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22章
アールスローン戦記Ⅱ 神と共に失われし者
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ラミリツが言う
「けど 探すと言ってもどうやって?ここは何もないし その上 何処までも繋がっているみたいで 先も見えないよ?」
アースが言う
「ここには元々何もない ここは我々の生きる次元とは異なる位相であり 尚且つ 重なり合う事もある その場所だ」
ラミリツが言う
「異なる位相?」
ハイケルが言う
「重なり合う事も有る… と言う事は?」
隊員Fが言う
「異なる位相にこの場所があって 重なり合う事も有る… って事は その瞬間がさっきの瞬間だったって事かな?」
アースが言う
「そうだ そして この次元こそが 奴ら神の居場所であり この場所から奴は 我々の世界 …我々の次元へと干渉していた …となれば この場所で奴の本体を 倒さなければ意味が無い」
隊員Aが辺りを見渡して言う
「けど… 肝心のそのターゲットが居ないんじゃ?」
アースが言う
「いや?言った筈だ ターゲットは目前だと」
アースが瞬時に手を向けて空間を掴むと ベガの腕が掴まれ 姿が現れる ベガが驚いて言う
「馬鹿な…っ!?この空間で何故!?」
ART隊員たちが驚き ラミリツがプラズマセイバーを構える 瞬間 銃声が乱発される 皆が顔を向けた先 ハイケルが両手の銃をベガへ向けて連射している 隊員Bが言う
「さっすが 少佐ぁー!」
隊員Fが言う
「神様に 一秒も躊躇なく…」
隊員Cが言う
「だから ありえねぇって… …ん?あれ?」
皆が疑問する 隊員Iが言う
「…当たって …無くないか?」
隊員たちが疑問する
ハイケルの双方の銃が弾切れの撃鉄音を響かせる ハイケルが視線を向けて言う
「頭部はもちろん 心臓やその他 急所と呼ばれる場所は 全てを撃ち抜いた筈だが」
ベガが掴まれていない手に杖を表す アースが気付くと同時に 周囲を眩い光が覆い轟音が響く
ART隊員たちが吹き飛ばされ悲鳴を上げる
「「うわぁああー!?」」
それぞれが吹き飛ばされた場所で地に倒れ 身を起こしながら言う
「痛ってぇ… …くない?」
皆が自身の無傷に疑問して確認している中 ラミリツが言う
「ハブロス司令官!」
ベガの前で アースがベガの腕と杖を掴んだまま顔を上げる ベガが言う
「ほう?やはりその力 強き防衛の力とあるか?我が力を抑えるとは 並々ならぬ力よ」
アースが自身の負傷を押し殺し 視線を向けニヤリと笑う
ラミリツとART隊員たちが気付き ラミリツがプラズマセイバーを発生させ 叫びながら向かう
「やぁああーー!!」
ラミリツがプラズマセイバーでベガの身を斬るが プラズマはベガの身体をすり抜ける ラミリツが驚き目を見開く ART2隊員らが驚き ハイケルが言う
「プラズマセイバーでも無理か」
ラミリツが勢いのまま前方へ倒れそうになるが 受け身を取って立て直し 困惑の表情のままベガを見る
隊員Bが言う
「どうしようっ!?サッちゃんっ!?」
隊員Bが振り返った先 隊員Cが言う
「俺に聞くなーっ!」
アースがベガの腕を離し 替わって襟首を掴んで引き寄せて言う
「ならばこれでっ!」
ラミリツが慌てて言う
「ハブロス司令官っ!?」
隊員Aが言う
「そもそも 一体どうなってるんだ?銃弾もプラズマセイバーも すり抜けた相手を 掴めるって…!?」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー?」
隊員Cが言う
「な、ならぁ まさか?銃も剣も効かない相手には!拳でって事か!?」
隊員Fが気付いて言う
「いや 違う」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「違うのかよっ!?」
皆が隊員Fを見る 隊員Fが言う
「思い出してくれ 以前にも こんな事があったじゃないか?」
隊員Nが言う
「い、以前にもってっ!?」
隊員Vが言う
「以前も何もっ 神様と戦うだなんて んな罰当たりな事 しょっちゅうやってねぇよっ!?」
隊員Fが言う
「あの時 俺たちが戦った神 あの ネロ・アーク・フォライサーにだって 俺たちは 手も足も出せず 銃弾も剣もすり抜けてしまったけど あの時だって ハブロス司令官だけは 捕まえる事が出来たんだ それで…」
隊員Nが言う
「そ、そう言やぁっ!?」
隊員Vが言う
「そうだったぁっ!?」
ハイケルが言う
「しかし あの時とは異なり 今は 同状況でありながら 私の銃弾も ラミリツ隊長のプラズマセイバーすらすり抜けた」
ハイケルが銃を発砲する 隊員Cが衝撃を受けて言う
「って 撃ったぁあっ!?」
隊員Aが苦笑して言う
「ターゲットの直前に ハブロス司令官が居るのに その人を掠める様な狙撃をするなんて事は 心理的に出来るもんじゃ…」
ハイケルが一瞬疑問した後 銃を連射する 隊員たちが衝撃を受ける 隊員Vが言う
「心理的に出来るもんじゃない射撃を 連射してるけど…?」
隊員Bが言う
「さっすが 少佐ぁー!」
隊員Cが言う
「だから ありえねぇって… しかも銃弾は利かないって事が もう」
皆がハイケルを見る ハイケルが言う
「いや 私は 命中率100%を持ってして 間違いなく ターゲットを打ち抜いた つもりだったのだが…」
アースの頬を一筋の血が伝い頬が切れている 隊員たちが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「あれー?命中率100%の少佐も 内1発は99%になる事もあるのでありますかぁー?少佐ぁー?」
ART2隊員らがシュナイゼルへ向く シュナイゼルがラミリツへ向いて言う
「隊長 先程の ハイケル少佐の…」
ラミリツが言う
「うん 最初に撃ったハイケル少佐の銃弾や 僕のプラズマセイバーには まるで無関心だった あのベガが さっきの一発だけっ!?」
アースが叫ぶ
「ラミリツ隊長!ハイケル少佐!剣だっ!もう一度…!」
ラミリツとハイケルがアースを見る
皆が顔を見合わせてアースを見る アースが手に力を込め 横目に隊員たちを見て言う
「プラズマセイバーではないっ 物理的な剣だ!」
ラミリツが息を飲む
「っ!」
ハイケルが自分の腰にある サーベルを見てから言う
「細身のサーベルよりも 銃弾の方が殺傷力は高いのだが…?」
アースが視線を向けないまま言う
「物質も液体も消滅させてしまうプラズマセイバーや 同じくそのスピードで何も乗せられない銃弾では駄目だっ 人の振るう剣… いや 突き刺す剣が良い それが2つもあれば きっと足りるだろう!…なぁ?ベガ!」
ベガが驚き言う
「何を…っ」
アースが言う
「先程のハイケル少佐の乱射 100%お前の身体のみを撃ち抜いた銃弾は避けなかったが 唯一 私の頬を掠めた銃弾だけは そのお前が物理的にかわした …つまり その1発だけは 100%当たっても無傷のお前が 避ける必要があったと言う事だ」
ベガが一瞬表情を歪ませてから言う
「それが何だと?貴様にそれが分かった所で 行える事など」
アースがニヤリと笑って言う
「素直だな 神よ?それとも それが 神たる矜持か?いや?そもそも 新人類の私の力を持って お前の身を守ろうとしていたのだからな?やはり お前は 弱い と言う事だ」
ベガが言う
「何が言いたい?真僅かな時の流れにさえ その身を保つ事も出来ぬ 脆き新人類の貴様が」
アースが言う
「その僅かな時の流れに生きる私が ここに居る仲間たちや アールスローンに住まう仲間たち その家族たち そして これからも生まれては消えていく 彼らの時を紡ぐ事が出来ると言うのなら…っ」
アースが言う
「ラミリツ隊長!ハイケル少佐っ!今直ぐ 私の背後から ターゲットを貫け!命令だっ!」
皆が驚き ラミリツが言う
「な…っ 何言ってるのっ!?ハブロス司令官っ!?」
ベガが言う
「貴様 正気か?その様な事をすれば 貴様の身も唯では済まぬ」
アースがニヤリと笑んで言う
「人の振るう剣で 私もろともお前を貫くとあれば その刀身には 貫かれた私の血液が伝う… お前の身を捕らえる事が出来る 私の魂が付着した その剣であれば 私以外の彼らの剣であっても お前の身体を捕らえ 攻撃を行なわせる事が出来る そうだろう?神よ?」
ラミリツが言う
「けど…っ そんな…っ」
ハイケルが言う
「そうなのか?では… 狙いは ハブロス司令官越しの ターゲットの急所 最も的確である急所は 胸部か頭部… ターゲットの固定が行なわれている 現状であるならば それは胸部 心臓を狙う事になるのだが?」
ラミリツが言う
「無理だよっ ハブロス司令官!今の状態じゃ どうやったって ハブロス司令官の急所を外せないっ 心臓の周囲だって剣で貫かれたら 同じ事!ハブロス司令官までっ!」
アースが言う
「外す必要は無い 確実に捕らえろ!届かせる魂が足りなければ それこそ無駄になる!」
ラミリツが手を震わせる その横でサーベルが引き抜かれる ラミリツが驚いて顔を向けると ハイケルが言う
「了解 司令官」
ラミリツが目を見開く 皆が息を飲む ラミリツが震えながら言う
「…何 …言ってるの?無理… …出来ないよ?そんなの…っ」
アースが叫ぶ
「やれっ!ハイケル少佐!ラミリツ隊長!」
ハイケルがサーベルを構える ラミリツが言う
「駄目っ 出来ない…っ」
アースが叫ぶ
「ラミリツ隊長!命令…っ」
ラミリツが叫ぶ
「嫌だっ!出来ないっ!その命令はっ …そんな命令は聞きたくないよっ!ハブロス司令官っ!」
ハイケルが一度ラミリツを見てから サーベルを構え直して言う
「作戦実行は 私のみと言う事であるのならば その私がターゲットの中央を狙う事となる 作戦参加の是非を問う ラミリツ隊長」
ラミリツがハイケルを見てから アースへ叫ぶ
「ハブロス司令官っ!命令を取り消してっ!それで…っ!?―そうだよっ!?他にっ!他にだって 何か方法がっ!?」
アースが叫ぶ
「他の作戦などは無いっ!ラミリツ隊長っ!」
ラミリツが顔を振って叫ぶ
「嫌だっ!出来ないっ!出来る筈が無いっ!僕は…っ!だって 僕はっ!ハブロス司令官の…っ!」
