純愛

一宮 沙耶

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2話 女子高生活

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私は、入院で学校は1年3カ月の間休学し、4月から2年下のクラスに編入する。
高校で同学年のクラスメイトはすでに卒業していたのは良かった。
昔の友達から声をかけられることがないから。

クラスでは、2年先輩が編入してきたせいか、みんなの目は冷たい。
みんな1年からクラス替えがなくて一緒だったことも影響していると思う。

しかも、この前まで26歳だった男性が、簡単に女子高生に溶け込めるはずもない。
体が女子高生というだけ。

横に座るクラスメイトは、右か左か決められずに、ずっと悩みを話し続ける。
くだらない話しを聞くのに飽きて、私は、こうすればいいと結論だけを言い放った。
その子は目を丸くして私を睨み、もう話しかけてくれることはなかった。

何が悪かったのだろう。ちゃんと話しを聞いて、アドバイスしてあげたのに。
今から思うと、男女のコミュニケーションの取り方が違っているのを知らなかった。

最近は、クラスメートからはぶられている空気を感じる。
朝は、みんな、おはようって挨拶してるけど、私には誰も挨拶してくれない。

それでも、みんなに溶け込もうと努力をしてみた。
お昼休みには、横でお弁当を食べる5人グループの輪に入ろうと声をかける。
みんなは私を無視し、5人だけで話し続ける。

無理して横に座ろうとすると、今度ははっきりと先輩の席はここにないと言う。
そして、厚かましい人だと言って、くすくすと笑う。
そんな笑い声が、クラスの中でこだまのように広がっていく。

体育の時間が終わり、教室に帰ってくると私のブラがない。
ブラを付けずにブラウスを着ていると、恥じらいがないと笑い声が聞こえる。
そして、そのブラはトイレの便器の中で見つかった。

女性どうしって、みんな笑い合って楽しそうと思っていたのに、関係は難しい。
陰で噂流したり、笑いながら相手をけなしたりとか。

特に、仲良しグループとは別のグループの人との関係は難しい。
だからか、そのグループから外されると孤独になっちゃう。
そのせいでリーダーに気をつかっている。そんなの友達じゃないのに。

あからさまにマウンティングしてくる人もいた。
なんか、女性は嫌な存在というイメージに変わっていったかな。
最近は、こんなもんかなって感じで慣れちゃったけど。

別にあと2年なんて、下を向いて嵐が通り過ぎるのを我慢していれば終わる。
友達も、別に欲しいわけじゃない。

学校の休憩時間とかは、1人で本を読んで過ごしていた。
もともと、本を読むのは好きだったし。
前の生活では忙しくて、本を読む時間がなかったから、ちょうど良い。

本を読んでいれば、空想の世界で生きていける。
横に誰がいても、誰もいなくても、そのことを忘れられる。
自分が女子高生だということも意識せずに済む。

授業中は、窓から校庭をよく見ていた。
砂埃が舞う中で、トラックを走っていく生徒が見える。
なんとなく人生と一緒。

一緒にスタートするけど、実力の差もあるし、やる気の違いもある。
遅い人は、1周遅れで走ってる。

でも、ゴールが1つしかないことは現実世界とは違う。
人生は、途中でいくつも枝分かれし、どれが正解かはわからない。
私は、私の幸せを見つけていくだけ。

授業が終わると、私は、することもなく校庭を歩いていた。
早く帰っても、することがない。
ハンカチを敷いて座り、テニスで汗いっぱいの部活とかを眺める。

みんな、今を生きてる。
あの子なんて、コートを全力で走ってる。
コーチがボールを右、左って投げて、それを打つために。

すごいと思う。
私は、高校の時、どうしていたかな。あまり記憶がない。

日差しが強過ぎる。
木々は緑なのに、見える光景は全てが真っ白に見える。
光の中にいるみたいで眩しいし、空気がゆらゆらしてる。

校庭の木も、若葉から緑が濃くなり、生い茂る季節になってきた。
木々は、陽の光をいっぱいに浴びて楽しそう。
私だけが、一人ぼっちで、誰も私のことに気付いてくれない。
最近、こんな環境で、生き残ったことは良かったのかと思う時間も増えた。

そんな時間を過ごして4カ月が経ち、夏休みを迎える。
夏休みには、親とイギリス旅行に行った。
前の生活では海外には行ったことがなかったので、結構、楽しめたかな。

お城とか、宮殿とか、見たことなかったし、中世ヨーロッパの雰囲気は素晴らしい。
大英博物館にも行って、すごいなって感じた。

この子の両親は、高齢で産まれた女の一人っ子として、私をとても大切にしてくれている。
おしゃれをしないので、ガーリーな服とかを買ってきてくれることも多い。
私は、好意に応えようとその服を着て出かけたりするけど、まだ女性の服には馴染めない。

でも、パスポートを作った時に、本当に女性になったんだなとしみじみと思った。
当然だけど、誰もが18歳の女子高生であることを疑わない。
昔の自分は、もうどこにもいなくなったと実感し、周りが灰色の世界に見えたこともある。

そんな中、今日から2学期が始まると思って教室にいた時、衝撃が走る。
目の前に、昔の婚約者がいたから。
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