漫画の様にスラスラ読める小説をめざしたらネームになった物語の1つ。アールスローン戦記Ⅱ

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20.5章

アールスローン戦記Ⅱ 『マスターグレイゼス』の選択

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【 喫茶店 マリーシア 】

アースが言う
「アールスローンの …いや、この世界の防衛の為にも 我々は一刻も早く ARTの修復を行なわなければならない 従って 残念ながら 如何にお前が本心から 私を誘ってくれようとも 現状では 私はハブロス家の当主の座を失う訳には行かない 従って マスターグレイゼス 折角の誘いだったが 私は明日の早朝にでも この私が ハブロス家へ戻る為の そちらの作戦を決行させてもらう」
グレイゼスが言う
「そうですね その… 決して 自分は誘っている訳ではありませんが… ちなみに そちらの作戦とは?」
アースが言う
「そちらは まだ 考えていない」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
アースが言う
「作戦構築は これから …だ」
グレイゼスが慌てて言う
「あ、あのっ ハブロス司令官っ!?そちらは… ちょっと問題なのではっ!?せめて…っ!?」
アースが言う
「問題ではあるが その私はと言えば 元は内密に敵陣視察をするつもりが 結果として あちらの国内にて不本意に連行された女性を 奪還する作戦を派手に決行する事となり 挙句 最も会いたくなかった メリ・アーク・フォライサーから 間一髪の所で逃れ アールスローンへ飛び戻った所 以前にも作戦を共にした レイ・アーク・フォライサー殿を 再び彼らの国まで 送り届けなければならないが為に 帝国の頂から飛び降りる作戦を決行し たどり着いた先では あちらのお国の情報を仕入れつつ 不本意な待ち時間を過ごした後 漸く アールスローンへ飛び戻って来た所 今度はこちらの国内に置いても 内密に行動する必要に迫られた上で この店まで辿り着き 現在お前との密会を成功させた と言った所だ」
グレイゼスが思う
(大丈夫だ この人なら もう 何があっても…っ)
グレイゼスが言う
「それは 大変お疲れ様で… では…?」
アースが言う
「そう言う事だ 唯でさえ 非戦闘員の私が 2日間も外を歩き続けると言う事も然る事ながら これ程にハードな内容の敵陣視察に続く 国内行動となろうとは ここまで来ると流石に これ以上の任務進行は難しいと 言わざるを得ない」
グレイゼスが思う
(それは素直に 疲れているからと 言えば良いんじゃ…)
グレイゼスが言う
「分かりました では 非戦闘員とは言え それ程の任務をこなされるハブロス司令官ではありますが …作戦はこれから 構築するにしても やはり ハブロス家へ戻ると言う そちらの作戦は 決行すると言う事ですよね?」
アースが不満げに言う
「私と言う 金蔓を逃す訳には行かないと言うのが 本心だろう?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「で、ですから そちらは誤解ですと…っ」
アースが苦笑して言う
「フッ… 冗談だ私を仲間だと言ってくれた お前の魂に嘘は無かった …それに そもそも ARTを任せたほどの そのお前の事は 私は予てより信用を置いている」
グレイゼスが言う
「有難う御座います… …しかし それならそうと どうか これからは もう少し 自分への負担を… これ以上 自分へは…」
アースが言う
「その様な訳で 明日の作戦には その お前にも 手伝ってもらうからな?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「…って?…はいぃいっ!?」
アースが言う
「こちらへ伺ったのは そちらの話を お前へ伝える為だった ARTの襲撃に関する報告を聞いたのは そのついでだ」
グレイゼスが慌てて言う
「そっちが ついで でしたかっ!?」
グレイゼスが思う
(俺の2兆4千億の悩みは ついで のレベルだったと…っ!?)
グレイゼスが苦笑して言う
「…とは言え それは確かに?そちらを捻出する事が出来る ハブロス家の問題に比べれば…?」
アースがグレイゼスを見て言う
「では 明日の朝は… お前は ハイケル少佐の迎えに来たとでも言って ハブロス家へ向ってくれ 私も そちらへ間に合うよう 向うつもりだ」
グレイゼスがハッとして 慌てて言う
「え!?…って 自分は まだっ そちらの作戦へ!?その依頼を受けるとは言っていませんが!?」
アースが言う
「では 依頼を受けろ マスターグレイゼス 命令だ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「で、ですから…っ!?」
アースが言う
「私と言う金蔓が居なくなっては お前も困るだろう?この作戦はお前たちの為でもある そうでなければ 私は… ARTの活動などは さっさと止めて 最下層のバンドメンバーにでもなった方が…」
グレイゼスが慌てて言う
「そっちが本心ですよねっ!?」
アースが伊達眼鏡を手に言う
「では その様な所だ お前が来なければ 作戦は行われず それで終わりだ」
グレイゼスが衝撃を受けて思う
(強制参加を越える 脅迫参加… 普段の悪魔にも増した この悪魔様は…っ)
アースが伊達眼鏡を掛け 帽子を被って歩き始める グレイゼスがハッとして言う
「あ、あの…っ?それはそうと ハブロス司令官っ!?」
アースが立ち止まって言う
「何だ?まだ何かあると言うのなら …詳細なら明日だ まだ作戦内容は 考えていないと 言っただろう?」
グレイゼスが言う
「はい… それはもう仕方がありません そちらはご協力しますが …と言うか 自分からの返答を聞くつもりも無かったみたいですが …そのハブロス司令官は これから どちらへ?」
アースが横目にグレイゼスを見る グレイゼスが言う
「ハブロス家や公へ ご自身の帰還を隠し 変装してこの店へ… 自分へ直接依頼を持って来たと言う事は つまり ハブロス司令官は 今は ハブロス家へ戻られない訳ですよね?もしくは 連絡を取る事も…?だとしたら… それに どちらかの宿泊施設へ 泊まるとしても?」
アースが言う
「ART本部へ向うつもりだ」
グレイゼスが驚いて言う
「え?いえ…っ!?ARTはっ!?ART本部は壊滅してしまったと…っ それにっ!?」
アースが言う
「現時刻は就業時間をとっくに越えてはいるが 警備のエルム少佐へ事情を説明すれば 何とか入られるだろう?」
グレイゼスが言う
「そちらは 理由が理由と在れば 可能かもしれません …しかし 例えそれで 入る事が叶ったとして 現状のART本部は 全システムを凍結セキュリティ状態にしているので… どちらのシステムも使えませんよ?」
アースが言う
「それでも 水ぐらいは出るだろう?…とは言え 扉の類が開かないとなれば そちらは問題だが …そうと言う事なら 仕方が無い 今度は帝国へでも行くさ …お前も今日は大変だったな お疲れ マスターグレイゼス中佐」
アースが歩みを再開する グレイゼスが思う
(お前も今日は… いや 確かに大変では有った けど、その俺は?…もう大変では無くなっている それは ハブロス司令官が戻って来てくれたから …そのハブロス司令官が 例え あのハブロス家へ戻られないかもしれないと その可能性は有るにせよ 俺は… 少なくとも俺は 大丈夫だと思える… その安心感がある …だけど そのハブロス司令官は?ART本部へ?もしくは帝国へ?国外から 苦労して 逃げ帰って来た… あのハブロス司令官が?作戦も考えられない程 疲弊していると言うのに?…良いのか?このまま行かせて…っ!?)
グレイゼスが言う
「あ、あのっ!?」
アースが店のドアへ手を掛けた状態でグレイゼスへ向く グレイゼスが言う
「でしたら… そうです!?ご友人の!?どなたか 信頼の置かれる高位富裕層の お知り合いのお屋敷へでも!?」
アースが言う
「生憎 そちらの高位富裕層の繋がりは 権力と言う名の 信頼こそが全てだ その権力が失われる可能性の有る 今の私では 向かう事は出来ないな?」
グレイゼスが慌てて言う
「で、では…っ …あっ そうです!?ラミリツ隊長のっ!?メイリス家ならっ!?」
アースが言う
「確かに あいつであれば 高位富裕層に置いて 唯一の例外と言えるが そのメイリス家は 政府の管轄だ 当人は兎も角 その使いの者までは 信用が出来ない」
グレイゼスが困って言う
「で、では…!?」
アースが苦笑して言う
「心配するな 帝国も… あるのは機械ばかりだが 居心地はそれ程 悪くは無い…」
アースがドアを開ける グレイゼスがハッとすると アースが出て行こうとするその後ろに 光の羽根が舞い散る グレイゼスが息を飲むと慌てて言う
「でしたらっ!分かりましたっ!…俺の部屋へ!」
アースが反応して店内を振り返る グレイゼスがアースの腕を掴んで言う
「せ、狭い 庶民の部屋ですが…っ それでも 宜しければ!?少なくとも… 今のARTや 石と機械だけの帝国よりは …居心地は良い筈ですよ?」
グレイゼスが苦笑してアースを見る アースが呆気に取られた状態から苦笑して言う
「…本気か?マスターグレイゼス お前がそうと言うのなら 私は助かるが… しかし 本当に良いのか?」
グレイゼスに腕を引かれ アースが店内へ戻る グレイゼスが言う
「はい 構いません… …良いよな?マリ?」
グレイゼスがマリを振り返る マリがマーガレットを腕に微笑して言う
「私はもちろん?ハブロス様には 沢山お世話になっているのだし マーガレットにも沢山 出産お祝いを頂いたのだし?その出産の日にだって…ね?」
グレイゼスがハッとして思う
(そ、そうだった…)
アースが言う
「そちらで恩を着せたつもりは 無かったのだが?」
グレイゼスが言う
「しかし 頂いた恩には報いるのが当然ですよ …では このまま店内で 待っていて下さい すぐに終わりますので?」
アースが言う
「そうか… では すまないが 世話になる」
グレイゼスが微笑した後 マリへ向く マリが微笑して頷く

店の明かりが消され 店のドアから グレイゼスとマリとアースが出て グレイゼスが鍵を閉めると 3人が立ち去る

車内

グレイゼスが運転しながら苦笑して思う
(あぁ… まるで 夢でも見ているみたいだよな…?俺の… この オンボロ愛車の 後部座席に… 超高位富裕層ハブロス家のご当主様が 座られる日が来るとは…)
グレイゼスが苦笑しつつ言う
「あ、あの… すみません 庶民の… それも汚い車に お乗せをして…」
アースが気付くと言う
「いや?この車であるなら カモフラージュとしても 程良いだろう?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「そ… そうですね…?」
マリが含み笑いをしている グレイゼスがマリの様子に苦笑する

駐車場

グレイゼスの車が駐車され グレイゼスとマリとアースが降りて道を行く

グレイゼスの部屋

グレイゼスがドアを開けると マリが入り アースへ言う
「散らかっていて 申し訳ありませんが どうぞ お上がり下さい」
アースが言う
「有難う」
マリとアースが部屋へ入って行く グレイゼスがその様子に微笑してドアの鍵を掛ける

マリが小走りに進みながら言う
「これから支度をするので 遅くなりますが 急いで お夕食をご用意致しますので」
アースが言う
「いや 折角だが そちらは結構だ」
マリがエプロンを付ける手を止めて言う
「…え?」
グレイゼスがやって来て疑問して言う
「…あ、えっと…?庶民の食事で 口には合わないかもしれませんが… 決して 食べられない程では 無いと思いますよ?それに… 昼食は食べないにしても いつも夕食は食べていると?」
グレイゼスが思う
(肉体的にハードなスケジュールをこなして アールスローンへ戻って来たばかりで… 変装して隠れて来たと言う事は 当然 何も食べていない筈だよな?…それなら?)
グレイゼスが言う
「どうぞ?ご遠慮無く?…お腹空いてますよね?」
アースが言う
「確かに 空腹感はあるのかもしれないが それよりも 今は とても眠い… 店で お前を待っていた間も あのコーヒーが無ければ 眠っていたかもしれない」
グレイゼスが苦笑して言う
「あ… なるほど?それは… すみませんでした 大分 お待たせを…?」
アースが言う
「いや、お前がハブロス家へ ハイケル少佐を連れて向ってくれたと言う事は 明日の作戦を立てる上に置いても 良い材料となった 問題ない」
グレイゼスが言う
「そうですか… それなら…?」
グレイゼスが思う
(なら… 遠慮していると言う事では無くて 本当に…?)
アースが言う
「…それはそうと」
グレイゼスが反応して言う
「はい?」
アースが言う
「出来れば 浴室を借りたいのだが?」
グレイゼスが気付いて言う
「…あ、はい!構いませんよ?それなら…」