アースが叫ぶ
「エーメレスっ!」
ラミリツがハッとしてアースを見る アースが言う
「家族を… 守れよ?」
ラミリツが驚き目を見開く 脳裏にフレイスの姿がよぎる ラミリツの手の震えが止まる ハイケルが横目にそれを見てから アースへ向いて言う
「ハブロス司令官」
アースが言う
「命令を実行しろ!ハイケル少佐!」
ハイケルが剣を構え言う
「了解 司令官!」
ベガが反応しアースから逃れようとする アースが気付き言う
「やれっ!ハイケル少佐っ!」
ハイケルが走り出す ラミリツがハイケルを見る アースがベガを押さえつけて叫ぶ
「ラミリツ隊長っ!」
ラミリツが強く目を瞑ってから 涙を流しつつ叫ぶ
「あぁああーーっ!」
ラミリツが抜刀して走り出す ハイケルが横目にそれを確認すると 2人が同時に 到達して剣を引き アースの背を見る ベガがおののき言う
「馬鹿なっ!?何故 貴様が!?新人類として 在る事を求め得し 貴様がっ!?たかが ゴミ共の為にっ!?」
アースが手の力を強め ベガを睨みつけて言う
「生憎 両手が塞がっていて その減らず口を叩くお前を 一発殴ってやれ無い事は心残りだが その お前を倒す事が出来るのであれば同じ事 私に文句は無い 刮目しろ!お前が 脆いゴミと罵る 新人類の刃で その最低にして最長な命を 終える事が出来る この瞬間を!」
ベガが焦って言う
「有り得ぬっ 神とある 我をっ この気高き命を…っ!」
アースが言う
「一度その命を捨てて 地獄へ行って来いよ 神?彼ら新人類たちの 尽力を持ってな?どうだ?最高だろう?」
ベガが逃れようともがくが アースが押さえつける ベガが言う
「おのれっ ハブロっ いや ス…」
アースの背後でハイケルとラミリツが剣を引く アースがその気配に笑む ベガが目を見開くと ハイケルとラミリツが剣を突き刺す 隊員たちが息を飲む
隊員Nと隊員Vが強く目を閉じている 隊員Aが見据えている横で 隊員Bが視界を遮っていた手を恐る恐る開き目を見開く
ハイケルとラミリツの前でアースの身体がしなり その先に居るベガの背から 一刀の刃が突き出ている
一瞬の沈黙
アースが痛みに閉じていた目を開きベガを見る ベガが目を見開いていた状態から 己の胸を貫いているサーベルの刃を見て アースの後ろを見ると ハイケルがアースの背からベガの背までサーベルを突き刺したまま ベガを見据えている ベガが言う
「…新 人類 の… 造りし… 偽物 ごとき …がはっ!?」
ベガが吐血すると同時に ハイケルがサーベルを引き抜く ベガの身体から鮮血が吹き上がりながら後方へ倒れる
倒れたベガの横に ラミリツが挫折している
ラミリツが落としていた視線のまま振り返ると その前にアースが崩れ落ちるのが見える ラミリツが瞬時に立ち上がり アースが地へ倒れる直前に受け止めて言う
「――ハブロス司令官っ!?」
ラミリツの剣が音を立てて地へ倒れる ラミリツがアースの身体を支えて居て言う
「ハブロス司令官?…ハブロス司令官っ!?」
ラミリツがアースの顔を見るが ラミリツの腕に支えられているアースの頭が 力なく横たえる ラミリツが目を見開き叫ぶ
「あぁああああーーーっ!!!」
サーベルの刀身に残る赤い血が下り剣先から滴り落ちる
ラミリツが叫ぶ
「ハブロス司令官っ!ハブロス司令官!ねぇ 起きてっ!?お願いっ!ハブロス司令官!」
ART2隊員たちが息を飲み視線を逸らす ART1隊員たちが言葉を失い ハイケルがアースとラミリツを見ていた状態から ベガを見る
ベガの身体が光の粒子になって消えて行くのと同じく 周囲の七色の異空間が消え 神の宮殿へ戻る
隊員たちとハイケルが気付き辺りを見渡す ハイケルが言う
「作戦成功だ」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルが皆へ向き直って言う
「任務完了 ART総員 ART本部へ帰還する」
皆が顔を見合わせてから ハイケルを見て言う
「「了解 少佐…」」
ハイケルがラミリツを見る ラミリツはアースの服を掴んで泣いている 横には刀身の綺麗な剣が落ちている
ラミリツの後方で サーベルが鞘に収められる音が響いた後 立ち去る気配がする
シュナイゼルがラミリツを見て一度目を伏せ 気を切り替えて ART2隊員らへ向き直る
ART2隊員らがラミリツを見ていた状態からシュナイゼルを見て 一度間を置いてから気を引き締める
ラミリツの独白
《ARTによる 世界を守る作戦は 成功を収めた けど それは… 懐かしい誰かの言葉で言い替えるなら 任務は成功 達成ランクは Fランク
…そう この作戦の達成ランクは 最低ランクのFランクだった》
――…
アールスローンの街中 変わらぬ風景が見える
ラミリツの独白
《アールスローンのみならず 世界を救うと言う この大作戦の成功は その功績と 作戦の立案 実行を担った ART司令官 アース・メイヴン・ハブロスの殉職と共に伝えられ それは 僕らがアールスローンへ戻るより早く 政府、国防軍両組織を通じて アールスローンの隅々へ伝わり 作戦に参加した僕らART隊員らが ART本部へ帰り付いた頃には ほぼ全てのアールスローン国民へと知れ渡っていた》
街頭モニターに 緊急ニュースが流れていて ARTの文字と アースの写真が掲載され キャスターが神妙に話している映像が映っている
ラミリツが街頭モニターに映っているアースの写真を見つめてから 視線を逸らす
ラミリツの独白
《世界を救った作戦の成功と 同時に伝えられている ハブロス司令官の殉職 つまり この2つの情報は アールスローンにとっては その事実を証明出来ないままに過ぎ去った 世界の危機と同等の価値を持つと言う事
ハブロス司令官は最終的には ARTと言う一組織の総責任者と言う肩書きしか持たなかったけど 元国防軍総司令官の名誉と 超高位富裕層ハブロス家の当主と言う地位 この2つの栄誉を持った 彼の喪失が今 物理的に平和になったアールスローンにとっては 最も大きな内なる脅威となった
だから 政府及び国防軍は一難去ってまた一難 居なくなってしまった その巨大なハブロス司令官の穴を埋めるため 作戦の成功を喜ぶ暇も無く 後処理に追われる事になっていた そして それは もちろん 僕にも…》
【 ART 司令塔 】
グレイゼスが作業をしながら電話をしている ART司令塔の扉が開きラミリツがやって来る グレイゼスが気付き受話器を離し ラミリツへ向いて言う
「あー!ラミリツ隊長!丁度良かった!」
ラミリツがグレイゼスを見る グレイゼスが受話器へ向いて言う
「今 丁度 ラミリツ隊長がいらしたので ちょっとそのまま!お待ちを!」
グレイゼスが受話器を持ったまま言う
「ラミリツ隊長 実は…」
ラミリツが近くへ向かう グレイゼスが手短に伝える ラミリツが一瞬呆気に取られてから言う
「…え?僕がARTの責任者に?何で?だって ARTの今後の作戦の構築や総指揮は アンタがやるんでしょ?だから その責任者は アンタが兼任するって話だったんじゃ?」
グレイゼスが言う
「はい、ARTの作戦構築 並びに 実行の責任者は 変わらず自分がやりますが ハブロス司令官が受け持っていた ARTの最高責任者と言う役職を ラミリツ隊長へお願いしたいのですが …構いませんか?」
ラミリツが言う
「え?ちょっと待って?分からないよ?作戦構築と実行権を持つARTの司令役はアンタなんでしょ?それで このARTは 以前から ハブロス家の所有物なんだから 最高責任者はハブロス司令官から 全てを引き継いた アイツが…」
グレイゼスが言う
「はい ARTの所有者は今後も引き続きハブロス家となり その記載名はヴォール・アーヴァイン・防長閣下と言う事になるのですが そうなると それは やっぱり まずい… と言う事でして?」
ラミリツが言う
「まずいって?そんな事言ったって このARTを立ち上げて 巨額を投資したのは 間違いなくハブロス家なんだから 今更 それを僕のメイリス家へ移すなんて事 出来ないよ?」
グレイゼスが言う
「あ~っ いや、そうではなくてですね?」
ラミリツが言う
「え?」
グレイゼスが受話器を気にしてから 受話器を遠ざけてラミリツへ言う
「う、うんっ …つまりですね?ART組織の保有者はアーヴィン君なんですが… 最高責任者と言う役職は… ARTの管理運営をする者と言う事で 必要と言いますか…?」
ラミリツが言う
「それって…?なら 今後は僕に ARTの資金繰りをしろって事?」
グレイゼスが言う
「あー、いや!そちらに関しては どうぞご心配なく?それを行なっていた以前とは異なり 今後のARTは 国防軍と政府 両組織の『第二の機動部隊』として活動する事が決まっていますので 基本的な活動資金に関しましては そちらの2組織から提供される事になっています それに何より 今後は以前までの様な 大幅な戦力アップ… つまりマシーナリーの改善なども 必要は無いだろうと言う事でして?そうとなれば それを行なう為の大金を集める必要は ありませんからね?」
ラミリツが言う
「そう… だったらさ?それこそ 保有者としてアイツの名前だけ有れば それで良いじゃない?僕は… やっぱ これからも ハブロス司令官に命じられた ART2の隊長のままで 居たいんだ」
ラミリツが胸に手を当て 服越しにナイトソウルを握って思う
(例え その役割を果たせなかった… ハブロス司令官からの最後の命令に 従えなかった 駄目な隊長でも…)
ラミリツが気を切り替えて言う
「うん!だから 例え 資金繰りをしなくても良いと言われてもさ?僕の名前に ARTの最高責任者の肩書きとかは付けたくないし 保有者は変わらずハブロス家だけど 馬鹿なアイツに総責任者の肩書が似合わないって言うのなら」
グレイゼスが衝撃を受けてから苦笑して言う
「せ、折角 その言葉を 濁していたのに…」
ラミリツが微笑して言う
「だったら それは 他のハブロス家の人にしたらどお?ほら?そうだよ?ライビンやアリアちゃんの名前にすれば良いじゃない?」
ラミリツが視線を上げると アースの姿が思い出され その横に軍曹の笑顔が現れる ラミリツがムッとして言う
