緑の守り神

えりー

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第二章 

ヒスイの忍耐

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ヒスイはローゼの成長を待つと言ったが、その我慢がいつまで持つか自分でもわからなかった。
しかし、ローゼは絶対的な信頼をヒスイにおいている。
ヒスイは毎日悶々とした日々を過ごしていた。
ローゼは無邪気でとにかく可愛い。
ころころ変わる表情、穏やかに微笑む顔。一生懸命家事をする姿。
とにかく何をしていてもヒスイの目にはローゼは可愛く映る。
先日、雷が怖いからと言って、ローゼはヒスイの部屋を訪れた。
(俺は試されているのか・・・?これは試練なのか?)
そう思いながらローゼを部屋へ入れてやった。
一緒のベッドに入り眠りたいというので言われた通りにしてやった。
ローゼはヒスイが傍にいることに安心したのかすぐに眠ってしまった。
小さな寝息が聞こえてきた。
ヒスイはローゼの甘い匂いに誘われて思わずキスをしてしまった。
そうして少し服を脱がし、襲いかけたのだ。
ローゼが一番警戒しないといけないのは実はヒスイなのだ。
ヒスイはなるべく紳士的に接しているつもりだ。
しかし、それは必死に我慢しているからだ。
もし、あの狂王のトールみたいなことをしたら彼女の信頼は一瞬でなくなってしまうだろう。
そして、怯えられ、嫌われてしまうに違いない。
彼女に怯えられるのは避けたい。
「俺は・・・やっぱり、ローゼが欲しい」
そう呟き、ローゼの元へと行った。
ローゼの部屋のドアをノックするとすぐにドアが開けられた。
(・・・なんて警戒心のない・・・)
相手が誰だか確認せずにドアを開けるだなんて危険だ。
「ローゼ、例え二人しかいなくとも、ノックされたら相手が誰だか確認してドアを開けろ」
「はい。すみません。でも足音でヒスイ様だとわかりましたから」
そう言いにっこり微笑んだ。
「何か御用ですか?」
「あ、ああ。一緒にお茶でもしないかと思って」
お茶に誘うと彼女は嬉しそうにしていた。
「はい!すぐにご用意いたしますね」
そう言って彼女は走って厨房に行ってしまった。
(やっぱり言えない・・・)
他の人の前では強気なヒスイだが、ローゼの前ではヘタレになってしまう。
はぁーっと思い溜息をつき宙を仰いだ。
「今更やっぱり抱きたいなんて言えるわけない・・・か」
ローゼは嬉しそうにお茶の用意をして戻ってきた。
お茶うけにはローゼが作ったクッキーが添えられていた。
「今日はうまく作れたと思うんですが・・・ヒスイ様、お味はどうですか?」
「美味い」
「お茶は珍しい茶葉をヒスイ様がくださったので淹れてみました」
「・・・」
クッキーを頬張る姿を見ていても愛おしさがこみあげてくる。
思わず触れたくなって、自分の膝の上にちょこんと座らせてしまった。
ローゼは驚いていたが、また嬉しそうに振り返りヒスイに微笑んだ。
その微笑がどれほどヒスイにとって欲情を掻き立てるもの彼女は知りもしない。
ヒスイにとってこの生殺しはいつまで続くのかは誰にもわからなかった。
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