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9話 女ハッカー
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私はバイトを続けながら、ハッキングの勉強を毎日続けていた。
こんな面白い世界があるなんて知らなかった。
「なんか、僕より、美奈さんの方がもう上位者だね。今度、ハッキング大会があるけど、出てみる? 全世界で競うんだ。」
「そんなのあるんだ。じゃあ出る。どうすればいいの? このサイト? あ、エントリー画面だ。じゃあ、私のコードネームは、@takashi にしよう。」
「 @takashi って、男みたいだけど、どうして?」
「なんか女より、男の方が強そうじゃない。」
「そうなんだ。」
「来週土曜日ね。じゃあ、頑張ろう。」
ハッキングは闇の世界というイメージだけど、オープンな大会があるなんてびっくり。
大会当日、世界の勇者が参加し、私は最初の参加にも関わらず、上位3位に入賞する。
私は、授賞式にはリモートで参加し、入賞のお礼を英語で伝えた。
和樹を抜いたことは、男のプライドが傷つけられたと怒るかしら。
和樹は、そんな小さなことは感じていないみたいだった。
素直に、私が上位3位になったことを喜んでいる。
「すごいね。僕なんか圏外だけど、そんな力があるんだったら仕事にできるんじゃない。今いるバーのオーナーのボスが、そんな人が欲しいって言ってたから紹介しようか?」
「仕事になるんだ。じゃあ、お願い。」
翌日、和樹の紹介で、怖そうなおじさんと会うことになった。
ボスは、ずっとイライラとし、不機嫌そうに私の顔を覗き込む。
目の前の灰皿には、吸い終えたタバコが何本も雑然と重ねられている。
「お前はハッキングできるんだって。なんか、若い女だけど大丈夫か?」
「この前の大会では世界3位になりましたから、できると思います。」
「そうか。じゃあ、まずはお手並み拝見だ。今夜、あるビルから情報を盗むから、手伝ってくれ。」
ボスは、タバコ臭い顔を私に近づけ、目で威圧してくる。
「わかりました。何をすればいいのですか?」
「夜0時に、こいつがビルに行くから、まず、このビルと周辺の監視カメラを切ってくれ。そして、携帯で指示するから、あるビル内の一定のブロックの監視カメラを切って、さっき切った監視カメラを復活して、こちらから指示するエレベーターやドアのロックを外してくれればいい。見つからないように、お前は、ネットカフェのWi-Fiから操作してくれ。」
「なんか、面白そうですね。わかりました。で、成功したら、いくら貰えるのですか?」
「最後までうまくいけば、1回50万円だ。」
「それは嬉しいです。では、私の携帯番号をお伝えしておきますので、夜0時に電話いただければと思います。」
その夜、私は順調に仕事をこなす。
その結果、ボスは無事に秘密書類を持ち出し、50万円を私に手渡した。
私は、50万円を鷲掴みにしてポケットに放り込み、部屋をでる。
その後、部屋に残っているボスは部下につぶやいていた。
「この会社は、警備会社でありながら、セキュリティが甘いって漏れていいんですかと脅したら、3,000万円も出してきた。あの美奈っていう子、使えるな。海外で暮らしていたとか言っていたけど、あの大胆さというか、罪悪感が全くないところがいいね。また、英語、中国語もできるのもいい。これからも、どんどん儲けるぞ。」
私は次々と犯罪の手助けをし、ボスにとって不可欠なメンバーとなっていく。
私は、和樹に心の痛みを癒してもらい、最近は、気ままに生活していた。
ハッキングの技も高度だから、警察に捕まるはずもない。
警察では、@takashiを重大犯罪者としてマークをしているという情報は入った。
でも、警視庁のサイトに入ると、男性ばかりを容疑者として探っている。
そんなことでは、私に辿り着けないわね。
お金もそこそこ入ってきて、和樹と焼肉とか贅沢もできるようになった。
おしゃれな服も買って、和樹の部屋でファッションショーをしたりもしている。
最近は、寝ていると空を飛ぶ夢を見る事が多い。
夢では、体が軽く浮かび上がり、いろいろな所に鳥のように気持ちよく飛んでいける。
なんでもできそうな自信も湧いてきた。
こんな生活が、これからもずっと続けばいい。
