竜王と契約の花嫁

えりー

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仲直り

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気が付いた時には新しい服に着せ替えられていた。
「竜王・・・どうしてあんな事・・・」
思い出しただけで顔が赤くなってくる。
竜王のしたことは許せないが何が気に障ったのか美乃梨には分からなかった。
美乃梨はただ反抗しただけだった。
(竜王はそれが気に喰わなかったのかな・・・)
もう、思い出したくないと美乃梨は思っても体に触れられた時の感触が残っている。
(怖かった・・・)
まるで飢えた獣のようだった・・・。
美乃梨は慌てて布団に潜り込んだ。
(家に帰りたい・・・でもあの世界にはもう私の居場所はないのよね)
そう思うと涙が込み上げてきた。
(泣くもんか・・・)
そう言い聞かせて涙を止めた。

その頃、竜王は正龍国へ行き雨を降らせていた。
使者にそう約束したので行く気分ではなかったが渋々来た。
(早く終わらせて美乃梨の様子を見に行きたい)
竜王はほんの少し離れただけでこんなに不安になるものなのかと思った。
6時間ほどで仕事を終え、正龍国の王に挨拶に行った。
この世界では異世界から花嫁を選んで連れてくるという習慣があるらしい。
そうして初めて国王と認められる。
「役目は果たした、俺はこれで失礼する」
「はるばるすまなかった。天候ばかりは私の力ではどうにもならないからな」
「人間が神の力を使えるはずないだろう」
失礼な物言いをしている自覚は竜王にはあったが感情を上手くコントロールできなかった。
「はっ、そうだな。人間はいつも無力だから神に頼るしかない」
王は少し俯きがちになりそう言った。
「・・・すまない。虫の居所が悪かったんだ」
竜王は素直にそう言い、正龍国の謁見の間を後にした。
「何をやっているんだ・・・俺は」
(他人に八つ当たりするなんて意味の無い事だ)
そう思い自分が統治する国へ戻った。

「美乃梨、美乃梨はいるか」
美乃梨は布団の中に隠れた。
「来ないで!竜王、怖い」
「安心しろもう何もしないから」
たじろぎながらそう言うと枕が飛んできた。
「信じられない、あんなことしておいて」
「気持ち良かっただろう?」
「~っ!!」
「意識を飛ばしてしまうくらい良かったくせにそんな口きくのか」
「そんな事無い!!」
今度は布団が飛んできた。
竜王は布団をかわして、つかつかとベッドに近づいた。
「謝りに来たんだ。そう怯えないでくれ」
真顔で竜王がそう言うと美乃梨は竜王を見つめた。
お互い見つめ合うとしんと部屋が静まり返った。
「分かった。話を聞く・・・でも信用はしない」
「ああ、それでいい。勝手に元の世界から皆の記憶を奪って悪かった」
「その事ならもういいよ。私は”花嫁”になるんでしょう?」
そう言うと竜王は目を見開き驚いた。
「花嫁になることは了承してくれているのか!?」
「・・・うん」
美乃梨は納得してはいないが竜王はきっと逃がしてくれない。
それに逃げる術もない。
「では、どうしてそんなに顔を赤くして怒っているんだ?」
「それは・・・」
もごもごと口ごもると竜王は察してくれたようだった。
「あの行為が気に入らないのか?」
(何で竜王は思った事すぐ口に出すの!?)
「そうよ!!あんなに恥ずかしいことしておいてー・・・」
「本番はもっと恥ずかしい事するんだぞ」
(本番!?)
「でも、記憶がいつ戻るか分からないのに」
「その事なんだが、もう俺が記憶を戻そうと思う」
「何で・・・」
「このまま待っていても戻る気配がないからだ」
そう言うと竜王は手をかざし美乃梨の額に押し当てた。
すると物凄い眠気に襲われ美乃梨は深い眠りについた。
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