自殺志願少女と獣の王

えりー

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王の侍女

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王付の侍女とは名ばかりで、特にやることがない。
王の部屋の掃除がすむと王に呼ばれ、王の後ろに立たされた。
ただそれだけだ。
「私、厨房で食事の準備とかしなくていいんですか?」
「お前が調理されてしまうぞ?」
本気とも冗談とも取れない言葉が返ってきた。
「唯奈は私の話し相手も仕事の一つだと思ってくれて構わない」
「はい」
唯奈はその言葉を聞き嬉しくなった。
ようやく自分の居場所を手に入れたような気持ちになった。
初めは苦手だった王の事がいつの間にか苦手じゃなくなっていた。
リハは優しかった。
たまに意地悪な事を言ってくるがそれもリハが唯奈に心を許しているからなのだと思えた。
リハは唯奈の事を気に入っていた。
唯奈はリハの大切だった人に似ていた。
だからリハは唯奈を守るため、自分付の侍女にした。
しかし、他の侍女たちがそれを面白くないと思っていることも知っていた。
唯奈は心が弱っている。
彼女たちから何か言われたりしたらきっと傷つくだろう。
その事もあって彼女たち・・・他の侍女たちからも引き離した。
とにかく自分の傍においておけば守れると思った。
「唯奈、お前はもう少し強くならなくてはいけない」
「・・・」
唯奈は返事が出来なかった。
強くなりたいと思っていてもなかなか上手くいかない。
唯奈は強くなりたいと思っているがどうしても今まで虐めにあっていたことを思いだすと、行動できなくなってしまう。
また何か言われるのではないかとか、何かされるのではないかとかつい怯えてしまう。
その事を上手くリハに伝えたいが言葉が見つからない。
リハはきっと受け止めてくれる。
しかし、唯奈は何も言えずにいた。
「・・・まぁ、そんなに焦らなくても良い」
リハは空気を読みそう言ってくれた。
食事の時間になり、他の侍女がテーブルに料理や食器を手際よく並べていく。
自分も何か手伝おうと動こうとするとリハに制された。
リハは他の動物に唯奈が近づくのを極端に嫌がる。
唯奈はそれが不思議だった。
しかし、何となく聞いてはいけないような気がして聞けなかった。
食事の準備が終わると一礼し侍女は部屋から出て行った。
食事は2人分ある。
「食事にしよう、座れ」
「リハ様と食事なんて畏れ多くてできません」
リハは王なのだ。
そのリハと2人きりで食事なんてとんでもない。 
昨日はなんとなくそんな流れになり一緒に食事をとってしまったがきっと本来許されるべきことではないはずだ。
「昨日は一緒に食事をしたじゃないか」
リハは首を傾げた。
「リハ様は王です。私は人です」
「それのどこに問題がある?」
リハはそう言いワインを口にし、それを唯奈に勧めてきた。
「どうした?王からの酒が飲めぬというのか?」
「そんなことありません」
唯奈は諦めて椅子に腰かけワインを飲んだ。
(苦い・・・)
お酒を飲むのは初めてだった。
ワインがこんなに苦いなんて知らなかった。
「ふっ、酒は苦手のようだな」
「・・・からかいましたか?」
どうやら挑発に乗ってしまったようだ。
さすがは王。
人のあしらい方をよく知っている。
こうして毎食、食事を共にするようになった。
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