐!」
皆がハイケルを見る ハイケルが言う
「了解」
グレイゼスが微笑する ハイケルが隊員たちへ向いて言う
「では これよりART1の訓練を開始する 総員 マシーナリーを起動させろ」
隊員たちが言う
「「了解!少佐ぁーっ!」」
隊員たちがマシーナリーへ向かう ハイケルがシーナを見る シーナが頷き言う
「了解!少佐ぁー!」
シーナがMシーナへ向かう ラミリツが言う
「それじゃ 僕も マシーナリーを持って来ようかな?最新のマシーナリーに 1つ前の神経接合ユニットで アンタらとじゃ ちょっとハンデになりそうだけど」
ハイケルが言う
「ART1のマシーナリーも 我々がヴァンパイアたちの国へ向かっていた間に改善が成され 現在は そちらのデータを収集している所だ 従って 訓練内容もそちらをメインとしている そうとなれば お前のそちらの状態であっても 差ほど問題は無いだろう」
ラミリツが言う
「そ?それなら 一応24時間休暇中だし 軽くって事で 今日はアンタのやり方に従うから 宜しく?ハイケル隊長」
ハイケルが言う
「了解 ラミリツ隊長」
ラミリツが苦笑してから立ち去る グレイゼスが微笑してから言う
「それじゃ 俺は 司令塔へ戻るから 何かあったら連絡してくれよな?ハイケル」
ハイケルが言う
「了解 …それはそうと グレイゼス?」
グレイゼスが向かおうとしていた足を止めて言う
「うん?何だ?ハイケル?」
ハイケルがグレイゼスへ向いて言う
「今、ここで言うのも 場違いでは有るのだが…」
グレイゼスが向き直って言う
「どうした?何か?」
ハイケルが言う
「やはり 俺には… 子供の名前は考えられない」
グレイゼスが驚く ハイケルが言う
「一晩考えてみたのだが どうしても 記憶にある人物とその名前が出てくるばかりだ 私には 名前を造作すると言う機能は 存在しないらしい …悪かったな」
グレイゼスが呆気に取られた状態から苦笑し 微笑して言う
「いやぁ そんなのは 当然だ 別に 悪魔の兵士に限った事じゃない 誰だって まったく新しい名前を考えるって事は 難しい だから それで良いんだよ ハイケル?」
ハイケルが言う
「…それで良いとは?」
グレイゼスが言う
「つまり それら お前の知る名前の中で 一番 良いと思う名前… あの子に 似合うと思う名前を 選んでくれって事だ」
ハイケルが言う
「一番良い名前… 似合うと思う名前…」
ハイケルが考える グレイゼスが言う
「そう言う事!だから~ そう 深く考えずにさ?…難なら もっと簡単に!お前が 一番好きな… あ、いや」
グレイゼスが思う
(ハイケルは悪魔の兵士だ 悪魔の兵士には 己が生き伸びる事への本能以外の欲が無い… つまり 子孫の繁栄を司る 性欲が無い …だからこそ ハイケルには恋愛感情が無く そうとなれば もちろん ”好き”と言う感情が無い だから…)
グレイゼスが言う
「お前が その… 意識に留めている 名前だ!これなら 決められないか?お前の知っている人や物の 名前でさ?」
ハイケルが言う
「意識に留めている名前… それは… とても多過ぎるのだが?」
ハイケルが隊員たちを見る グレイゼスが衝撃を受けて言う
「あっ!いやっ!?そ、それは… そうだなっ?それじゃ その…っ」
グレイゼスが思う
(同時に 悪魔の兵士は 同じ目的の下に 戦う兵士だ …だから 己と同じ兵士 仲間への思いが強い そんなハイケルに …この聞き方じゃ 間違ってるよな?えーと だから…?)
グレイゼスが気付いて言う
「だから その… あ、それなら!女性に限定してみよう!?これなら!」
ハイケルが言う
「女性に限定?そうか では…」
グレイゼスが苦笑して思う
(ってなったら… やっぱり シーナ隊員になっちゃうか?他に 女性で ハイケルと共に戦う… 女性兵士は 居ないもんな?あぁ こうなるのだったら… それこそ 昨日の内に ここまでを言って置くべきだった)
グレイゼスがシーナを見て言う
「…もう 遅いかぁ?」
グレイゼスがハイケルを見る ハイケルが間を置いて言う
「それなら 1人 意識に留めている 名前が有るのだが」
グレイゼスが言う
「ああ、それじゃ …それで」
グレイゼスが思う
(良いかなぁ?”シーナ”で…?)
グレイゼスが言う
「後で 本人にも 了承を頂いて置くか…?」
グレイゼスが苦笑していると ハイケルがグレイゼスへ向き直って言う
「その名前は ”アリシア” だ」
グレイゼスが驚く ハイケルが言う
「それで良いのか?グレイゼス?」
グレイゼスが呆気に取られた状態から言う
「…あ …ああっ そ、そうだな?アリシアお嬢様のお名前 か… それは もちろん!素晴らしいお名前だ 拝借するのは 恐れ多く有るようにも思うが …そうだな?ご本人は こちらには居られないし それなら?」
ハイケルが言う
「では その名前で 決定か?お前の 娘の名前は」
グレイゼスが微笑して言う
「ああ、俺の… 俺とマリの娘の名前は マーガレット・アリシア・マリーニ・アーミレイテスだ」
ハイケルが言う
「了解」
グレイゼスが微笑して頷いて言う
「うん… 了解!ありがとな?ハイケル」
ハイケルが言う
「仲間なら当然だ …以上だ」
ハイケルが隊員たちの下へ向かう グレイゼスが微笑してから頷いて立ち去る