浴室

グレイゼスが浴槽のお湯を抜く アースが周囲を見て疑問する グレイゼスがアースに気付き言う
「すぐに用意しますんで 少しだけ待っていて下さい」
アースが閃くと言う
「マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが疑問して言う
「はい?ハブロス司令官」
アースが言う
「1つ教えてもらいたいのだが」
グレイゼスが言う
「はい 何でしょう?」
アースが言う
「この部屋は 何だ?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「は?えっと…?この部屋は… と言いますと?」
アースが言う
「レイ・アーク・フォライサー殿の… いや、マリア殿の自宅に置いても 同じものを目にしたのだが …この部屋の役割は?一体何の為に在る?」
グレイゼスが呆れて言う
「何の為にって…」
グレイゼスが思う
(周囲はタイル張りで… 浴槽が有ってシャワーがある… これだけでも 間違う筈もない 誰がどう見ても?)
グレイゼスが言う
「…あの これこそ ご所望の 浴室ですが?」
アースが衝撃を受けて言う
「何っ!?…そうだったのか?ここが…?」
アースが周囲を見る グレイゼスが呆れて言う
「…えっと?ちなみに… ハブロス司令官は?」
アースが疑問する グレイゼスが言う
「そちらのマリア殿のご自宅や この場所で この部屋を見て …何の役割を持った 何の部屋だと思ったんです?」
アースが言う
「そうだな 私はてっきり… 掃除用具か何かを 洗う部屋かと?」
グレイゼスが衝撃を受け思う
(流石は 高位富裕層 …そんな部屋が 庶民の家や 増してアパートの部屋にあるものかとっ!?)
グレイゼスが言う
「庶民の浴室はっ これくらいが普通ですっ!」
アースが言う
「そうだったのか…」
グレイゼスが言う
「そうですっ そして 高位富裕層のお方とは異なりっ 庶民は こうして自分の手で 浴槽の水を抜いで 自分の手で洗うのです!」
グレイゼスが思う
(ああ そうだよな!?俺も頭では分かっていた筈だ 高位富裕層なら当然…っ!)
アースが言う
「そうなのか… だが そうだな?自分の手で水を抜いで 自分の手で洗うと言うのは そこまでは想像が付いていたのだが…?」
グレイゼスが思う
(分かっていた…?そうなのか… まぁ それも そうかもしれない そのハブロス司令官の ご自宅の浴槽を洗っているのも きっと 俺の様な…っ)
浴槽の水が抜け切る アースが首を傾げて独り言のように言う
「抜いてから 洗うのなら そちらの時間のロスを減らす為にも 先に抜いて置けば良い物を…?」
グレイゼスが言う
「先に抜かないのが庶民ですっ その理由は… 直前に抜いた方が 洗剤を泡立てる為の 水を掛けるひと手間も無くなりますしっ それに…っ!」
アースが言う
「うん?いや、待ってくれ それよりも 1つ重要な質問がある もしやと思うのだが 今 お前が洗っている そちらが浴槽なのか?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「そう来ましたかっ!?ここが浴室なら お湯を溜められるであろう これが紛れも無く 浴槽ですよっ!?ハブロス司令官!?」
アースが言う
「…そうなのか?しかし そちらが浴槽ならば… その大きさでは 腕がぶつからないか?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「ぶつかりますねっ!?ぶつかりますともっ!?それを ぶつけない様に入るのが 庶民ですっ!」
アースが言う
「そうか なるほど… そちらの技は興味深いな…」
グレイゼスが浴槽を洗いながら思う
(あぁ… もうっ…)
グレイゼスが言う
「…それを言われるのでしたら むしろ 自分は そちらの技を用いない浴槽の方 が興味深いですが…っ!?…いえっ 良いです!それよりも… こうして 庶民は 自分の手で自分の入る浴槽を 自分で綺麗に洗ったらですね?」
アースが周囲を見た後壁を見上げて言う
「自分の手で自分の入る浴槽を綺麗に洗ったのなら その自分の手で浴室の壁は綺麗に洗わないのか?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「洗わないですねっ!?少なくとも その高さの壁は洗いません 強いて言うのなら 洗うのは 年に一度の 大掃除といわれるイベントでですねっ!?」

キッチン

マリが料理を作っている グレイゼの声が聞こえる
「そう言う時には洗いますがっ!?基本的には 庶民が日常的に洗うのは 手の届く範囲ですっ!」
アースの声が聞こえる
「そうなのか…?手の届く範囲のみに置いて 留まらせるとは …お前たちは 浴室へ対する愛がなっていないなっ」
グレイゼスの声が聞こえる
「貴方の愛は 浴室に在るんですかっ!?」
マリが会話に笑う

浴室

アースが考えながら言う
「とは言え 壁は兎も角 浴槽は自分たちの手で 日常的に… つまり今の様に使用をする度に 自分で洗って居ると言う事は 浴室へ対する相応の…?」
グレイゼスが浴槽の泡を ゆすぎながら言う
「使用をする度…?ふ…っ 甘いですね?ハブロス司令官 庶民が浴槽を洗うのは 1日に1度です!」
アースが反応して言う
「何?そうなのか?では… 他の家族などが使用する時は どうなっている?」
グレイゼスがお湯を入れながら言う
「その間は洗いませんっ 庶民は一度張った このお湯を追い炊きして 使い回すんですよ ハブロス司令官!」
アースが呆気に取られて言う
「使い回す?何故 その様な事をする?新しい湯の方が 心地が良いに決まっているだろう?」
グレイゼスが言う
「それはですね …庶民は お湯が勿体無いからですよっ!ハブロス司令官」
アースが疑問して言う
「お湯が勿体無い?どう言う意味だ?確かに 無駄遣いとも言われる そちらは 控えるべきだと思うが アールスローンでは 排水された水は 浄化装置に掛けられた上で 機械工場などへ流される そうとなれば毎度変えたとしても そちらは決して 水や湯を無駄にすると言う事には ならないのでは無いのか?」
グレイゼスが言う
「そうでは有りません ハブロス司令官… 庶民はお湯や水を無駄にする事を 躊躇っているのではなく!…水代を気にしているんです!」
アースが衝撃を受けて言う
「水代を…っ!?そうなのか!?」
グレイゼスが言う
「そうですっ 従って 今も 本来であれば 今朝使用したその水を追い炊きをして 水代をケチる時でしたがっ 友人やお客様へ対しては 庶民としても 家族の浸かったお湯を使い回す事は 礼儀として出来ませんし!水を替えるなら 浴槽もついでに洗うものでっ ですから そちらはどうか 気にせずに どうぞ!」
アースが言う
「そうか それは すまなかったな… しかし マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが言う
「はい 何でしょう?ハブロス司令官?」
アースが言う
「ART司令塔主任としての お前の給料は 少なくとも 水代を払えないと言う程のものでは 無いと思うのだが?」
グレイゼスが言う
「はい その通りです しかし それはですね 払える払えないの問題ではなく… 庶民は 水代をケチるのが庶民です!」
アースが言う
「そうか そちらが庶民の美徳か… 確かに 富に恵まれた高位富裕層の屋敷の中に居ては 中々気付く事が 難しい事なのかもしれないが…」
グレイゼスが言う
「そうですね ハブロス司令官が知らないのは無理はありませんし むしろ それに気付けない事は 当然の事では無いかと!?…あ、しかし そうは言いましても ハブロス司令官?」
アースが疑問する グレイゼスが言う
「この事は ただ 水代をケチっているだけと言う訳でもありませんよ?水を使い回す事は兎も角として 浴槽に水を置いたままにしておくのは 万が一への備えでもあります」
アースが言う
「万が一への備え?そちらの備えは ハブロス家や他の富裕層らの屋敷にもあると思うが 浴槽に水を置いて置く事が そちらになるのか?…余り衛生的では無いと思うが?それに… カビも発生するぞ?」
アースが壁のカビを見る グレイゼスが衝撃を受けた後言う
「そうですねっ そちらは 掃除を怠る庶民が悪いかもしれませんがっ そうではなくてですねっ!」
アースが言う
「そちらさえも差し置いての 備えとは?浴槽の水では 飲料水には使えないだろう?」
グレイゼスが言う
「飲料水としての備えでは無く つまり、火事などの際に使用する そう言った防災への備えです 水や食料は 有るに越した事は無いですが むしろ このような生活の中で出来る ちょっとした些細な備えが 庶民の備えですね?」
アースが言う
「…そうか なるほど 大掛かりではなく 些細な備えか… …そうだな?」
アースが脱衣所内の天上や廊下の天井を見上げて言う
「天上にスプリンクラーが無いとなれば 火災時には 浴槽の水まで必要なのかもしれないな?」
グレイゼスが衝撃を受けて思う
(スプリンクラーが有るんですね…っ?ハブロス家には…っ!?)
グレイゼスが言う
「庶民の自宅に スプリンクラーはありませんっ」
アースが言う
「なるほど 良く分かった マスターグレイゼス中佐 貴重な情報提供を感謝する」
グレイゼスが衝撃を受けた後呆れて言う
「…はい その情報を貴重と言う貴方へ お知らせが出来て良かったです」

キッチン 

マリが料理をしている アースの声が聞こえる
「それに 浴槽も この程度の大きさであれば 3時間と待たずに 湯が溜まるだろう 水を抜くにも同じく 従って そこから始まる庶民の浴槽は こちらの大きさが正しい と言う事なのか」
マリが料理の味見をしていて疑問して言う
「3時間…?」
グレイゼスの声が聞こえる
「…あの ハブロス司令官?」
アースが言う
「何だ?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが言う
「先ほどはスルーしましたが お湯を張るのに3時間と言うと …ハブロス家の浴槽は ざっと この浴槽の何倍位ですかね?」
アースが言う
「そうだな?ざっとで言うなら… 100倍位か?」
マリが呆気に取られて言う
「ひゃく…っ?」
マリがハッとすると 鍋が噴きそうになっている マリが慌てて火を止める

浴室

グレイゼスが表情を顰めて言う
「ハブロス司令官…」
アースが言う
「何だ?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが言う
「すみません 庶民は 今のは聞かなかった事にします」
アースが言う
「そうか?…まぁ そうだな?この浴槽に3時間を待っては 流石にそちらは 湯が勿体無いのだと言う事は 私にも分かる気がする」
グレイゼスが言う
「いや… そうでは… いえ、なら もう… そちらを 分かって貰えたのなら 良かったです …ハブロス司令官」
グレイゼスが湯量を見ながら思う
(3時間どころか むしろ 庶民の浴槽は お湯を張るのに 1時間も掛かりはしないんだけど… とは言え…)
グレイゼスが振り返ると言う
「100分の1とは言っても お湯が溜まるには後 少しは掛かりますから その間は リビングで… …と?」
グレイゼスの視線の先 アースが洗濯機を不思議そうに見ている グレイゼスが思う
(まさか今度は…?)
グレイゼスが言う
「ハブロス司令官?こちらが 何の機械かって 言うのは…?」
アースがグレイゼスを見て言う
「そちらは大丈夫だ 心配ない ただ… やはり 確認を取って置いた方が良いだろう?マスターグレイゼス中佐 こちらの装置は 瞬間クリーニング装置で間違いはないか?」
グレイゼスが思う
(やっぱりか…)
グレイゼスが言う
「いえ 普通のクリーニング装置ですが… ハブロス司令官 自分も 瞬間クリーニング装置は ARTで見知っているので ハブロス司令官のそちらの発言は予測が出来ました そして それならそうと お知らせをして置きますが… 庶民の… と言う事は差し置いても このアールスローン国内で 瞬間クリーニング装置を所有しているのは 高位富裕層の一部の方と 最近出来た 企業製品発表会のような入浴施設と ハブロス司令官のARTだけですっ!」
アースが言う
「何?そうだったのか?…知らなかったな」
グレイゼスが言う
「そして 中位富裕層から下の者が備える クリーニング装置は… いえ、むしろ 庶民は それを洗濯機と言いますが そこに 瞬間と言う言葉は付きません」
アースが言う
「瞬間と言う言葉は付かない… では 完成には ざっと何秒ほど掛かるんだ?」
グレイゼスが言う
「何秒!?…では ざっとで言うなら 2700秒位ですね?」
アースが反応して言う
「2700… それは 単純明確に言えば 45分と言うのではないか?」
グレイゼスが言う
「そうですね!その通りですねっ!庶民の洗濯機はざっと45分が基本ですっ それからハブロス司令官っ!庶民の洗濯機は 2700秒掛かっても 乾きはしませんっ むしろ そこから乾かします!そして その時間は 洗いの時間より長く付きますし 庶民はその電気代をケチって 自然乾燥が基本です!」
アースが言う
「自然乾燥で…?そうか… それでは クリーニングは諦めるしかないな 折角の湯を浴びても 快適さは損なわれる可能性が生じてしまったが… まぁ 仕方が無い 例えそうとあろうとも 浴びないよりは良いだろう」
グレイゼスが衝撃を受けた後言う
「でしたら…っ」
グレイゼスが脱衣所を出て行く 

リビング

マリが料理を並べていると グレイゼスが通過して クローゼットを漁って言う
「えっと 確かここに… あったあった!俺とハブロス司令官なら 身長もそれほど変わらないし… それに あのハブロス司令官に 着せるとしたら… やっぱ これしかないよな?」
マリが眺めていると グレイゼスが袋に入った服を手に取って 急いで立ち去る マリが微笑して眺めている

脱衣所

グレイゼスが戻って来ると 持って来た服を置いて言う
「それなら 代わりに これを着て下さい 俺の… ARTの制服ですけど」
アースがグレイゼスの持って来た服を見る グレイゼスが言う
「新品で まだ 袖を通していない物ですし …それに 流石と言いますか?やっぱり 良い生地を使ってますよね?この制服?」
アースが服を手に取って言う
「ARTの制服は 機動隊員と内勤の者とで 材質や作りを多少変えている そして 私とお前は 同じ内勤の作りではあるが… 生地の材質は 司令塔主任とは言え お前の方が1ランク下だそうだ…」
グレイゼスが言う
「それで十分です 着心地も良いですし 丈夫ですし…?」
アースが言う
「私は 機動隊員の彼らの物は兎も角として 内勤の者は 皆 私と同じ 一番良い生地で良いと言ったのだが… やはり この様な時に ツケが来た様だな?」
グレイゼスが苦笑して言う
「そちらは 残念だったかもしれませんが… 1ランク下と言っても 見た目も着心地も 自分は十分だと思いますよ?ハブロス司令官も …少なくとも 今は?」
アースが言う
「そうだな?今は十分だ …それはそうと マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「は、はい…?」
グレイゼスが思う
(今度は何だ…?)
アースが言う
「そのお前が 十分と言ってくれた このARTの制服だが それなら 何故 こちらの制服は 封を切られていない?私はARTの隊員たちへは 備品やそれらに不足がない様にと命じたのだが 与える制服の数は3着とされた …正直 その数で 本当に足りるのかと 私は心配をしていたのだが こちらは その内の1着ではないのか?」
グレイゼスが言う
「…ハブロス司令官 それはですね?」
アースが言う
「それは?」
グレイゼスが言う
「庶民は 3着を渡されれば 2着を着回して 3着目は…っ」

キッチン

グレイゼスの声が聞こえる
「ここぞと言う時の為に 温存して置くんですよっ!ハブロス司令官!」
マリが料理をよそりつつ苦笑する アースが言う
「何?そうなのか?…3着目は温存する?ここぞと言う時の為に?…では 具体的に そちらで言う ”ここぞと言う時”とは 何だ?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが言う
「”ここぞと言う時”はですねっ 色々有りますが 具体的にと言うのなら…っ 例えば 友人の結婚式に呼ばれたりとかですね!?庶民は そう言う時にこそ!3着目を開封するんですっ!」
アースが言う
「そう言う事か では マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが言う
「何ですか!ハブロス司令官っ!」
マリが軽く笑いながら料理を運んで行く