そんな時、ボスから意外な提案を受ける。
「美奈、ボーナスで、高層マンションの一室をあげることにした。また、これから1回200万円をやる。」
「本当ですか。嬉しいです。ところで、和樹と、そこで一緒に暮らしていいですか。」
「それはやめておけ。和樹は心根は優しいが、美奈は、これからもっと大きな仕事をするときに足手まといになる。このマンションで住むのをきっかけに、和樹とは距離をとれ。」
ボスは私を睨みつける。
まあ、和樹は、恋愛感情というより、家族みたいな存在。
一緒に暮らせなくても、時々会えばいい。
「わかりました。で、高層マンションって、どこにあるんですか。」
「高輪にある、グランドメゾン高輪っていうマンションで、最上階の25階、200平米だ。」
「グランドメゾン高輪? 携帯で調べよう。あ、ここだ。すごいですね。ここに住みたいです。明日からでも入れるのですか?」
「入れるさ。ただ条件があって、これからもずっと他の組織でこの仕事はしないという条件だ。これをのんでくれたらということだが、いいよな? 」
「わかりました。そんなことだけでいいのであれば。」
「じゃあ、ここにサインで完了だ。」
私は和樹の部屋に行き、和樹に言った。
「ハッキングのお仕事、紹介してもらって、ありがとう。それで、ボスから家を貰って、引っ越すことになったの。これまでありがとうね。」
「そうなんだ。寂しくなるけど、そっちの方がいいね。警察のガサ入れとか、心配しているのかもしれない。たまにはお邪魔してもいいかな。」
「ボスは、家には誰も入れるなって。でも、外で会おうよ。最初に連れて行ってくれたラーメン屋とかでさ。明日の朝に出るから、今晩が最後だね。」
「あっちにいったら、ずっと裸で過ごしているのかもしれないけど、風邪とかひかないでね。」
「和樹も元気で。じゃあ、寝よう。このベットで寝るのも今日が最後か。でも、和樹も、床に寝ずに、明日からベットで寝れるのは、嬉しいよね。これまでごめん。」
「気にしなくていいよ。楽しかったから。」
和樹は電気を消す。
私は、その後も、月明かりが照らす和樹の顔をずっと見ていた。
こんな私に、穏やかな時間を与えてくれて、本当にありがとう。
和樹が本当に寝ているのかはわからないけど、部屋は静寂に包まれる。
いつの間にか、私は、ゆっくりと眠りに落ちていった。
こんな面白い世界があるなんて知らなかった。
「なんか、僕より、美奈さんの方がもう上位者だね。今度、ハッキング大会があるけど、出てみる? 全世界で競うんだ。」
「そんなのあるんだ。じゃあ出る。どうすればいいの? このサイト? あ、エントリー画面だ。じゃあ、私のコードネームは、@takashi にしよう。」
「 @takashi って、男みたいだけど、どうして?」
「なんか女より、男の方が強そうじゃない。」
「そうなんだ。」
「来週土曜日ね。じゃあ、頑張ろう。」
ハッキングは闇の世界というイメージだけど、オープンな大会があるなんてびっくり。
大会当日、世界の勇者が参加し、私は最初の参加にも関わらず、上位3位に入賞する。
私は、授賞式にはリモートで参加し、入賞のお礼を英語で伝えた。
和樹を抜いたことは、男のプライドが傷つけられたと怒るかしら。
和樹は、そんな小さなことは感じていないみたいだった。
素直に、私が上位3位になったことを喜んでいる。
「すごいね。僕なんか圏外だけど、そんな力があるんだったら仕事にできるんじゃない。今いるバーのオーナーのボスが、そんな人が欲しいって言ってたから紹介しようか?」
「仕事になるんだ。じゃあ、お願い。」
翌日、和樹の紹介で、怖そうなおじさんと会うことになった。
ボスは、ずっとイライラとし、不機嫌そうに私の顔を覗き込む。
目の前の灰皿には、吸い終えたタバコが何本も雑然と重ねられている。
「お前はハッキングできるんだって。なんか、若い女だけど大丈夫か?」
「この前の大会では世界3位になりましたから、できると思います。」
「そうか。じゃあ、まずはお手並み拝見だ。今夜、あるビルから情報を盗むから、手伝ってくれ。」
ボスは、タバコ臭い顔を私に近づけ、目で威圧してくる。
「わかりました。何をすればいいのですか?」
「夜0時に、こいつがビルに行くから、まず、このビルと周辺の監視カメラを切ってくれ。そして、携帯で指示するから、あるビル内の一定のブロックの監視カメラを切って、さっき切った監視カメラを復活して、こちらから指示するエレベーターやドアのロックを外してくれればいい。見つからないように、お前は、ネットカフェのWi-Fiから操作してくれ。」