【 ART 通路 】

グレイゼスが携帯で通話していて言う
「…って事で 俺たちの娘の名前は決まったよ マリ?それで良いよな?」
携帯からマリの声が聞こえる
『うん!とっても素敵なお名前を 考えてもらえたね!?グレイ君!』
グレイゼスが言う
「うん まさか ハイケルが アリシアお嬢様のお名前を 意識に留めていたと言うのには驚いたが… アリシアお嬢様は レーベット大佐のご息女様だからな?当然と言えば そうなのかもしれない… …そうだなぁ もう10年以上も前の事だったな 何だか 昨日の事の様だよ」
マリが言う
『うふふっ そうね?だけど そうだとしたら この子はまだ 産まれていないと言う事になっちゃうし?グレイ君と私も まだ再会はしていないって事になっちゃう』
グレイゼスが言う
「ああ、そっか?そうなっちゃうよな?それじゃ やっぱり 俺たちは 間違いなく それだけの時間を 一緒に過ごして来たんだ」
マリが言う
『そうよ?グレイ君?それに グレイ君はARTで大活躍しているのでしょう?うふふっ!』
グレイゼスが軽く笑って言う
「俺がと言うか… 俺たちはどちらかと言えば 裏方だからなぁ?ARTで活躍といえば やっぱり 機動部隊のハイケルやラミリツ攻長と言う事になるんだろうけど… けど、これからは 裏方から表舞台に立った 俺たちの元同僚 シーナ隊員が頑張ってくれるかな?」
マリが言う
『シーナ隊員?なんだか ちょっと女性っぽいお名前だけど…?』
グレイゼスが言う
「ああ、シーナ隊員は 女性の隊員だよ とっても強気で熱意のある隊員なんだ 何たって あのハブロス司令官に 面と向かって 最低の司令官だ!って 言ったらしいからな?プクク…」
マリが驚いて言う
『えぇ!?高位富裕層のハブロス様に そんな言葉を!?』
グレイゼスが言う
「驚きだろう?しかし そのハブロス様も 負けはしなくてさ?超高位富裕層ハブロス家の当主として ARTの司令官として… いや?もしかしたら 最高のアニキ様としての意地とプライドか?見事 シーナ君に その言葉を 本心から 訂正させて見せたんだよ」
マリが呆気に取られた後 軽く笑って言う
『本心から…?ふふっ 何だか凄いのね?富裕層や上官としての権力ではなくって って事でしょ?それじゃ… グレイ君は 本心では どう思っているの?グレイ君たちの ARTの司令官様は?』
グレイゼスが言う
「うん?俺の本心?ああ、それは もちろん… 俺たちARTの司令官様は… 最高 かな?」
グレイゼスが司令塔へ到着して隊員たちを見て微笑する

司令塔 内

オペ子Aが言う
「ART第二格納庫 ART2-01マシーナリーの起動を確認 同時に 操縦者 ラミリツ・エーメレス・攻長隊長を 確認」
ラミリツの声が聞こえる
『こちらART2隊長 ART司令塔 応答を』
オペ子Aが言う
「こちらART司令塔 ART2マシーナリー隊長機の起動を確認しています ラミリツ隊長」
ラミリツの声が聞こえる
『了解 それじゃ ART1の第一訓練所へ向かいたいから 連絡通路を開いてもらいたいんだけど?』
オペ子Aが言う
「了解しました 只今 ART1隊長へ そちらの了解を確認致しますので 少々お待ち下さい」
オペ子Aが顔を向けて言う
「シーナ そっちの… …あっ」
オペ子Aがシーナの空席を見て呆気に取られる

司令塔 入り口

グレイゼスが携帯をしまいながら苦笑して言う
「…と、そうだった ART1の銃火器サポート兼ART1担当オペレーターのシーナ君が居なくなっちゃったら こっちはどうしたら良いんですか?我らARTの最高の司令官殿?」
グレイゼスが思う
(まぁ… ART1はハイケルの機動部隊だからな?それなら 俺が国防軍へ戻った あの時と同じで また俺が…)
グレイゼスの後ろからラキンゼスが言う
「出隊時間に遅れまして 申し訳ありません!マーガレット中佐!」
グレイゼスが驚いて振り返ると言う
「マスターラキンゼス大尉っ!?…あ、そっか?お帰り えっと…?」
グレイゼスが思う
(…あれ?とは言っても?)
グレイゼスが言う
「マスターラキンゼス?」
ラキンゼスが笑顔を見せて言う
「いえっ!自分は 今日から ライム大尉として ART司令塔 ART1銃火器サポート兼ART1担当オペレーターを命じられました!」
グレイゼスが驚いて言う
「あ!そうなのか!?それじゃ… つまり シーナ君の交代として?」
ラキンゼスが言う
「はいっ!その様にと ハブロス司令官より 命令を受けました!しかし 業務内容に関しては 司令塔主任のマスターグレイゼス中佐から 直接指示を受ける様にと… ですので どうか また 宜しくお願いします!中佐!」
グレイゼスが言う
「そっか なるほどな?元国防軍レギスト駐屯地情報部のマスターラキンゼス大尉ことライム大尉なら ART1の銃火器サポートはもちろん 俺と一緒にART1のあいつらを見てやれるだろうって?…まったく どこまでもキメてくれるお方だなぁ?我らARTの最高の司令官殿は?」
ラキンゼスが疑問して言う
「は?我らARTの最高の司令官殿?…つまり ハブロス司令官の事ですか?」
グレイゼスが言う
「まぁ そう言う事 …けど ご本人には秘密だぜ?マスター… いや?ライム大尉?」
ラキンゼスが疑問した状態から微笑して言う
「はい 何か分かりませんが 取りあえず そう言う事で 了解です!マーガレット中佐!」
グレイゼスが言う
「うん?あれ?…そうか?ラキンゼス大尉なら ピンと来ると思ったんだけどな?」
ラキンゼスが苦笑して言う
「あ、そうでしたか?すみません 自分は元々それほど直感のある奴ではなかったみたいで ラキンゼスが居なくなってからというもの… その?イマイチそう言った 直感的な理解が出来なくなりました やっぱ 常人って言うのは… ちょっと寂しいものですね?中佐?」
グレイゼスが一瞬呆気にとられた後苦笑して言う
「そうか… まぁ こっちは 生憎 その常人の状態と言うのは 体感した事は無いんだが…」
ラキンゼスが衝撃を受けて言う
「ああっ!そっかっ!すみませんっ 自分は 根本的な所が馬鹿なもので」
グレイゼスが衝撃を受ける ラキンゼスが苦笑して言う
「弟のサキシュにも よく そこを突っ込まれます あははは…っ」
グレイゼスが言う
「そ、そうなの?まぁ… 良いんじゃないか?別に それ程悪い事でもないからな?愛嬌… みたいなものでさ?その… 悪く言えば 天然と言うか…」
ラキンゼスが言う
「はい!そうですね!」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「う、受け入れてる…」
グレイゼスが思う
(単純と言うか 素直と言うか… まぁ そんな所が)
グレイゼスが言う
「流石は 元マスターの仲間だよ 例え ナノマシーンを失ったとは言っても 俺はやっぱり お前を歓迎する こちらこそ これからも 宜しくな?ライム大尉?」
ラキンゼスが言う
「はいっ!有難う御座います!マーガレット中佐!」
グレイゼスが言う
「ああ、けど そこは… ”マーガレット中佐”は もう やめたんだ」
ラキンゼスが言う
「え?」
グレイゼスが言う
「その名前は 娘に譲ったんでね?今は 正真正銘 マスターグレイゼスを名乗ってる だから ここでの呼び名も そちらで頼むよ?ライム大尉?」
ラキンゼスが言う
「了解です!マーガレット中佐!」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「あ、いや?だから…っ」
ラキンゼスが気付いて言う
「あ… そっか?失礼しました マスターグレイゼス中佐!」
グレイゼスが苦笑して言う
「そうそう そっちで…」
グレイゼスが思う
(あぁ… 何か ちょっと 大丈夫かな?その… ちょっと と言うか?ナノマシーン除去の副作用か?大分 抜けちゃっているみたいだけど…?まぁ そうは言っても?)
グレイゼスが言う
「それじゃ さっそくだが ラキンゼス大尉の… あっ いや ライム大尉の席は そこの…」
グレイゼスがシーナの席を示す

