25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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西野からの電話

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 慎也と二人で、顔を見合わせて考えるけれども、貴子のお母さんの気持ちなんて、全く分からない。

「貴子の行く末よりも大切な物ってあるのかな」
「さあ、あの親子、本当にべったりだったろう? 意味分かんねえよ」

 慎也の言う通りだ。
 貴子のお母さんは、貴子の後に毎回付いて来ていた。
 
「だから、意外だったんだよな」
「何が?」
「三月三十一日の観測会だよ。どうしてあんなに貴子が乗り気だったのかって」

 観測会は、貴子は来なかった。
 幼馴染だから、貴子が星好きなのは知っているが、お母さんが夜に貴子が外出することを許さなかった。
 一回だけ、高一の時に観測会に貴子が顔を出したことがあったけれでも、すごい剣幕でお母さんが連れ戻しに来た。
 今回の観測会だって、みんな、貴子はどうせ来られないと思っていたのだ。

 ……私のスマホが鳴る。

「誰だろ。登録していない電話番号……」
「え、ワンギリの悪質業者とか?」
「いや、現にまだ鳴っているし」

 表示された090から始まる番号に覚えはないが、私は、電話に出てみる。

「はい」
「県警の西野です」

 西野さんだ。
 西野さんは、昨日、紗栄が死んだ現場に来た警察官だ。

「佐村ミライさんの電話で間違いないですか?」
「はい。昨日はありがとうございました」

 西野さんの声は、妙に沈んでいる。

「久崎紗栄の件ですが……何か思い出したことはありませんか?」
「え……紗栄の件ですか? そっちは、特には……」

 なんだろう。昨日は自殺だろうって、西野さんは言っていたのだ。
 それが、何か覆ったのだろうか。

「そっち? 他に何がありますか?」
「いや、中本貴子の件も気になっていますから」
「ああ。なんか言っていましたね」  

 いや、なんかって、なんだよ。
 自殺した紗栄も気になるけれども、貴子の件だって立派な事件でしょ?
 だって、血濡れのランタンだってあったし。
 貴子が殺されていることは、明白なのだ。

「あれから、中本貴子さんのお母さんに連絡したんですが、ちゃんと家にいるみたいでしたよ」
「え?」
「後ろから、貴子さんの声も聞こえてましたし」
「嘘……」
「嘘じゃないですよ。貴子さんは、有名人ですし、声も聞いたことありますが、あれは間違いなく貴子さんの声だと思います」

 西野に断言されて、私は訳が分からなくなる。

「貴子は、なんて言っていました?」
「何だったかな……『早く、こっち!』だっけかな。呼ばれて、お母さんが『すぐ行くから』って、返事されてましたよ」
「そうなんだ……」

 お母さんと会話していたんだ。
 じゃあ、生きているのか?
 え、でもだったら、今まで調べたことは、どうなるのよ。

「こう言ってはなんですがね。勝手にお友達が死んだってあまり騒ぐのは、よくないですよ」

 西野さんは、そう釘を刺して、紗栄のことで何か思い出したら連絡してほしいと言って、電話を切った。

「いや、だって……」と言い返そうとした私の言葉は、電話を切られて行き場を失う。 
「西野さん、一応、貴子の件も調べてくれたんだ」
「でも、お母さんに電話しただけみたいだけれどもね」

 ちゃんと調べやがれ! と、怒鳴りつけてやりたいが、お母さんが貴子が家にいると言って、貴子の声が向こうから聞こえてきたのならば、そりゃ……そう言うか。
 本当、何かがへんなのだ。

「やっぱり……生きている?」
「ないな。だって、生きていたとしたら、何もかも、ちぐはぐになる」

 だったら、貴子のお母さんは、私だけでなく警察にまで嘘を付いたことになる。
 あー、なんでだろ。
 さっぱり分からない。

「西野さん、はぐらかしていたけれどもさ、紗栄の件、あれは自殺じゃなかったんじゃないか?」
「え、そうなの?」

 はぐらかされたことにも気づかなかった。

「自殺じゃないとしたら?」
「他殺だよ」

 慎也は言い切った。
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