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5黄金狐
旅連れ
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狒々の赤い瞳と蒼月の赤い瞳が、ギラギラと闇夜に光り対峙する。
「猫か。前にも雌猫が来たな」
ケラケラと狒々が笑う。
「お前、その猫をどうした」
「喰ろうたに決まっておろうが。面白かったぞ。男を庇うて盾になった雌猫に、男が腰を抜かして、『化け物だ』と石を投げつけたのだから。だいぶ顔をゆがませておったが、最後まで男を庇っての。男を置いて逃げれば、逃げ切れたであろうものを」
狒々は、なおも笑い続けていたが、蒼月の顔が苦しそうに歪む。
「そうかよ」
蒼月は、一言そうつぶやくと、狒々の顔を右手で鷲掴み、そのまま握りつぶした。
狒々は、血しぶきを上げて絶命した。
「蒼月」
黄金が蒼月に声を掛ける。
「問題ない」
人間の姿に戻った蒼月が、そっけなくそう言い放つと脱ぎ捨てた上着を羽織る。
「とっくに諦めていたさ。人間などと番うと碌なことはないな。それより、他の狒々はどうした」
白金が、扇を拾い上げて蒼月に見せる。狒々の妖力が、扇にまとわりついている。
「扇の中に封印した。このまま、どこかに捨て置くこともできるが、中の者の妖力が増すか外から解呪されば、封印は解ける。俺の狐火なら、封印したまま焼いて灰にすることもできる。どうする?」
「焼いて終わりにしてくれ」
蒼月の言葉を聞くと、黄金が、白金の手の上に狐火を飛ばす。
扇は、白金の手の中で、灰になって崩れた。
黄金と白金、蒼月は、今日の宿と決めた古びたお堂の中で酒を飲みながら話していた。
蒼月の旅の目的は、生き別れた仲間を探してのものだという。妹は、亡くなっていたが、他にも何人か行方の知れなくなっている者がいて、探しているとのことだった。
黄金が協力を申し出て、三人は、共に旅をすることなった。
「蒼月が共にいてくれるなら助かるよ」
白金がにこやかにそう言った。
どうみても恋仲の二匹の狐。二人だけの旅を邪魔されたと拗ねるかと思った。
「だって、この黄金の厳しいこと! すぐ修行だと言い出す」
「それが旅の目的だ。遊びではない」
黄金は、当然だと、白金の不平を一蹴してしまう。
「八尾狐の筋肉馬鹿に付いていけるか! 歩くだけでへとへとだ」
酒を飲みながら白金が怒るが、黄金は、苦笑いしてそれを見ている。
「蒼月がいてくれるなら、もう少し手加減してもらえるだろう」
「あ、いや。俺も歩くのは、早い」
山猫の妖である蒼月。下手をすれば、動きだけなら妖狐も上回る。
「ううっ」
白金は、この先の旅の行く末に、一抹の不安を覚えていた。
「猫か。前にも雌猫が来たな」
ケラケラと狒々が笑う。
「お前、その猫をどうした」
「喰ろうたに決まっておろうが。面白かったぞ。男を庇うて盾になった雌猫に、男が腰を抜かして、『化け物だ』と石を投げつけたのだから。だいぶ顔をゆがませておったが、最後まで男を庇っての。男を置いて逃げれば、逃げ切れたであろうものを」
狒々は、なおも笑い続けていたが、蒼月の顔が苦しそうに歪む。
「そうかよ」
蒼月は、一言そうつぶやくと、狒々の顔を右手で鷲掴み、そのまま握りつぶした。
狒々は、血しぶきを上げて絶命した。
「蒼月」
黄金が蒼月に声を掛ける。
「問題ない」
人間の姿に戻った蒼月が、そっけなくそう言い放つと脱ぎ捨てた上着を羽織る。
「とっくに諦めていたさ。人間などと番うと碌なことはないな。それより、他の狒々はどうした」
白金が、扇を拾い上げて蒼月に見せる。狒々の妖力が、扇にまとわりついている。
「扇の中に封印した。このまま、どこかに捨て置くこともできるが、中の者の妖力が増すか外から解呪されば、封印は解ける。俺の狐火なら、封印したまま焼いて灰にすることもできる。どうする?」
「焼いて終わりにしてくれ」
蒼月の言葉を聞くと、黄金が、白金の手の上に狐火を飛ばす。
扇は、白金の手の中で、灰になって崩れた。
黄金と白金、蒼月は、今日の宿と決めた古びたお堂の中で酒を飲みながら話していた。
蒼月の旅の目的は、生き別れた仲間を探してのものだという。妹は、亡くなっていたが、他にも何人か行方の知れなくなっている者がいて、探しているとのことだった。
黄金が協力を申し出て、三人は、共に旅をすることなった。
「蒼月が共にいてくれるなら助かるよ」
白金がにこやかにそう言った。
どうみても恋仲の二匹の狐。二人だけの旅を邪魔されたと拗ねるかと思った。
「だって、この黄金の厳しいこと! すぐ修行だと言い出す」
「それが旅の目的だ。遊びではない」
黄金は、当然だと、白金の不平を一蹴してしまう。
「八尾狐の筋肉馬鹿に付いていけるか! 歩くだけでへとへとだ」
酒を飲みながら白金が怒るが、黄金は、苦笑いしてそれを見ている。
「蒼月がいてくれるなら、もう少し手加減してもらえるだろう」
「あ、いや。俺も歩くのは、早い」
山猫の妖である蒼月。下手をすれば、動きだけなら妖狐も上回る。
「ううっ」
白金は、この先の旅の行く末に、一抹の不安を覚えていた。
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