「それに そもそも いくらアイツにARTの最高責任者の肩書きが付いた所でさ?誰もアイツが ハブロス司令官が管理していた このARTの管理を出来るだなんて 思わないでしょ?普通?」
グレイゼスが苦笑して言う
「それは… 例えそうだと思われましても…」
受話器から軍曹の声が聞こえる
『おお!流石は ラミリツ攻長なのだ!馬鹿な自分には ARTの最高責任者の勤めは果たせぬものと!その上 他の者も その様に思うであろうと言う事まで お見通しであるのだ!わっはっは!』
グレイゼスとラミリツが衝撃を受ける ラミリツが顔を向けて言う
「…って?その電話 あいつと繋がってたの?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ええ ですので それで…」
受話器から軍曹の声が聞こえる
『ラミリツ攻長!聞こえているのであれば 自分からもお願いするのである!ARTの最高責任者の欄へ ラミリツ攻長のお名前を書かせて欲しいのだ!』
ラミリツが受話器へ近付き不満そうに言う
「だからっ アンタ聞こえてたって言うなら 分かるだろ!?それとも こんな簡単な事も分からない!?僕はっ!」
軍曹の声が聞こえる
『いや!ラミリツ攻長の魂からの言葉であるなら 馬鹿な自分にも!それこそ自分の 魂へと伝わったのである!ラミリツ攻長は 今も変わらず自分の兄の事を 大切に思ってくれているのである!自分は とても嬉しいのである!』
ラミリツが一瞬呆気に取られてから微笑する 軍曹が続けて言う
『そして、その自分に 今 分かっている事は 兄貴が作り上げた ARTを守る為には!どうしても ラミリツ攻長のお名前が 必要であると言う事なのである!』
ラミリツが呆気に取られて言う
「え?ハブロス司令官の作り上げた ARTを守る為に 僕の名前が?」
軍曹の声が聞こえる
『そうである!ラミリツ攻長!』
ラミリツがハッとして言う
「…そっか そう言う事?」
グレイゼスが微笑すると言う
「はい そう言う事です ラミリツ隊長の… いえ ラミリツ・エーメレス・攻長閣下のお名前が ヴォール・アーヴァイン・防長閣下保有の ARTの最高責任者としてあれば!」
ラミリツが言う
「両組織の機動部隊として安定する?ううん?それ所か ARTは今後 このアールスローンに置いて 最も守られた一組織になる …何たって 国家家臣の2人の名前が書かれるんだもんね?それこそ もう誰も ハブロス司令官が作り上げた このARTを壊す事は出来ないよ」
グレイゼスが微笑する 受話器の先で軍曹が微笑むのが伝わる ラミリツが苦笑して言う
「…って?もぅ やっぱ これも ハブロス司令官の作戦?そうだよね?ハブロス司令官は常に 自分が居なくなった場合を考えて 備えをしていたんだし 自分が居なくなっても ARTが失うものは何もない様にって そんな作戦立てていたんでしょ?僕の… 本人の合意もなしにさ?ほんと!相変わらず 勝手なんだからっ」
グレイゼスが言う
「はい 本当に… あのハブロス司令官らしい作戦です それに 今後の作戦構築を任されている自分には やはり 真似は出来ません」
ラミリツが言う
「マスターさえ出来ない作戦を作っちゃうなんて ホントに最高の司令官だったよね?ハブロス司令官はさ?」
グレイゼスが苦笑して言う
「はい」
ラミリツが言う
「ハブロス司令官の真似は 誰にも出来ない それで… その作戦に 僕が関係してるって言うなら それはハブロス司令官からの 僕への 最期の命令 だよね?ARTの為の作戦 そうとなれば もちろん ARTの隊員である 僕自身の為でもあるって事だし… …なら分かった ART最高責任者の責務 引き受けるよ?」
グレイゼスが言う
「有難う御座います ラミリツ攻… いえ ラミリツ隊長」
ラミリツが微笑してから頷く グレイゼスが頷いてから受話器を持ち直して言う
「…じゃぁ そう言う事だから アーヴィン君?」
受話器から軍曹の声が音漏れする
『はっ!マスタぁー!誠に有難う御座います!これで 自分も安心して 今後も引き続き 国防軍総司令官としての責務をっ!』
グレイゼスがうるさそうに受話器を耳から離しつつ 苦笑して言う
「う、うん まぁ… そうね?とりあえずこれで アーヴィン君はARTの最高責任者では無いけれど それでも 一応 保有者の欄に名前が有ると言う事は それなりに意識には留めておいて貰いたいんだが…」
受話器から軍曹の声が聞こえる
『はっ!了解でありますっ!マスタぁー!』
グレイゼスが苦笑する ラミリツが苦笑してから 視線を変えてつぶやく
「…責務 ね…」
ラミリツが一度視線を落としてから 目を閉じ 間を置いて意を決するとポケットへ入れた手を握る グレイゼスが紙の握られた音に気付き顔を向ける ラミリツが顔を上げて言う
「そうと言う事なら その最高責任者として書類や何かに サインとか書いたりするんでしょ?他にも 政府や国防軍へ連絡とか?けど?それって 午後からでも大丈夫だよね?僕 これから…」
グレイゼスが気を取り直して言う
「あ、はいっ 大丈夫ですよ?ラミリツ隊長は 今日は以前の内から 休暇を取っていらしたので 自分もその様にスケジュールを組んでいますので?」
ラミリツが言う
「うん なら… きっと その当初の予定より 早く戻ると思うけど 一度行って来るから …じゃ また 後で!」
グレイゼスが疑問しつつ言う
「え?は、はい 時間の方は大丈夫ですよ?いってらっしゃい?」
ラミリツが去って行く グレイゼスが疑問してから 思い出して受話器を耳に当てて言う
「…と?あっ すまんっ!何だっけ アーヴィン君?…あら?切れてる…?」
グレイゼスが受話器と ラミリツの去った先を見て 首を傾けて言う
「何だか どちらも… いつもと違うと言いますか?まぁ…」
グレイゼスが苦笑すると言う
「…やっぱ 違うよな?彼ら2人だけじゃない 何もかも… 俺たちは…」
ラミリツが強い意志を持って通路を歩いている
グレイゼスが言う
「ARTは… アールスローンは… あの戦いで 余りに大きな1つを 失った」
グレイゼスが顔を向ける モニターにTV映像が映っていて 何かのニュースにアースの写真が添付されている グレイゼスが息を吐いて視線を逸らす
【 ART 正面玄関 】
ラミリツがIDを通す ピッ音と共に ラミリツが視線を向けると メンバーボードのラミリツの名前が外出中になる ラミリツがそれを確認して 視線を上げ表情を落すが 気持ちを切り替えて思う
(いや…)
ラミリツが顔を上げて思う
(もう 決めたんだ 僕は… 僕もっ もう…っ これからは!)
ラミリツが強い意志を持ってもう一度メンバーボードを見上げてから 踵を返して扉を出て行く ラミリツが見ていた先 メンバーボードの最上部にあった 司令官の欄から アースの名前が消えている
【 マイルズストリート 】
ライブ会場が賑わっている
【 ライブ会場 出演者通路 】
ナックキラーメンバーが通路を歩いている ナルが喜んで言う
「今度こそ 3度目の復活って奴よ!ナックキラー 最後にして 最高の復活だぜぃっ!」
キーボードメンバーが言う
「ナル それはちょっと違うだろ?」
ナルが疑問して言う
「えぇ?」
ベースメンバーが言う
「3度目の復活じゃなくて 3度目の正直?」
ナルが気付いて言う
「ん?…ああっ!そうだった!3度目の正直って奴で 最高の復活ーっ!」
ドラムメンバーが言う
「いや 違う違う」
ナルが疑問して言う
「あれ?3度目の正直… って 違ったか?」
キーボードメンバーが言う
「そうじゃなくて」
ナルが疑問して言う
「うん?」
ドラムメンバーが言う
「やっぱ 最高の復活 …じゃ ないよな?」
ナルが立ち止まって言う
「え…?最高の復活 …じゃないって?そりゃ…」
皆が立ち止まる エレキギターを持ったアニキのメイクをした人物が顔を逸らす ナルがそれを見てから一度視線を逸らし 気を取り直して言う
「いや!…やっぱり 最高の復活で良いんだよっ!」
皆がナルを見る ナルが言う
「だってそうだろう!?考えてみろよ おめぇら!?俺ら ナックキラーは 今回で3回目の復活だ!けど 1回目の復活の時だって 2回目の復活の時だって ギターが抜けるのは… もう 慣れっこだろうっ!?だったらっ 今回だって ナッククルーの野郎どもは 俺らの復活を喜んでくれるってもんよっ!」
メンバーが苦笑する ナルが続けて言う
「でもって 今回は 復活だけじゃねぇんだ!3度目の正直の今回は!過去の俺らナックキラーの皮を破る!大変身の時だ!だから その演出に ナッククルーの野郎どもが 最高に愛した!このアニキの姿を 最大限に使ってだなぁっ!?」
アニキがナルを見て頷く ナルが苦笑する
「そうやって 黙っていなくちゃいけねぇのは 最初の一曲 あのメステゲレンダーだけだ その一曲が終わった その時こそ… 俺らナックキラーの 最終決定メンバーで!アニキ流に言えば 俺らは 新しい伝説を作っていくんだぜいっ!さあ!行くぜ野郎ども!?」
皆が声をそろえて言う
「「「おうよーっ!」」」
皆が歩き始める キーボードメンバーが俯いて言う
「…とは 言っても 俺は正直心配だよ いくら大変身だなんて 言葉ではカッコ付けた所で メンバーの減ってしまった このナックキラーを ナッククルーの連中は受け入れてくれるかな?」
ベースメンバーがキーボードメンバーの肩に手を置いて言う
「これがアニキの作戦だ 従うしかないだろう?」
キーボードメンバーが言う
「それは… そうだけど…」
ナルが後ろを気にしながら歩いていて 前方へ向き直ると気付いて言う
「…と?お?ああ!」
メンバーがナルの声に足を止めて顔を向ける ナルが言う
「攻長閣下ー!」
ナルの視線の先に居たラミリツが 落としていた視線を上げナルを見ると微笑して言う
「…はい お久し振りです ナル…さん ナックキラーの皆さん…」
ナルとメンバーがラミリツの近くまで来る ナルが笑って言う
「相変わらず お堅いっすねー!攻長閣下ー!…って あぁっ いや!?えっと 攻長閣下様ぁ… だからぁ… えっと…?」
ナルが頭をかいて困る ラミリツが軽く笑う ナルが困って視線を泳がせる ラミリツが手に持っていたチケットを握る ナルが気付き視線を向ける ラミリツが意を決して思う
(僕はもう 決めたんだっ 僕は… ラミリツ・エーメレス・攻長っ!)