脱衣所

アースが言う
「その様な お前の言葉で言う ”ここぞと言う時”には 遠慮なく 総務へと言え 緊急だと言うのなら1日と置かずに 新しい制服を用意させる もちろん 生地も1ランク上にするべきだ お前は ARTの制服を着てそちらへ出席すると言う事は それは即ち ARTの名を背負って行くと言う事だ その為の制服であるなら 十分にそちらの価値は有るっ …そして 通常着の3着目は 迷い無く開封しろ」
グレイゼスが言う
「うぅ… 流石は 超高位富裕層ハブロス家の考え… 庶民には難しいです」
アースが言う
「そんな事は無い マスターグレイゼス中佐 お前は出来る筈だ お前は ゲストである私への礼節として 本日は使い回す予定であった 浴槽の水を排水する事が出来た そうとあれば お前は出来るっ」

脱衣所 外

グレイゼスの声がする
「分かりました… 自分も… しょ、精進します…」
アースの声が聞こえる
「分かれば良いんだ」
マリが笑っている グレイゼスが言う
「…って そんな話をしている間に リビングへ行くまでもなく お湯が溜まりましたよ それじゃ… あ、それはそうと ハブロス司令官?今更ですが 庶民の浴室は初めてですよね?念の為聞いて置きますが シャワーのお湯の出し方とかは… 分かりますか?」
アースが言う
「分からない」
グレイゼスが言う
「ぐ…っ …やっぱり」
マリが含み笑いを収めると バスタオルを手にドアをノックする アースの声が聞こえる
「直前にでも お前へ そちらの確認を取る予定だった」

浴室

グレイゼスがシャワーを手にコックを開きながら言う
「…で、これをこっちへ回すと シャワーからお湯が出ます それで こっちへ回すと…」
アースが説明を聞いている 後方で マリがバスタオルを置いて言う
「バスタオル こちらへ 置いて置きますので 使って下さい」
アースが顔を向けて言う
「分かった 有難う」
マリが微笑する グレイゼスが言う
「…って 感じで …あ、シャンプーとかボディソープとか そこにあるのを 適当に使って下さい… …って 言っても …そちらは使えます?」
アースが言う
「そちらは問題ない 一応 分かっているつもりだ」
グレイゼスが苦笑して思う
(一応…?大丈夫かな…?…でも まぁ?そうと言うのなら?)
グレイゼスが言う
「そ、そうですか?では… 説明はこの位で?」
アースが言う
「ああ 手間を掛けたな?」
グレイゼスが思う
(はい 本当に…)
グレイゼスが言う
「い… いえ…?それでは どうぞ ごゆっくり…?」
アースが言う
「諸卿の好意に甘んじる」
グレイゼスが苦笑して思う
(えっと… それって どういう意味だっけ?)
グレイゼスが出て行く アースが周囲を見てから 脱衣所へ行く

リビング

グレイゼスが溜息とともに座って言う
「はぁあ~…っ 疲れた…」
マリが苦笑してから言う
「お疲れ様 マスターグレイゼス中佐様?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ああ 本当に… 庶民の常識を知らない人に 浴室を貸すのって こんなに大変な事だったなんて… それこそ 庶民の浴室事情から お湯の出し方まで 全部教える事になるとは思わなかったよ?」
マリが軽く笑ってから言う
「でも 2人とも とっても楽しそうだった」
グレイゼスが衝撃を受けてから言う
「そ、そう…?俺は…?」
グレイゼスが思う
(楽しんでいたつもりは…?)
グレイゼスが視線を逸らして言う
「むしろ 苦しんで居たと言うか…」
マリが言う
「ハブロス様は 庶民の暮らしに とっても 御興味があられるみたいね?それに…」
グレイゼスが気付いて言う
「興味がある…?あぁ… そうだね?言われて見れば?」
グレイゼスが思う
(そうかもしれないな?普通なら… それこそ 普通の高位富裕層様なら 「湯を沸かせ」とか「これを洗って置け」とかって…?いや?)
グレイゼスが言う
「むしろ アレコレ言わずに入ってから 文句を言いそうだよな?浴槽が狭いとか… お湯が出ないとか?」
マリが言う
「そうね?きっと どれもこれも 見た事も触った事もない物だし それならって…?」
グレイゼスがスープを飲みながら言う
「それなら?」
グレイゼスが思う
(果てには…)
マリが言う
「私、てっきり… グレイ君が一緒に入って ハブロス様の お背中を流して差し上げるのかと?」
グレイゼスがスープを噴出しそうになって言う
「や、やめてくれよっ!?やらないよ!?俺…っ いくら何でも それはっ!?」
グレイゼスが思う
(そう… 俺も それを心配していた…)
マリが一瞬驚いた後苦笑して言う
「そうよね?それじゃ まるで…」

浴室

アースが浴槽に入ると 自分で掴んでいた浴槽の淵を見てから言う
「…なるほど?腕がぶつかると言う事以前に 支えとしては 悪くは無い…」
アースが思う
(特に気にした事は無かったが 普段は 浴槽へ入る際に 手を取られて 支えられる …これは そちらの代わりか?そして これが 庶民の…)
アースが身を沈めて思う
(…うん 確かに 狭い事は狭いが… お陰で 湯を張る時間も掛からずに 彼らが美徳とする 水代をケチる事にも 貢献されるであろう この浴槽は 彼らの言う通り 紛れも無く 浴槽であり…)
アースが力を抜いて言う
「この大きさで 十分なのだ …とっ!?」
アースが勢い良く頭を壁にぶつける アースが頭を抱えて痛みに耐えて思う
(腕では無く 頭が壁に当たるとは…っ こちらは 予想外だったっ!)
アースが痛みに耐えている

リビング

グレイゼスが食事を終えて言う
「はぁ~ ご馳走様 美味しかったよ」
マリが微笑して言う
「そう?良かった!」
グレイゼスが微笑して言う
「それこそ 俺は 庶民の料理とは言え マリの旨い手料理を ご馳走して差し上げたかったんだけどなぁ?」
マリが言う
「あ… でも もし あの時 ハブロス様が 召し上がられると仰るのだったら 別のお料理にするつもりだったのだけどね?」
グレイゼスが言う
「え?そうなの?…この煮物とか 美味しいのに?」
マリが言う
「なるべく食べ慣れたお味の方が良いと思うから お肉を細かくしないで ちょっと小さいけれど 小分けにされたステーキみたいに?」
グレイゼスが言う
「あぁ… まぁ そうだね?ステーキも 旨いと言えば 旨いかもしれないけど… 俺は折角だし この際 料理も 庶民の料理を 堪能させてあげたいと思ったけどな?小さく切った 肉や 大根の葉っぱを使った 添え物とか?」
マリが軽く笑って言う
「そうしたら そうで グレイ君は そちらのお料理の食べ方も お教えしないと?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?いや それはもう… …なら やっぱり ステーキにして置く?」
マリが言う
「もう お肉は小さく切っちゃったから もし やっぱり 召し上がられると仰ったら お教えして差し上げてね?」
グレイゼスが苦笑して言う
「あっちゃぁ~ それじゃ 仕方が無い こうなればもう 残業代と 庶民の生活講義代を 請求して…?」
マリが呆気に取られた後笑う グレイゼスが笑う マリが気付いて言う
「あ、それはそうと?」
グレイゼスが言う
「うん?どうかした?」
マリが時計を見て言う
「ハブロス様 大丈夫かしら?ちょっと 長い様な気がするのだけど?」
グレイゼスが疑問して時計を見ると言う
「え?…あ?確かに?」
グレイゼスが席を立って言う
「一度 声を掛けて来るよ?ひょっとすると… 浴槽で眠っちゃっているかもしれないし もしくは また何か分からなくて 困っているかもしれないから?」
マリが言う
「そうね?それに お湯もそろそろ冷めてしまうだろうから 庶民の追い炊きの仕方も 分からないかもしれないわ?」
グレイゼスが言う
「ああ そう言えば?」

脱衣所

グレイゼスが脱衣所内を見てから浴室を見て言う
「まだ入っているみたいだ… それなら?」
グレイゼスが思う
(マリも言う通り 追い炊きの仕方を教えるのを 忘れてた…)
グレイゼスが浴室への扉を見て思う
(大体 俺は あのハブロス司令官の 普段の性格からしても 庶民の浴槽に そんな長湯をするとも 思わなかったからな?)
グレイゼスが浴室の扉をノックして言う
「ハブロス司令官?あの… 起きてますか?眠ってしまったりとか… 何か分からない事などは?」

浴室内

アースが考え事をしていた状態から反応して言う
「うん?…ああ いや?特に 問題は無いが?」
グレイゼスの声が聞こえる
「あ、そうですか?それなら良いのですが… …あぁ そうだ お湯は?湯加減はどうですか?そろそろ 温度も下がるんじゃないかと…?」
アースが言う
「ん?…そうだな?確かに 温くなったか?」
アースが湯加減を確認する グレイゼスの声がする
「それでしたら 追い炊きのボタンを… 分かりますか?壁にある給湯器の表示の… 右から… …あれ?えっと いくつ目だったかな?2つ目か3つ目に 追い炊きの絵が… って… 分かりますか?浴槽の絵に こう…湯気が立っている様な 表示なのですが…?」
アースが給湯器の表示を見て居て言う
「…これの事か?確かに その様な絵に… 見えなくは無い?」
アースが追い炊きの絵を見ながら思う
(この下の表記が 浴槽を模しているのであれば の話だが…?)
アースが沈黙する

脱衣所

グレイゼスが苦笑して言う
「えっと… 大丈夫かな?」
グレイゼスが思う
(追い炊きの横は 足し湯のボタンなんだけど… アレ 壊れてるんだよな?だから…)
グレイゼスが言う
「あのっ ちょっと 心配なので… 少し ドアを開けても良いですか?」
グレイゼスが思う
(…ん?これって ひょっとして 失礼な事か?男同士でも?高位富裕層と庶民では…っ!?)
アースの声が聞こえる
「ああ、構わないが?恐らく右から 2番目のボタンであると 思われるのだが…?違うのか?」
グレイゼスが反応して思う
(うん?どうやら 大丈夫みたいだ?)
グレイゼスが言う
「あ、では 一応 確認を…」

浴室内

グレイゼスがドアを開けると アースが浴槽に入っていて ボタンを見ながら言う
「2番目の こちらのボタンで良いのか?」
グレイゼスがボタンを見て思う
(ああ 2番目だった …それに 庶民の絵も 御理解を頂けた様で?)
グレイゼスが微笑して言う
「あ、はい そうです その2番目のボタンを 1度押してもらえれば… …っ!?」
グレイゼスが浴槽の淵に置かれたアースの左腕を見て驚く アースが気付かないままボタンを右手で押して言う
「これで良いのか?」
スイッチからピッ音がする グレイゼスがハッとして言う
「あ、はいっ そうですね!それで… …」
浴槽で追い炊きが始まる アースが気付いて言う
「ああ、確かに 温度の高い湯が運ばれて来ている様だ …なるほど?」
アースが思う
(これが ”追い炊き”と言う言葉の実践か… 何となく理解していたが ”追い炊き”とは…)
アースが言う
「つまり …一度張った湯を 沸かし直すと言う事だったのだな?マスターグレイゼス中佐?」
アースがグレイゼスへ向くと グレイゼスが呆気に取られている アースが疑問して言う
「うん?マスターグレイゼス?」
グレイゼスがハッとする アースが言う
「どうかしたのか?」
グレイゼスが慌てて言う
「あっ いえっ!?で、では… あ!追い炊きは勝手に止まりますが 途中で熱くなったら 同じボタンをもう一度押すと 止まりますんで!?」
アースが疑問しつつ言う
「…そうか 分かった」
グレイゼスが言う
「はい、では どうぞごゆっくり!」
グレイゼスが立ち去る アースが疑問してから言う
「どうぞごゆっくり… 入浴となれば 当然 ゆっくりするものと思うのだが…?先ほども然り 何故 わざわざ そうと言うのだ?」
アースが考えた後 閃いて言う
「ああ そうかっ?」
アースが思う
(庶民の浴室は 確か 1家族に1つしかないと聞いた事があったっ!そう言う事だったのか!)

リビング

グレイゼスが戻って来ると テーブルが片付けられていて マリが言う
「どうだった?グレイ君?ハブロス様は…?」
グレイゼスが考えに没頭している マリが疑問して言う
「グレイ君?」
グレイゼスが気付いて言う
「え?ああ?ごめん?えっと…?」
マリが言う
「どうかしたの?ハブロス様は 大丈夫だった?」
グレイゼスが言う
「あ、うん… 大丈夫だったよ 普通に… ちょっと 長湯をしているだけみたいで …追い炊きのボタンを教えて来たよ」
マリが微笑して言う
「そう?それなら…」
マリが片付けの続きへ行く グレイゼスが椅子に座る マリが洗い物をしつつ グレイゼスを気にする

マリがやって来て言う
「グレイ君?」
グレイゼスが反応して顔を上げると マリがお茶を出す グレイゼスが言う
「あ、有難う マリ…」
マリが向かいの席に座って言う
「どうかしたの?グレイ君 …さっきから 考え込んでいるみたいだけど?」
グレイゼスが言う
「あ… いや 大した事じゃないんだけど… …あ、そうだ マリ?」
マリが言う
「なぁに?」
グレイゼスが言う
「マリは… いや、マリも 女系高位富裕層の出身だから ひょっとして 分かるかな?」
マリが苦笑して言う
「私は名前だけの高位富裕層で 生活は庶民の生活をしていたから その私で分かると良いのだけど?」
グレイゼスが言う
「うん それでも 俺よりは 詳しいから… 高位富裕層の方って言うのはさ?その… 女系かどうかと言う事は無しにして 余りその… 体に何かの痕なんかがあると 気にするものだよね?」
マリが言う
「そうね?女性ではなくても 高位富裕層の方は… ううんっ 高位富裕層まで行かなくても 富裕層の方は そう言うものは極力無くすようにするものね?だから 事故や何かのお怪我の痕は お金を掛けてでも 美容整形をしたりして 綺麗にしようとするものみたい お陰で アールスローンの美容整形技術は日進月歩だって?」
グレイゼスが言う
「そう… それなら もちろん 怪我や何かの痕… 増して 刺青とかは?あ… 刺青じゃなくて 元から 生まれつき そんな痕があった場合なんかも?」
マリが言う
「刺青は下層階級の方が行う物で… 生まれつきの痕でも 無くす様にするのが 普通だと思うわ?だからそう言う面に置いても 攻長閣下の誓いの印は それを身に施すと言う事自体が とても凄い事で 上位富裕層の方が それをして 陛下の剣になるというのは その意思の表れでも在る訳だし… あ、それに ハブロス様が以前 お怪我を負われて お目に眼帯をしてメディアに映られたでしょう?あの時も 高位富裕層の方が そのお姿をカメラに映したと言う事が とても 驚かれた事だったわ?」
グレイゼスが言う
「そうなんだ?それじゃ やっぱり…」
マリが疑問して言う
「やっぱり…?」
グレイゼスが言う
「あ… いや …そう言う事を知らなくても 少し 驚いちゃってさ?…ハブロス司令官の 左腕には…」

