16 / 59
夏季休暇
しおりを挟む
夏季休暇。皆様は、どのように過ごすのでしょうか?
お友達と過ごしたり、家族で旅行……ああ、普段できない時間の掛かることに挑戦なんてこともいいですね。
俺ですか? 俺も、長期休暇に恒例行事中です。
俺、リオスは、病弱キャラ。
がっつりお約束通り体調を崩して寝込んでいます。
「お兄様。大丈夫ですか?」
優しいシロノが、俺を気遣ってくれる。
シロノだって、友達が出来たんだし、友達と遊びに行きたいのだと思うのだが、俺を心配していくつかの予定をキャンセルしてしまったようだ。
申し訳ない。
「シロノ、いいんだよ。遊びにいっておいでよ」
「でも……」
心配するシロノの背中を無理矢理押して、友達とのお茶会に向かわせる。
シロノが俺のために楽しみを奪われるなんて、あって良い訳ないんだ。
使用人なんてほとんどいないエルグ家。シロノが出かければ、火が消えたように静かになる。シロノは、この家の太陽だ。
一人ベッドで横になり、窓の外を眺めて考えるのは、一学期にあったこと。
王太子セシルとのキス。
マジ、何やっているんだろう俺。
セシルは悪くない。セシルは、脳みそがお花畑で出来ていたイタイ少年リオスの言葉「お嫁さんにしてね」に真剣に向き合ってくれたのだろう。申し訳ない。
男の恋人は、「愛人」という立場になるのだそうだ。
愛人? 俺が?
その言葉から連想されるドロドロの愛憎劇。正妃とセシルを取り合って、いがみ合い秘密裏に逢瀬を重ねる。
考えただけでも具合の悪くなる世界観。
そういうのは、この病弱特性の俺が巻き込まれたら秒で体調崩して死んでしまいそうだ。
あれ、待てよ?
「二人をお嫁さんにしてね」と俺は言ったんだ。何がどうなってそうなったかは知らないが。ということは、正妃はシロノ?
? それならば、割と悪くない話?
あの時、少年のセシルは、何て答えたんだっけ??
俺は、黒歴史に目を背けたくなるのを必死に我慢して思い出す。
確か、シロノと二人でセシルの頬にキスをして。「二人をお嫁さんにしてね」と言って。真っ赤になったセシルが、ええっと、とても小さな声で、
「ふ、二人は困ると思う……。考えておく」
と、そう言ったんだ。
駄目だ。それじゃあ、やっぱり駄目だ。
それならば、俺じゃなく、シロノを選んでいただかないと。
リンネが言っていた。
セシルは庇護欲をかきたてられると弱いと。だから、シロノをそういう庇護欲をかきたてる隙のある感じに夏の間に教育しろと。
俺がシロノを教育? 逆なら何度でもあるが、俺がシロノに教育なんておこがましい。
「シロノは、完璧なんだ。優秀で、優雅な、可愛い俺のシロノ」
思わず声に出してつぶやく。
「相変わらずの軟弱、気持ち悪い兄貴だな」
と、父グスタフが入ってきていきなり嫌みを言った。
お友達と過ごしたり、家族で旅行……ああ、普段できない時間の掛かることに挑戦なんてこともいいですね。
俺ですか? 俺も、長期休暇に恒例行事中です。
俺、リオスは、病弱キャラ。
がっつりお約束通り体調を崩して寝込んでいます。
「お兄様。大丈夫ですか?」
優しいシロノが、俺を気遣ってくれる。
シロノだって、友達が出来たんだし、友達と遊びに行きたいのだと思うのだが、俺を心配していくつかの予定をキャンセルしてしまったようだ。
申し訳ない。
「シロノ、いいんだよ。遊びにいっておいでよ」
「でも……」
心配するシロノの背中を無理矢理押して、友達とのお茶会に向かわせる。
シロノが俺のために楽しみを奪われるなんて、あって良い訳ないんだ。
使用人なんてほとんどいないエルグ家。シロノが出かければ、火が消えたように静かになる。シロノは、この家の太陽だ。
一人ベッドで横になり、窓の外を眺めて考えるのは、一学期にあったこと。
王太子セシルとのキス。
マジ、何やっているんだろう俺。
セシルは悪くない。セシルは、脳みそがお花畑で出来ていたイタイ少年リオスの言葉「お嫁さんにしてね」に真剣に向き合ってくれたのだろう。申し訳ない。
男の恋人は、「愛人」という立場になるのだそうだ。
愛人? 俺が?
その言葉から連想されるドロドロの愛憎劇。正妃とセシルを取り合って、いがみ合い秘密裏に逢瀬を重ねる。
考えただけでも具合の悪くなる世界観。
そういうのは、この病弱特性の俺が巻き込まれたら秒で体調崩して死んでしまいそうだ。
あれ、待てよ?
「二人をお嫁さんにしてね」と俺は言ったんだ。何がどうなってそうなったかは知らないが。ということは、正妃はシロノ?
? それならば、割と悪くない話?
あの時、少年のセシルは、何て答えたんだっけ??
俺は、黒歴史に目を背けたくなるのを必死に我慢して思い出す。
確か、シロノと二人でセシルの頬にキスをして。「二人をお嫁さんにしてね」と言って。真っ赤になったセシルが、ええっと、とても小さな声で、
「ふ、二人は困ると思う……。考えておく」
と、そう言ったんだ。
駄目だ。それじゃあ、やっぱり駄目だ。
それならば、俺じゃなく、シロノを選んでいただかないと。
リンネが言っていた。
セシルは庇護欲をかきたてられると弱いと。だから、シロノをそういう庇護欲をかきたてる隙のある感じに夏の間に教育しろと。
俺がシロノを教育? 逆なら何度でもあるが、俺がシロノに教育なんておこがましい。
「シロノは、完璧なんだ。優秀で、優雅な、可愛い俺のシロノ」
思わず声に出してつぶやく。
「相変わらずの軟弱、気持ち悪い兄貴だな」
と、父グスタフが入ってきていきなり嫌みを言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる