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紗栄の死は
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「紗栄が他殺としても、まだまだ分からないことだらけだよな」
慎也が口を尖らせて不満を露わにしながら写真を眺めている。
そうなのだ。
紗栄が殺された理由も紗栄を殺した犯人も分からない。
「ねえ、外部の犯行ってことはないのかな? ほら、突然現れた殺人鬼的な人とか」
「ないだろ? 学校の登下校の最中に狙われるとかでなければ、突然現れた殺人鬼に遭遇することなんて、なかなかない。紗栄が死んでいたのは?」
「体育倉庫……」
「そうだ。臆病な紗栄が、知り合い以外に呼び出されて、あんな寂しい場所に行くなんて、有り得ないだろ」
「確かに……」
うん。紗栄は、すごく臆病な子だった。
観測会の夜、名前を言うのも憚れるあの虫Gをトイレで見て怯えていたし、暗がりを歩くのも、人一倍怖がって私にいつもくっついて歩いていたもの。
「だよね。紗栄が一人っきりであんな場所に行くなんて有り得ないのよ」
だから、突然殺人鬼に遭遇したとしても、こんな廃校舎になった学校で死んだとすれば、誰かが一緒にいたと考える方が、自然なのだ。
そして……
「ねえ、紗栄が貴子を殺したと思う?」
「んあ?」
私の疑問に、慎也が変な声を上げる。
「どうも考えられないのよ。Gも、暗闇も怖がる紗栄が、貴子を殺すだなんて」
「分かる。でも、『殺す気はなかった』というのも、世にはあるし」
殺す気はなかった……か……。
紗栄が貴子の遺体を見て怯えていたのも、貴子が生きていると思って喜んでいたのも、演技とは思えなかった。
もし、紗栄が貴子を直接殺した犯人ならば、あんな反応するだろうか。
貴子の遺体を見て、びっくりはすると思う。「嘘でしょ?」くらいは、言うかも。
だって、わざわざ隣にランタンを置いて、遺体を飾っているのだもの。そんなの有り得ないよ。
誰かが、私の犯行を知っている……そう考えて、怯えるし、救急車や警察に連絡しようというのは、止めるかもしれない。
紗栄がしたように、派手な悲鳴を上げるのは、違う気がするのよ。
でも、直接ではなく、紗栄が関わった何らかの出来事が原因で貴子が死んだら?
殺す気はなかったけれども、貴子を殺してしまった。
だから、貴子の遺体を見て、貴子を殺してしまったことをはじめて知って悲鳴を上げた。
死んでいるとは、思わなかったから。
そして、その後で、私から生きていると聞いて大喜びをした。
自分の罪が、なかったことになったと思ったから。
矛盾は感じない。
もし、紗栄が殺されたのが、貴子の死に関連することだったとしたら……それも、矛盾しない。
「あ……」
私は、一つ気づいたことがある。
「なんだよ。どうした?」
「奈美よ。奈美なら、何か知っているんじゃない?」
普段の紗栄の様子を、私は、よく知っている。
紗栄は、一人で何か大それたことをしでかす人物ではない。
もし、紗栄が何かをするとすれば、きっと、誰かと一緒に違いないのだ。
奈美は生きている。
だったら、紗栄の行動でおかしい所がなかったか、聞いたら、何かを知っているのではないだろうか。
……違う。奈美とは、もう話したのよ。
紗栄の死んだ夜に、私は、奈美と話をした。
奈美は、紗栄と同じ帰り道で、「どのみち貴子は死んでいたから、助からなかった」と、紗栄を慰めたと言っていた。
貴子の遺体を見てショックを受けている紗栄に言うには、不自然じゃない?
紗栄は、別に救急車を呼ばなかったことにショックを受けていたのではない。
すでに死んでいる貴子の遺体を見て、ショックを受けていたのだ。
だったら、奈美の言葉は何?
何がどのみちなの?
「ねえ、慎也。遅刻した人がいるとするでしょ?」
「何の話だよ」
「いいから! 遅刻した人がいて、それを見てどのみち遅刻していたから、助からなかった……なんて、目撃者が言うとするでしょ?」
「ああ、うん」
「どういうこと?」
「は?」
慎也が目を丸くする。
「いいから、答えて!」
「そのままだろ。そんなの。どんなことがあったって、遅刻したから助からなかった……だろ?」
「その『どんなこと』は、時系列的に、遅刻する前の話だよね?」
「そりゃそうだ。遅刻してからの話じゃないな」
そうだよ。
うん。奈美が言っていたのは、貴子が亡くなる前の話だ。
どうあったって、貴子は死んでいたから、助からなかった……なぜ?
貴子が、死ぬ運命にあったって、どうして奈美は思ったの?
