竜王と契約の花嫁

えりー

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過去の記憶

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遠のいていく意識の中少し寂し気な竜王の顔が見えた気がした。
竜王は崩れ落ちた美乃梨の体を支え自分の膝の上に乗せた。
彼女が目覚めるのをこうして待つことにした。
自分の気が短いことを竜王は知っている。
もう美乃梨を怯えさせたくないし、無理もさせたくなかった。
だから記憶を戻すと決めた。
そして、早く美乃梨と一つになりたかった。
一つになり、自分の物だと実感したかった。
(美乃梨は今、夢の中で過去の記憶を見ているだろう・・・)
「美乃梨・・・」
愛しい娘の体を抱きしめ名を呼んだ。

美乃梨はここが何処かすぐわかった。
あの庭園だ。
幼い美乃梨は嬉しそうに花を摘み花冠を作っていた。
「おい、何をしている?」
「りゅう!!これあげる!」
ばさっと竜王の頭に今できたばかりの花冠を乗せた。
「りゅうの黒い髪に白い花が良く似合うね」
そう言い幼い自分は笑っている。
りゅうは複雑な表情を見せたが幼い美乃梨の頭を撫でた。
「ここは冷える。城へ戻るぞ」
言いながら美乃梨を片手で抱えた。
「わっ」
一瞬落ちそうになったが竜王が支えてくれている。
(1ヵ月竜王と過ごしたというのは本当だったらしい)
幼い美乃梨は竜王に懐いていた。
竜王は幼い美乃梨をとても大切にしているように見えた。
(頭が痛い・・・)
記憶の断片を見る度に頭痛が起こった。
(記憶が戻っている影響?)
無理やり記憶を取り戻そうとしていることが影響しているとしか思えなかった。
(竜王がせっかちだから・・・)
この世界に来てから竜王には振り回されっぱなしだとしみじみ思った。
幼い美乃梨は寂しがり屋で眠る時も食事の時もわがままを言った。
「りゅうと一緒じゃなきゃ嫌だ」
召使たちは皆困惑していた。
幼い美乃梨は竜王の事が大好きで堪らないといった感じだった。
親から引き離した相手なのに何故そんなに慕えるのだろう。
美乃梨はそう思った。
ある日、竜王が眠る幼い美乃梨の服を脱がせ、背中に口づけした。
するとそこに金色の鱗のような痣が出来た。
「あと1週間か・・・」
(ああ、約束の期限までの事ね)
どうして竜王が私に固執するのか少しわかったような気がした。
竜王は幼い私を本気で愛してしまったんだ。

「りゅう、私この世界に残りたい」
別れの日幼い美乃梨がそう言った。
きっと喜ぶだろうと思った竜王はその言葉には何も答えなかった。
「りゅうは私の事嫌いになったの?」
「俺は・・・お前を愛している」
幼い美乃梨はその言葉に一瞬きょとんとした。
「じゃあ、なんで?寂しくないの?」
「寂しいさ。お前がいない城はつまらんだろうな」
「私はりゅうといたい」
竜王は幼い美乃梨の体を抱きしめて「駄目だ」と短く言った。
「お前が愛おしくて堪らない」
「じゃあ傍にいさせて?」
「お前を抱くわけにはいかないんだ」
幼い美乃梨は小首をかしげた。
「16歳の誕生日に必ず迎えに行く、それまでは影から守る」
「?」
「今のお前にはまだ難しい話だ」
「うん」
幼い美乃梨は頷いた。
「一度美乃梨を親元へ帰す。もともとその約束だっただろう?」
「あ・・・」
幼い美乃梨はそれ以降何も話さなくなった。
竜王は幼い美乃梨を片手に抱え、美乃梨のいた世界へ飛んだ。
その時幼い美乃梨は何か大切なことを忘れてしまった。
それから元の生活に戻り、異性に狙われるようになった。
美乃梨は全ての記憶を取り戻した。

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