「なんか、面白そうですね。わかりました。で、成功したら、いくら貰えるのですか?」
「最後までうまくいけば、1回50万円だ。」
「それは嬉しいです。では、私の携帯番号をお伝えしておきますので、夜0時に電話いただければと思います。」
その夜、私は順調に仕事をこなす。
その結果、ボスは無事に秘密書類を持ち出し、50万円を私に手渡した。
私は、50万円を鷲掴みにしてポケットに放り込み、部屋をでる。
その後、部屋に残っているボスは部下につぶやいていた。
「この会社は、警備会社でありながら、セキュリティが甘いって漏れていいんですかと脅したら、3,000万円も出してきた。あの美奈っていう子、使えるな。海外で暮らしていたとか言っていたけど、あの大胆さというか、罪悪感が全くないところがいいね。また、英語、中国語もできるのもいい。これからも、どんどん儲けるぞ。」
私は次々と犯罪の手助けをし、ボスにとって不可欠なメンバーとなっていく。
私は、和樹に心の痛みを癒してもらい、最近は、気ままに生活していた。
ハッキングの技も高度だから、警察に捕まるはずもない。
警察では、@takashiを重大犯罪者としてマークをしているという情報は入った。
でも、警視庁のサイトに入ると、男性ばかりを容疑者として探っている。
そんなことでは、私に辿り着けないわね。
お金もそこそこ入ってきて、和樹と焼肉とか贅沢もできるようになった。
おしゃれな服も買って、和樹の部屋でファッションショーをしたりもしている。
最近は、寝ていると空を飛ぶ夢を見る事が多い。
夢では、体が軽く浮かび上がり、いろいろな所に鳥のように気持ちよく飛んでいける。
なんでもできそうな自信も湧いてきた。
こんな生活が、これからもずっと続けばいい。
そんな時、ボスから意外な提案を受ける。
「美奈、ボーナスで、高層マンションの一室をあげることにした。また、これから1回200万円をやる。」
「本当ですか。嬉しいです。ところで、和樹と、そこで一緒に暮らしていいですか。」
「それはやめておけ。和樹は心根は優しいが、美奈は、これからもっと大きな仕事をするときに足手まといになる。このマンションで住むのをきっかけに、和樹とは距離をとれ。」
ボスは私を睨みつける。
まあ、和樹は、恋愛感情というより、家族みたいな存在。
一緒に暮らせなくても、時々会えばいい。
「わかりました。で、高層マンションって、どこにあるんですか。」
「高輪にある、グランドメゾン高輪っていうマンションで、最上階の25階、200平米だ。」
「グランドメゾン高輪? 携帯で調べよう。あ、ここだ。すごいですね。ここに住みたいです。明日からでも入れるのですか?」
「入れるさ。ただ条件があって、これからもずっと他の組織でこの仕事はしないという条件だ。これをのんでくれたらということだが、いいよな? 」
「わかりました。そんなことだけでいいのであれば。」
「じゃあ、ここにサインで完了だ。」
私は和樹の部屋に行き、和樹に言った。
「ハッキングのお仕事、紹介してもらって、ありがとう。それで、ボスから家を貰って、引っ越すことになったの。これまでありがとうね。」
「そうなんだ。寂しくなるけど、そっちの方がいいね。警察のガサ入れとか、心配しているのかもしれない。たまにはお邪魔してもいいかな。」
「ボスは、家には誰も入れるなって。でも、外で会おうよ。最初に連れて行ってくれたラーメン屋とかでさ。明日の朝に出るから、今晩が最後だね。」
「あっちにいったら、ずっと裸で過ごしているのかもしれないけど、風邪とかひかないでね。」
「和樹も元気で。じゃあ、寝よう。このベットで寝るのも今日が最後か。でも、和樹も、床に寝ずに、明日からベットで寝れるのは、嬉しいよね。これまでごめん。」
「気にしなくていいよ。楽しかったから。」
和樹は電気を消す。
私は、その後も、月明かりが照らす和樹の顔をずっと見ていた。
こんな私に、穏やかな時間を与えてくれて、本当にありがとう。
和樹が本当に寝ているのかはわからないけど、部屋は静寂に包まれる。
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