「ああ、もう! どうして、あの時、気付かなかったのだろう」
「だから何がだよ」
「奈美よ。やっぱり奈美が、何かを知っているのよ」
「いや、それ、さっきも聞いたから」
慎也が慌てる私を見て呆れていた。
慎也が口を尖らせて不満を露わにしながら写真を眺めている。
そうなのだ。
紗栄が殺された理由も紗栄を殺した犯人も分からない。
「ねえ、外部の犯行ってことはないのかな? ほら、突然現れた殺人鬼的な人とか」
「ないだろ? 学校の登下校の最中に狙われるとかでなければ、突然現れた殺人鬼に遭遇することなんて、なかなかない。紗栄が死んでいたのは?」
「体育倉庫……」
「そうだ。臆病な紗栄が、知り合い以外に呼び出されて、あんな寂しい場所に行くなんて、有り得ないだろ」
「確かに……」
うん。紗栄は、すごく臆病な子だった。
観測会の夜、名前を言うのも憚れるあの虫Gをトイレで見て怯えていたし、暗がりを歩くのも、人一倍怖がって私にいつもくっついて歩いていたもの。
「だよね。紗栄が一人っきりであんな場所に行くなんて有り得ないのよ」
だから、突然殺人鬼に遭遇したとしても、こんな廃校舎になった学校で死んだとすれば、誰かが一緒にいたと考える方が、自然なのだ。
そして……
「ねえ、紗栄が貴子を殺したと思う?」
「んあ?」
私の疑問に、慎也が変な声を上げる。
「どうも考えられないのよ。Gも、暗闇も怖がる紗栄が、貴子を殺すだなんて」
「分かる。でも、『殺す気はなかった』というのも、世にはあるし」
殺す気はなかった……か……。
紗栄が貴子の遺体を見て怯えていたのも、貴子が生きていると思って喜んでいたのも、演技とは思えなかった。
もし、紗栄が貴子を直接殺した犯人ならば、あんな反応するだろうか。
貴子の遺体を見て、びっくりはすると思う。「嘘でしょ?」くらいは、言うかも。
だって、わざわざ隣にランタンを置いて、遺体を飾っているのだもの。そんなの有り得ないよ。
誰かが、私の犯行を知っている……そう考えて、怯えるし、救急車や警察に連絡しようというのは、止めるかもしれない。
紗栄がしたように、派手な悲鳴を上げるのは、違う気がするのよ。
でも、直接ではなく、紗栄が関わった何らかの出来事が原因で貴子が死んだら?
殺す気はなかったけれども、貴子を殺してしまった。
だから、貴子の遺体を見て、貴子を殺してしまったことをはじめて知って悲鳴を上げた。
死んでいるとは、思わなかったから。
そして、その後で、私から生きていると聞いて大喜びをした。
自分の罪が、なかったことになったと思ったから。
矛盾は感じない。
もし、紗栄が殺されたのが、貴子の死に関連することだったとしたら……それも、矛盾しない。
「あ……」
私は、一つ気づいたことがある。
「なんだよ。どうした?」
「奈美よ。奈美なら、何か知っているんじゃない?」
普段の紗栄の様子を、私は、よく知っている。
紗栄は、一人で何か大それたことをしでかす人物ではない。
もし、紗栄が何かをするとすれば、きっと、誰かと一緒に違いないのだ。
奈美は生きている。
だったら、紗栄の行動でおかしい所がなかったか、聞いたら、何かを知っているのではないだろうか。
……違う。奈美とは、もう話したのよ。
紗栄の死んだ夜に、私は、奈美と話をした。
奈美は、紗栄と同じ帰り道で、「どのみち貴子は死んでいたから、助からなかった」と、紗栄を慰めたと言っていた。
貴子の遺体を見てショックを受けている紗栄に言うには、不自然じゃない?
紗栄は、別に救急車を呼ばなかったことにショックを受けていたのではない。
すでに死んでいる貴子の遺体を見て、ショックを受けていたのだ。
だったら、奈美の言葉は何?
何がどのみちなの?
「ねえ、慎也。遅刻した人がいるとするでしょ?」
「何の話だよ」
「いいから! 遅刻した人がいて、それを見てどのみち遅刻していたから、助からなかった……なんて、目撃者が言うとするでしょ?」
「ああ、うん」
「どういうこと?」
「は?」
慎也が目を丸くする。
「いいから、答えて!」
「そのままだろ。そんなの。どんなことがあったって、遅刻したから助からなかった……だろ?」
「その『どんなこと』は、時系列的に、遅刻する前の話だよね?」
「そりゃそうだ。遅刻してからの話じゃないな」
そうだよ。
うん。奈美が言っていたのは、貴子が亡くなる前の話だ。
どうあったって、貴子は死んでいたから、助からなかった……なぜ?
貴子が、死ぬ運命にあったって、どうして奈美は思ったの?
「ああ、もう! どうして、あの時、気付かなかったのだろう」
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「いや、それ、さっきも聞いたから」
慎也が慌てる私を見て呆れていた。
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