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一章

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僕たちはお姉さんの古民家に帰ったのだが……
 「なんでお前がいるんだ?」
 僕は思わず言ってしまう。
「なんでって……お前に惚れたからな」
「乙女ってそんなすぐに惚れるもんなの?」
 僕が聞くと、イザナミは頷いた。僕はお姉さんの方を見たがお姉さんは俯いて何も言葉を発さなかった。
 イザナミは言った。
「なぁ……我料理できないんだけど……」
 僕は少し呆れながら言おうとしたがお姉さんは無言で立ち上がりキッチンに向かった。
 そんなお姉さんを見て僕はイザナミの耳元で言った。
「あいつに何かあったのか?」
 そう聞くと、イザナミは表情を変えた。イザナミは僕の耳元で囁くように言った。
「まぁ……お前にはわからない……少女おとめの事情があるんだよ」
 そう言われて、自分は深く考えないようにした。けれども、やっぱり気になってしまう。
 頭を抱えて考えていると、イザナミは言った。
「なぁ……今日の夜、お前のベットで寝ていいか?」
「…………別にいいが…………どうしてだ?」
 イザナミは一息置いて言った。
「………………お前の………………妻になりたい…………」
 僕は聞いた瞬間何を言っているんだこいつはと僕は思った。僕はそんな夢を抱いているイザナミに言った。
「お前なぁ……結婚は大人になってからだろ?」
 そう言うと、イザナミはキョトンとした顔をして言った。
「何を言っておるんじゃ……別に5歳以上ならいいんじゃぞ?」
「それはどうゆうことだ?」
「この世界は、5歳以上の男女に結婚の権利が与えられる。」
「何を言っているんだ……本当に……」
「お前の方がおかしいぞ、我は本当のことを言っているだけだ。嘘はついておらぬぞ。なぁ?那月なつきよ」
 那月?誰だその名前……と考えているとお姉さんが出てきた。お姉さんは慌ててキッチンに戻った。
 もしかして……
「那月ってお姉さんのこと?」
 僕がイザナミの方を向いて言うとイザナミは頷いた。
「お主、彼女の名を知らずに住んでいたとは愚か者じゃな……あやつの名前は那月……し……」
「イザナミ??」
 お姉さんの重低音ボイスが聞こえてきた。その声と共にイザナミの方はビクッと上がった。ゆっくりと足を進めてくるお姉さん。
 お姉さんはイザナミを抱き抱えてキッチンに入って行った。
 僕はこの光景を見て思った。

 ーお姉さんを怒らせるのはやめようとー

 数分後、イザナミが涙を流しながら帰ってきた。イザナミは僕の胸に頭を当てて言った。
「那月が怖いよ~」
「そうか……そうかそれは怖かったな」
 少し感情を入れていった。すると、イザナミは二枚の紙ペラを出してきた。
「ここに名前を記入するんじゃ」
「なんで?もしかして連帯保証人とかではないよね?」
「そんな類のものではない……さぁさぁ書くのじゃ」
 僕は言われるがままに書いた。

 ー繧「繝ォ繧ケー

 記入した。すると、その紙ペラは宙を舞い。光に包まれながら消えた。
 キッチンの方から大きな音を立てて来たのは那月であった。
「ダメ……だよ……?」
 那月は何かに対して絶望しているかのようだった。そして、次の瞬間那月は膝から崩れ落ちた。
 僕は咄嗟に彼女を支えた。
「なんで……あの紙にサインしちゃったの?」
 そう言いながら彼女は泣き出した。
「絶対に書いてはいけなかったのに……」
「何の紙なんだ?」
 僕は意を決して聞いたすると、彼女は泣きながら笑顔で……
「婚約書」
 僕は聞いた瞬間……イザナミの方を見た。イザナミは瞬時に目を逸らした。
「イザナミさん?これはどうゆうことですか?」
「え、えーとね」
 すっとぼけようとしているイザナミに近づいて僕は説教をした。

