上 下
11 / 16

真実

しおりを挟む
今日は食材の調達に行くと朝早くから(朝といってもずっと夜だが)彼は出かけて行った。
戸をノックする音がした。
「どなたですか?」
桃花は前回の事があるので少し警戒しながらそう言った。
「俺だ。多久磨だ」
「多久磨さん?今日は祐耶は買い出しに行っていて帰りは遅いですよ?」
「そう言うと思ったから今日来たんだ」
とりあえず戸を開けた。
「元気そうだな。桃花、祐耶とはどこまでいっているんだ?」
「そ、そんなこと多久磨さんに関係ないじゃないですか!!」
桃花は戸を開けたことを後悔した。
「それが関係ないわけじゃないんだよな」
そう言うと桃花を床に押し倒した。
「俺が今日ここに来たのは桃花に真実を話すためと自分の目的の為だ」
「真実?」
桃花はすっかり忘れていた。
(そう言えば祐耶とこの人、私に秘密にしていることがあるんだった)
「聞きたいですが、どいてください」
「何故?」
「何故って、こんな押し倒された格好のまま大人しく話は聞けません」
そう言って桃花は思いっきり多久磨の腹部を蹴り飛ばした。
少しの隙間から桃花は多久磨の腕から逃れ壁際へと移動した。
「へぇ、なるほどね。確かに見かけとは全然違う性格だ」
多久磨は嗤った。
「それより早く教えてください。一体何を隠しているんですか!?」
「羽衣を桃花から取り出す方法があるんだよ」
「え?」
そんな話今まで聞いていない。
もしそんな方法があるのなら彼はすぐに実行しただろう。
何故実行しなかったのだろうか?
「桃花を抱けば羽衣は戻るし、失った神力も戻るんだ」
(抱く?私を?)
「う、嘘よ。そんな話今まで聞いてないです!」
「そう思うなら試してみるか?」
多久磨は簡単に抵抗する桃花をテーブルの上に組み敷いた。
「!!」
多久磨は桃花にキスをした。
祐耶のキスと全然違っていた。
それだけで悪寒が走る。
ガリっと入って来た舌を噛んだ。
つぅっと彼の口の端から血が零れ落ちるのが見えた。
しかし、桃花には罪悪感はない。
「何でこんなことをするんですか!」
「あいつの羽衣と神力を奪う為だ」
少し苛立ちながら多久磨は答えた。
その声は背筋がぞくりとするものだった。
(その為だけに犯されるの!?)
そんなの嫌だと思いもう一蹴りしようと思ったが今度は足を掴まれてしまった。
「足癖悪いなぁ」
「!」
「どうせまだあいつに何もされていないんだろう?」
「どうしてそう思うの!?」
「祐耶は両想いになった女しか抱かないんだよ。長年の付き合いであいつの思考は大体わかってる」
図星だった。
(だから祐耶は私と恋愛しようと思ったのか・・・)
何だか桃花は虚しくなった。
羽衣を取り戻すためだけに必死で好かれようとしていたのかと思うと祐耶が少し憎らしくなった。
でも祐耶は待つと言ってくれた。
多久磨みたいに無理強いしたりしない。
多久磨はまるで物を扱うように桃花に触れてくる。
桃花から大粒の涙がこぼれた。
「泣き顔は可愛いな。さっきの威勢はどうした?もう抵抗はしないのか?」
からかうように多久磨は言う。
着物の帯を解きながら多久磨は嬉しそうにしている。
抵抗しなきゃと思ったが一旦怖気づいてしまって、もう恐怖心しかなく、怖くて震えが止まらない。
徐々に着物をはだけさせられる。
「お前処女だろう?大人しくしてくれていれば優しく抱いてやるよ」
いきなり胸を直に触れられ、桃花は驚いた。
「ひっ」
桃花は悲鳴を上げた。
頭の上で両手を拘束され、片方の手で愛撫が始まった。
「嫌ぁ!」
「嫌なのは最初だけだ。すぐ好くなる」
そう言いながら多久磨は胸を弄び始めた。
「やぁ、んぅ」
「はっ、ほらな」
胸を揉まれ、胸の頂を口に含まれ転がされる。
それだけで下腹部が疼き出す。
「やぁん・・・ちが、好くなんてない!」
「そんな甘い声を出しておきながらか?」
そう言われ羞恥で顔が真っ赤になった。
「思った以上にいい声で鳴く。うちで飼いたいくらいだ」
「私は、ペット・・・じゃない・・・」
声を振り絞りそう言ったが多久磨は聞き入れない。
多久磨は桃花の足に触れ撫でた。
「触り心地もいいな。ますます気に入った」
その声はうっとりとしていた。
下着を剥ぎ取られ、両膝を大きく左右に開かれそうになった時、戸が開いた。
「・・・多久磨ぁ!!」
「今からいい所だったのにもう帰って来たのか。祐耶」
「祐耶ぁ」
身を起こし祐耶の元へ駆け寄った。
「多久磨さんが・・・」
「言わなくてもわかってる。何も言うな」
「神力もまともに使えないお前とやり合っても楽しくなさそうだな」
多久磨は余裕を見せている。
彼は普通に神力も使えるし、空も飛べる。
「今回の事はお前にも責任があるんじゃないか?」
「何!?」
「桃花に何の説明もせずにそばに置いていた。説明してさっさと羽衣を返してもらえば良かったんじゃないのか?」
「俺は、お前とは違う。無理強いしてまで返して欲しくない」
多久磨が祐耶に聞いてきた。
「・・・お前これからどうするつもりだ?」
祐耶は怒って言った。
「俺たちの事は放っておいてくれ!」
そう言うと、多久磨は溜息を付いて飛んで行ってしまった。
何事もなかったかのように。

「大丈夫か桃花!?」
「何もされていないか!?」
脱がされた下着を拾い、彼から見えないように身につけた。
「どうして・・・私と恋愛しようとしたかわかりました・・・」
「話を聞いてしまったんだな?」
「はい」
桃花は俯き泣いていた。
祐耶はどうしていいかわからなくて動揺した。
「だが、俺は本気で桃花の事が好きになった」
「・・・今、その言葉を信じることが出来ません」
それほど今日の出来事はショックだった。
「確かに桃花と交わればすぐにも羽衣と神力を取り戻すことが出来た」
「・・・」
「でも、俺は桃花と両想いになってから返して欲しかったんだ・・・その気持ちだけは信じて欲しい」
真摯な声でそう言われた。
桃花はその声を聞きいていたが今は受け止められそうになかった。
「ごめんなさい。今は少し1人になりたいので寝室を借りますね」
「・・・ああ。落ち着いたらよく話そう。俺は多久磨とは違うから警戒するな。ゆっくり休め」
「・・・ありがとう」
そう言い、桃花は寝室へと入っていった。
しおりを挟む

処理中です...