浴室

アースが泡の付いたタオルを見て言う
「顔や手であるのなら兎も角… 自分で体を洗うのは 初めてだ…」
アースが不器用に体を洗い 左腕を洗う 左腕には羽根の刺青があり アースが擦って言う
「改めて見ると 模様が濃くなって来た気がするのだが… そんな筈は無いか?刻まれた当時より 色が濃くなるなど… まぁ 良い 今はそれより」
アースが体を洗う

リビング

マリが言う
「刺青が…?」
グレイゼスが言う
「うん… ちゃんと形になってたから 多分 生れ付きでは無くて 後から施した処置だと思う …だけど それこそ超高位富裕層のお方がやる事なのかな?…ってさ?」
マリが言う
「うーん でも…」
グレイゼスがマリを見る マリが言う
「特にそれを隠す素振りも無かったと言う事は それはそれで良いんじゃないのかな?」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「え…?そういうもの?」
マリが苦笑して言う
「ハブロス様は高位富裕層ハブロス家のご当主様だけど いずれはお役目を返上する方だから もしかしたら そちらを受け入れて居ると言う 現しなのかも?」
グレイゼスが言う
「お役目を返上?それってつまり…?」
マリが言う
「高位富裕層じゃなくなっちゃうって事」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「え…?」
マリが言う
「あ、そうだったわ?いずれはそうとしても 今は…」
マリが立ち上がって向って行く グレイゼスが呆気に取られたまま言う
「あ… えっと?マリ?今のは…?」
グレイゼスがマリを追って行く

ベッドルーム

マリがベッドを前に考えている グレイゼスがやって来て言う
「うん?どうかした?マリ?」
マリが言う
「うーん… ハイケル君なら 分かるんだけど」
グレイゼスが疑問して言う
「え?ハイケルなら分かるって?何か?」
マリがグレイゼスへ向いて言う
「やっぱり こう言う場合は 私たちが ソファや床で寝て ハブロス様に ベッドをお貸しするべきよね?」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「え?ああ… そっか?…そうかもしれないな?流石に…」
マリが言う
「うん それじゃ 毛布は1枚出てるから… もう1枚 あったかしら…?」
グレイゼスが言う
「リビングの方の押入れの奥に 昔使っていたのがあったと思う なら俺が出しておくよ?」
グレイゼスが向おうとするとマリが言う
「あ、それなら グレイ君?」
グレイゼスが言う
「うん?」
マリが言う
「そっちは 私が見て置くから グレイ君は もう一度…」
グレイゼスが気付くと 時計を見てから苦笑して言う
「あぁ まったく 心配掛ける人だなぁ?」
マリが苦笑して言う
「出ていたらそれで ドライヤーとか必要だと思うし?」
グレイゼスが反応して言う
「あぁ そっか?忘れてた …ハイケルの奴は いつも使わないからさ?」
マリが苦笑して言う
「グレイ君のお部屋に来るのは ハイケル君だけなのね?」
グレイゼスが言う
「まぁね?普通はそんなモンだよ?マスターの仲間か …家族以外は」
グレイゼスがマリにキスしてから言う
「それじゃ 今日だけは 例外の 凄い人の様子を見て来るよ?」
マリが微笑して言う
「ドライヤーの使い方もご存じないかもしれないし 髪を焦がしちゃったら大変だから ご存じないのだったら グレイ君が掛けてあげてね?」
グレイゼスが衝撃を受けてから言う
「え?…そう言うもの?」
マリが軽く笑って言う
「例外の凄い人だから?」
グレイゼスが苦笑して言う
「はは… そうだね?…了解?」
グレイゼスが向う

脱衣所 前

グレイゼスが思う
(…って 良く考えたら ひょっとして それ以前は?…例外の凄い人は 髪を乾かす以前に …体の拭き方も 知らなかったりして?)
グレイゼスが視線を逸らして言う
「参ったな… けど…」
グレイゼスが思う
(洗うのではなくて 拭くぐらいなら…?)
グレイゼスがドアを開けると アースが服を着た様子で 髪を拭いていて顔を向ける グレイゼスがハッとして思う
(あ… しまった 考え事をしてたら つい…っ)
グレイゼスが言う
「すみません ノックもしないでっ!?」
アースが言う
「いや 丁度 良い所へ来てくれた マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが閉めようとしていたドアを止めて言う
「あ、はい?」
アースが言う
「お前は ヘアドライヤーを持っているか?」
グレイゼスが一瞬呆気に取られた後 気を取り直して言う
「あ、はい… そう言えば その場所を伝えに来たのでした」
アースが言う
「そうか 助かった」
グレイゼスがドライヤーを取り出しながら言う
「うん…?あれ…?」
グレイゼスが思う
(なんだろうな…?今の?とても… とても庶民的に 普通の会話だったというのに それを このお方と話すと何か …違和感が?)
グレイゼスがドライヤーを手に言う
「えっと… ちなみに こちらの使い方は?」
ドライヤーのコードが縛られている アースがそれを見つつ言う
「ああ そちらは 問題ない むしろ 慣れている」
グレイゼスが疑問して言う
「え?慣れているって…?自分で 髪を乾かせるんですか?ハブロス司令官が?」
アースがグレイゼスからドライヤーを受け取りながら言う
「何か問題か?」
グレイゼスが疑問した後 納得行かない様子で言う
「あ、いえ…?問題ではないのですが… その… 自分はてっきり…」
グレイゼスがアースの服や体を見て言う
「普段は それこそ ご自分で 体を拭く事も無いのでは?…とまで 考えていたもので 意外だったと言いますか?」
アースがコンセントを探し見付けてから 一度グレイゼスへ視線を向けて言う
「ああ そうだな 確かに 普段は自分では拭かないな?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「やっぱり…」
アースがドライヤーをオンにして 熱風の様子を確かめながら言う
「とは言え 普段 施される事を 自身で行う位は 出来るだろう?」
グレイゼスが衝撃を受けた後言う
「そちらは… 前段階の 施される事が無いので 分かりませんが… …あのっ でしたら ドライヤーは気を付けて下さいねっ!?失敗すると 髪を焦がしたりとか…っ!?」
アースがグレイゼスを見て言う
「ああ、そちらは実際に昔 行ったミスだが 今は大丈夫だ」
グレイゼスが言う
「え?昔?では…?」
アースがドライヤーを使っている グレイゼスが思う
(あ… 本当に慣れている?むしろ 適当に使う俺よりも…?)
グレイゼスが言う
「あの…?」
アースがドライヤーの風を避けて言う
「うん?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「ああっ すみません 邪魔をして… …と言うか 何で慣れているんですか?」
グレイゼスが思う
(高位富裕層の…?しかも 超高位富裕層と言われる ハブロス家のご当主様が…?)
アースが開かれているドアの先を一瞬気にしているから言う
「アニキのメイクをする時に こちらも使うからだ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「そ、そうでしたねっ!?」
グレイゼスが思う
(そうだった…っ!?)
アースが風を浴びながら言う
「最も スタイリング剤を付けない状態で使ったのは 言われてみれば 初めてだな?」
グレイゼスが言う
「そ… そうですか …むしろ あちらのヘアースタイルを 御自分でなさっていたと言う事に 自分は驚きましたが?」
アースが言う
「そうか?メイクも自分でやっているのだぞ?」
グレイゼスが衝撃を受けて思う
(そうだったのか…っ 超高位富裕層ハブロス家のご当主様が…)
アースが言う
「…そのスタイリング剤は無いのだな?」
アースが洗面台の棚を眺める グレイゼスが言う
「じ、自分は使っていませんので…」
アースがドライヤーを止めて言う
「そうか ならば 後は寝るだけだ 乾かすだけでも良いだろう」
アースがドライヤーのコードを抜くと 縛られていた配線を見て言う 
「…それから 余計な忠告かもしれないが マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスがハッとして言う
「あ、はい?何でしょう?ハブロス司令官?」
アースが言う
「ヘアドライヤーのコードは結ばない方が良い 中の配線が切れると 使用中に焼き切れて危険だ 代わりに… こうして本体に巻くのが良策だ その方が物も長く持つ」
アースが本体へコードを巻き付けたドライヤーをグレイゼスへ渡す グレイゼスが苦笑して言う
「そ、そうなんですか…?有難う御座います?」
グレイゼスが思う
(超高位富裕層 ハブロス家の ご当主様の口から とても… 庶民的な会話が…?)
アースが言う
「私が1人で長湯をしてしまったな すまない 気付くのが遅かった 庶民の住宅には 浴室が1つしか無いと言う情報を 忘れていたんだ」
グレイゼスが衝撃を受けて思う
(いや やっぱり 庶民的ではなかった…)
グレイゼスが言う
「…いえ 大丈夫です それに いつも 自分らは これ位から 入浴の準備をしていますので」
グレイゼスが思う
(それに 大体どこから そんな庶民的な情報を 入手したんだ?)
アースが言う
「そうか それなら 何とか間に合った様だな?」

翌朝

グレイゼスの声が響く
「ハブロス司令官っ!?」

リビング

グレイゼスがやって来て言う
「靴が無いって事は 1人で…?」
マリがグレイゼスへメモを見せて言う
「今朝私が来た時にはもう居なくって… それにこれ」
グレイゼスがメモを受け取ると マリが言う
「ハブロス家に居る ハイケル君のお迎えを お願いしますって?」
グレイゼスがメモを閉じて言う
「…作戦開始か?内容も確認出来なかったが 仕方が無い」

【 ハブロス家 門前 】

グレイゼスの車が門前に停車すると 監視カメラがグレイゼスを映す グレイゼスが監視カメラへ向くと 守衛の声が聞こえる
『元国防軍所属 マスターグレイゼス様 本日は 当ハブロス家へ 如何なるご用件で御座いましょうか?』
グレイゼスが言う
「あ~ お早う御座いますね~?自分は 友人のハイケル・ヴォール・アーヴァイン様を お迎えに来たのですが~?」
守衛の声が聞こえる
『畏まりました ハイケル・ヴォール・アーヴァイン様は 只今 別館のお屋敷に居られますので 直接そちらへと お向かい下さい 順路は そちらの門を進み 最初の通りを右へ 後は そちらの正面に見えます お屋敷の方へと順路をお取り頂ければ 御到着を致します』
門が開かれる グレイゼスが言う
「はいはい~?ご親切にどうも?」
グレイゼスの車が門を進む

グレイゼスが車を運転しながら思う
(メモの内容や昨夜の会話から ハイケルの迎えに行け… そこに その言葉以上の意味や指示は 含まれている様子は無かった… なら今は)
グレイゼスが外の様子を見る 外には外灯やそれらに監視カメラや拾音センサーが付けられている グレイゼスが思う
(ここは素直に ハイケルの迎えに行けば良いだろう …下手には動かれない)
監視カメラがグレイゼスの車を映す

離れの屋敷

グレイゼスの車が到着する グレイゼスが屋敷の入り口へ向くとハッとする レミックが微笑して礼をする グレイゼスが思う
(あの執事さんは…)
グレイゼスが車を出ると レミックが言う
「お早う御座います マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが微笑してから言う
「お早う御座います えっと~ 自分は…」
レミックが言う
「本日のご用件は ハイケル少佐の お迎えに御座いますね?」
グレイゼスが言う
「あ、はい そうです 友人のハイケルを 迎えに来ました」
グレイゼスが思う
(この人は 知っているのか?俺たちの… ハブロス司令官の作戦を?)
レミックが言う
「はい マスターグレイゼス中佐が ハイケル少佐のお迎えにお越しになられるとの旨は お伺い致しております そちらの上で 大変申し訳御座いません」
グレイゼスが疑問して言う
「え?何か…?」
レミックが言う
「折角の お迎えに御座いますが ハイケル少佐は 本日は少々ご体調が優れないとの事で 大事をとってARTのご活動は お休みをなさるとの事です」
グレイゼスが反応して思う
(あのハイケルが?確かに ずっと昔に1度だけ 風邪を引いた事があったが… それでも アイツは大事を取るなんて事はしなかった 増して ARTがこの時に …と言う事は?)
グレイゼスが車へ戻ろうとして言う
「あらら~?そうと言う事なら しょうがないですね?折角 来ましたけど… 分かりました!お大事にって伝えて置いて下さい!」
グレイゼスが思う
(ここも素直に 従って…)
グレイゼスが言う
「では 自分はこれで!」
グレイゼスが思う
(そして この後は…?)
グレイゼスが車へ戻ろうとすると レミックが言う
「マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが立ち止まって思う
(何か…?)
グレイゼスがレミックへ向き直ると レミックが微笑して言う
「昨夜はハイケル少佐を 当館まで お送りを頂き 本日はお迎えにもお越し頂きました 真に有難う御座います こちらは 心ばかりですが お礼にと… どうかお納めを下さい」
レミックが紙に包まれたものを手渡す グレイゼスが反応して思う
(これは…っ!?)
グレイゼスが微笑して言う
「いやぁ お礼だなんて 返ってすみませんね?自分の自宅は このハブロス家の先なので ハイケルの送り迎えは そのついでみたいなものですが…」
レミックが意味深に微笑して頷く グレイゼスが気付いて微笑すると言う
「最下層の自分が 超高位富裕層様からの 施しを断っては逆に失礼ですからね?ではこれは 有り難く頂いちゃいます!」
レミックが微笑して言う
「はい、その様にして頂けますと 我が主もお喜び下さいます どうか そちらの様にと 宜しくお願いを致します」
グレイゼスがレミックから包みを受け取ると レミックが一歩下がって礼をする グレイゼスが言う
「はい!では …そちらの様に?」
レミックが微笑する グレイゼスが車に乗ると発車させ レミックが礼をする

