25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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西野さんムカつく

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「いいな、学生は。楽しそうで」

 西野さんが、何故か疲れた目をしている。

「あ、ひょっとして上司に叱られたんでしょ? お前、適当過ぎるとかなんとか言われて」

 私の言葉に、西野さんの眉がピクリと震える。
 どうやら、図星だったようだ。
 そりゃそうだ。
 通報されて、現場に来て、勝手に自殺と決めつける。
 第一発見者の私達の話も、あまり熱心には聞かなかったんだもの。
 そりゃ、西野さんの働きのいまいちっぷりは、推し量って余りあるってもんだ。

「そりゃあ、ねえ……」

 私は、慎也の方をチラリと見る。

「そりゃあ、まあ、そうだろ」

 慎也も同じ考えだったようだ。

「煩いな。さっき、もう一度電話して聞いたんだらから、良いだろう」

 完全に機嫌を損ねた西野さんは、さっさと帰れと、私達を追い返そうとする。

「ねえ! ちょっと! 貴子のことも、ちゃんと調べて!」

 私は、抵抗する。

「またそれか! 中本貴子は、ちゃんと生きていたって言っただろう? 親御さんが生きているって証言しているし、テレビにも、毎日のように出ている。なのに、殺されているなんて、そんな馬鹿な話はあるか!」
「それが変なんだって!」

 慎也も食い下がる。
 だって、変なんだもの。
 貴子の遺体自体は、目下行方不明だ。けれども遺体がそこにあったという証拠の写真も、血に濡れたタイルも、ちゃんと存在しているのだ。
 だったら、遺体は存在しなくとも、貴子は亡くなっている。

「変なのは、お前らだ! なんだって、そんなに友達が殺されたなんて物騒なことを言うんだ」
「だったら! だったら、中庭のコンテナの中! そこだけは、ちゃんと調べて!」

 断末魔のように叫んだ私の主張は、西野さんに届いたかは、分からない。
 西野さんにグイグイと背中を押されながら、私達は、つまみ出されるように学校の外へと連れ出されてしまった。
 容赦なく閉められた校門の向こうから「二度と事件に首突っ込むな」と、厳しく西野さんが私達を叱った。

 ◇ ◇ ◇

「ほんっとうに! 頭に! くる!」

 私は、喫茶店『アルス』で注文したサンドイッチをかじりながら悪態をつく。
 相変わらず人のいない、そろそろ潰れるんじゃないかと心配になるレベルの喫茶店アルス。
 その看板メニューが、このサンドイッチなのだ。
 分厚い出汁巻き卵の挟まったタマゴサンドは、私の大好きなメニューなんだけれども、いつものふんわりとした美味しい食感も、あまり感じないくらいに、西野さんの態度には腹が立っていた。
 
「だいたい、一般市民の協力が欲しいならば、あんな風に追い出さなくったっていいと思わない?」
「まあ、向こうの主張も分からなくはないが、言い方は腹立つよな」

 慎也もカレーを食べながら、私に同意してくれる。
 そうなのだ。
 一般市民のしかも未成年が、事件現場をうろつくのは、間違っているのだ。
 それは……そう。
 危険なこともあるだろうし、現場の保存の邪魔になるもの。
 でもさ、私達は、貴子と紗栄の友人なのだ。
 だったら、私達にしか分からないことも、たくさんあるはずだ。
 事実、警察は、貴子のお母さんの言うことを全面的に信じて、貴子の失踪の捜査すらしていないのだ。

「まあ、俺的には、警察より先に犯人を見つけて犯人に自首を促すのに好都合っちゃ、好都合なんだけれどもさ」
 
 そうだった。慎也は、天文部の仲間が事件に関わっていると考えて、自首を促すために犯人を明らかにしたいんだった。

「ねえ、理人が、ランタンを置いた人物だとして、貴子や紗栄を殺したのは、誰?」

 私達ではないとすれば、奈美、理人、紗栄。
 貴子を殺すことが可能で矛盾がないのは、奈美か紗栄。
 理人は、ランタンを使って犯人を探ろうとしていたのだから、貴子を殺したのが理人ではないと考えるのは、とても自然なことじゃない?
 そして、紗栄を殺すことができるのは、奈美か理人。
 天文部の仲間が犯人ならば、それが妥当だ。

「紗栄を殺したのは、天文部の仲間とは、限らないんじゃない?」
「いや……それはないだろう。紗栄が自殺じゃないんだったら、少なくとも原因は、貴子の死に関連していると思う。だったら、天文部の関係者であろうは、間違いだろ?」
「かんけいしゃ?」
「そうだ」

 慎也は、カレースプーンをビシッとこちらに向ける。
 いや、そんな微妙に格好つけられても、そんなにかっこよくない。

「俺は、貴子のお母さんも紗栄を殺した容疑者だと思っている」
「え、貴子のお母さん?」
「そうだ。こう考えられないか?」

 慎也は、自分の考えを披露した。
 
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