ココロの在りか

えりー

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大河

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「・・・噂には聞いていたけど本当にあったんだな」
大河は布団に座ったまま辺りを見回した。
「鬼の住処か・・・」
(そうすると真奈が鬼という事になるのか?)
真奈は瞳の色は赤かったが普通の女の子と変わらない姿をし、話をしていた。
冷血な鬼ならば俺の事も放って置いただろう。
しかし、真奈は俺を家に入れて治療までしてくれた。
彼女は本当に鬼なのだろうか?
(考えても仕方ない、本人に聞いてみよう)
大河はそう思った。
村人たちは今頃どうなっただろう。
急に大河は自分の故郷が心配になった。
大河の生まれ育った村は豊かな土地で年貢を納めていた人も良い人で、必要以上取っていくことはなかった。
そんな良い村にいきなり夜盗が攻め込んできた。
自分は命からがら逃げのびることが出来たが家族や友人たちは捕まってしまったかもしれない。
立ち上がろうとしても体に力が入らない。
大河は悔しくて堪らない気持ちになった。
そんな時真奈が盆に粥を乗せ戻ってきた。
「まだ、あまり動かないほうがいいですよ」
「・・・ああ、そうみたいだな」
悔しさを押さえながら大河は言った。
真奈は大河の傷の心配をしてくれている。
「なぁ、真奈。聞いても良いか?」
「はい」
息をのみながら大河は口を開いた。
「真奈は鬼なのか?」
「・・・そうですよ。私は鬼です」
「そうか」
「気味が悪くなりましたか?」
真奈の表情はどこか悲しげだった。
正直鬼がどういうものなのか大河は知らない。
真奈を見て気味が悪いとも嫌悪感も感じない。
だから正直に答えた。
「いいや、そんなことはない」
そう言うと真奈は驚いた表情になった。
「鬼は本来忌み嫌われるものでしょう?それなのに大河は気持ち悪くないというのですか?」
「それは人によると思おうけどな。少なくとも真奈は俺に危害を加えたりしないだろう?」
「はい。傷も早く治って欲しいと思っています」
(・・・何て優しい娘なのだろう)
大河はそう思った。
真奈は大河をずっと心配していたようで目覚めて安心していた。
「ああ、早く怪我が治らないと困るからな。真奈にも迷惑をかけてしまう」
「迷惑だなんて思っていませんよ」
早く怪我を直し夜盗の頭に会いに行かなければいけないー・・・。
難しい顔をしていると彼女は心配そうにのぞき込んできた。
「傷、痛みますか?」
「ああ、酷く痛むな。粥を食べてまた休ませてもらうよ」
そう言い粥をゆっくり咀嚼しながら食べた。
味はとても美味しかった。
食事を終えると一気に眠気が襲ってきた。
「真奈、俺はお前の世話になっていていいのか?」
「はい」
真奈は笑顔でそう答えた。
そんな真奈を見て胸が痛んだ。
俺は彼女を・・・いずれ殺さなければいけないのに。

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