道中

グレイゼスが外の様子を伺いながら思う
(出来れば 何処か監視の類を逃れる場所で 中身を確認したい所だが…)
グレイゼスが車を止めると思う
(そもそも この防衛下で そんな場所がある筈がない …となれば 仕方が無い ここも素直に)
グレイゼスが微笑しながら言う
「いやいや~?たかがハイケルの送り迎えで~?お礼を貰っちゃったよ ラッキー?」
グレイゼスが包みを開きながら思う
(出来るだけ 自然に…)
包みの中には2枚の札が入っている グレイゼスが手に取ると 喜んで言う
「やったね!2万も もらっちゃったー!」
グレイゼスが札の下になった包みの紙に描かれている絵に気付いて思う
(これはっ!?地図だ!俺が入って来た あの門に 北にある母屋と南にある別館 そして この道の先に… この印は?)
グレイゼスが札を包みに戻すと思う
(とりあえず そこへ行ってみるか?細心の注意を払って…)
グレイゼスが車を発車させる

グレイゼスが運転しながら思う
(この辺りだ 地図の通り 池の近くを過ぎた そして… 強調して書かれていた 大きな木の絵は… アレか?周囲に何か?)
グレイゼスが周囲を見ながら言う
「いやぁ~ それにしても 改めて見ると 凄いお屋敷だなぁ~?」
グレイゼスの車が大きな木の前を通る グレイゼスが思う
(丁度 この場所で?)
グレイゼスがハッとしてブレーキを踏む 道の前を犬が通る グレイゼスが驚くと思う
(まさか これか!?何かの…!?)
続いて 庭師がやって来ると グレイゼスの車に気付き 深々と頭を下げて言う
「これはこれは!誠に申し訳御座いません!お客様のお車の前を…っ!」
グレイゼスが呆気に取られた状態から言う
「あ… いやいや!?大丈夫で…」
運転席のドアの外からフットマンの小声が聞こえる
「マスターグレイゼス中佐っ」
グレイゼスがハッとする 庭師が言う
「お怪我などは御座いませんでしたでしょうか!?もしくは 大切なお車に…!?」
ドアの外からフットマンの声が聞こえる
「今の内に ドアを開けて下さい ここは監視カメラの死角となっていますっ」
グレイゼスが視線を強める 車のドアが開くと フットマンが外に身を潜めている グレイゼスが顔を向けるとハッとする フットマンが顔を上げて言う
「私が身代わりになりますっ マスターグレイゼス中佐は 私の後ろの茂みへ向って下さい」
グレイゼスが思う
(この少年は… 昨夜の?)
グレイゼスの脳裏に ハイケルがいつもの…と言ったフットマンの姿を思い出す グレイゼスが思う
(俺と同じ 髪型と色に変えて… そして 彼の着ているARTの制服は… 昨日 俺が ハブロス司令官へ貸した 司令塔主任中佐の階級章がある あの制服だっ …と言う事は!)
グレイゼスが言う
「分かった よろしく頼む… クラッチは手前の方だぜ?」
フットマンが微笑して言う
「分かりました どうか旦那様へ お力添えをっ 宜しくお願いします!」
グレイゼスが一瞬反応してから微笑して言う
「ああ、引き受けたっ」
グレイゼスとフットマンが入れ替わる

グレイゼスが茂みから庭師へ向いて言う
「いやぁ~ 大丈夫大丈夫!心配無いって!」
グレイゼスが身を引くと 庭師が微笑して言う
「そちらは 良かったです では …お気を付けて」
庭師が道を空けて礼をする グレイゼスの車が発車して行く グレイゼスがそれを見送っていると 後方からアースの声が聞こえる
「マスターグレイゼス中佐っ」
グレイゼスがハッとして振り返ると アースが茂みの中に身を隠して言う
「こちらだ 付いて来い」
アースが茂みの中へ入って行く グレイゼスが言う
「あ、はいっ」
グレイゼスがアースの後を追う

アースがグレイゼスの到来を確認すると茂みの中を進みながら言う
「良く来てくれた」
グレイゼスがアースに続きながら苦笑して言う
「はい 来ない訳には 行きませんから… それで 作戦は?自分は何を?」
グレイゼスが思う
(俺が手伝う事と言ったら?…ひょっとして このハブロス家のお屋敷中に張り巡らされている 監視カメラやセンサー類の…?)
アースが言う
「そちらは後ほど説明をする 今は付いて来い」
アースが止まり 一度周囲を見てから急いで茂みを出て物影へ隠れる グレイゼスがハッとしてから同じく周囲を確認して マスタースピードでアースの横へ到着する アースがグレイゼスを確認してから 物陰から対側のハブロス家の母屋を見る グレイゼスがアースの後方からそれを伺うと アースが上空を見て言う
「あちらを見ろ」
グレイゼスがアースの視線の先を追うと 物陰から母屋の物陰までの間に 監視カメラが3台あって両脇のカメラがスイングしている グレイゼスが言う
「3台の監視カメラ…」
グレイゼスが思う
(真ん中の一台は固定中央の道を真っ直ぐに映している そして両脇がそちらを含めた両脇を… うん?それなら?何でスイングする必要が?)
アースが言う
「中央の一台はフェイクだ」
グレイゼスが反応してから言う
「なるほど それなら…」
グレイゼスが思う
(両サイドのカメラがスイングしているのは フェイクである中央のサポートを行う為… …うん?と言う事は?)
アースが言う
「あちらのカメラの映像は 直結で監視室のモニターへ送られ 担当の者が随時確認を行なっているが 両脇のカメラが内側から30度までの間は…」
グレイゼスが言う
「その間は 本来は中央のカメラが受け持つ筈の メインの通路が映りませんね?」
アースが言う
「そう言う事だ」
グレイゼスが思う
(それなら タイミングは 両脇のカメラが内側から30度になったその瞬間に 向こうの… 母屋の物影へ …っと 言っても)
グレイゼスが言う
「俺には…」
アースが言う
「そちらは お前にはほぼ関係の無い事だろうが タイミングはそちらだ …それから 下を見ろ」
グレイゼスが反応して言う
「下…?」
グレイゼスが思う
(下には 何も…?もし赤外センサーが備えられているとしても ここは通路で… 人通りのある昼間なら それは当然…?)
アースが言う
「タイルの色が2種類ある 色の濃い部分と薄い部分」
グレイゼスが視線を向けてから言う
「はい ありますね?」
アースが言う
「色の濃い部分は 直結で母屋の地下拷問室へ続く落とし穴となっている マスターでも気を付けろ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「そちらの直結は マスターでも まずいですねっ」
アースが言う
「では 行くぞ?」
グレイゼスが衝撃を受け言う
「い、行くんですか?むしろ マスターでもない 非戦闘員の貴方こそ大丈夫ですか?」
アースが言う
「今だっ」
アースが飛び出す グレイゼスがハッとして慌てる 監視カメラが30度から0度へスイングして再び30度まで向う アースが身軽にタイルの色の濃い部分を回避して 監視カメラのスイングが30度を越える前に 母屋の物影へ到着すると グレイゼスへ向き直る グレイゼスが衝撃を受けて言う
「お、お見事で… 本当に非戦闘員ですか?貴方は…?」
グレイゼスが監視カメラを見上げてから 意を決するとマスタースピードで 母屋の物影へ現れホッと息を吐く アースが言う
「上出来だ では 行くぞ?」
アースが進む グレイゼスが衝撃を受けてから 追って言う
「あの… まだ この様な事を?自分はマスターでも 知能補佐の方なので… 非戦闘員で常人の司令官様へ申し上げるのも 申し訳ないのですが 出来れば その… 管轄外の力は…」
アースが周囲を探してから 見付けて言う
「そちらの心配ならば もはや不要だ ここまで来れば 後は…」
アースがポケットからピックを取り出すと 壁にある金具を動かし 壁の蓋を持ち上げて言う
「人の目に付かない こちらの通路を行くのみだ 行くぞ 付いて来い」
アースが持ち上げた壁の蓋の奥にある通路へ入る グレイゼスが言う
「そんな所に… と言いますか そもそも…?」
グレイゼスがアースの後を追う グレイゼスがアースの支えている壁の蓋を支えると アースが言う
「通路へ入ったら そちらを手放せ 地へ落ちた反動で 金具が閉まる仕掛けだ」
グレイゼスが苦笑して言う
「とても… 機械的な仕掛けですね?」
アースが言う
「仕掛けは機械的だが 金具は鉄分含有量の微量違いから こちらの… ナックキラーの公式ギターピックのみでしか 動かない仕様だ」
グレイゼスが呆れて言う
「それもそれで 微妙なセキュリティだと思いますが…」
アースが先へ向う グレイゼスが続き壁の蓋を手放す 壁のふたが閉じロックが掛かる グレイゼスが苦笑してから アースを追う

細い通路を アースとグレイゼスが行く アースが言う
「流石に今通ると少々狭いな…」
グレイゼスが周囲を見ながら言う
「この通路は?」
アースが言う
「元は 大昔… 現在からであれば 約220年前までは使われていた 屋敷全体を暖める為の 暖炉の熱を通す通熱孔であったらしい その証拠に使い始めた当時は 通路全体に煤が付いており とても使用に苦しい状態だった」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「220年前っ!?流石は大富豪ハブロス家…」
アースが言う
「その220年前からは 暖房装置は温水循環型の物が 使われるようになった 故に こちらは使われなくなった事で 今はこの様に通路として使用出来る …最も こちらを使う人間は 私ぐらいであろうが」
グレイゼスが反応して言う
「では… そもそも その220年以上も お屋敷を保有する大富豪ハブロス家の 現ご当主様が… 何故こんな?使われなくなった その場所を 知っていて?それに… そちらはまるで 使っていたと言う 言い方ですよね?」
アースが言う
「私が主にこちらを使っていたのは 今から約20年程前だ… 屋敷を抜け出し ナックキラーの活動を行っていた」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「なるほど… 良く分かりました …入り口の金具の件と言い」
アースが言う
「ああ、従って あの頃より体の大きくなった 現代では この通路を行くのは 少々苦しいが…」
ネズミの声が聞こえる グレイゼスが衝撃を受け思わず上部に頭をぶつけて言う
「ネズっ!?…っ!イテッ!痛ってぇ~」
アースが振り向いて言う
「近くに 人の魂の光は見えないが 音は通路に響く 従って それら音や声は極力立てるな」
グレイゼスが頭を抑えたまま言う
「す、すみません…っ つい… その…」
ネズミがアースの前へ現れると鳴く グレイゼスが衝撃を受ける アースが気付くと言う
「うん?お前は… ハイケル…?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「はいっ!?」
アースが気付いて言う
「いや ハイケルは4号から その名をエルムに変えていたのだったな?ではエルム お前は …また 脱走を行なったのか?」
ネズミが鳴く グレイゼスが呆れて言う
「あの… ひょっとしてですが お知り合いの… …ネズミですか?ハブロス司令官の?」
アースが言う
「ああ、そうだったな この様な場所にて難だが 紹介しよう マスターグレイゼス中佐 我がハブロス家の家族 ハツカネズミのエルムだ」
ネズミが鳴く グレイゼスが衝撃を受けて言う
「そ、それは… ご丁寧に どうも…」
アースがネズミを見て言う
「なるほど お前も こちらの通路を使用していたのか 道理で毎度 お前の捜索に 手間を掛けさせる訳だな?」
グレイゼスが呆れている ネズミが鳴く アースが言う
「まぁ 良いだろう 今は この屋敷の者に見付かると 早くもお前が1体殺されてしまう可能性がある 従って 今だけは お前も もうしばらく こちらへ身を潜めて居ろ」
ネズミが鳴いてから走り去る グレイゼスが呆れる アースが言う
「よし …では 我々は進むぞ?マスターグレイゼス中佐 付いて来い」
グレイゼスが言う
「はい… そんな貴方に付いて行くのは とても不安ですが… ここまで来ては もう引き返せません」
グレイゼスがアースを追う

隠し部屋

暖炉の側面の壁が開かれ アースが出て来ると言う
「よし 到着だ」
アースに続いてグレイゼスが出て来ると アースが言う
「こちらが 今作戦に置かれる 司令塔にして お前の持ち場だ マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが周囲の豪華な装飾を見渡して苦笑して言う
「あぁ… とても豪華な司令塔で… 自分には とても」
グレイゼスが周囲を見渡して思う
(…にしても?ここは…?)
グレイゼスが言う
「あの… ハブロス司令官?ちなみに この部屋は…?」
アースが言う
「こちらの部屋もまた 現代に置いては使われていない部屋だ それと共に そもそもが隠された部屋であった事もあり こちらの部屋を知る者は 今のハブロス家には 恐らく居ないだろう」
グレイゼスが苦笑して言う
「ご当主で在る貴方様を除いて… ですよね?ハブロス司令官?」
アースが壁の装置を動かして言う
「そうだな?しかし 時の当主であろうとも 私の他に 幾人の知る者が居たのか…?少なくとも 父上はご存知では有られなかった様子だが?」
アースが壁を覗く グレイゼスが疑問して言う
「それは…?」
グレイゼスが壁へ向うと 壁に備えられている装置を見る

アーケストの部屋

アーケストがベッドで眠っている 部屋に飾られた肖像画の目が動く 近くの肖像画の目が切り替わると グレイゼスの目が現れ衝撃を受ける

隠し部屋

グレイゼスが呆れて言う
「あ、あの… ハブロス司令官?これって ひょっとして…?」
アースが装置を閉じて言う
「実に前時代的なカラクリだろう?しかし 余りに古過ぎて 逆に この様な装置が今も使われているとは 誰も思わないものだ」
グレイゼスが言う
「それを使う貴方も 凄いと言いますか…」
アースが言う
「しかし モノは上出来だ 仕組みは前時代的だが 屋敷中に施された その全ての仕掛けが この司令塔とされる 一室へと繋がっている」
グレイゼスがハッとする アースが装置からグレイゼスへ顔を向けて言う
「恐らくこちらも 時のマスターたちにより もたらされた技術だろう?」
グレイゼスが苦笑して言う
「恐らく?」
アースが微笑してから装置へ戻り そこら中の装置を覗いて言う
「とは言え 不便な部分もある その屋敷中を見渡す事が可能な装置だが… どちらの装置が 目的の部屋を見られる装置なのかが分からない …そちらの改良は 時を経た現代のマスターである お前たちの…」
グレイゼスが苦笑して言う
「そちらの改良を 自分にしろと…?」
アースが装置をのぞきながら言う
「いつかは …な?今はそれより あの母上の部屋を確認出来る そちらを探し出す事が先決だ …お前も探せ マスターグレイゼス中佐 命令だ…」
アースが装置を閉じ困りつつ別の装置を覗く グレイゼスが苦笑して言う
「はい… では 自分も… 今は 前時代的に…」
グレイゼスが装置を見渡してから 適当に見つけた装置を開いて覗く

