25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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遅れて来た人

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 意見が全く合わなくてギクシャクする私と慎也。
 無言で睨み合う。

「お待たせしました!……て、どうしたんですか? そんなに見つめ合って」

 ひょっとして、俺……邪魔でした? って、おい、この状況を見てどうしてそう思う。
 声を掛けてきたのは理人だ。
 遅れてくるとは聞いていたけれども、このタイミングで来るのかよ。

「ちょっと。どう考えても険悪な状況でしょ? どうしてそう思うの?」

 聞かずにはおれまい。
 誤解されたままでも困るし。

「いや、二人っきりで見つめ合っているし」
「理人……その想像力、嫌いじゃない」

 慎也、どうしてそこでサムズアップして笑顔なのよ。

「慎也、否定してよ、そこは!」

 何を言っているんだコイツらは。
 慎也と理人のノリが分からない。
 
「まぁ、その辺はいいや。それよりやっぱり中庭には何もないんですね。じゃあ、昨日のは見間違いだったんですよ」

 理人が辺りを見回す。
 どうやら理人は、あの血の跡と思しきタイルのシミに気付かない。

「いや、何もないわけではなくって。慎也が……」
「そうなんだ。拍子抜けだろ?」

 慎也が撮った写真のことを、タイルのシミの話を言おうとした私の言葉を慎也が遮る。

「うえ?」

 訳わからない私は、変な声が出る。

「俺もそう思うんだけれど、ミライがどうしても怪しいって言って聞かないんだ」
「慎也、なんで?」

 貴子の悪戯説を推していたのは私なのに、なぜ慎也は誤魔化すのか。
 何がどうなっているのか分からない。

「ともかく、ここに遺体はない。貴子のお母さんは、部屋にいるって言っていた。だったら、そうだな……タチの悪い悪戯だ! これで一件落着だ」

 勝手に断言して、はっはっ! と、力強く慎也が笑う。
 理人がキョトンとしている。
 
「……まぁ、そうですよね」

 理人が目を瞬きながらも同意する。
 そうだよね。
 慎也が撮った写真を見なければ、そうなるよ。
 タイルに染みた血の跡を見なければ、そう思うよ。
 慎也はどうして理人に言わないのだろう。

「じゃあ……解散ってことでいいですか?」
「だな!」
「や、ええ? そうなの?」
「ミライ、仕方ないだろ、ここに遺体はない。貴子は生きているんだ。いいな!」

 いいなと言われても、私が決めるわけではない。

「そりゃそっちのほうが良いけど……」

 さっぱり分からない。
 私だって、貴子が生きていると思いたいし、生きていてほしい。
 でも分からないことだらけだ。

「いいから行こうぜ!」

 慎也に促され「ですね」と理人にまで言われては、反論できない。
 私は、のろのろと校門に向かって歩き出す。
 私の前を、慎也と理人が歩いている。
 私は二人が冗談を言い合って笑う姿を見つめる。
 もやもやした気持ちを整理出来ないままに私は、ふとグラウンドの方を見た。
 体育倉庫の扉が少し開いていた。
 あれは……人影?
 影が僅かにゆらめいた気がした。

「ちょっと! あれ!」

 私は、体育倉庫に向かって走り出した。

「おい! ミライ!」
「ちょっと! どうしたんですか!」

 慎也と理人が止める声が聞こえるけれど、私は止まらなかった。
 今度は迷わない。
 グラウンドを横切って、私は、グラウンドの隅に立てられた体育倉庫に駆け寄る。

「嘘でしょ……」

 体育倉庫の中にいたのは、紗栄だった。
 私は、その場にへたり込む。
 紗栄は、首をロープに吊るされて、私の前でゆらりと揺れていた。
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