25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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ランタン

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 頭を抱える私と慎也。
 名探偵でもない私達に、ランタンがどうして灯ったまま貴子の遺体の傍に置かれていたなんて、さっぱり分からない。

「まてまてまて、落ち着いて考えてみよう」

 慎也が深呼吸する。

「いつ、どこで、誰が、何のために、何を……これをはっきりさせようじゃないか」
「ええっと、うん」

 そうだよね。
 それをはっきりさせないと、意味が分からない。

「いつは、天文部の観測会の夜。三月三十一日で、時刻は……」
「十九時頃ね」

 私は、昨日作ったメモを見ながら、慎也に返事する。

「お、起こったことをまとめたのか。それでこそ我が助手」

 誰が慎也の助手だ。勝手に決めないでほしい。
 
「で、どこで。これば、学校の中庭。決まっている」
「まあね。誰がは、きっと犯人。亡くなった貴子が、自分の隣に壊れやすいガラス製のランタンを置くことは不可能だもの。まあ、犯人が誰かは……分からないんだけれども」

 それが分かったら、こんな田舎の喫茶店で二人して日曜の朝から頭を抱えていはいないのだ。

「何のために……これは……ランタンだ。見えるようにするためだ」
「え、それは……」
「貴子の遺体をだ」
「分からない。だって、貴子の遺体を見せることで、何の得があるの? むしろ犯人ならば、貴子の遺体を隠すんじゃない?」

 私がもし誰かを殺害したとしたら、その犯行を隠すために、遺体は埋めるとか、山に捨てるとか、コンクリで固めて海に捨てるとか、そんな方法を選択するだろう。
 実際に殺すあてはないけれど、ミステリを読めば、そんな感じだし。

「うーん。猟奇殺人とかなら、遺体を飾るとか見せびらかすみたいな展開はままあるんだけれど」
「映画には、よくあるよね。でも、それだったら、もっと……こう……飾ったり、魔法陣を描いたり、逆にもっと派手に装飾するんじゃない?」

 動画配信のサブスクで観た、サイコホラーでは、サイコパスな犯人が遺体を皮を剥いで踊っていた。
 壁に血で文字を書いていたミステリもあったな。
 サイコパスならば、もっと承認欲求を満たすメッセージがあっても良いと思うのだ。 

「確かに……」
「それに、せっかく見せびらかした遺体を、翌日には隠してしまうなんて、変よ」
「それな!」

 それな! なのだ。
 全く分からない。
 貴子の遺体は、どうしてランタンで明るく照らされて、その後、隠される必要があったのか。
 どうして犯人は、そんなまだるっこしい方法を取ったのか。

「ねえ……ひょっとしてだけれども、貴子を殺した犯人と、貴子を隠した犯人は、別の人物なのでは?」
「え、どうして?」
「だって、変だもの」

 色々と矛盾が多すぎて、犯人が一人とは限らない。
 何人かが、別の目的で動いた結果、こんなに奇妙な出来事が起きているのではないだろうか。

「え、じゃあ、ランタンは、どっちが置いたんだよ」
「それは、『どうして』が分からないと、断定できなくない? 犯人が置いたなら、ここに遺体があるぞ! って、見せるため。遺体を隠した人ならば、遺体を見せるため?」

 あれ? 途中までいい線いっていたと思ったのに、全然ダメだ。

「一緒じゃん。何だよ、それ」

 慎也が呆れる。
 
「み、見せるのに何か目的があったとか?」

 苦し紛れに私は、ちょっと捻りを入れてみる。
 見せることの目的って何? そりゃ、見てもらうことでしょ? どういうことよと、自分でも分からなくなる。

「なあ、ランタンは、天文部のランタンだよな」
「うん。どう見ても、この部費がなくって新しい物が買えない天文部しか使っていない古いランタンは、天文部の備品だわ」

 重い旧式のランタンだ。
 他で使っている人は、見たことがない。

「それに、あそこで見るって言っても、廃校になる校舎だぜ。俺らしかいないよな」
「そうよね。あの後、朝には片付けちゃたんだから」
「そうだよ。だったら、見せる相手は、俺らってことだよな?」
「え……」

 私は、背筋が寒くなる。
 私達天文部員に、わざわざ貴子の遺体を見せたってわけ?
 学校で一番、貴子と親しかった私達に? それって、すごく残忍じゃない?

「しかもだ。俺らがあそこに集まっていることを知っているのは?」
「私達だけ……」

 絶対に反対されるし、先生にバレると面倒だから、廃校舎に忍び込むことは、天文部だけの秘密だった。
 親には、公園での観測会だと嘘をついた。

「そう。天文部のおんぼろランタンを使って、天文部しか知らないタイミングで天文部に貴子の遺体を見せびらかしてきた。これは、どう考えても、天文部員の仕業だ」

 言い切って、慎也は私の反応を探る。
 
「そもそも、俺は、天文部の誰かではないかと疑っていたが、これ、決定的だと思わないか? ミライ」

 慎也の言葉に、私は、反論できなかった。
 だって、それ以外ないだろう。
 ランタンのある位置を知っているのも、そもそも、天文部の部室にランタンがあるを知っているのも、天文部員しだけだ。

「天文部員の誰かが、貴子を私達に見せたって、どうして!」

 私は、つい声が大きくなる。
 だって、そんなのあんまりだ。
 私は、天文部の皆は友達だと思っていた。 
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