国を壊しても貴方を守りたい

えりー

文字の大きさ
上 下
4 / 12

神官クロック 

しおりを挟む
120年前クロックは産まれた。
両親は普通の何の魔力も持たない人間だった。
しかし、当時の国の占い師の予言の元クロックの家へたくさんの兵士がやって来た。
予言は、国を繁栄させたければクロックを神官として育てあげよというものだった。
だが、クロックの両親はクロックを渡そうとはしなかった。
そんなクロックの両親を邪魔に思った国はクロックの両親をクロックの目の前で殺した。
クロックはこの時の事を覚えていた。
クロックは神官として育てられた。
強い魔力を持ち、歴代最高の神官と呼ばれるようになった。
クロックも使える術が増えていくのが楽しかった。
しかし、クロックの魔力は無限ではなかった。
クロックの魔力の力は衰えていった。
そんな時1人の魔物を捕えた。
その魔物に首輪をつけ、その首輪から魔力を吸収する術をかけた。
そして、魔物が逃げない様、塔に幽閉した。
そうすることで自分の地位と魔力を維持してきた。
だが、そこまでして維持している自分が虚しくなってきた。
そんなある日、歌声が聞こえた。
その声にはかすかだが魔力が宿っていた。
その歌声を聞いていると荒んでいた心が癒されていく。
クロックは魔力を使いその声の持ち主を探し出した。
まだ幼い少女が花畑の真ん中で歌っていた。
少女の歌を聞き終えると少女に声をかけた。
「君の名前は?」
「セイレン」
少女は微笑みながらそう答えた。
まだ幼い少女を心の底から欲しいと思った。
クロックはセイレンの両親に”娘はいない”という暗示をかけ、セイレンを城へ連れ帰った。
セイレンはこの時まだ5歳の子供だった。
クロックはこの日から毎日自分の為に歌を歌う事をセイレンに義務付けた。
それはセイレンの日課になった。
セイレンを巫女の地位に置き、歌う他に魔物の世話をさせることにした。
今思うとそれは間違いだったかもしれない。
最近のセイレンはランドルに夢中だ。
そう、まるで恋でもしているかのように・・・。
その姿を見ると異様に苛立ちが増す。
歌っている最中もうわの空だったりする。
やはり、2人を引き離すべきかとも思うがもう手遅れだろう。
セイレンはランドルに恋をしてしまったのだろう。
長年一緒に居るので彼女の感情が手に取るように分かってしまった。
(だが、セイレンは私のものだ)
あの足輪がある限り離れられない。
(あの足輪の術を解けるのは私だけだ)
そう思いクロックはニヤリと笑った。
しおりを挟む

処理中です...