自殺志願少女と獣の王

えりー

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唯奈の決断

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夕方になり日が沈み暗くなった頃。
部屋の戸をノックする音がした。
唯奈は急いで身を起こし、返事をした。
「はい、どうぞ」
「唯奈さま、王がお呼びです」
「・・・はい」
唯奈は少しリハが苦手だった。
妙に威厳があり、前向きな考えを持っている。
唯奈とは正反対の性格をしていた。
見かけは狼なのに思考は人間そのものだ。
今、呼びに来た侍女も動物だ。
うさぎだった。
うさぎがメイド服を着ていた。
唯奈は思わず抱きしめてもふもふと触りたくなるのを堪えた。
唯奈は何故王が自分を呼び出したのかわからずにいた。
王の考えることが全く分からないまま王のいる王の間へ着いた。
「王、唯奈さまをお連れしました」
「入れ」
戸の向こうから声がした。
唯奈は侍女に部屋に入るように促され渋々部屋に入った。
部屋に入るとテーブルに御馳走が並んでいた。
侍女が椅子を引いてくれた。
そこに唯奈は腰を掛けた。
王の他には誰もテーブルについていない。
どうやら”食事”に招待されただけのようだった。
「どうだ。少しは落ち着いたか」
王はそう言い声をかけてきた。
「はい。私にまだ何ができるかわかりませんが・・・この城で働きたいと思います」
「この城でか?」
王は何かを考える仕草をした。
「駄目でしょうか?」
「駄目ではないがこの城には人間を喰らう動物もいる」
「!?」
「気付いていないと思うが私も人を喰らっていた」
狼なのだから当然なのかもしれないと唯奈は思った。
「今は・・・今も食べるんですか?」
「いいや、今はもう食べないようにしている」
「?」
「理由はいろいろあるがもう人を食べたくなくなった」
人を食べるという事はこの世界にも人がいるという事なのだろうか?
「リハ様、この世界には人間がいるんですか?」
「・・・稀にお前の様に紛れ込んでくる者もいる」
リハはその人間を食べていたのだろうか?
「じゃあ、そういう人間を食べる者がいるという事ですね?」
「ああ、そうだ」
「そうですか、じゃあ城で生活するのは難しいですね・・・」
リハはワインに口をつけ言った。
「私付の侍女としてなら守ってやれる」
「リハ様付きの侍女ですか?」
唯奈は少し驚いた顔をした。
しかしリハ様付きの侍女の仕事はどんな仕事なのだろうか。
「仕事の内容は?」
「ただ私の傍にいれば良い。私の部屋の掃除をしたりはしてもらうけれどな」
「それって仕事と呼べるんでしょうか?」
そう唯奈が言うとリハは言った。
「危険を伴うよりずっといいだろう。それともまだ死にたいのか?」
彼はどこか不機嫌そうだった。
「・・・わかりました。では、リハ様付きの侍女にしてください」
そう言うとリハの機嫌は直っていた。
リハは命の事になると急に厳しくなる。
その理由を知りたいと思ったが今は聞ける雰囲気ではない。
夕食に手を付けようとした時肉料理が出ていた。
これは一体何の肉なのだろうか・・・。
「この肉は・・・何の肉ですか?」
「罪人の鹿肉だ」
そう言いリハは食事に手を付けた。
どうやらこの世界では罪を犯すと食用にされてしまうらしい。
「どうした?人間の肉ではないぞ」
「いえ、食欲がありませんので・・・」
「食べろ、命を無駄にするな」
リハにそう命じられ、”罪人の鹿の肉”の料理に手を伸ばした。
「美味いだろう?」
「・・・はい」
正直肉の味なんてわからなかった。
何の肉か聞かなければよかった。
唯奈は心からそう思った。
「明日から私付の侍女として生きろ。他の仕事は一切しなくていい」
「何故ですか?」
「私はお前に死んでほしくない」
唯奈はその言葉を聞き、大粒の涙を流した。
虐めにあっているとき毎日のように死ねと言われ続けていたからその一言が嬉しかった。
「何だ、何故泣く?」
「・・・いいえ、何でもありません」
「では、何か気に障ったのか?」
王は心配そうにしている。
「毎日”死ね”と言われていたのでリハ様のその言葉が嬉しかったんです」
「・・・そうか」
リハは納得したようにそう呟いた。
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