ナルが表情を喜ばせて言う
「お?あぁ良かったあー!チケット 無事に届いたんっすね!いや 正直 高位富裕層様のお屋敷に 最下層の俺の名前が差出人の郵便物が ちゃんと届くのかってぇ!?すげぇ 心配してたんっすが!?それしか方法が無かったもんだからぁ… …それが出来た あのアニキは もう… 居なくなっちまったもんで…」
ラミリツが視線を上げて思う
(…そう 僕は高位富裕層メイリス家の当主であり ARTの最高責任者でもある …今までみたいに 実力さえあればなられる ART2の隊長だって言うだけじゃない!)
ラミリツがメンバーの1人を見据えて言う
「アニキ!…さん?」
アニキが反応する ナルがハッとして言う
「あ…っ いや 攻長閣下っ!このアニキは…っ」
ラミリツがナルへ向いて言う
「ナルさん 今 少しだけ 彼と お話をさせて頂いても 良いですか?直ぐに済みますので」
ナルが困って言う
「え?いや えっと… ああ!それじゃ ここは俺が代わりに話を… って!?…あぁっ!?攻長閣下っ!?」
ラミリツがアニキの前に向かう ナルが視線を泳がせて困る メンバーたちが顔を見合わせる アニキがラミリツを見る ラミリツがアニキの前で言う
「アニキ 言葉を話してくれなくても良いです どうか聞いて下さい 僕は…っ ラミリツ・エーメレス・メイリスは その名前の頃からっ 子供の頃から… ずっと貴方のファンでした」
ナルが呆気に取られ メンバーと顔を見合わせる アニキは沈黙している ラミリツが言う
「ずっと前です 貴方が… ナックキラーの皆が まだ プロデビューをする前の… あの マイルズストリートで ストリートライブをしていた頃から 僕は アニキのギターと アニキの その… 音にはしない言葉に 救われて 励まされて来たんです アニキが居たから 僕は 辛い毎日を耐えられた …ずっと その頃から ナックキラーのライブに姿を隠して… 変装したりもして 貴方のギターを聞きに 行っていたんです …覚えていますか?実際に僕と何度か 視線を合わせてくれましたよね?」
ナルとメンバーたちが呆気に取られた状態から 微笑を合わせる ラミリツが言う
「僕はそうやって ずっと人目を気にして 隠れて 今まで… そして これからだって 本当はっ そんなでも ずっと… このままナックキラーの… ナッククルーの1人で… 居たかった …だけどっ もう 止めなくちゃいけないっ」
ナルたちが呆気に取られ疑問する ラミリツが顔を上げて言う
「僕はもう 子供のままではっ ラミリツ・エーメレス・メイリスでは居られないんです アールスローンの攻長として 在らなければいけないっ そうしないと 守れない… 今度こそ…っ 僕自身を捨ててでも 守らなくちゃいけないものが 出来たんですっ だから… もう…っ」
ラミリツが思う
(…これで 良いよね?ハブロス司令官?…あの時 貴方がしたように 自分を捨ててでも 守らなくてはいけないものがある それは… こう言う事…っ だから僕は… 僕と言う者は あの時 貴方と一緒に… 一緒に死んだものだと思うっ!それなら これで良いっ!これで 今度こそ!…もう1人では 逝かせないよっ!ハブロス司令官っ!)
ラミリツがチケットを握りつぶす アニキがそれを見てから 間を置いて口を開く ナルがハッとして声を掛けようとするが それより早く アニキが言う
「違うな?」
ラミリツが強く閉じていた目を開き疑問して言う
「…え?」
アニキが言う
「そうではない」
ラミリツが呆気に取られたまま アニキを見上げると言う
「…ア、アニキ?」
アニキがアースらしく振舞って言う
「分かれよ?ガキ?」
ラミリツが驚き 呆気に取られて言う
「そ、んな?…ま、まさか…?アニキは… ハ… ハ… ハァアアーッ!?」
アニキがニヤリと笑う ラミリツがすっとんきょうな声を上げる
「ハブロス司令官ーーっ!?」
ナルが笑み メンバーと顔を合わせ皆が笑う
【 ライブステージ 】
ナックキラーのメンバーがライブを行なっている 客席に変装したラミリツが盛り上がっている 真後ろに隊員Nと隊員Vが盛り上がっている 更に後方でシーナとエミーが盛り上がっている 曲が終わると 最高コールが上がる ナルがマイクへ向かって言う
「おうよー!野郎どもー!帰ってきたぜぇ?全ての始まりであった このマイルズストリートに!俺ら ナックキラー 最初のメンバーで ナックキラーは 最終復活だぁああーー!」
皆が盛り上がる ナルが言う
「てめぇらも知ってると思うがあっ!俺らナックキラー途中のメンバーであった レッテの野郎は!もう1つの故郷とやらに 帰っちまったー!けど んな事は関係ねぇぜ!レッテのソウルは ここに残った 俺らナックキラーのメンバーと てめえら ナッククルーのソウルに 刻み込まれてる!そうだろうぉ!?野郎どもーっ!?」
皆が叫ぶ
「「おうよーっ!」」
所々からレッテコールが響く 隊員Nと隊員Vが泣きながら叫ぶ
「「レッテェ~~!!」」
ナルが言う
「おるあっ!野郎どもおっ!泣き声なんざ聞きたかねえ!その代わり!ナックキラーは この3度目の復活で 新たな最高の極みへ向かう事になった!そうとなれば 昔の俺らとは ここで おさらばよ!これからの俺らナックキラーは!」
ナルが化粧のされた フェイスシールを剥がし捨てる メンバーたちが次々に 派手なメイクのフェイスシールを剥がし捨てると 各々の素顔が露になる 皆が驚き最後のメンバーであるアニキへ視線を向ける ラミリツが呆気に取られて言う
「え!?…ちょ、ちょっと 待ってよ?…まさかっ!?」
隊員Nと隊員Vが慌てて叫ぶ
「「アニキィイイッ!?」」
シーナが喜んで言う
「アニキは 絶対 イケメンっ!」
エミーが笑んで言う
「分かんないよ~?まぁ 私は 中身が良ければ OKだから!」
皆の視線の先 アニキがフェイスシールを剥がし捨てる 皆が食い入る ラミリツが思わず踏み出そうとしていた状態から 驚く
【 ART 正面玄関 】
扉が開かれると ラミリツが視線を後方へ向けて歩きながら言う
「もぅっ!僕 本気で心配したんだからねっ!いくら 高位富裕層ハブロス家の アース・メイヴン・ハブロスが殉職したって 言ったってさっ!?」
ラミリツが一度顔を正面へ戻し IDをスキャンする ピッ音と共に ラミリツの名前が点灯する ラミリツが後方へ向き直って言う
「それは 高位富裕層の長男としての名誉を終えて 名前を捨てて下層階級へ帰化するって事!いくら高位富裕層の秘密だって言ったってさ?その高位富裕層の人たちはもちろん 中位富裕層の人たちだって 知ってるんだよっ!?いくら ぱっと見で分からないメイクをしていたって!?」
バンドメイクのアースこと アニキがIDを片手に言う
「そして その地位に在る連中は 最下層バンドのナックキラーの事など 気に止める事は無い そこへ 万が一にも そのメンバーへ 元高位富裕層ハブロス家の長男が居たと 分かった所で 奴らの矜持がそれを否定する この程度の変装であっても 気付かれる事もない程に… …と そうだったな?」
アニキが機械へ通そうとしていたIDを 軽く弄んで言う
「もう ここに 私の名前は… いや?俺の新たな名は まだ 刻まれては居ないのだった」
ラミリツが呆気に取られて言う
「…え? ”まだ”って…?それじゃ…?」
【 ART 第一訓練所 】
ART1メンバーが呆気に取られている 皆の前で グレイゼスが表情をしかめつつ言う
「今日から… 諸君の… ART1の… 正式メンバーとなった…」
アニキがデスヴォイスで言う
『よろしくなっ!野郎どもっ!』
皆の視線の先 エレキギターを持った新コスチュームのアニキがウインクしている 隊員Cが表情を引きつらせる 隊員Aが呆気に取られている 隊員Fが苦笑している 隊員Iが困惑して言う
「えーっと… 確か… 彼は…?」
隊員Nと隊員Vが驚きに声をそろえて叫ぶ
「「ア、ア… アニキィイイっ!?」」
ハイケルが言う
「…了解」
【 ART 正面玄関 】
メンバーボードのART1のメンバーに 『アニキ』の名前が点灯する
to be…アールスローン戦記Ⅲ
「けど 探すと言ってもどうやって?ここは何もないし その上 何処までも繋がっているみたいで 先も見えないよ?」
アースが言う
「ここには元々何もない ここは我々の生きる次元とは異なる位相であり 尚且つ 重なり合う事もある その場所だ」
ラミリツが言う
「異なる位相?」
ハイケルが言う
「重なり合う事も有る… と言う事は?」
隊員Fが言う
「異なる位相にこの場所があって 重なり合う事も有る… って事は その瞬間がさっきの瞬間だったって事かな?」
アースが言う
「そうだ そして この次元こそが 奴ら神の居場所であり この場所から奴は 我々の世界 …我々の次元へと干渉していた …となれば この場所で奴の本体を 倒さなければ意味が無い」
隊員Aが辺りを見渡して言う
「けど… 肝心のそのターゲットが居ないんじゃ?」
アースが言う
「いや?言った筈だ ターゲットは目前だと」
アースが瞬時に手を向けて空間を掴むと ベガの腕が掴まれ 姿が現れる ベガが驚いて言う
「馬鹿な…っ!?この空間で何故!?」
ART隊員たちが驚き ラミリツがプラズマセイバーを構える 瞬間 銃声が乱発される 皆が顔を向けた先 ハイケルが両手の銃をベガへ向けて連射している 隊員Bが言う
「さっすが 少佐ぁー!」
隊員Fが言う
「神様に 一秒も躊躇なく…」
隊員Cが言う
「だから ありえねぇって… …ん?あれ?」
皆が疑問する 隊員Iが言う
「…当たって …無くないか?」
隊員たちが疑問する
ハイケルの双方の銃が弾切れの撃鉄音を響かせる ハイケルが視線を向けて言う
「頭部はもちろん 心臓やその他 急所と呼ばれる場所は 全てを撃ち抜いた筈だが」
ベガが掴まれていない手に杖を表す アースが気付くと同時に 周囲を眩い光が覆い轟音が響く
ART隊員たちが吹き飛ばされ悲鳴を上げる
「「うわぁああー!?」」
それぞれが吹き飛ばされた場所で地に倒れ 身を起こしながら言う
「痛ってぇ… …くない?」
皆が自身の無傷に疑問して確認している中 ラミリツが言う
「ハブロス司令官!」
ベガの前で アースがベガの腕と杖を掴んだまま顔を上げる ベガが言う
「ほう?やはりその力 強き防衛の力とあるか?我が力を抑えるとは 並々ならぬ力よ」
アースが自身の負傷を押し殺し 視線を向けニヤリと笑う
ラミリツとART隊員たちが気付き ラミリツがプラズマセイバーを発生させ 叫びながら向かう
「やぁああーー!!」
ラミリツがプラズマセイバーでベガの身を斬るが プラズマはベガの身体をすり抜ける ラミリツが驚き目を見開く ART2隊員らが驚き ハイケルが言う
「プラズマセイバーでも無理か」
ラミリツが勢いのまま前方へ倒れそうになるが 受け身を取って立て直し 困惑の表情のままベガを見る
隊員Bが言う
「どうしようっ!?サッちゃんっ!?」
隊員Bが振り返った先 隊員Cが言う
「俺に聞くなーっ!」
アースがベガの腕を離し 替わって襟首を掴んで引き寄せて言う
「ならばこれでっ!」
ラミリツが慌てて言う
「ハブロス司令官っ!?」
隊員Aが言う
「そもそも 一体どうなってるんだ?銃弾もプラズマセイバーも すり抜けた相手を 掴めるって…!?」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー?」
隊員Cが言う
「な、ならぁ まさか?銃も剣も効かない相手には!拳でって事か!?」
隊員Fが気付いて言う
「いや 違う」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「違うのかよっ!?」
皆が隊員Fを見る 隊員Fが言う
「思い出してくれ 以前にも こんな事があったじゃないか?」
隊員Nが言う
「い、以前にもってっ!?」
隊員Vが言う
「以前も何もっ 神様と戦うだなんて んな罰当たりな事 しょっちゅうやってねぇよっ!?」
隊員Fが言う
「あの時 俺たちが戦った神 あの ネロ・アーク・フォライサーにだって 俺たちは 手も足も出せず 銃弾も剣もすり抜けてしまったけど あの時だって ハブロス司令官だけは 捕まえる事が出来たんだ それで…」
隊員Nが言う
「そ、そう言やぁっ!?」
隊員Vが言う
「そうだったぁっ!?」
ハイケルが言う
「しかし あの時とは異なり 今は 同状況でありながら 私の銃弾も ラミリツ隊長のプラズマセイバーすらすり抜けた」
ハイケルが銃を発砲する 隊員Cが衝撃を受けて言う
「って 撃ったぁあっ!?」
隊員Aが苦笑して言う
「ターゲットの直前に ハブロス司令官が居るのに その人を掠める様な狙撃をするなんて事は 心理的に出来るもんじゃ…」
ハイケルが一瞬疑問した後 銃を連射する 隊員たちが衝撃を受ける 隊員Vが言う
「心理的に出来るもんじゃない射撃を 連射してるけど…?」
隊員Bが言う
「さっすが 少佐ぁー!」
隊員Cが言う
「だから ありえねぇって… しかも銃弾は利かないって事が もう」
皆がハイケルを見る ハイケルが言う
「いや 私は 命中率100%を持ってして 間違いなく ターゲットを打ち抜いた つもりだったのだが…」
アースの頬を一筋の血が伝い頬が切れている 隊員たちが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「あれー?命中率100%の少佐も 内1発は99%になる事もあるのでありますかぁー?少佐ぁー?」
ART2隊員らがシュナイゼルへ向く シュナイゼルがラミリツへ向いて言う
「隊長 先程の ハイケル少佐の…」
ラミリツが言う
「うん 最初に撃ったハイケル少佐の銃弾や 僕のプラズマセイバーには まるで無関心だった あのベガが さっきの一発だけっ!?」
アースが叫ぶ
「ラミリツ隊長!ハイケル少佐!剣だっ!もう一度…!」
ラミリツとハイケルがアースを見る
皆が顔を見合わせてアースを見る アースが手に力を込め 横目に隊員たちを見て言う
「プラズマセイバーではないっ 物理的な剣だ!」
ラミリツが息を飲む
「っ!」
ハイケルが自分の腰にある サーベルを見てから言う
「細身のサーベルよりも 銃弾の方が殺傷力は高いのだが…?」
アースが視線を向けないまま言う
「物質も液体も消滅させてしまうプラズマセイバーや 同じくそのスピードで何も乗せられない銃弾では駄目だっ 人の振るう剣… いや 突き刺す剣が良い それが2つもあれば きっと足りるだろう!…なぁ?ベガ!」
ベガが驚き言う
「何を…っ」
アースが言う
「先程のハイケル少佐の乱射 100%お前の身体のみを撃ち抜いた銃弾は避けなかったが 唯一 私の頬を掠めた銃弾だけは そのお前が物理的にかわした …つまり その1発だけは 100%当たっても無傷のお前が 避ける必要があったと言う事だ」
ベガが一瞬表情を歪ませてから言う
「それが何だと?貴様にそれが分かった所で 行える事など」
アースがニヤリと笑って言う
「素直だな 神よ?それとも それが 神たる矜持か?いや?そもそも 新人類の私の力を持って お前の身を守ろうとしていたのだからな?やはり お前は 弱い と言う事だ」
ベガが言う
「何が言いたい?真僅かな時の流れにさえ その身を保つ事も出来ぬ 脆き新人類の貴様が」
アースが言う
「その僅かな時の流れに生きる私が ここに居る仲間たちや アールスローンに住まう仲間たち その家族たち そして これからも生まれては消えていく 彼らの時を紡ぐ事が出来ると言うのなら…っ」
アースが言う
「ラミリツ隊長!ハイケル少佐っ!今直ぐ 私の背後から ターゲットを貫け!命令だっ!」
皆が驚き ラミリツが言う
「な…っ 何言ってるのっ!?ハブロス司令官っ!?」
ベガが言う
「貴様 正気か?その様な事をすれば 貴様の身も唯では済まぬ」
アースがニヤリと笑んで言う
「人の振るう剣で 私もろともお前を貫くとあれば その刀身には 貫かれた私の血液が伝う… お前の身を捕らえる事が出来る 私の魂が付着した その剣であれば 私以外の彼らの剣であっても お前の身体を捕らえ 攻撃を行なわせる事が出来る そうだろう?神よ?」
ラミリツが言う
「けど…っ そんな…っ」
ハイケルが言う
「そうなのか?では… 狙いは ハブロス司令官越しの ターゲットの急所 最も的確である急所は 胸部か頭部… ターゲットの固定が行なわれている 現状であるならば それは胸部 心臓を狙う事になるのだが?」
ラミリツが言う
「無理だよっ ハブロス司令官!今の状態じゃ どうやったって ハブロス司令官の急所を外せないっ 心臓の周囲だって剣で貫かれたら 同じ事!ハブロス司令官までっ!」
アースが言う
「外す必要は無い 確実に捕らえろ!届かせる魂が足りなければ それこそ無駄になる!」
ラミリツが手を震わせる その横でサーベルが引き抜かれる ラミリツが驚いて顔を向けると ハイケルが言う
「了解 司令官」
ラミリツが目を見開く 皆が息を飲む ラミリツが震えながら言う
「…何 …言ってるの?無理… …出来ないよ?そんなの…っ」
アースが叫ぶ
「やれっ!ハイケル少佐!ラミリツ隊長!」
ハイケルがサーベルを構える ラミリツが言う
「駄目っ 出来ない…っ」
アースが叫ぶ
「ラミリツ隊長!命令…っ」
ラミリツが叫ぶ
「嫌だっ!出来ないっ!その命令はっ …そんな命令は聞きたくないよっ!ハブロス司令官っ!」
ハイケルが一度ラミリツを見てから サーベルを構え直して言う
「作戦実行は 私のみと言う事であるのならば その私がターゲットの中央を狙う事となる 作戦参加の是非を問う ラミリツ隊長」
ラミリツがハイケルを見てから アースへ叫ぶ
「ハブロス司令官っ!命令を取り消してっ!それで…っ!?―そうだよっ!?他にっ!他にだって 何か方法がっ!?」
アースが叫ぶ
「他の作戦などは無いっ!ラミリツ隊長っ!」
ラミリツが顔を振って叫ぶ
「嫌だっ!出来ないっ!出来る筈が無いっ!僕は…っ!だって 僕はっ!ハブロス司令官の…っ!」
アースが叫ぶ
「エーメレスっ!」
ラミリツがハッとしてアースを見る アースが言う
「家族を… 守れよ?」
ラミリツが驚き目を見開く 脳裏にフレイスの姿がよぎる ラミリツの手の震えが止まる ハイケルが横目にそれを見てから アースへ向いて言う
「ハブロス司令官」
アースが言う
「命令を実行しろ!ハイケル少佐!」
ハイケルが剣を構え言う
「了解 司令官!」
ベガが反応しアースから逃れようとする アースが気付き言う
「やれっ!ハイケル少佐っ!」
ハイケルが走り出す ラミリツがハイケルを見る アースがベガを押さえつけて叫ぶ
「ラミリツ隊長っ!」
ラミリツが強く目を瞑ってから 涙を流しつつ叫ぶ
「あぁああーーっ!」
ラミリツが抜刀して走り出す ハイケルが横目にそれを確認すると 2人が同時に 到達して剣を引き アースの背を見る ベガがおののき言う
「馬鹿なっ!?何故 貴様が!?新人類として 在る事を求め得し 貴様がっ!?たかが ゴミ共の為にっ!?」
アースが手の力を強め ベガを睨みつけて言う
「生憎 両手が塞がっていて その減らず口を叩くお前を 一発殴ってやれ無い事は心残りだが その お前を倒す事が出来るのであれば同じ事 私に文句は無い 刮目しろ!お前が 脆いゴミと罵る 新人類の刃で その最低にして最長な命を 終える事が出来る この瞬間を!」
