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第1話

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「んん、ここは・・・?」

確か俺は暇を持て余して眠った筈だった。神は夢を見ないから夢を見ているという可能性はない。
なのに俺の目の前には森が広がっており鳥のさえずる音と木が風に揺れる音、そしてふーふーと荒い鼻息が聞こえる。

「荒い・・・鼻息?」

音がする方向、俺の後ろからはその鼻息が複数の場所から聞こえてくる。
ぎぎぎ、と音が聞こえそうな動作で俺が振り向くと、少し身長が低い人間のような姿をした生き物が三匹いた。

人間のようだと言ったが、一目で人間とは違うと分かる。
なぜなら緑色の肌に醜いぐちゃぐちゃの顔、そして少しとがった耳。こんな人間を俺は知らない。

だがおかしい。
生き物の基本知識は全て持ってるはずなのに、こんな生き物を俺は知らない。並行世界の映像でも見たことがない。

疑問はあるが今はこの目の前の存在のことだ。
その顔はなんとなく警戒しているように見えなくもない。剣も構えていて、今にでもとびかかってきそうだ。
持ってる剣はさびだらけなので落ちていたものを拾ったといったところだろうか。
         
その醜い顔に理性があるとは思えなかったが念のため会話を試みる。

「・・・俺に何か用か?」

「ぐぎゃ!ぐぎゃぎゃ!」

「うお!?」

俺が話しかけた瞬間、持っていたさびだらけの剣で一斉に斬りかかってきた。
だが、俺も生まれたてとはいえ神の1柱。そのくらいはかわすことが出来る。
それに緑色の生き物の太刀筋はお世辞でも鋭いとは言えないものだったからなおさら簡単だ。

俺を攻撃してきたので、もうこちらも容赦してやる理由はない。
他の神の配下の可能性も僅かにあったためこちらから攻撃はしなかったが、向こうから斬りかかってきた今、もし誰かの配下だとしても文句を言われる筋合いはない。

だが、今の俺には得物が無いため避けることに専念する。諦めて逃げてくれることを期待しての行動だったのだが、やはり無駄のようだ。

「あまり使いたくなかったんだけどなぁ、しょうがないか」

俺はそういうと獲物・・から離れてから動きを静止し、右手のみに変身能力を使う。
すると、俺の想像通り手が一回りほど巨大化し、爪が鋭く伸び凶器と化す。

「そりゃ!」

俺はその凶器を使い、避けると切りつけるを同時に行い、それを繰り返す内に、いつの間にかここに立っているのは俺のみとなった。
生まれて初めての戦闘で少し気が立っていたのが自分でも分かるがすぐにおさまった。

「まったく、目覚めて早々襲われるとは俺もつくづく運がない」

そうだ。ここはどこなのだろうか?
さっきまでは気が動転してて気が付かなかったが、なぜかここには神の気配・・が一切感じられない。

神が支配している場所なら多かれ少なかれ同じ神である俺には感じられるはずなのだが、ここには全くない。

その後、あたりをしばらく歩いてみたのだが、やはりなにも感じられない。
何度か緑色の生き物に襲われたので、嫌々だが右手を変身させたままだ。

考えられる可能性は2つ。
1つは俺がいた世界の神が滅んだ後の世界という可能性。俺が次元の狭間にいる間に何千、何万もの歳月がたっているのかもしれない。

そして、もう1つはここが俺がいた世界とは全く別の世界だという可能性。異世界とでも言えばいいだろうか。次元の狭間がどこに繋がっているかは神にすら分かっていなかった。

俺は後者の可能性が濃厚だと考えている。
なぜならもし神が滅んだのなら、世界が無事であるとは思えないし、神の気配の残骸くらいは残ってそうなものだ。

ならば、考えられるのは1つ。
ここが異世界である、ということ。
神の気配が無いのは元々神が存在しない世界だと考えられれば理解できる。

となれば、俺がする事は決まっている。

──この世界を、本気で楽しむ。

そう目標をたてた俺はとりあえず人里を目指すことにした。

「人間は生きることがうまいからおそらくこの世界にもいるだろう。それにあの緑色の生き物がもっていた剣を作ったも者もいるはずだよな・・・」

とても楽しみだが、人間に会うならこの手を見られる訳にはいかないから元に戻しておこう。
そう思った俺は緑色の生き物が持っていた剣から状態がましなものを見繕い、軽く振り手に馴染ませてから腰にひもでぶら下げた。
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