ルメリアの部屋

壁の絵の目が変わる その前で ルメリアが言う
「アーヴァインは… いえ 防長閣下は まだ屋敷にいらっしゃるのでしてね?」
執事が言う
「はい 奥様」
壁の目にあるグレイゼスの目が衝撃を受ける

隠し部屋

グレイゼスが顔を引いて言う
「ハ、ハブロス司令官っ!?母上様を 発見しました!?」
アースが衝撃を受けて言う
「何っ?1発でキメるとは 流石だな?マスターっ?」

ルメリアの部屋

絵からグレイゼスが見ている もう1つの絵の目が変わりアースが見ると ルメリアが言う
「それから もう1人の息子… あの者の戻りは 確認されてはいなくてね?」
執事が言う
「はい 奥様 アース・メイヴン・ハブロス様のお戻りは お屋敷へも アールスローン国内に置かれましても 確認は成されておりません」
アースが視線を強める ルメリアが言う
「良いでしょう ではアーヴァインを食堂へ招きなさい 私も直ぐに参ります もう一度 朝食の席で 昨夜の続きを…」
執事が言う
「畏まりました その様にと 取り計らって参ります」
執事が立ち去る ルメリアが席を立ち部屋を出て行く

隠し部屋

アースが装置から放れて言う
「よし アーヴァインとあの女が食堂で話をすると言うのなら 丁度良い 作戦決行の時だ マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが衝撃を受けてから アースへ向いて言う
「あ、はい… ハブロス司令官 それはそうと そちらの作戦と言うのは?」
アースが言う
「では 早速 作戦内容を伝える 先ほども確認したと思うが こちらが…」
アースが装置を覗く

アーケストの部屋

壁の絵の目が変わり アースが言う
「父上の部屋だ」
壁の絵の目が変わり グレイゼスが言う
「…はい そうですね?」

隠し部屋

アースが別の装置を示して言う
「そして こちらが …これからあの女とアーヴァインが朝食を共にする 食堂へと繋がっている」
グレイゼスがアースの示す装置を覗いて言う
「あ、はい どうやら その様で… 朝食の用意がされていますね?」
グレイゼスがアースへ向く アースが言う
「よし、では分かったな?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「はい?…あの?すみません ハブロス司令官 …そちらとこちらの装置が どこへ繋がっているかと言う ”それ”は分かりましたが… ハブロス司令官の仰る ”分かったな”は 自分の分かった ”それ”では無いと思うのですが?」
アースが言う
「そうだ ”それ”ではない では 仕方が無い 作戦内容を 詳しく説明すると」
グレイゼスが言う
「はい どうか そちらを」
アースが言う
「時間が惜しい 単純明確に マスターグレイゼス中佐 お前は こちらの装置から見える 我が父上を こちらの食堂に現れるであろう あの女の下へと向かわせる事で あの女を このハブロス家から追い出せ 以上だ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「はぃい?あの… ハブロス司令官?」
アースが言う
「どうした?マスターのお前であるなら」
グレイゼスが苦笑して言う
「こんな離れた場所からでは そう言った事は 出来ないんですが~?」
アースが衝撃を受けて言う
「何っ!?」

アーケストの部屋 前

アースとグレイゼスがマスタースピードで現れると グレイゼスが疲れて言う
「はぁはぁ… あ、あの… ハブロス司令官?何度も言いますけど 自分は…」
アースがアーケストの部屋のドアを見て言う
「ここまでは良いとして 問題は あちらの扉か…?」
グレイゼスが言う
「あの… 聞いてます?自分は知能補佐能力のマスターですので あまり 身体を動かす方は…」
アースが言う
「では 本職の知能補佐能力を使い 今度は あちらの扉を開く方法を考えろ マスターっ …どうやったら あのカメラに映る 監視モニターを見る者の目を掻い潜って 扉をを開き 且つ 入り込む事が出来る?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「えっ!?いえ…っ それは… 無理でしょう?いくらマスターのスピードを持ってしても 閉まっている扉を開けて その中へ入ると言うのは それを人間の感知を越える1/60秒で行うと言うのは 不可能です」
アースが考えて言う
「そうか… ここまで来て 後一歩と言う所で … …こんな時 エルム少佐が居れば 使えたのだが」
グレイゼスが言う
「エルム少佐が居れば…?それなら …ハイケルでも?」
アースが顔を逸らして言う
「そのハイケル少佐は 今 ここには居ないだろう?それに彼は エルム少佐とは異なり 母上の命令に 素直に従いこちらの母屋へ入らなかった …あの我が侭なエルム少佐であれば 有り得ない事だった」
グレイゼスが衝撃を受けてから呆れて言う
「な、なるほど… そう言う事で?」
アースが考えながら言う
「とは言え 今は 居なくなってしまったエルム少佐や 使えない悪魔の兵士ではなく その他の力を用いて あちらの扉を開けなければ…っ その方法は…?」
グレイゼスが苦笑して言う
「いえ… そもそも…?」
グレイゼスが思う
(お父様のお部屋の扉が 閉まっていると言う事は 当然 分かって居ただろうし…?それじゃ…?)
グレイゼスが言う
「そちらを含めた ハブロス司令官の作戦… とは?」
アースが言う
「その場で構築する」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「その場でっ!?止めて下さいっ!?それに本気でっ?まさか本当に…っ …っ!?」
グレイゼスが足音に気付くとアースを物影へ庇って言う
「誰か来ますっ 隠れてっ!」
アースとグレイゼスが物陰に身を押し込むと 足音が近付いて来て アースとグレイゼスが物陰から視線を強めて思う
((誰がっ?))
アースとグレイゼスの視線の先 レミックがトレーを手に現れる アースとグレイゼスがハッとする レミックが一瞬顔を上げ視線をアースたちへ向けると微笑する グレイゼスが思う
(あの執事は…っ)
アースが小声で言う
「レミック…っ」
レミックが軽く了承の意を示すと アーケストの部屋のドアを前に言う
「大旦那様 お薬をお持ち致しました」
レミックが一瞬間を置いてからドアを開き 大きく開くと 間を置いて中へ入る

アーケストの部屋 内

アースとグレイゼスが現れ アースが言う
「よし 作戦成功だ」
グレイゼスが呆れて言う
「何て場当たり的な…」
グレイゼスがレミックを見てから言う
「こちらの執事の方がいらっしゃらなかったら どうするおつもりで…?…って 聞いてませんね?」
アースがグレイゼスの言葉の最中に歩いていて アーケストのベッドの横へ行くと言う
「父上 お加減は如何でしょうか?」
アーケストがゆっくりとアースへ向くと気付いて言う
「ああ… メイヴンか …しばらく顔を見ていなかったが?お前の 国防軍に…?」
グレイゼスが疑問する アーケストが言う
「問題は 無いか…?」
アースが言う
「はい 父上 私の国防軍に 問題は御座いません 国防軍の仲間たちの事は 総司令官の 私が しっかりと纏められておりますので これからも どうぞご安心を」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「総司令官の…?それは」
グレイゼスが思う
(国防軍や総司令官の座は 公式に アーヴィン君へ譲渡した筈?国防本部の中央コンピュータにだって それは間違いなく…っ!?)
アーケストが軽く笑って言う
「そうか それなら…」
レミックがグレイゼスに耳打ちする
「現在の大旦那様へは アース様のご退任のお受け入れは お難しいご様子に御座いました為に」
グレイゼスが反応する レミックが言う
「大旦那様の お加減に合わせ アース様は 勤めて以前のままにと 振舞われておられます」
グレイゼスが言う
「…そう言う事でしたか 分かりました」
アースが言う
「父上 本日は…」
グレイゼスが反応する アースがグレイゼスへ振り向く アーケストが言う
「うん…?何かあったのか?メイヴン…?」
アースがグレイゼスへ視線を向ける グレイゼスが反応してから思う
(あの人が… 陛下のナノマシーンを得て 精神疾患を抑える事で 病から立ち直った …元 国防軍総司令官にして ハブロス司令官やアーヴィン君の…)
グレイゼスが顔を上げると アーケストがアースへ向けていた視線をグレイゼスへ向ける グレイゼスの鼓動が高鳴る グレイゼスが思わず息を飲む
「…っ!?」
グレイゼスが思う
(何だ?この感覚…っ?恐怖感?威圧感?…いや そうじゃない?そうであって そうではない…っ!?こんな感覚は…っ!?)
アースが疑問して言う
「…どうした?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスがアースを見て言う
「あの…っ ハブロス司令官…っ」
グレイゼスが全身の違和感に表情を顰めて思う
(何だこれは…っ!?体中が…ザワ付く様な 何かに急かされる様な この感じは…っ!?俺は あの人が怖いのか!?初めて会った筈の…!?俺は…っ いや?俺じゃない!?この意思は…っ!?この想いは…っ!?)
グレイゼスが頭を抱えて一歩下がる アースが反応しグレイゼスの下へ向いながら言う
「大丈夫か?マスターグレイゼス中佐?何か…?」
アースと入れ替わって アーケストの下にレミックが向いグレイゼスを見る アースがグレイゼスの近くへ来ると グレイゼスがアースへ顔を向けて言う
「ハブロス司令官 自分は…っ」
アースが言う
「どうした?お前は唯 父上へ事の次第をお知らせすれば良いだけだ それ以外は何もしなくて良い 後は 父上や 父上がお持ちのナノマシーンの判断へと委ねる お前は 作戦通りに 父上の近くへと向かい マスターシュレイゼスが陛下へ 行なっていたのと同じく…」
グレイゼスが言う
「出来ません ハブロス司令官っ」
アースが一瞬驚くと 表情を落として言う
「…そうか それが お前の… いや、お前が持つ ナノマシーン グレイゼスの答えか?つまりそれは マスターたちの 総意であり…」
グレイゼスが言う
「ナノマシーンの意識の疎通を 個人同士で行うには…っ 陛下にしていたのと同様に 一度でも 相手の身体に触れなければ出来ませんっ 自分は…っ」
アースが疑問する グレイゼスが思う
(この …今だかつてない ナノマシーンの反応をもたらすっ あの人には…っ)
グレイゼスが思い切って言う
「ヴォール・アーケスト・ハブロス様には 触れたくありませんっ!」
アースが衝撃を受けて 間を置いて言う
「…だと?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「…へ?」
アースが怒りに表情を引きつらせて言う
「言う事に事欠いて 貴様… 我が父上に触れたく無いだと…っ?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「あっ!?いや…っ!?ご、誤解ですっ!そうでは無くて!?…ぎゃっ!?」
アースがグレイゼスに羽交い絞めを掛けて言う
「よくも言ってくれたなっ!?マスターグレイゼスっ!私の作戦に反論するのは良いにせよ その言葉は何だっ!?庶民であろうと高位富裕層であろうと 言葉を選べと言うんだっ この馬鹿者がぁあっ!」
グレイゼスが悲鳴を上げながら言う
「ち、違いますっ!失礼しましたぁあっ 思考がっ 思考が混線しましてぇえっ!?痛タタタッ!ギブギブッ!何でっ!?大体なんでっ!?超高位富裕層ハブロス家の旦那様が こんな絞め技をぉおーっ!」
アースが締め上げながら言う
「お前たち庶民から習った 庶民流の拷問だっ!それを 高位富裕層である間に この私が実践する日が来ようとは 思っても居なかったがなあっ!?」
グレイゼスが悲鳴を上げて言う
「止めて下さい 司令官ーっ!?」
アースとグレイゼスのやり取りを背に レミックがアーケストへ言う
「では 大旦那様 アース様は現在少々 お取り込み中に御座いますので お先に お薬の方を」
アーケストが軽く笑って言う
「そうか そうだった…」
レミックとアーケストの後ろで アースがグレイゼスを絞めながら言う
「その様な悪態を吐く貴様には もはや遠慮は不要っ!命令だっ マスターグレイゼス!父上へ触れろっ!そして…っ」
グレイゼスが言う
「い、痛タタタタ…っ!イタッ 嫌ですっ!…あ、いや!?そうじゃ…」
アースがグレイゼスを締め付けて言う
「嫌だと!?貴様ぁああー!」
グレイゼスが痛がりながら言う
「ち、違っ!?そうじゃなくっ!?あぁああーっ!」
レミックが微笑して言う
「はい それでは こちらが…」
アーケストが言う
「レミック」
レミックが疑問して言う
「はい?大旦那様?」
アーケストが言う
「お前の… 探し者は…?」
グレイゼスが疑問するアースが一瞬遅れて疑問すると グレイゼスとアースがアーケストを見る アーケストが言う
「お前の王は… …見付かったか?」
グレイゼスとアースが呆気に取られ グレイゼスがアースを横目に見る アースが気付かないまま言う
「王…?」
レミックが一瞬驚いた様子から微笑して言う
「はい 大旦那様 私の探しておりました 我が王は 見付ける事が叶いました」
アースが驚く レミックがアースを見て微笑する アーケストが微笑して言う
「そうか… それは良かったなぁ?レミック…」
レミックがアーケストへ礼をして言う
「はい 大旦那様より 手向けのお言葉を頂戴し このレミック至極光栄に御座います」
グレイゼスが思う
(どう言う事だ?あの執事さんは…?レミックさんは ハブロス司令官が ペジテ王ハブロの子孫である事を知って居ると言う事か?…いや このハブロス家の執事なんだ だから歴史的に それらを知って居ると言う事か?それなら 大旦那様である ヴォール・アーケスト・ハブロス様だって 血族と言う意味で言えば ペジテ王ハブロの子孫である筈… それなのに?)
通路で柱時計が音を鳴らす 皆が反応する

