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美乃梨
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この異世界に来て、ここが安全な場所なのは分かった。
女性しかおらず誰も美乃梨に危害を加えて来ない。
たまに来客があり男性の出入りがあるがそれ以外は女性だけだ。
その事に安堵した。
竜王は好きに城の中を出歩いても良いと言った。
だから散歩がてらにフラフラと城内と城外に出て暇をつぶした。
竜王は時を止めたと言っていた。
私がいつ戻って来てもいいようにと・・・。
竜王に惹かれていないと言えば嘘になる。
今まで助けられる度に会いたいと焦がれた人だ。
まさか異世界の王様だったなんて思いもしなかったが・・・。
昔の話はあまり聞きたくなかった。
自分で思い出さなければいけない気がしたからだ。
(早く、思い出さなくちゃ・・・)
花を摘みながらそんな事を考えていた。
すると背後に人の気配を感じた。
「おい、何をしている」
竜王だった。
「花を摘んでいるの。綺麗だから・・・もしかして駄目だった?」
竜王は微笑んだ。
「いや、この庭園はお前のものだ。好きにすると良い」
「?」
「血の香りがするぞ」
「あ、さっき手を怪我してしまって」
そう言うと竜王は手の傷を見て舐めた。
一瞬美乃梨の心臓が跳ねた。
ドクンっと音がした。
「美乃梨は昔からそうだったな」
「怪我をしていたという事?」
「ああ、いつも泥だらけになってこの庭園で遊んでいた」
竜王は遠い昔を思い出し慈しむような表情を見せた。
まだ心臓が高鳴っている。
(さっきのは消毒してくれただけよ)
そう自分に言い聞かせた。
昔の話をするときの竜王はいつも穏やかな表情をする。
それなのに今の私といるときは少し困った表情をすることが多い。
昔の自分に嫉妬していることに気が付き恥ずかしくなった。
赤くなった顔を隠していると竜王が不思議そうな顔をした。
「どうかしたのか?」
「何でもない」
竜王は真剣な顔で美乃梨の顔を覗き込んだ。
「本当に何でもないの!!」
摘んだ花を竜王の顔に押し付けその場を後にした。
(私はきっと竜王の事が好きなんだ。だから嫉妬したりするんだ)
「何故逃げる?」
意外にも竜王は美乃梨を追いかけてきた。
両手を壁につかれ美乃梨は逃げ場を失った。
「・・・理由なんてない」
「嘘だな」
竜王は少し苛立っていた。
美乃梨の顎を捕え、口づけをした。
それは軽く触れるだけのものじゃなかった。
歯列をなぞり、口腔内を犯していくような口づけだった。
「ん、ふぅ、はっ・・・」
つぅと唾液が零れ落ちる。
長い間そうされていると美乃梨の下腹部に軽く疼きが走った。
立っていられないほどの激しい口づけに翻弄されながら美乃梨は喘いだ。
ようやく唇が解放され美乃梨はその場に崩れ落ちた。
「な・・・何で、」
「俺が怒っているのが分かるか?」
美乃梨には何故彼が怒っているのか分からなかった。
呆然としている美乃梨を担ぎ上げ、自室に連れ込んだ。
「俺から逃げる事だけは許さない」
美乃梨は彼から少し離れただけだったが竜王はそれが気に入らなかったのだ。
長椅子に座らされ美乃梨の足を見た。
「逃げられないように鎖で繋いでおくか?」
「や、やだ!!逃げないからやめて」
「次、俺から逃げようとしたら口づけだけじゃすまないからな」
そう言い残し部屋から出て行った。
竜王の口づけは濃厚なものだったが不思議と嫌悪感は無かった。
美乃梨はその事がショックだった。
自分が竜王の事が好きだと自覚させられた。
(・・・まだ頭がくらくらする)
酸欠気味になり長椅子に横になった。
小柄な美乃梨にはちょど良い大きさだった。
しかし、一向に記憶が戻る気配は無かった。
女性しかおらず誰も美乃梨に危害を加えて来ない。
たまに来客があり男性の出入りがあるがそれ以外は女性だけだ。
その事に安堵した。
竜王は好きに城の中を出歩いても良いと言った。
だから散歩がてらにフラフラと城内と城外に出て暇をつぶした。
竜王は時を止めたと言っていた。
私がいつ戻って来てもいいようにと・・・。
竜王に惹かれていないと言えば嘘になる。
今まで助けられる度に会いたいと焦がれた人だ。
まさか異世界の王様だったなんて思いもしなかったが・・・。
昔の話はあまり聞きたくなかった。
自分で思い出さなければいけない気がしたからだ。
(早く、思い出さなくちゃ・・・)
花を摘みながらそんな事を考えていた。
すると背後に人の気配を感じた。
「おい、何をしている」
竜王だった。
「花を摘んでいるの。綺麗だから・・・もしかして駄目だった?」
竜王は微笑んだ。
「いや、この庭園はお前のものだ。好きにすると良い」
「?」
「血の香りがするぞ」
「あ、さっき手を怪我してしまって」
そう言うと竜王は手の傷を見て舐めた。
一瞬美乃梨の心臓が跳ねた。
ドクンっと音がした。
「美乃梨は昔からそうだったな」
「怪我をしていたという事?」
「ああ、いつも泥だらけになってこの庭園で遊んでいた」
竜王は遠い昔を思い出し慈しむような表情を見せた。
まだ心臓が高鳴っている。
(さっきのは消毒してくれただけよ)
そう自分に言い聞かせた。
昔の話をするときの竜王はいつも穏やかな表情をする。
それなのに今の私といるときは少し困った表情をすることが多い。
昔の自分に嫉妬していることに気が付き恥ずかしくなった。
赤くなった顔を隠していると竜王が不思議そうな顔をした。
「どうかしたのか?」
「何でもない」
竜王は真剣な顔で美乃梨の顔を覗き込んだ。
「本当に何でもないの!!」
摘んだ花を竜王の顔に押し付けその場を後にした。
(私はきっと竜王の事が好きなんだ。だから嫉妬したりするんだ)
「何故逃げる?」
意外にも竜王は美乃梨を追いかけてきた。
両手を壁につかれ美乃梨は逃げ場を失った。
「・・・理由なんてない」
「嘘だな」
竜王は少し苛立っていた。
美乃梨の顎を捕え、口づけをした。
それは軽く触れるだけのものじゃなかった。
歯列をなぞり、口腔内を犯していくような口づけだった。
「ん、ふぅ、はっ・・・」
つぅと唾液が零れ落ちる。
長い間そうされていると美乃梨の下腹部に軽く疼きが走った。
立っていられないほどの激しい口づけに翻弄されながら美乃梨は喘いだ。
ようやく唇が解放され美乃梨はその場に崩れ落ちた。
「な・・・何で、」
「俺が怒っているのが分かるか?」
美乃梨には何故彼が怒っているのか分からなかった。
呆然としている美乃梨を担ぎ上げ、自室に連れ込んだ。
「俺から逃げる事だけは許さない」
美乃梨は彼から少し離れただけだったが竜王はそれが気に入らなかったのだ。
長椅子に座らされ美乃梨の足を見た。
「逃げられないように鎖で繋いでおくか?」
「や、やだ!!逃げないからやめて」
「次、俺から逃げようとしたら口づけだけじゃすまないからな」
そう言い残し部屋から出て行った。
竜王の口づけは濃厚なものだったが不思議と嫌悪感は無かった。
美乃梨はその事がショックだった。
自分が竜王の事が好きだと自覚させられた。
(・・・まだ頭がくらくらする)
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