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プロローグ

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最終決戦ラグナロク。
主神オーディンを裏切った神ロキが率いる軍団とオーディン率いる軍団が戦い、その衝撃で世界が破滅した。

その場面を画面越しに見ている者たちがいた。
その内の1柱で、その映像で先程死んだはずの主神オーディンは重々しく口を開く。

「この映像は並行世界の我らの末路。この世界の我らは生まれたばかりだが、このまま時が進めばいずれは同じ運命をたどることになるだろう。それだけは阻止せねばならぬ。今すぐとは言わぬが、解決策を考えておいてくれ。──各自で動いてもかまわん」

そうオーディンが最後に俺の方を向いて言い残し、その場を後にする。



おいおい、これじゃまるで俺を始末してもいいと言っているようなもんじゃないか。
最終的な理由が俺だってだけで、お前らだって結構頻繁に喧嘩してたじゃんかよ。

俺はロキ。
先程の映像によると俺は神を裏切り世界を破滅に導いた張本人らしい。

いかに映像で見た並行世界といえど、俺たちが生まれた時点で完全に分離している世界なんだから、姿や能力は同じでも性格は違う。
みんなもそのことは知ってるはずなのにこちらを見る目は鋭い。

まぁ、さっき生まれたばかりだからな、俺らは。
1つの世界が終わったことにより今まで眠っていたこの世界の時間が再び動き出したらしい。
だから基本的な知識以外は赤ん坊並みしかないのかもしれない。
要するに馬鹿なんだよ。

「あいつがロキよ・・・」

「あいつがいなかったら俺たちは・・・」

「しっ!聞こえるぞ!」

いや、お前の声が一番はっきり聞こえたぞ。

でもさ、そんなに悪く言わなくてもいいじゃないか。
どうせ違う世界なんだからさ。

まったく、俺だけ居なくなっても変わらないのに。
世界を滅ぼさないためには秩序ある世界を作らなければいけないだろうと俺は思う。

そもそも並行世界の俺がいけない。なんで裏切っちゃったかなぁ。
・・・楽しそうっていう気持ちは分からないでもないけど! けどだよ! 限度ってもんがあるでしょうに。
世界滅ぼしちゃだめだよ。

それにしても、視線が本当に鋭い、鋭すぎる。
まさか本当に俺を始末しようとはしないとは思うが・・・。
少し怖いな。まぁなんとかなるだろう。

そう思っている時期が俺にもありました。案の定、次元の狭間とやらにぽいっと捨てられました。

「あ~あ、あいつら馬鹿だろ。俺がいなくなっても根本的な問題は何も変わらないってのに」

そう一人愚痴るも言葉を返してくれる相手はいない。なぜならここは次元の狭間。別名、神のごみ捨て場。
俺はごみかよっ!  そう声を大にして叫びたいが意味がないのでやめておいた。

あたりを見渡すも目に映る景色はぐにゃぐにゃで、距離感もつかめない上に、足場も無いため体も安定しない。

暇になった俺は、俺が持つ神としての能力の内、姿を自在に変える能力で遊ぶことにした。
その能力を並行世界の俺が使っているのは映像で見たが、俺が実際に使うのは初めてだ。

とりあえず前提として一番動きやすい人間の姿になろうかな。

えーと、顔はそれなりにイケメンにしよう。草食系というよりは草食系っぽいちょい腹黒といったかんじ。
身長は165センチくらいでシックスパックの細マッチョ。
服装は目立ちすぎない程度にオシャレな道化師ピエロ風ファッションだ。
メイクはしないことにした。素顔にピエロ服の方がなんとなくいいからな。
なぜそんな格好かと聞かれても、好きだからとしか言いようがない。

お、やっぱりこの姿にこの服は似合ってるな、予想通りだ

ピエロ服の人間に変身した俺はしばらくポージングを楽しんだ後、遂に恐れていた事態に直面した。

「......暇だ」

そう、暇なのだ。
俺はあれだ。
暇になると何だか不安になるタイプの神だ。
そんなタイプあるのかって?
俺が言うんだ。あるに決まってるだろ。

確かに暇なのがいいと言う物好きもいるが俺は違う。
もちろん忙しいのも大嫌いだけどな。

そんな俺に、優秀な俺の脳は最高な答えを出してくれた。
いつでもどこでもどんなときでもやろうと思えば出来る俺が知る限りでは最高の一手だ。


そう、寝ることだ。
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