ベガが焦って言う
「有り得ぬっ 神とある 我をっ この気高き命を…っ!」
アースが言う
「一度その命を捨てて 地獄へ行って来いよ 神?彼ら新人類たちの 尽力を持ってな?どうだ?最高だろう?」
ベガが逃れようともがくが アースが押さえつける ベガが言う
「おのれっ ハブロっ いや ス…」
アースの背後でハイケルとラミリツが剣を引く アースがその気配に笑む ベガが目を見開くと ハイケルとラミリツが剣を突き刺す 隊員たちが息を飲む
隊員Nと隊員Vが強く目を閉じている 隊員Aが見据えている横で 隊員Bが視界を遮っていた手を恐る恐る開き目を見開く
ハイケルとラミリツの前でアースの身体がしなり その先に居るベガの背から 一刀の刃が突き出ている
一瞬の沈黙
アースが痛みに閉じていた目を開きベガを見る ベガが目を見開いていた状態から 己の胸を貫いているサーベルの刃を見て アースの後ろを見ると ハイケルがアースの背からベガの背までサーベルを突き刺したまま ベガを見据えている ベガが言う
「…新 人類 の… 造りし… 偽物 ごとき …がはっ!?」
ベガが吐血すると同時に ハイケルがサーベルを引き抜く ベガの身体から鮮血が吹き上がりながら後方へ倒れる
倒れたベガの横に ラミリツが挫折している
ラミリツが落としていた視線のまま振り返ると その前にアースが崩れ落ちるのが見える ラミリツが瞬時に立ち上がり アースが地へ倒れる直前に受け止めて言う
「――ハブロス司令官っ!?」
ラミリツの剣が音を立てて地へ倒れる ラミリツがアースの身体を支えて居て言う
「ハブロス司令官?…ハブロス司令官っ!?」
ラミリツがアースの顔を見るが ラミリツの腕に支えられているアースの頭が 力なく横たえる ラミリツが目を見開き叫ぶ
「あぁああああーーーっ!!!」
サーベルの刀身に残る赤い血が下り剣先から滴り落ちる
ラミリツが叫ぶ
「ハブロス司令官っ!ハブロス司令官!ねぇ 起きてっ!?お願いっ!ハブロス司令官!」
ART2隊員たちが息を飲み視線を逸らす ART1隊員たちが言葉を失い ハイケルがアースとラミリツを見ていた状態から ベガを見る
ベガの身体が光の粒子になって消えて行くのと同じく 周囲の七色の異空間が消え 神の宮殿へ戻る
隊員たちとハイケルが気付き辺りを見渡す ハイケルが言う
「作戦成功だ」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルが皆へ向き直って言う
「任務完了 ART総員 ART本部へ帰還する」
皆が顔を見合わせてから ハイケルを見て言う
「「了解 少佐…」」
ハイケルがラミリツを見る ラミリツはアースの服を掴んで泣いている 横には刀身の綺麗な剣が落ちている
ラミリツの後方で サーベルが鞘に収められる音が響いた後 立ち去る気配がする
シュナイゼルがラミリツを見て一度目を伏せ 気を切り替えて ART2隊員らへ向き直る
ART2隊員らがラミリツを見ていた状態からシュナイゼルを見て 一度間を置いてから気を引き締める
ラミリツの独白
《ARTによる 世界を守る作戦は 成功を収めた けど それは… 懐かしい誰かの言葉で言い替えるなら 任務は成功 達成ランクは Fランク
…そう この作戦の達成ランクは 最低ランクのFランクだった》
――…
アールスローンの街中 変わらぬ風景が見える
ラミリツの独白
《アールスローンのみならず 世界を救うと言う この大作戦の成功は その功績と 作戦の立案 実行を担った ART司令官 アース・メイヴン・ハブロスの殉職と共に伝えられ それは 僕らがアールスローンへ戻るより早く 政府、国防軍両組織を通じて アールスローンの隅々へ伝わり 作戦に参加した僕らART隊員らが ART本部へ帰り付いた頃には ほぼ全てのアールスローン国民へと知れ渡っていた》
街頭モニターに 緊急ニュースが流れていて ARTの文字と アースの写真が掲載され キャスターが神妙に話している映像が映っている
ラミリツが街頭モニターに映っているアースの写真を見つめてから 視線を逸らす
ラミリツの独白
《世界を救った作戦の成功と 同時に伝えられている ハブロス司令官の殉職 つまり この2つの情報は アールスローンにとっては その事実を証明出来ないままに過ぎ去った 世界の危機と同等の価値を持つと言う事
ハブロス司令官は最終的には ARTと言う一組織の総責任者と言う肩書きしか持たなかったけど 元国防軍総司令官の名誉と 超高位富裕層ハブロス家の当主と言う地位 この2つの栄誉を持った 彼の喪失が今 物理的に平和になったアールスローンにとっては 最も大きな内なる脅威となった
だから 政府及び国防軍は一難去ってまた一難 居なくなってしまった その巨大なハブロス司令官の穴を埋めるため 作戦の成功を喜ぶ暇も無く 後処理に追われる事になっていた そして それは もちろん 僕にも…》
【 ART 司令塔 】
グレイゼスが作業をしながら電話をしている ART司令塔の扉が開きラミリツがやって来る グレイゼスが気付き受話器を離し ラミリツへ向いて言う
「あー!ラミリツ隊長!丁度良かった!」
ラミリツがグレイゼスを見る グレイゼスが受話器へ向いて言う
「今 丁度 ラミリツ隊長がいらしたので ちょっとそのまま!お待ちを!」
グレイゼスが受話器を持ったまま言う
「ラミリツ隊長 実は…」
ラミリツが近くへ向かう グレイゼスが手短に伝える ラミリツが一瞬呆気に取られてから言う
「…え?僕がARTの責任者に?何で?だって ARTの今後の作戦の構築や総指揮は アンタがやるんでしょ?だから その責任者は アンタが兼任するって話だったんじゃ?」
グレイゼスが言う
「はい、ARTの作戦構築 並びに 実行の責任者は 変わらず自分がやりますが ハブロス司令官が受け持っていた ARTの最高責任者と言う役職を ラミリツ隊長へお願いしたいのですが …構いませんか?」
ラミリツが言う
「え?ちょっと待って?分からないよ?作戦構築と実行権を持つARTの司令役はアンタなんでしょ?それで このARTは 以前から ハブロス家の所有物なんだから 最高責任者はハブロス司令官から 全てを引き継いた アイツが…」
グレイゼスが言う
「はい ARTの所有者は今後も引き続きハブロス家となり その記載名はヴォール・アーヴァイン・防長閣下と言う事になるのですが そうなると それは やっぱり まずい… と言う事でして?」
ラミリツが言う
「まずいって?そんな事言ったって このARTを立ち上げて 巨額を投資したのは 間違いなくハブロス家なんだから 今更 それを僕のメイリス家へ移すなんて事 出来ないよ?」
グレイゼスが言う
「あ~っ いや、そうではなくてですね?」
ラミリツが言う
「え?」
グレイゼスが受話器を気にしてから 受話器を遠ざけてラミリツへ言う
「う、うんっ …つまりですね?ART組織の保有者はアーヴィン君なんですが… 最高責任者と言う役職は… ARTの管理運営をする者と言う事で 必要と言いますか…?」
ラミリツが言う
「それって…?なら 今後は僕に ARTの資金繰りをしろって事?」
グレイゼスが言う
「あー、いや!そちらに関しては どうぞご心配なく?それを行なっていた以前とは異なり 今後のARTは 国防軍と政府 両組織の『第二の機動部隊』として活動する事が決まっていますので 基本的な活動資金に関しましては そちらの2組織から提供される事になっています それに何より 今後は以前までの様な 大幅な戦力アップ… つまりマシーナリーの改善なども 必要は無いだろうと言う事でして?そうとなれば それを行なう為の大金を集める必要は ありませんからね?」
ラミリツが言う
「そう… だったらさ?それこそ 保有者としてアイツの名前だけ有れば それで良いじゃない?僕は… やっぱ これからも ハブロス司令官に命じられた ART2の隊長のままで 居たいんだ」
ラミリツが胸に手を当て 服越しにナイトソウルを握って思う
(例え その役割を果たせなかった… ハブロス司令官からの最後の命令に 従えなかった 駄目な隊長でも…)
ラミリツが気を切り替えて言う
「うん!だから 例え 資金繰りをしなくても良いと言われてもさ?僕の名前に ARTの最高責任者の肩書きとかは付けたくないし 保有者は変わらずハブロス家だけど 馬鹿なアイツに総責任者の肩書が似合わないって言うのなら」
グレイゼスが衝撃を受けてから苦笑して言う
「せ、折角 その言葉を 濁していたのに…」
ラミリツが微笑して言う
「だったら それは 他のハブロス家の人にしたらどお?ほら?そうだよ?ライビンやアリアちゃんの名前にすれば良いじゃない?」
ラミリツが視線を上げると アースの姿が思い出され その横に軍曹の笑顔が現れる ラミリツがムッとして言う
「それに そもそも いくらアイツにARTの最高責任者の肩書きが付いた所でさ?誰もアイツが ハブロス司令官が管理していた このARTの管理を出来るだなんて 思わないでしょ?普通?」
グレイゼスが苦笑して言う
「それは… 例えそうだと思われましても…」
受話器から軍曹の声が聞こえる
『おお!流石は ラミリツ攻長なのだ!馬鹿な自分には ARTの最高責任者の勤めは果たせぬものと!その上 他の者も その様に思うであろうと言う事まで お見通しであるのだ!わっはっは!』
グレイゼスとラミリツが衝撃を受ける ラミリツが顔を向けて言う
