濁流の中で

一宮 沙耶

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1話 ベンチャー女性社長

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花音だ。
私が、大学の時に付き合っていた女性。
ネットニュースで成功しているベンチャー社長として紹介されていた。

白を貴重としたオフィスで、彼女の純白さが表現されている。
しかも、キリッとした目は、彼女が優秀な人であることを示していた。

爽やかな新風が流れ、どんな時でも頼れそうな雰囲気を醸し出していた。
しかも、彼女は親しみやすい性格で業績はうなぎ登りだと書かれている。

花音は、ベンチャー企業の起業を支援するコンサル会社の社長らしい。
東大の3年生の時に別れてから会っていないけど、全く変わっていなかった。

顔立ちは美人そのもので、圧倒的な存在感がある。
髪型はボブで、若さと活動的な雰囲気が引き立っている。
写真からはわからないけどスタイルも抜群。

付き合い始めたのは、大学の食堂で同じ席に座ったことがきっかけだった。
花音から声をかけてきたね。
ここのカレーって美味しいですよねって。

きらきら輝く笑顔で、私の心は花音への想いで溢れていた。
こんな人と付き合えたらと。
はにかむ花音のことで頭がいっぱいになった。

それから、よく居酒屋に飲みにいったね。
海にも2人でドライブしたことがあった。
一緒にいるだけで、楽しい気持ちになれた。

海はまだ少し寒かったね。
水をかけ合うと、水しぶきが陽の光を浴びて宝石のようだった。
なによりも、スタイルがいい花音から目を離せなかった。

東大って、美しい女性は飛びぬけて美しい。
花音は、そんな女性の一人だった。
しかも、頭は冴えていて、授業に付いていけない人の世話もしていたね。

みんなの憧れの花音を彼女にしたときは本当に嬉しかった。
私の自慢だった。

花音に、女性の友達を紹介してくれとお願いしたこともあったね。
でも、私とだけの時間を1分でも多く持ちたいと言って私を見上げた。
私のことだけ見たいから、女性の友達とは最近、会う時間が作れないとも。
そんな花音を愛おしく思っていたんだよ。

花音は、いつも明るくて裏表がない。
まるで、水面の上を軽やかにステップしている少女のよう。
そして、人の悪口や愚痴なんて、一回も聞いたことがない透き通った性格。

学生では飲みに行くといっても、安い居酒屋。
そこで、いつも、褒めてくれたね。
悩んだときは、いつも相談にのってくれて、いいアドバイスをくれた。

「和之の夢ってなんなの?」
「将来、ITの力を使って、お客のビジネスモデルを変革するコンサルを樹立したいんだ。それでアメリカも超えるコンサル会社を日本に樹立する。」
「すごいじゃない。やっぱり和之ね。私、応援する。私には夢なんてないから、和之の夢に参加させて。男性は夢を追い、女性はそれを支えるの。」
「花音は本当にかわいいね。」

同棲もしていた。
朝、まだ眠そうな花音は可愛いかった。
一緒に暮らしても、花音がすることで嫌になったことなんて一つもなかった。

でも、うぬぼれていたんだろうね。
花音と一緒にいることがあまりにあたりまえで。
花音がしてくれたことに不満を言うことが増えていた。

ある日、家に帰ると、いつも明るい部屋が真っ暗だった。
テーブルにさようならと書かれたメモが。
海外に留学に行くから、もう会えないと。

留学から帰ってくれば、また付き合えると安易に思っていた。
だから、いきなりいなくなったことを疑問に思わなかった。
どこに留学したのかも調べなかった。

でも、花音がいなくなった大学生活は灰色の世界。
誰と話しても花音と一緒にいる時のように心が踊ることはなかった。

そして、就活、入社となったけど、花音が戻ってくることはなかった。
今更ながら花音の行方を調べたけど、不思議と全くわからない。
どうして、あんな幸せを手放してしまったのだろう。

コンサル会社で働き始めたけど、楽しいと思えたことはなかった。
あんなに天真爛漫で才気にあふれた女性はいない。
一緒に暮らして、あれだけ心が満たされる女性もいない。

でも、やっと花音に会える。
花音の会社に転職活動し、合格した。
今日は、初めての出社。

会社に入ると、社長1人と社員は6人だった。
社員は、男性4人、女性1人、事務の女性1人でいずれも優秀そう。
リモートも多いけど、今日は全員出社だと聞いていた。

花音は、奥の小さな社長室にいる。
あの花音とやっと会えるんだ。
笑顔の花音と目が合い、花音は部屋から出てきた。

「さあ、みんな集まって。期待の新人がニューヨークコンサルティングから転職してきたから紹介するわ。一ノ瀬 乃愛さん。よろしくね。」

そう、私は、1歳下の女性になっていた。
花音は、まさか昔、付き合っていた男性だとは夢にも思っていないはず。
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