食堂

軍曹とルメリアが食卓に居て ルメリアが微笑して言う
「それはどちらも… あの者が勝手に行った事です 防長閣下はどうか… この際です 彼の事は…」
軍曹が手を握り締める 執事がやって来て言う
「奥様っ お話中 失礼致しますっ」
ルメリアが言う
「後になさい 今は このハブロス家の大変重要な」
食堂のドアが開かれる中 執事が焦って言う
「ハブロス家のご当主様 アース・メイヴン・ハブロス様の お戻りです!」
ルメリアが驚いて言う
「な…っ!?」
軍曹がハッとして振り返ると言う
「兄貴っ!?」
開かれたドアの先 アースが高飛車に立っていて言う
「待たせたな?アーヴィン?」
軍曹が苦笑して言う
「おお…っ 良かったのだっ 兄貴さえ戻って来てくれれば 自分は…」
軍曹がホッとして椅子へ身を沈め方の力を抜く ルメリアが立ち尽くしていると アースが軽く首を傾げて言う
「おや?そちらに居られるのは…?」
ルメリアがハッとすると 一瞬表情を顰めてから アースの下へ向かい礼をして言う
「お… お帰りなさいませ …アース様 尊高なるお役目を お疲れ様に御座いまして 御無事にお戻りの事 …母として 至極 安堵いたしましたわ?」
アースが言う
「これはこれは 母上ではあられませんか?麗しの我が母上の面影が 少々 霞んで見える程とは?22年の年月の為か その間に 召抱えた我妻たちへの 愛故にか…?」

【 ? 】

グレイゼスが視線を落として見詰めている

回想

アーケストの部屋

柱時計の鐘が鳴り終える アースがグレイゼスを絞めた状態で言う
「アーヴィンの出隊時間である 7時の鐘が鳴ってしまった もはや時間が無い」
アースがグレイゼスを開放すると言う
「私は食堂へ向かい 時間を稼ぐ お前はその間に 父上へ御報告を行え 命令だ マスターグレイゼス!」
アースが立ち去る グレイゼスが慌てて言う
「で、ですから 自分は出来ないと… …あっ!ハブロス司令官!?」
アースが部屋を出て行く グレイゼスが困って言う
「…外には監視カメラがあるというのに 堂々と?これはもう…」
グレイゼスが顔を向ける 視線の先 アーケストがレミックに薬を飲まされている グレイゼスが視線を下げるとハッとして 自身の身に触れて思う
(怯えが… 無くなった?)
グレイゼスが顔を上げる 視線の先では アーケストが静かに目を閉じている グレイゼスが思う
(…今なら?)
グレイゼスがアーケストの下へ向かう アーケストが目を閉じたまま言う
「今日は特に…」
グレイゼスがハッとする アーケストが言う
「とても良く 聞こえる様だ… 美しい音が… 私の最愛の…」
グレイゼスが疑問していると レミックが言う
「大旦那様」
グレイゼスがハッとする レミックが言う
「ご拝聴中の所 お邪魔を致しまして大変申し訳御座いません 本日は アース様のお客様が 大旦那様と 大切なお話をなさりたいと…」
グレイゼスが衝撃を受けて思う
(う…っ 紹介されたっ もう 逃げられない…っ!?)
レミックが言う
「お越しに御座いますので 少々 そちらのお時間を 頂戴頂けますでしょうか?」
アーケストが言う
「うん?ああ…」
グレイゼスがハッとして言う
「は、はいっ 自分は… その…っ」
アーケストが言う
「マスターグレイゼス中佐か?」
グレイゼスが驚いて言う
「え…?」
アーケストがグレイゼスへ向くとグレイゼスが慌てて言う
「は、はい!自分は マスターグレイゼス中佐でありますっ ヴォール・アーケスト・ハブロス…様?」
グレイゼスが思う
(何で?俺の名前を?ナノマシーンは共鳴はしていない それなら…?あ、でも そうか?ハブロス司令官が 以前の内に?…もしくは さっきまで俺を呼んでいた それを聞いていて?…それなら)
アーケストが言う
「ああ… お前に任せて 良かった お前は…」
グレイゼスが言う
「は、はいっ!それでは その… ハブロス司令官の… …あっ いえっ!?アース・メイヴン・ハブロス様の 御命令に従いましてっ!?し、下々の自分めが 失礼を致しましてっ 大旦那様のお手に 少々 触れさせて 頂けませんでしょうかと…っ!?」
グレイゼスがアーケストの手を見て緊張しながら 自分の震える手を向けていると アーケストが言う
「マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスがビクッとして言う
「は、はいっ!?すみませんっ!?」
アーケストが言う
「ついに 見付けてくれたか」
グレイゼスが疑問して言う
「え…?」
アーケストが言う
「だから 今日はこんなに 良く聞こえるのだな?有難う マスターグレイゼス中佐 お前は 私との約束を守ってくれた 私の…」
グレイゼスが言う
「約束…?俺と…?いや あの 自分は…?」
グレイゼスが思う
(貴方と お会いしたのは 今日が 初めてで…)
グレイゼスの鼓動が強く響く グレイゼスが驚く アーケストが言う
「私の探し者… 国防軍に置いて 最も優秀な… マスターグレイゼス中佐が 見付けてくれた …レミック 私も… やっと取り戻したぞ?」
レミックが表情を落として言う
「左様に御座いますか 大旦那様…」
グレイゼスがレミックを見る レミックがグレイゼスを見ると苦笑する グレイゼスが思う
(…そうか ひょっとして これも ご病気のせいで?…それなら?)
グレイゼスが言う
「あ、あの… お、お待たせを致しました様で?申し訳ありませんでした その…?」
アーケストが微笑して言う
「ああ… 待っていたとも マスターグレイゼス中佐 お前が見付け出してくれるのを… 私の… 愛しの 妻を…」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「妻を…?」
グレイゼスが思う
(あぁ… そう言う事か?ヴォール・アーケスト・ハブロス様は 探していたのか?あの奥様を?ご自分の妻を …何だ そう言う事か それなら…?そうだよな?俺たちにとっては 怖くて厄介な あの大奥様だが 紛れも無く この大旦那様の奥方で…)
グレイゼスが言う
「はいっ 見付けましたよ!奥様を!今は!…えっと 食堂に居られますので…?」
アーケストが呆気に取られた後微笑して言う
「そうか… では… そうだな?皆で 食事にしよう… 家族皆で… …もう 何年振りか?ハブロス家に… 我が愛しの妻が…」
グレイゼスが苦笑してから アーケストの腕に触れると思う
(これで 後は…)
アーケストが言う
「………が」
グレイゼスが驚いて目を見開く グレイゼスの脳裏に記憶がフラッシュバックする グレイゼスが呻きと共に一瞬目を瞑ってから頭を押さえる
アーケストが微笑して言う
「戻って来てくれたか」
グレイゼスが驚いて言う
「そんな…っ!?それじゃっ!?」
グレイゼスがレミックを見る レミックがグレイゼスへ鋭い眼光を向けている アーケストが言う
「マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスがハッとしてアーケストへ向き直りながら言う
「は、はい!…え?」
アーケストが微笑すると 頷いて言う
「良く来てくれた 同じ名を持つマスターとは言え 私の知る マスターグレイゼス中佐ではないが そのお前は… 知っていた様だな?私の愛しの妻の …その居場所を?」
グレイゼスが呆気に取られる レミックが呆気に取られた状態から言う
「大旦那様?…いえっ アーケスト様っ?」
アーケストがベッドから身を起こすと レミックへ向いて言う
「ああ そうだったな レミック すまないが今直ぐに 1つ仕事を頼まれてくれ …お前の主ではなくなったが その私の依頼を …命令に従ってくれるか?」
レミックがアーケストの前に跪いて言う
「はい 何なりと 大旦那様」
アーケストが微笑して頷く グレイゼスの前でアーケストが立ち上がる グレイゼスが呆気に取られて後退る

回想終了

グレイゼスが閉じていた目を開くと言う
「マスターグレイゼス中佐… もう1人の… いや 以前のマスターグレイゼス 貴方は あのお方から 人探しを頼まれていたのか?それも…」
グレイゼスが手に持っていた写真を見る 写真にはレーベットとアリシアとグレイゼスとハイケル そして光の加減で見えないもう1人の女性が映っている グレイゼスが言う
「その探し人は レーベット大佐の …奥様」
グレイゼスが視線を戻して言う
「貴方の親友の奥様だった… だから 国防軍から逃げ出したのか?…父さん?」
グレイゼスの前に 小さな墓標がある マスターグレイゼスの名ともう1人の女性の名前 女性の名前の近くに花が落ちる グレイゼスが立ち去って行く

【 喫茶店マリーシア 】

グレイゼスが店の看板を見上げてから 苦笑して言う
「…店の名前 …変えるかな?」
グレイゼスが思う
(そうだよな?ともすれば… 今の俺の上官でもある あの凄いお方の目に止まって…?)
グレイゼスが苦笑すると店のドアを開けて思う
(先代のマスターグレイゼスのお咎めを 現代のマスターグレイゼスでもある 息子の俺が受ける事になったりとか…?それこそ…?)
グレイゼスが独り言を言う
「ARTから除名とか?」
マリが言う
「いらっしゃいませ!喫茶店マリーシアへ…!あ、マスター!お帰りなさい!」
グレイゼスがマリへ向くと微笑して思う
(最も…)
グレイゼスが言う
「ああ、ただいま… って言っても ARTへ出隊する前に 一度寄っただけなんだけど 今朝は 店の準備も出来なかったから… 大丈夫そう?何か問題は?」
マリが敬礼の真似をして言う
「はー!司令官様ー!問題は ないでありますー!」
グレイゼスが呆気に取られつつ苦笑して言う
「そ、そう…?それなら 良いんだけど… それじゃ…?」
グレイゼスが店から出ようとして言う
「なら 俺はこのまま行っちゃうけど 後は宜し…」
アースの声が聞こえる
「如何に問題はなかろうとも…」
グレイゼスが衝撃を受けて思う
(こ、この声は…っ?)
アースがカップを手にしたまま言う
「司令官たるもの 己の持ち場を 一通りの確認も行わずに 立ち去ろうと言うのは 頂けないな?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが叫ぶ
「ハブロス司令官ーっ!?」
マリが含み笑いをしている アースが不満げに表情を顰めてから言う
「それから 先日も言ったと思うが…」
グレイゼスが慌てて周囲を見てからアースの横へ行って言う
「な、何故っ!?」
アースがグレイゼスを見て言う
「その様な大声で呼ばずとも 静かな店内にあって その声は十分に聞こえている マスターグレイゼス中佐 …お前はアーヴィンか?」
グレイゼスが衝撃を受けた後言う
「す、すみません… 驚いたもので つい… って そうではなくてっ!?それほどに驚かされる 貴方様が何故!?この庶民の喫茶店にっ!?」
アースがコーヒーを一口のみ終えると言う
「あぁ… やはり ミネラルヴォーターで淹れられたコーヒーは 無駄な雑味が消え 良い味となったな?マリーニ・アントワネット・ライネミア・アーミレイテス殿 上出来だ」
グレイゼスが衝撃を受ける マリが微笑して言う
「有難う御座います お褒めに預かり光栄でありますです!ハブロス様!」
アースが微笑してコーヒーを飲む グレイゼスが呆気に取られつつマリへ言う
「じ、実践してたの?」
マリが苦笑して言う
「本当に違うのかな~ って?自分用に試してみるつもりで 買って来ていたものだから?」
グレイゼスが言う
「そ、そう?…ま、まぁ 良いんだけどね?その…」
グレイゼスがハッとして アースへ向き直って言う
「って そうではなくてですねっ!?」
アースが言う
「それから 私はもちろんだが お前も本日はARTへの出隊日だ そうとありながらも この時間に喫茶店で時間を潰すとは 何事か?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「その貴方が言わないで下さいっ!?それに自分は 直ぐにでも 向かうつもりでしたがっ ARTトップの司令官である貴方こそ!?」
アースが言う
「そうだな ARTの司令官としては 頂けないが 私は それ以前に 人として 庶民であろうと高位富裕層であろうと果たすべき義務を行う為 こちらでコーヒーを頂いていた」
グレイゼスが呆れて言う
「貴方の人としての義務は 自分が提案したコーヒーの試飲ですか!?…っと?」
グレイゼスの前に封筒が差し出される グレイゼスが疑問すると アースが言う
「相手の地位や身分に関わらず 依頼をやり遂げてくれたその者へは 相応の報酬を支払うべきだ …相手が仲間だと言うのなら 尚更だな?」
グレイゼスが呆気に取られたまま言う
「報酬…?」
アースが言う
「最も 任務の成功が 目に見えていようとも 完了までを留まる事もまた 依頼を受けた者としての 責務だとは思うが?」
グレイゼスが呆気に取られた状態からアースを見て言う
「あの… 自分は… …っ」
アースがグレイゼスへ封筒を押し付けると言う
「高位富裕層の手に 5秒以上物を持たせる事は 無礼に当たる そして 以前も教えた事だが その高位富裕層からの報酬は?」
グレイゼスが受け取っていた封筒を手に苦笑して言う
「…はい 断る事は無礼でしたね?分かりました では…」
アースが言う
「最も 今回は 高位富裕層としてではなく 私はお前の仲間として 仲間のお前を使っただけだ」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「庶民の仲間は 仲間を使う事はしませんが… ですが 分かりました 高位富裕層と庶民が仲間として作戦を行い 任務を成功させた …そしてこちらは 成功報酬 庶民流に言えば お礼と言う事で?」
アースが言う
「そうだな?」
アースがコーヒーを飲む グレイゼスが苦笑してから言う
「はい それでは…」
グレイゼスが思う
(とは言っても ハブロス司令官の事だ 庶民流のお礼とは言え その金額は…)
アースがカップから口を離して言う
「それから 庶民の報酬には 小切手や何かよりも 現金が好みなのだろう?従って 今回は私も そちらの庶民の在り方に従い その様にと実行をした」
グレイゼスが反応してから封筒を見て思う
(…って事は この封筒には現金が?…にしては 割と 薄い…?)
アースが悪微笑して言う
「気になるのなら その場で中身を確認してくれても 結構だぞ?」
グレイゼスが衝撃を受けてから言う
「えっ!?あ、いえっ それは…っ 庶民同士であっても 失礼に当たるとっ?」
アースが軽く笑って言う
「心配するな マスターグレイゼス中佐 中身も… 庶民流に則ってやったからな?心配せずとも 今回は お前が驚いて 司令官室へ乗り込んで来る様な金額は 入っていない」
グレイゼスが中身を見て衝撃を受けて言う
「ほ、本当だっ!?割と普通っ!?…って良いますか?あの… 庶民であっても もう少し… あの任務内容を考えれば?」
アースが横目に言う
「少ないと言うのか?そちらは 庶民同士であれば 無礼に当たるのだろう?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「貴方は庶民じゃないですからっ!?」
アースが笑う グレイゼスが呆れてから言う
「…まぁ 良いです …仲間ですからね?庶民同士であれば… 妥当な金額ですよ …正解です ハブロス司令官」
アースが言う
「そうか では 任務成功だ 庶民の常識を学び実践を行うのにも 今回の任務は実に 私にとって良い経験となった」
グレイゼスが言う
「自分にとっては 庶民が高位富裕層へ 庶民の常識を教える事の難しさを知る 良い経験になりました…」
グレイゼスが思う
(もう 2度とやりたくないけど…)
アースが言う
「では 互いに良い経験となったな?…それはそうと マスターグレイゼス中佐 お前は今まで 何所へ行っていたのだ?」
グレイゼスが反応しアースを見る アースが言う
「レミックより聞いたが お前は 私がお前の前から去った後 時を置かずして 屋敷を出て行ったと?任務に携わった者として また 必要時には それなりの力を扱えるお前は 少なくとも 作戦の最重要箇所の確認は済ませるべきだろう 司令塔を預かる者であれば 尚更だぞ?マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが言う
「あ… はい すみませんでした 自分は… …いえ 自分はやはり 庶民なもので 超高位富裕層様のお屋敷には 居た堪れずに …逃げ出してしまいました」
アースが言う
「ほう…?それほどに あの屋敷は お前たちには居心地が悪いか?同じ庶民出身のハイケル少佐は 問題が無い様子だが?そして 私の予測に置いては お前は こちらの店の様子を気がかりに 先んじて撤退したのだと その様に考えたのだが?」
グレイゼスが言う
「あ、そうですね?そちらも在りましたが…」
アースが言う
「故に 私は この店へと向かったのだが その私は 随分と待たされた そもそも お前に遅れて向った私は お前が店を後にするまでに 間に合わないかとも思っていた程なのだが… となれば そのお前はどちらへ向っていた?」
グレイゼスが困って言う
「それは…」
グレイゼスが視線を巡らせた状態から アースを見ると アースがグレイゼスを見ている グレイゼスが反応すると思う
(…この人へ 隠し事をしても 無駄か?それなら…)
グレイゼスが言う
「…墓地へ」
アースが反応する グレイゼスが苦笑して言う
「両親の墓へ寄っていました ずっと行っていなかったもので… 花だけでも投げて置こうかと?」
アースが苦笑して言う
「…そうか 確か お前の父親も 同じマスターの名を持ち 国防軍の… 国防軍レギスト駐屯地情報部へ 在籍していたそうだな?」
グレイゼスが言う
「はい その様ですね?マスターたちの従軍情報は 脱退時に消去されてしまうので 詳しい在籍期間や所属や業績などの記録は残されず 自分もデータ上にての確認は出来ませんでしたが… 以前 その自分の父親と友人だったと言う 上官方から 話の上で伺いました」
アースが言う
「では そちらの話の上であっても 確認はしたか?何故 お前の父親は 国防軍を脱退したのかを?」
グレイゼスが反応する アースがグレイゼスを見て言う
「それも ナノマシーンの除去までを行って」
グレイゼスが間を置いて言う
「…いえ そちらは 聞いては居ません」
アースが言う
「そうか しかし 詳細は聞かずとも あの国防軍レギスト駐屯地の情報部を 任されていた程のマスターだ ナノマシーンの除去を行う位の事をしなければ その地位を退く事は許されなかったのだろう そして ナノマシーンを失っていなければ 亡くなりはしなかった」
グレイゼスが沈黙する アースが言う
「お前が 私の父に会いたくないと言ったのは そちらが理由か?」
グレイゼスが言う
「いえ… 分かりません あの時自分は… 少なくとも 自分自身はハブロス司令官の作戦に異論は有りませんでした しかし… 自分の持つナノマシーングレイゼスが 反応を示したのは確かです」
アースが言う
「そうか 分かった …私個人として お前へ詫びる …すまなかった」
グレイゼスが反応してアースを見る アースがグレイゼスを見て言う
「しかし ARTの司令官である私と 同じく ARTの司令塔主任のお前にとっては 必要な作戦だった 従って… アース・メイヴン・ハブロスとしては 詫びるつもりは無い」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「そ、それは…っ 結局 どちらですか!?」
アースが言う
「どちらだろうな?」
アースが立ち上がる グレイゼスが言う
「あの…」
アースが言う
「それはそうと マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが言う
「はい ハブロス司令官?」
アースが言う
「我々の作戦と共に こちらの店の確認が済んだのであれば お前は さっさとARTへ出隊をしろ そのARTは お前の指揮下に置いて行った作戦により 損傷率80%との話だ とても ミネラルヴォーターで淹れられた コーヒーなどを 堪能している暇は無いぞ?」
グレイゼスが言う
「それを堪能していたのは貴方でしょうっ!?ハブロス司令官っ!?」
アースがコートを着て言う
「お前の墓参りも済み 私のハブロス家の問題も解決した 我々の作戦は完了だ では 行くぞ マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが反応して言う
「ハブロス家の問題… …あのっ ハブロス司令官っ」
アースが歩き始めた足を止めて言う
「何だ マスターグレイゼス中佐」
グレイゼスが言う
「えっと その… ハブロス司令官は…」
グレイゼスの脳裏にアーケストの言葉が蘇る