「…って?その電話 あいつと繋がってたの?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ええ ですので それで…」
受話器から軍曹の声が聞こえる
『ラミリツ攻長!聞こえているのであれば 自分からもお願いするのである!ARTの最高責任者の欄へ ラミリツ攻長のお名前を書かせて欲しいのだ!』
ラミリツが受話器へ近付き不満そうに言う
「だからっ アンタ聞こえてたって言うなら 分かるだろ!?それとも こんな簡単な事も分からない!?僕はっ!」
軍曹の声が聞こえる
『いや!ラミリツ攻長の魂からの言葉であるなら 馬鹿な自分にも!それこそ自分の 魂へと伝わったのである!ラミリツ攻長は 今も変わらず自分の兄の事を 大切に思ってくれているのである!自分は とても嬉しいのである!』
ラミリツが一瞬呆気に取られてから微笑する 軍曹が続けて言う
『そして、その自分に 今 分かっている事は 兄貴が作り上げた ARTを守る為には!どうしても ラミリツ攻長のお名前が 必要であると言う事なのである!』
ラミリツが呆気に取られて言う
「え?ハブロス司令官の作り上げた ARTを守る為に 僕の名前が?」
軍曹の声が聞こえる
『そうである!ラミリツ攻長!』
ラミリツがハッとして言う
「…そっか そう言う事?」
グレイゼスが微笑すると言う
「はい そう言う事です ラミリツ隊長の… いえ ラミリツ・エーメレス・攻長閣下のお名前が ヴォール・アーヴァイン・防長閣下保有の ARTの最高責任者としてあれば!」
ラミリツが言う
「両組織の機動部隊として安定する?ううん?それ所か ARTは今後 このアールスローンに置いて 最も守られた一組織になる …何たって 国家家臣の2人の名前が書かれるんだもんね?それこそ もう誰も ハブロス司令官が作り上げた このARTを壊す事は出来ないよ」
グレイゼスが微笑する 受話器の先で軍曹が微笑むのが伝わる ラミリツが苦笑して言う
「…って?もぅ やっぱ これも ハブロス司令官の作戦?そうだよね?ハブロス司令官は常に 自分が居なくなった場合を考えて 備えをしていたんだし 自分が居なくなっても ARTが失うものは何もない様にって そんな作戦立てていたんでしょ?僕の… 本人の合意もなしにさ?ほんと!相変わらず 勝手なんだからっ」
グレイゼスが言う
「はい 本当に… あのハブロス司令官らしい作戦です それに 今後の作戦構築を任されている自分には やはり 真似は出来ません」
ラミリツが言う
「マスターさえ出来ない作戦を作っちゃうなんて ホントに最高の司令官だったよね?ハブロス司令官はさ?」
グレイゼスが苦笑して言う
「はい」
ラミリツが言う
「ハブロス司令官の真似は 誰にも出来ない それで… その作戦に 僕が関係してるって言うなら それはハブロス司令官からの 僕への 最期の命令 だよね?ARTの為の作戦 そうとなれば もちろん ARTの隊員である 僕自身の為でもあるって事だし… …なら分かった ART最高責任者の責務 引き受けるよ?」
グレイゼスが言う
「有難う御座います ラミリツ攻… いえ ラミリツ隊長」
ラミリツが微笑してから頷く グレイゼスが頷いてから受話器を持ち直して言う
「…じゃぁ そう言う事だから アーヴィン君?」
受話器から軍曹の声が音漏れする
『はっ!マスタぁー!誠に有難う御座います!これで 自分も安心して 今後も引き続き 国防軍総司令官としての責務をっ!』
グレイゼスがうるさそうに受話器を耳から離しつつ 苦笑して言う
「う、うん まぁ… そうね?とりあえずこれで アーヴィン君はARTの最高責任者では無いけれど それでも 一応 保有者の欄に名前が有ると言う事は それなりに意識には留めておいて貰いたいんだが…」
受話器から軍曹の声が聞こえる
『はっ!了解でありますっ!マスタぁー!』
グレイゼスが苦笑する ラミリツが苦笑してから 視線を変えてつぶやく
「…責務 ね…」
ラミリツが一度視線を落としてから 目を閉じ 間を置いて意を決するとポケットへ入れた手を握る グレイゼスが紙の握られた音に気付き顔を向ける ラミリツが顔を上げて言う
「そうと言う事なら その最高責任者として書類や何かに サインとか書いたりするんでしょ?他にも 政府や国防軍へ連絡とか?けど?それって 午後からでも大丈夫だよね?僕 これから…」
グレイゼスが気を取り直して言う
「あ、はいっ 大丈夫ですよ?ラミリツ隊長は 今日は以前の内から 休暇を取っていらしたので 自分もその様にスケジュールを組んでいますので?」
ラミリツが言う
「うん なら… きっと その当初の予定より 早く戻ると思うけど 一度行って来るから …じゃ また 後で!」
グレイゼスが疑問しつつ言う
「え?は、はい 時間の方は大丈夫ですよ?いってらっしゃい?」
ラミリツが去って行く グレイゼスが疑問してから 思い出して受話器を耳に当てて言う
「…と?あっ すまんっ!何だっけ アーヴィン君?…あら?切れてる…?」
グレイゼスが受話器と ラミリツの去った先を見て 首を傾けて言う
「何だか どちらも… いつもと違うと言いますか?まぁ…」
グレイゼスが苦笑すると言う
「…やっぱ 違うよな?彼ら2人だけじゃない 何もかも… 俺たちは…」
ラミリツが強い意志を持って通路を歩いている
グレイゼスが言う
「ARTは… アールスローンは… あの戦いで 余りに大きな1つを 失った」
グレイゼスが顔を向ける モニターにTV映像が映っていて 何かのニュースにアースの写真が添付されている グレイゼスが息を吐いて視線を逸らす
【 ART 正面玄関 】
ラミリツがIDを通す ピッ音と共に ラミリツが視線を向けると メンバーボードのラミリツの名前が外出中になる ラミリツがそれを確認して 視線を上げ表情を落すが 気持ちを切り替えて思う
(いや…)
ラミリツが顔を上げて思う
(もう 決めたんだ 僕は… 僕もっ もう…っ これからは!)
ラミリツが強い意志を持ってもう一度メンバーボードを見上げてから 踵を返して扉を出て行く ラミリツが見ていた先 メンバーボードの最上部にあった 司令官の欄から アースの名前が消えている
【 マイルズストリート 】
ライブ会場が賑わっている
【 ライブ会場 出演者通路 】
ナックキラーメンバーが通路を歩いている ナルが喜んで言う
「今度こそ 3度目の復活って奴よ!ナックキラー 最後にして 最高の復活だぜぃっ!」
キーボードメンバーが言う
「ナル それはちょっと違うだろ?」
ナルが疑問して言う
「えぇ?」
ベースメンバーが言う
「3度目の復活じゃなくて 3度目の正直?」
ナルが気付いて言う
「ん?…ああっ!そうだった!3度目の正直って奴で 最高の復活ーっ!」
ドラムメンバーが言う
「いや 違う違う」
ナルが疑問して言う
「あれ?3度目の正直… って 違ったか?」
キーボードメンバーが言う
「そうじゃなくて」
ナルが疑問して言う
「うん?」
ドラムメンバーが言う
「やっぱ 最高の復活 …じゃ ないよな?」
ナルが立ち止まって言う
「え…?最高の復活 …じゃないって?そりゃ…」
皆が立ち止まる エレキギターを持ったアニキのメイクをした人物が顔を逸らす ナルがそれを見てから一度視線を逸らし 気を取り直して言う
「いや!…やっぱり 最高の復活で良いんだよっ!」
皆がナルを見る ナルが言う
「だってそうだろう!?考えてみろよ おめぇら!?俺ら ナックキラーは 今回で3回目の復活だ!けど 1回目の復活の時だって 2回目の復活の時だって ギターが抜けるのは… もう 慣れっこだろうっ!?だったらっ 今回だって ナッククルーの野郎どもは 俺らの復活を喜んでくれるってもんよっ!」
メンバーが苦笑する ナルが続けて言う
「でもって 今回は 復活だけじゃねぇんだ!3度目の正直の今回は!過去の俺らナックキラーの皮を破る!大変身の時だ!だから その演出に ナッククルーの野郎どもが 最高に愛した!このアニキの姿を 最大限に使ってだなぁっ!?」
アニキがナルを見て頷く ナルが苦笑する
「そうやって 黙っていなくちゃいけねぇのは 最初の一曲 あのメステゲレンダーだけだ その一曲が終わった その時こそ… 俺らナックキラーの 最終決定メンバーで!アニキ流に言えば 俺らは 新しい伝説を作っていくんだぜいっ!さあ!行くぜ野郎ども!?」
皆が声をそろえて言う
「「「おうよーっ!」」」
皆が歩き始める キーボードメンバーが俯いて言う
「…とは 言っても 俺は正直心配だよ いくら大変身だなんて 言葉ではカッコ付けた所で メンバーの減ってしまった このナックキラーを ナッククルーの連中は受け入れてくれるかな?」
ベースメンバーがキーボードメンバーの肩に手を置いて言う
「これがアニキの作戦だ 従うしかないだろう?」
キーボードメンバーが言う
「それは… そうだけど…」
ナルが後ろを気にしながら歩いていて 前方へ向き直ると気付いて言う
「…と?お?ああ!」
メンバーがナルの声に足を止めて顔を向ける ナルが言う
「攻長閣下ー!」
ナルの視線の先に居たラミリツが 落としていた視線を上げナルを見ると微笑して言う
「…はい お久し振りです ナル…さん ナックキラーの皆さん…」
ナルとメンバーがラミリツの近くまで来る ナルが笑って言う
「相変わらず お堅いっすねー!攻長閣下ー!…って あぁっ いや!?えっと 攻長閣下様ぁ… だからぁ… えっと…?」
ナルが頭をかいて困る ラミリツが軽く笑う ナルが困って視線を泳がせる ラミリツが手に持っていたチケットを握る ナルが気付き視線を向ける ラミリツが意を決して思う
(僕はもう 決めたんだっ 僕は… ラミリツ・エーメレス・攻長っ!)