 時間が経ち、状況把握ができた。
 まず僕はイザナミと那月と結婚してしまった。あの紙は絶対に返ってこない。この世界には離婚という制度はない。そして何よりもおかしいと思った要素が……この世界はであること。これも死の女王によって変えられたのだろう。すると、イザナミと那月が迫って来ていった。
「「今日からお願いしますね旦那様」」
 僕はこんなことを望んではいなかった。守る対象が増えてしまったと少し後悔したが……この可愛さに僕は負けそうになっていた。
「こちらこそよろしくな二人とも」
「何その顔。可愛い嫁が二人もできたんだから少しは嬉しそうな顔をしなさいよ」
 イザナミに言われた。僕は無理やり笑顔を作って場を凌いだ。
 イザナミが僕の膝の上に座りながら言った。
「なぁ、私が料理できなくてもお前は見捨てないか?」
「…………何を言ってるんだ?嫁にした以上お前を守るぞ?」
「ならよかった」
 イザナミは謎の安心をしていた。すると、ご飯が出て来た。
 ……あれ……既視感が……
「じゃーん見てくれ私の最高傑作の野菜炒めだ!!」
「うぉおおおお……うまそう」
 食いつきが良いイザナミ。僕は野菜炒め生活でもしているのかと思いながら野菜炒めを睨んだ。僕は那月に言った。
「お前……野菜炒めしか作れないのか?」
 那月は黙ってしまった。これ以上深掘りをするのはやめておこうと思った。

 僕は食べ物を呑み込んで言った。
「この世界に他の宗教あるのか?」
 すると、『宗教』という言葉に反応したイザナミが言った。
「あるぞ……われらのを含めて四つ」
「そんなにあるのか……」
 そう言うと、イザナミは頷いた。箸を置いてイザナミは熱く語った。
「まず、妾の宗教の神教しんきょう。そしてちょこんとあるジャンヌ・ダルク教。そして世界で二番目に多いナイチンゲール教。最後にあるのが湖教の四つじゃ」
「気になるが聞いていいか?」
「何じゃ、その教祖たちは女だよな?」
「そうじゃが?」
「女って日本に集められたんじゃ?」
「今紹介した奴らは例外でな。昔もっと勢力が強く死の女王が諦めた宗教の三つじゃ。諦めてなかったら今頃はないだろうな」
 聞いただけでゾッとした。死の女王は怖い存在だと思った。
 そして、僕は思った。
「死の女王に会うにはどうすればいいの?」
 二人に聞くと……二人は黙り込んでしまった。会う方法がない?一度は顔を見たことがあるはず……と思っていたのだが……
「無理じゃな」
「それはどうゆう意味で……」
「色々な意味じゃ……あやつに会える方法は一つ……自分の身を捧げるしかない」
 聞いて少しゾッとしたが考えてみたら……
「そんなことで会えるのか?」
「そんなことってあんた馬鹿じゃないの?」
 普通の人なら馬鹿げた考えだ。けれども僕は一般人とは違う。昔から転生する時に引き継いでいるものがある。
「あぁ……僕が馬鹿だったよ」
 そう言うと、二人は胸を撫で下ろした。
 再びご飯を食べ始めた。僕はひと足先に食べ終わり外に出て空気を吸っていた。
 すると、そこに誰かの気配を感じた。僕は振り返った。すると、そこにいたのは……
「誰だ?」
「私がわからないなんて馬鹿な子もいたもんですね」
 この高圧的な態度。そしてこの気迫。死の女王であった。
「女王様がこんな夜に出歩いていたら危ないですよ?」
「あら、心配してくれるのね嬉しいわ。我弟よ」
「おいおい、その名前で呼ぶのはやめてくれよ」
「あら気に入らなかったかしら……」
「普通に恥ずかしい……で用は?」
「あなたに妻ができたと伝達があったものですから……しかも二人……!」
「それは手違いだよ」
「手違いで結婚するはずないですもん……姉として子供は最低でも20人は欲しいなぁ」
「それは家庭内破綻起きますよ~」
「その時は支援するからね?」
 あぁ……ものすごくうざったい。こんなやつは昔から嫌いであった。なんでこいつが今回選ばれたんだか……そんなことを考えていると死の女王は言った。
「私のこと殺そうとしてるわね?バレバレよ?」
「流石のお姉様でございますね……なぜこんな世界を作ったのですか?」
「なんでって気分かな~」
「気分で作るんではありません!」
「そんなお母さんみたいなこと言われてもね……?そろそろ時間みたい……それじゃぁ」
 死の女王は消えた。大量のコウモリと共にどこかに消え去ってしまった。時間……あの二人が来ると言うことだろう。
「見つけたぞ!さぁさぁ早く入ろうではないか!」
 イザナミが元気に言ってくる。僕は笑顔で対応して玄関に足を運ぶ。時々月の光を見ながら……

 ーガチャンー

 ドアがしまった。鍵をしてまで。
 こんな物騒な世界になぜ僕は転生させられてしまったのだろうか。不思議でたまらなかった。
 今夜のベットは……激しくなりそうだ。
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