【 ART 第一訓練所 】

Mハイケルが脱力して コックピット内のハイケルがモニターへ向いて言う
「こちらART1隊長 ART2隊長 応答を」
モニターにラミリツが映って言う
『こちらART2隊長!今忙しいんだけどっ 何っ!?』
ハイケルが疑問して言う
「うん?忙しいとは?司令塔へは ART2隊長の 我々の訓練参加への了解を 送っておいたが 何か問題か?」
第一訓練所の壁が打撃される ハイケルが聞こえた音に反応して顔を上げる ART1マシーナリーたちが振り返る中 第一訓練所の壁にセイバーの光が突き抜けてから マシーナリーの足に壁が蹴り破られる ハイケルが驚いて言う
「なっ!?」
ART1マシーナリーたちが驚き 隊員Aが言う
「な、何だっ!?」
隊員Bが言う
「襲撃ーっ!?」
皆の視線の先 壁の中から Mラミリツが現れて言う
「もうっ 何で 僕が こんな作業まで手伝わされる訳っ!?」
隊員Iが呆気に取られて言う
「ラ、ラミリツ隊長?」
第一訓練所内にラキンゼスの声が聞こえる
『あぁ すんませんね?ART2隊長 どうしても 今は第二訓練所から第一訓練所への 直通通路が今朝の… なんだか で?壊れてしまったみたいで そちらを直す位なら むしろ 新しい通路を開通してしまった方が 早いんじゃないかと思いましてね?』
ハイケルが反応して言う
「…その声は マスターラキンゼス大尉?無事だったのか?」
ラキンゼスの声が聞こえる
『あ!ハイケル少佐!お疲れ様です!お陰さまで 無事 ARTへ戻って参りました!』
隊員たちが喜びの表情を見せる ハイケルが微笑して言う
「そうか 了解」
ラキンゼスが言う
『それから 自分はもうマスターではなくなりましたので これからは ライム大尉として ハイケル少佐の率いるART1のサポートになりました!通信上で失礼致しますが!ハイケル少佐 並びに ART1隊員諸君 弟のサキシュ共々 これからも よろしくなっ!』
隊員Aが微笑してモニターを見る モニターに映っている隊員Bが微笑する ART1マシーナリーたちが言う
「「了解!ライム大尉ー!」」
ハイケルが微笑して頷く シーナが微笑する モニターにラキンゼスが映って言う
『シーナ隊員 そう言う訳だから 君の元居た場所に関しては 安心して俺に… なぁあっ!?』
シーナがハッとして言う
「ああっ!そのっ こ、この ピンクはっ!気にしないで下さいっ マスターラキンゼス大尉っ!それから そちらのっ ART1のサポートは 宜しくお願いしますっ!」
ラキンゼスが言う
『あ、ああ… 了解 こっちは 任せてくれ だから その… そっちも 宜しくな?特にその ピンク …じゃなくてっ 弟のサキシュを…』
シーナが衝撃を受ける ハイケルがモニターに映っているラキンゼスへ言う
「それで ライム大尉 その弟のサキシュ隊員が 出隊していないのだが?何か問題か?」
ラキンゼスが言う
『はい、すみません 兄として 弟の遅刻をお詫びします』
ハイケルが言う
「遅刻?では…?」
隊員Bが言う
「えー?けど 少佐ぁー?俺さっきメンバーボードで サッちゃんの名前が点灯しているのを 確認したでありますー?少佐ぁー?」
ハイケルが別モニターに映る隊員Bを見てから 正面のモニターへ言う
「…と言う事なのだが?」
ラキンゼスが言う
『はい、出隊はしているのですが…』
ハイケルが言う
「そうか では?我々ART1の隊員 サキシュ隊員は 今 何処に?」
ラキンゼスが言う
『はい、その弟は今 ART3の格納庫に居りまして そして…』
隊員たちが言う
「「えっ!?」」
ハイケルが疑問して言う
「サキシュ隊員が ART3の格納庫に?」
ラキンゼスが言う
『その弟から 伝達です… 真に不甲斐なく 申し訳ありません!少佐!及び…』

【 ART3 監視塔 】

アースが言う
「ほう…?」
監視塔の先 マシーナリーに乗り込んでいる隊員Cが青ざめて言う 監視塔内のスピーカーから隊員Cの声が聞こえる
『真に不甲斐なく 申し訳ありませんっ!司令官ーっ!』


続く
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