狗飼君と私

えりー

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再会

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翌日学校に行ってみるとクラスの皆、狗飼のことはきれいさっぱり忘れていた。
美香にも訊ねてみたが、そんな人クラスにいないと言われた。
(狗飼が学校にいたことは無かったことになっているのね)

あれから一週間が経った。
功の言いつけ通り山には近づいていない。
功と狗飼は一体何をしているのだろう。
何の連絡もないまま、夜になった。
有希は自室のベッドで横になっていた。
有希は本当にもう一度会うことができるのだろうかと不安になってきた。
「有希」
そのと聞きなれた声がした。
起き上がり振り返るとそこには待ち焦がれた愛しい人の姿があった。
「狗飼君!!」
そう言い狗飼の腕の中に飛び込んだ。
有希は嬉しくて泣いた。
狗飼はその涙を舐めとった。
「!?」
その行為に驚いて目を見開いた。
「見かけは人間なのに今みたいなことはしない方がいいよ・・・まるで犬みたいだよ」
「あー・・・悪いまだ半分犬なんだ。気を抜くと犬の姿に戻ってしまう」
そう言いぱっと犬の姿になってみせた。
「え!?」
(どういうこと!?)
そして驚いている有希の前でもう一度ぱっと人間の姿に戻った。
有希が混乱しているとそこに山神が姿を現した。
「もっと詳しくわかりやすく説明してやれ」
「山神様、どういうことですか?」
「あの事故が無かったことになって、狗飼に人間の姿を保つ術を与えたんだ。だが、まだ術が安定していなくてな。普通は一週間もあれば習得できるはずなんだが・・・」
「そうなんですか」
(だから姿がコロコロ変わるのね)
有希は納得した。
この状態ではまだ学校に行くのは無理だろう。
そこまで考えてこれからの狗飼のことを思った。
「山神様、この後狗飼はどうするんですか?」
功は不思議そうな顔をして二人に言った。
「お前たちの好きにすればいい。また親せきとしてこの家に置いてもらい、一緒に学校にも行けばいい」
山神は暗示を使ってもう狗飼の転入の準備を済ませていた。
それが最善だと思ったからだ。もともと狗飼は有希のものだ。
少し寂しく思ったが返すと約束したので仕方ない。
ふと功が寂しそうな顔をした。
その一瞬の表情の変化を有希は見逃さなかった。
「山神様、休みの日には山神様に会いに行きますね。狗飼と一緒に」
「ああ、楽しみにしているよ」
そういうと功は苦笑いしながら姿を消した。
功が去った後二人は温もりを確かめるように抱き合った。
(ああ、本当に帰ってきてくれたんだ・・・)
有希を抱きしめている狗飼の腕の力が強くなった。
「・・・狗飼君、苦しい」
「あ、ごめん。嬉しくてつい」
二人は自然と顔を近づけキスをした。
軽く触れあうだけのキス。
二人ともそれだけで満たされた。
「あ、私狗飼君に伝えたいことがあるの」
「?なんだ?」
「聞いてくれる?」
「もちろん」
有希はそっと手招いて狗飼の耳元で囁いた。
「私、狗飼君のことが好き」
「え?」
急なことに狗飼は驚いた。顔が真っ赤になっている。
「どうして・・・そんなこと・・・いきなり」
かなり動揺しているらしい。
ふふっと有希は微笑んだ。
「まだ、私から伝えたことなかったから」
もう離れ離れにならないとは思うけれど想いは伝えられるときに伝えておかないと機会を逃すと一生伝えることができなくなるかもしれないからー・・・





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