ナルが表情を喜ばせて言う
「お?あぁ良かったあー!チケット 無事に届いたんっすね!いや 正直 高位富裕層様のお屋敷に 最下層の俺の名前が差出人の郵便物が ちゃんと届くのかってぇ!?すげぇ 心配してたんっすが!?それしか方法が無かったもんだからぁ… …それが出来た あのアニキは もう… 居なくなっちまったもんで…」
ラミリツが視線を上げて思う
(…そう 僕は高位富裕層メイリス家の当主であり ARTの最高責任者でもある …今までみたいに 実力さえあればなられる ART2の隊長だって言うだけじゃない!)
ラミリツがメンバーの1人を見据えて言う
「アニキ!…さん?」
アニキが反応する ナルがハッとして言う
「あ…っ いや 攻長閣下っ!このアニキは…っ」
ラミリツがナルへ向いて言う
「ナルさん 今 少しだけ 彼と お話をさせて頂いても 良いですか?直ぐに済みますので」
ナルが困って言う
「え?いや えっと… ああ!それじゃ ここは俺が代わりに話を… って!?…あぁっ!?攻長閣下っ!?」
ラミリツがアニキの前に向かう ナルが視線を泳がせて困る メンバーたちが顔を見合わせる アニキがラミリツを見る ラミリツがアニキの前で言う
「アニキ 言葉を話してくれなくても良いです どうか聞いて下さい 僕は…っ ラミリツ・エーメレス・メイリスは その名前の頃からっ 子供の頃から… ずっと貴方のファンでした」
ナルが呆気に取られ メンバーと顔を見合わせる アニキは沈黙している ラミリツが言う
「ずっと前です 貴方が… ナックキラーの皆が まだ プロデビューをする前の… あの マイルズストリートで ストリートライブをしていた頃から 僕は アニキのギターと アニキの その… 音にはしない言葉に 救われて 励まされて来たんです アニキが居たから 僕は 辛い毎日を耐えられた …ずっと その頃から ナックキラーのライブに姿を隠して… 変装したりもして 貴方のギターを聞きに 行っていたんです …覚えていますか?実際に僕と何度か 視線を合わせてくれましたよね?」
ナルとメンバーたちが呆気に取られた状態から 微笑を合わせる ラミリツが言う
「僕はそうやって ずっと人目を気にして 隠れて 今まで… そして これからだって 本当はっ そんなでも ずっと… このままナックキラーの… ナッククルーの1人で… 居たかった …だけどっ もう 止めなくちゃいけないっ」
ナルたちが呆気に取られ疑問する ラミリツが顔を上げて言う
「僕はもう 子供のままではっ ラミリツ・エーメレス・メイリスでは居られないんです アールスローンの攻長として 在らなければいけないっ そうしないと 守れない… 今度こそ…っ 僕自身を捨ててでも 守らなくちゃいけないものが 出来たんですっ だから… もう…っ」
ラミリツが思う
(…これで 良いよね?ハブロス司令官?…あの時 貴方がしたように 自分を捨ててでも 守らなくてはいけないものがある それは… こう言う事…っ だから僕は… 僕と言う者は あの時 貴方と一緒に… 一緒に死んだものだと思うっ!それなら これで良いっ!これで 今度こそ!…もう1人では 逝かせないよっ!ハブロス司令官っ!)
ラミリツがチケットを握りつぶす アニキがそれを見てから 間を置いて口を開く ナルがハッとして声を掛けようとするが それより早く アニキが言う
「違うな?」
ラミリツが強く閉じていた目を開き疑問して言う
「…え?」
アニキが言う
「そうではない」
ラミリツが呆気に取られたまま アニキを見上げると言う
「…ア、アニキ?」
アニキがアースらしく振舞って言う
「分かれよ?ガキ?」
ラミリツが驚き 呆気に取られて言う
「そ、んな?…ま、まさか…?アニキは… ハ… ハ… ハァアアーッ!?」
アニキがニヤリと笑う ラミリツがすっとんきょうな声を上げる
「ハブロス司令官ーーっ!?」
ナルが笑み メンバーと顔を合わせ皆が笑う
【 ライブステージ 】
ナックキラーのメンバーがライブを行なっている 客席に変装したラミリツが盛り上がっている 真後ろに隊員Nと隊員Vが盛り上がっている 更に後方でシーナとエミーが盛り上がっている 曲が終わると 最高コールが上がる ナルがマイクへ向かって言う
「おうよー!野郎どもー!帰ってきたぜぇ?全ての始まりであった このマイルズストリートに!俺ら ナックキラー 最初のメンバーで ナックキラーは 最終復活だぁああーー!」
皆が盛り上がる ナルが言う
「てめぇらも知ってると思うがあっ!俺らナックキラー途中のメンバーであった レッテの野郎は!もう1つの故郷とやらに 帰っちまったー!けど んな事は関係ねぇぜ!レッテのソウルは ここに残った 俺らナックキラーのメンバーと てめえら ナッククルーのソウルに 刻み込まれてる!そうだろうぉ!?野郎どもーっ!?」
皆が叫ぶ
「「おうよーっ!」」
所々からレッテコールが響く 隊員Nと隊員Vが泣きながら叫ぶ
「「レッテェ~~!!」」
ナルが言う
「おるあっ!野郎どもおっ!泣き声なんざ聞きたかねえ!その代わり!ナックキラーは この3度目の復活で 新たな最高の極みへ向かう事になった!そうとなれば 昔の俺らとは ここで おさらばよ!これからの俺らナックキラーは!」
ナルが化粧のされた フェイスシールを剥がし捨てる メンバーたちが次々に 派手なメイクのフェイスシールを剥がし捨てると 各々の素顔が露になる 皆が驚き最後のメンバーであるアニキへ視線を向ける ラミリツが呆気に取られて言う
「え!?…ちょ、ちょっと 待ってよ?…まさかっ!?」
隊員Nと隊員Vが慌てて叫ぶ
「「アニキィイイッ!?」」
シーナが喜んで言う
「アニキは 絶対 イケメンっ!」
エミーが笑んで言う
「分かんないよ~?まぁ 私は 中身が良ければ OKだから!」
皆の視線の先 アニキがフェイスシールを剥がし捨てる 皆が食い入る ラミリツが思わず踏み出そうとしていた状態から 驚く
【 ART 正面玄関 】
扉が開かれると ラミリツが視線を後方へ向けて歩きながら言う
「もぅっ!僕 本気で心配したんだからねっ!いくら 高位富裕層ハブロス家の アース・メイヴン・ハブロスが殉職したって 言ったってさっ!?」
ラミリツが一度顔を正面へ戻し IDをスキャンする ピッ音と共に ラミリツの名前が点灯する ラミリツが後方へ向き直って言う
「それは 高位富裕層の長男としての名誉を終えて 名前を捨てて下層階級へ帰化するって事!いくら高位富裕層の秘密だって言ったってさ?その高位富裕層の人たちはもちろん 中位富裕層の人たちだって 知ってるんだよっ!?いくら ぱっと見で分からないメイクをしていたって!?」
バンドメイクのアースこと アニキがIDを片手に言う
「そして その地位に在る連中は 最下層バンドのナックキラーの事など 気に止める事は無い そこへ 万が一にも そのメンバーへ 元高位富裕層ハブロス家の長男が居たと 分かった所で 奴らの矜持がそれを否定する この程度の変装であっても 気付かれる事もない程に… …と そうだったな?」
アニキが機械へ通そうとしていたIDを 軽く弄んで言う
「もう ここに 私の名前は… いや?俺の新たな名は まだ 刻まれては居ないのだった」
ラミリツが呆気に取られて言う
「…え? ”まだ”って…?それじゃ…?」
【 ART 第一訓練所 】
ART1メンバーが呆気に取られている 皆の前で グレイゼスが表情をしかめつつ言う
「今日から… 諸君の… ART1の… 正式メンバーとなった…」
アニキがデスヴォイスで言う
『よろしくなっ!野郎どもっ!』
皆の視線の先 エレキギターを持った新コスチュームのアニキがウインクしている 隊員Cが表情を引きつらせる 隊員Aが呆気に取られている 隊員Fが苦笑している 隊員Iが困惑して言う
「えーっと… 確か… 彼は…?」
隊員Nと隊員Vが驚きに声をそろえて叫ぶ
「「ア、ア… アニキィイイっ!?」」
ハイケルが言う
「…了解」
【 ART 正面玄関 】
メンバーボードのART1のメンバーに 『アニキ』の名前が点灯する
to be…アールスローン戦記Ⅲ
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