国を壊しても貴方を守りたい

えりー

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ランドル

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ランドルは1000歳を超える魔物だ。
外見の年齢は18歳くらいの青年だ。
金色の瞳を持ち、緑色の長い髪を紐で束ねている。
毎日セイレンが来るのを楽しみにしている。
セイレンはランドルの身の回りの世話をしてくれる巫女の事だ。
ランドルは100年もの間塔に幽閉されている。
ランドルは塔から出たいと切望しているが術がかかった首輪をつけられていて塔から一歩も出ることが出来ない。
首輪から魔力を奪われ続けているので自分の為に魔力を使うことが出来ない。
そんな生活に嫌気がさしてきていた頃自分と似た境遇のセイレンと出会った。
セイレンにも少し魔力があり、足輪をつけられていた。
彼女はこの国、ダイナンから出ることが出来ない術をかけられている。
セイレンの魔力は歌声に宿っている。
セイレンと会ったのは彼女がまだ子供だった頃だ。
幼い彼女は自分を恐れなかった。
普通は魔物は恐れられる者だがセイレンはじっと目を合わせて魔物の自分に微笑んだ。
その時からランドルはセイレンに特別な感情を持つようになった。
5歳の少女に特別な感情を持つのは異常なことだとは思ったが気持ちは募っていくばかりだった。
日々成長していくセイレンを見るのもランドルの楽しみになっていた。
ランドルはこの感情が恋愛感情であることを自覚していた。
しかし、想いを打ち明けてもし受け入れてもらえなかったらと思うと怖くて伝えることが出来なかった。
それなら今のまま居心地の良い関係を楽しむのも悪くないと思っていた。
(セイレンは俺の事をどう思っているのだろうか・・・)
毎日そう考えながら彼女が塔に訪れるのを待った。
いつか我慢が出来なくなってセイレンに想いを打ち明けてしまうかもしれない。
セイレンは優しい娘だ。
きっと悩むだろう。
例え両想いになったとしてもこの塔から自分は出ることが出来ない。
セイレンを幸せにすることは出来ないかもしれない。
それでもランドルはいつか・・・もう少ししたら想いを打ち明けるつもりだ。
セイレンはとても美しく成長した。
他の男のものになるくらいなら自分が欲しいと考えてしまう。
セイレンは金色の髪で薄い緑色の瞳をしている。
顔も整っていて性格もいい。
セイレンに想いを寄せる者も多いだろう。
しかし、巫女のセイレンには神官以外の男話してはいけないという決まりがあるそうだ。
もしかすると神官はセイレンの事が好きなのかもしれないとランドルは思った。
ランドルはもし神官が相手でもセイレンを譲るつもりはない。
(セイレンが魔物の俺と親しくするのが面白くないのかもしれないな・・・)
だから足輪の戒めを強め、セイレンに嫌がらせをしたのかもしれない。
何とかセイレンの足輪だけでも外してあげたいと思った。
あんなに痣が出来るまで輪で締め付けるなんてどうかしている。
一体セイレンが神官に何をしたというのか・・・。
そう思うと閉ざしていた感情が沸き起こり、怒りがこみあげてくる。
・・・今は無力な自分だけどセイレンを守りたいと真剣に思った。
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