妖狐

ねこ沢ふたよ

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5黄金狐

タエ

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 蒼月と黄金が宿に帰れば、部屋に白金と河童がいた。
 痩せた男。人間の服を着ているが、どうにもおかしいバランスは、妖だとすぐにばれてしまいそうな姿。

「どうした?」

黄金が聞けば、

「うん。なんだか困ってそうだから連れてきた。痛む足を直してもらえて、とても助かったよ」

と白金が答えた。

 確かに、部屋を出る前は、ずいぶん辛そうにしていたのに、白金は元気そうだ。
 河童の薬は、どのような怪我や病にも効く。用法さえ守れば、万能薬となる。

「あそこの診療所の入院患者の女の子に薬を届けてやりたいのに、その手段が無くて困っていたそうだ」

白金が説明する。

白金の話によれば、こうだ。

あの診療所の少女タエは、可哀想に結核を患っている。
明日には、結核療養所のある遠い場所に移動してしまうのだそうだ。

元気なころに、河で河童と出会った。

 人と愛してはいるが、昔騙された仲間が出たことから人と関わることを極力避けている河童の一族。普段は人里離れた沼に棲んでいるが、たまたま欲しい物があったから久々に街に出てみれば、河原に寂しそうな少女・タエが一人ぽつんと座っていた。

 河童に変じて河を遡って帰ろうと思っていたのだが……

 気になって河童は、タエの話を聞くことにした。

「あの子、継母がいるんです」

河童がため息をつく。

 早くに亡くなった母の後に、父の再婚相手が来た。それが今の継母。
 最初は優しかったが、継母に子どもが出来てからは、タエは邪魔にされるようになった。
 家に帰れば、何をしても咎められて、ビンタがとんでくる。
 だから、父の帰る時間まで河原に居て、なるべく継母と話さないで良いようにしたいのだ、と。

 河童は、タエを憐れに想い、この子が成人して家を出るまでの短い間なら、と思って、河原で話し相手になってやることにした。

 タエの友達が皆帰った後で、河童はタエと話をしていた。
 人間の学校では、どのようなことを学ぶのか。友達とは、どんな風に遊ぶのか。今日は、先生の機嫌が良かった。そんなとりとめもない話を聞くのは楽しかった。
 うんうん、とただ相槌を打って時間まで相手をしてやる日々。

 穏やかに時間は過ぎていったが、ある日を境に、タエは河原に来なくなった。

 前日にも何も言っていなかったし、何があったんだろうと不思議に思った河童は調べてみた。……その結果、結核を患いあの診療所の二階にいることが分かった。

「私の薬さえあれば、あの子はまた元気になるはずなんです」

だが、人間としては怪しい風体の河童。
結核で隔離されている少女に会うことはできなかった。
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