アーケストが呆気に取られた後微笑して言う
『そうか… では… そうだな?皆で 食事にしよう… 家族皆で… …もう 何年振りか?ハブロス家に… 我が愛しの妻が…』
グレイゼスが苦笑してから アーケストの腕に触れると アーケストが言う
『マリーシアが』
グレイゼスが驚いて目を見開く アーケストが微笑して言う
『戻って来てくれたか』

グレイゼスが手を握り締める アースがその様子に疑問して言う
「マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスがハッとする グレイゼスの脳裏にアーケストの声が聞こえる
『マスターグレイゼス中佐』
アースが言う
「どうした?何か問題か?」
グレイゼスが言う
「あの… ハブロス司令官 …の母上様 なのですが…っ」
アースが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…あぁ 彼女は… ルメリア・クリス・マリシェッド・ハブロスは 正式に ハブロス家から除名をされた 私には… いや?私とアーヴァインには これで 母親は居ないと言う事になった」
グレイゼスが困って言う
「いえ… その…」
グレイゼスが思う
(もう1人の…)
アースが言う
「それに… そもそも 彼女は アーヴァインの母親であって 私の母親ではない」
グレイゼスが驚いてアースを見上げる アースが苦笑して言う
「私の母親は 遥か昔に 行方不明になってしまったそうだ まるで ハブロス家に伝わる 悪魔の呪いの様にな?」
グレイゼスが言う
「悪魔の呪い… それは… 確か…?」
アースが言う
「悪魔の呪い… 何度でも蘇る 悪魔の兵士に施されていると言う 神の刻印も 似た様なものだが ハブロス家の悪魔の呪いと言うのは 何度でも蘇るという訳ではない …いや ともすれば そうとも言い換えられるのかもしれないが」
グレイゼスが言う
「では そちらは?」
アースが言う
「そうだな… ならば 元国防軍情報部従軍の マスターグレイゼス中佐 お前は 国防軍総司令官を務めた ハブロス家の家族の名前を 何人知っている?」
グレイゼスが言う
「え?えっと 唐突ですね?しかし それでしたら …今のヴォール・アーヴァイン・防長閣下総司令官 アース・メイヴン・ハブロス前総司令官 ヴォール・アーケスト・ハブロス元総司令官 ヴォール・ラゼル・ハブロス元総司令官 ヴォール・エゼル・ハブロス元総司令官… こんな所ですかね?」
アースが言う
「ああ、上出来だ しかし 不思議だと思わないか?」
グレイゼスが疑問して言う
「…え?何がです?たまに合間合間にハブロス家以外の 総司令官が入る事はありますが やっぱり アールスローン歴代の国防軍総司令官と言われるだけあって 必ずハブロス家の名前は1世代に1人は入っていますが?」
アースが言う
「ああ、そうだ しかし お前にも知らせた筈だ ハブロス家では… 常に2番目の子供へ ヴォールの名を与えていると言う事を」
グレイゼスが反応して言う
「そ… そう言えば?」
アースが言う
「そして 今お前が名を連ねた ヴォールの名を持つ彼らの 総司令官としての任期の前には 常に 数十年間の空白が在り その間の総司令官の名は 記されていない つまりヴォールの名を持たない ハブロス家の者の名は記されていないと言う事だ ともすれば アース・メイヴン・ハブロスの名が消え ヴォール・アーヴァイン・ハブロスの名のみが残るような事があれば?」
グレイゼスが驚いてアースを見る アースが微笑して言う
「それは アース・メイヴン・ハブロスが ハブロス家に伝わる悪魔の呪いにより その名を消されてしまったと言う事になる 情報の上に置いても …人々の記憶の上に置かれても…」
グレイゼスが言う
「そんな… 事が…?いや まさか?…本当に?」
アースが言う
「本当だとも そちらの証拠に 私も覚えていないのだ… 存在した筈の 父上の兄上様のお名前も 叔父上の兄上様のお名前も… それとも?お前は覚えていてくれるか?マスターグレイゼス中佐 アーヴァインの兄であり 今は情報の上にも人々の記憶にも在る 『アース・メイヴン・ハブロス』を… 私の名を 永遠に?」
アースがグレイゼスを見る グレイゼスが呆気に取られていた状態から間を置いて言う
「自分は…」
グレイゼスが一度目を閉じてから意を決して言う
「…自分は 忘れませんっ!…その自信が在りますっ 貴方は…っ アース・メイヴン・ハブロスは 我々の仲間ですからっ」
アースが一瞬反応した後苦笑して言う
「そうか 心強いな …では 頼んだぞ?」
グレイゼスが言う
「…はいっ」
アースが微笑して出口へ向う グレイゼスが思い出して言う
「あ、それなら ハブロス司令官っ?」
アースがドアを開け立ち止まって言う
「何だ?」
グレイゼスが言う
「不躾ですが 1つ …この店の …この喫茶店の名前は?」
アースが疑問して言う
「うん?」
アースがドアの外に見える店の看板を見上げる グレイゼスが言う
「…どの様にと 感じられますか?」
アースが看板を見たまま言う
「…マリーシア」
グレイゼスがアースを見詰める アースが言う
「そうだな?特に悪くはないと思うが?…それがどうかしたのか?」
グレイゼスが驚く アースが苦笑して言う
「しかし どうせなら マリーニへ変えた方が良いのではないか?聞いた話では この店の常連客も皆 彼女のファンだと言うではないか?」
マリが微笑して言う
「えへっ!」
グレイゼスが苦笑して言う
「…そうですね?なら… 変えようかなぁ?マリ?」
マリが言う
「うふふっ 私はどちらでも?それに マリーニさんは グレイ君の ご恩あるお方に関する お名前なのでしょう?だったら?」
グレイゼスが言う
「うん… まぁ そうなんだけどね…」
グレイゼスが店内に飾られているハープを見て言う
「…でも それも …そろそろ 潮時かな?」
アースが言う
「それとも 新装開店を狙って 喫茶店アリアへ替えると言うのなら 特別に アリアの特設ソロステージを開かせてやっても良いぞ?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「いえっ 折角ですがっ そちらは…っ!?」
アースが言う
「冗談だ 喫茶店の店内で そちらのハープやヴァイオリンならまだしも オペラの歌では店に合わないだろう」
グレイゼスが苦笑して言う
「はい そうですね…?」
アースが言う
「しかし 残念だったな?もう少々早くに この店を知っていれば」
グレイゼスがアースを見る アースが言う
「そちらのハープを聴く事が出来たのだろう?お前が居ない間に 彼女から話を伺った …以前は 腕の良いハープ演奏者を雇っていたそうだな?」
グレイゼスが言う
「あ… はい…」
アースが言う
「その者は 今はどちらへ?」
グレイゼスが言う
「その子は…」
グレイゼスの脳裏にアリシアの姿が浮かぶ グレイゼスがアースを見ると アリシアとアースが似ている事に気付く グレイゼスが一瞬表情を悲しめた後言う
「…何処かへと 旅立ってしまいましたよ …若い子だったので 今頃 何所で何をしているのか…?」
アースが言う
「そうか… 名は?」
グレイゼスが誤魔化して言う
「いやあ!もしかしたら!もう 誰か良い男性と結婚して 幸せになってるかもしれませんね!?だとしたら もう この店には呼べないかな?この店は… あの頃とは違って 今はもう マリーニのファンが集まる 本当に庶民の喫茶店で… 正直 ハープやヴァイオリンの演奏などは 似合わない店になりましたから?」
アースが店内を見てから言う
「なるほど?…言われて見れば そうかもしれないな?」
グレイゼスが言う
「…うん!それなら やっぱ 店の名前も 思い切って変えちゃおうか?マリ?庶民の喫茶店マリーニにさ?」
マリが微笑する アースが言う
「そちらのマリーニ・アントワネット・ライネミア・アーミレイテス殿は」
グレイゼスが衝撃を受ける アースが言う
「もはや言うまでも無く 女系高位富裕層の者だが …それでも 本人が庶民の喫茶店を望むのなら そちらで良いのだろう 私もそちらの思想には 賛成だ」
マリが微笑して言う
「有難う御座います ハブロス様!」
アースが苦笑する グレイゼスが苦笑する アースが言う
「では 少々長居をし過ぎた 急ぐぞ マスターグレイゼス中佐?」
グレイゼスが反応してから言う
「え?あ… はい そうでした …それじゃ 行って来るから マリ」
マリが微笑して言う
「うんっ いってらっしゃい グレイ君 …行ってらっしゃいませ ハブロス様!」
グレイゼスが衝撃を受ける アースがマリへ視線を向けて言う
「ああ、有難う」
グレイゼスが苦笑すると グレイゼスがアースの近くへ行くと 一瞬で2人が居なくなり 扉がゆっくりと閉まり 店の看板が見えなくなって 来客鈴が鳴る


続く
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ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

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