花売り娘は身代わり花嫁

えりー

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ローズの恋物語

結婚式当日

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いよいよ結婚式の日になった。
本当に身内のみの結婚式のようで招待客が少なかった。
ローズはあまり人前に出たことがないので安心した。
部屋にはドレスが運び込まれてきた。
露出の少ない品のあるドレスだった。
色は花嫁なので純白。
それにヴェールがついている。
装飾品も白。
すべて特注品で小柄なローズに合わせて作らせたものらしい。
ローズはあまりの美しさに一瞬戸惑った。
「これ、今から着るんですよね?」
思わず近くにいたメイドに確認をしてしまった。
「はい。これはローズ様のご衣装です」
そう言いメイドはローズに湯あみをさせ、衣装の着付けに入った。
「苦しい所はございませんか?」
「あ、はい。ぴったりです」
「ローズ様は小柄ですから着付けがしやすいです」
(気にしていることをあっさり言われた・・・)
どうやらこの館のメイドは素直な方が多いようだ。
でも、そっちの方が良いとローズは思った。
変にすましているメイドより、親しみの持てるメイドの方が良いと思う。
ローズはそう思って思わず微笑んでしまった。
そこへ戸をノックする音が聞こえた。
「はい」
ローズは返事をした。
そこにいたのはロームだった。
ロームは今年37歳になる。
ローズとは21歳も違う。
親子ほど年の離れた二人だが、ロームがローズの家に出入りしている時から仲は良かった。
「ローズ綺麗だね」
「そ、そんな風に褒められると照れます」
そう素直に言うとロームは笑った。
「あの、ローム様!どうして私と結婚してくださるんですか?」
「それは・・・愛しているからだよ」
(それは恋愛感情?それともー・・・)
それを聞くのが怖くてローズは聞けなかった。
「ローズは、この結婚嫌になちゃった?」
ローズは首を激しく横に振った。
「そんなことありません。私、ローム様の事ずっと愛していました」
「・・・そんな風に感情をぶつけてくる姿がとても愛おしく感じるよ」
「ローム様?」
ロームはローズの頬にキスをした。
ローズはそれだけで幸せな気持ちになった。
そこへ父のウィザードが現れた。
「ローム!まだ式は終わっていないだろう!!ローズに触れるな」
(お父様のせいでせっかくの幸せな気持ちが台無しだわ)
「お父様。今日、ローム様と結婚するんですからこれくらい良いではありませんか」
するとウィザードは言った。
「駄目だ。ちゃんと神に誓ってからでないと」
「もう、本当に石頭ね」
「それより、そのドレスよく似合っているな。リーゼの若い頃を思い出す」
「お母様の?」
「ああ、リーゼのウエディングドレス姿も美しかった」
(お父様、本当にお母様の事がお好きよね)
「お父様今日は私の結婚式ですよ。褒めるのなら私だけにしておいてください」
そう言うとウィザードはローズに謝った。
「すまん。つい、思い出に浸ってしまった」
「まぁ、ローズ!なんて綺麗なの!」
「お母様!」
母もローズの様子を見に来てくれた。
「似合っていますか?」
「ええ!!とても素敵よ」
そう言ってリーゼは目を潤ませた。
メイドの1人が声をかけてきた。
「そろそろお時間です。皆さまご準備なさってください」
「ローズ様、ヴェールを・・・」
そう言うとローズの頭にベールをかけてくれた。
「じゃぁ、行こうか。俺の花嫁」
「はい」
ロームに呼ばれ、ローズは駆けていった。
「ローズ!走るんじゃない!」
「そうよ危ないわ」
父と母に見送られローズはロームと共に行った。
「・・・行ってしまったわね」
「ああ、こうして怒るのはこれで最後かと思うと少し寂しいな」
リーゼはウィザードの手を握り言った。
「そんなに悲しそうにしないでください。子供はいつかは親から離れていくものですよ」
「うむ・・・。そうだな」
リーゼはハンカチをウィザードに差し出した。
「鬼神が娘の結婚式で泣いたらおかしいですよ」
ウィザードはハンカチを受け取り、涙を拭った。

外に出ると招待客から祝福の声をかけられた。
「ローム将軍、ご結婚おめでとうございます」
「将軍、この度はおめでとうございます」
「ローム将軍万歳!」
「こちらが花嫁ですか」
視線を向けられたローズは慌てて挨拶をした。
「ローズと申します。宜しくお願いいたします」
「ローズ様、この度はおめでとうございます」
「ありがとうございます」
祝いの言葉と共に悪口も耳に入ってきた。
「まだ喪が明けたばかりなのに結婚式なんて・・・」
「一体どういうつもり何だか」
「しかもあんなに歳若い娘を娶るなんてどうかしている」
ローズは悪口を言っている方へ行ききちんと挨拶をした。
「お初にお目にかかります。ローズと申します。お見知りおきください」
そう言って微笑んで見せるとさっきまで悪口を言っていた連中は黙った。
ロームはその様子を遠くから見ていた。
悪口も、もちろんロームの耳に入っていた。
しかしロームは相手にしないことにしていたがローズが飛び出していったのだ。
それには驚かされた。
ロームの元へ戻ってきたローズにロームは言った。
「ああいう輩は放っておきなさい」
「でもローム様の事悪く言われたので頭に来ました」
ロームはローズの肩を抱き挨拶回りを続けた。
挨拶が終わり皆で教会へ行き神の前で結婚の報告をした。
指輪が交換され、誓いのキスも終わった。
誓いのキスをするのを見ていたウィザードは複雑な気持ちになった。
しかしもう結婚式も終わり神への報告も終え、ローズとロームは夫婦になったのだ。
もう邪魔することは出来ない。
リーゼとウィザードは娘を見守った。
もうそれしかできなくなった。
これからはロームがローズを守っていくのだ。
無事に結婚式が終わり招待客は帰って行った。
もちろんリーゼとウィザードも今日帰ることになっている。
「ローズの事は任せてください。安心していいですよ」
そういうロームに対してウィザードは言った。
「もし、泣かせたり傷つけるような事があればすぐに返してもらいに来るからな」
「ローム様、ローズの事を宜しくお願いしますね」
「はい、お任せください」
「お父様、お母様。今までありがとうございました」
ローズは淑女らしい振る舞いでそう挨拶した。
「ローズ・・・」
「ローズ、何か困った事があったらすぐに知らせるんだぞ?」
「はい」
「ローム様、馬車の準備が整いました」
リーゼとウィザードはその馬車に乗り込み、自国へと帰って行った。
ローズは馬車が見えなくなるまでその場から動かなかった。
そんなローズにロームが声をかけてきた。
「両親がいなくて寂しいかい?」
「・・・少し」
「大丈夫、ローズならすぐに慣れるさ」
ロームに手を引かれ屋敷の中に戻って行った。
部屋に帰るとウエディングドレスをメイドたちに脱がされた。
そしてまた湯あみをするように勧められ、今度はメイドたちがローズの体の隅々まで洗い始めた。
「え・・・どうしてこんな入念に洗うんですか?」
「今晩は初夜ですから」
そう言われ初夜の事を全く考えていなかった事に気がついた。
脱がせやすそうなネグリジェを着せられ部屋へ戻された。
(・・・今晩が初夜・・・どうしよう考えてなかった・・・)
ローズは焦った。
しかし時間は刻々と迫ってくる。
とりあえずカーテンの裏側に身を隠し、ロームの訪れを待った。
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