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2話 セキュリティ会社
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「お姉さん、おはよう。」
「おはよう。桃子、今日は元気そうね。」
私の桃子は、妹と二人暮らしをしている。
精神的に不安定で、自殺事件も何回も起こしている。
だから、窓もない独房のような部屋から出すことができない。
部屋には角がないテーブル、トイレしかない。
壁も柔らかい素材で覆っている。
食事も液状のものが中心。
遠出する時以外は、私が食事を運び、世話をする。
気持ちが落ち着いている時は、普通に一人でお風呂に行かせる。
でも、お風呂にはカミソリ等は置いておけない。
湯船に頭を入れて自殺をする可能性もある。
だからシャワーしか使わせず、数分おきに私が安全を確認する。
お父さんは、独立行政法人の海外経済協力基金に勤めていた。
中米の発展支援のため、お母さんと妹を連れて中米で暮らしていた。
私は東京の大学に在籍のため日本に残り、一緒に行っていない。
その時に、中米でクーデターが起こり、両親は殺される。
妹は、ドラッグ漬けにされ、売春をさせられていた。
現地の警察が売春をしているボスを逮捕し、女達を解放する。
これをきっかけに、妹は日本に戻されることになる。
でも、どうやっても、そのドラッグの禁断症状は抜けなかった。
特殊なドラッグらしい。
だから、妹は、今でも、無数の虫が襲ってくると恐怖に叫ぶ。
幽霊や化け物に殺されるとベランダから飛び降りようとする。
笑顔の直後に、いきなり泣き始め、髪を振り乱す。
精神は安定せず、体は痩せ細っていく。
アメリカで、この禁断症状を直す薬が開発されたと聞いた。
ただ、治すためには1億円が必要。
だから、私は、なんとしても1億円を稼がなければならない。
私だけが日本にいて普通の暮らしをしているなんて許されない。
私は、当時、一人の生活が永遠に続けばいいなんて考えていた。
もしかしたら、そんな不謹慎なことを思った報いなのかもしれない。
だから、私は妹を必ず、普通の生活ができるようにする。
そのために、どんなことをしても1億円を手にいれる。
依頼主から次のターゲットとされたのはIT会社。
セキュリティ対策のアプリ、ソフトウェアを展開している。
セキュリティは攻める方と守る方でイタチごっこ。
だから、相手の情報を取得できれば、今の戦いには勝てる。
あっという間に次の戦いに入ってしまうけど、負けるわけにはいかない。
でも、この会社はすごいと思わせれば当面は優位に立てる。
それだけでも莫大なお金を稼げるから、私に依頼が来ている。
今回は、この会社が画期的なロジックを開発したと発表した。
それを泳がせ、適用したらすぐに、そのロジックを破る。
この会社のブランドはボロボロ。
そういう作戦みたい。
そのロジックは、特殊エリアにあるサーバーに格納されている。
サーバーは、ネットには繋がれていない。
その特殊エリア内でしかサーバーにアクセスできない。
外からネットを通じてシステムに侵入できない。
このビルに入らないと絶対にアクセスできないということ。
だから、これまで情報が漏洩したことがない。
このことを、この会社は売りにしてきた。
でも、ITシステムには必ず欠点がある。
例えば、そのエリアに入るには生体認証が必要。
でも、そのデータは必ずどこかで管理されている。
それを膜にして手に付ければ生体認証はクリアできる。
よく映画とかだと、手を切ったり、目の玉をくり抜いて使う。
でも、そんな怖いことはしない。
情報を盗むために、そこまでの犯罪は釣り合わない。
あとは、エリア内の端末のアクセスコードとファイルのありか。
そして、そのファイルのPW。
そのぐらいがあれば十分。
ファイルのコピーができれば最高。
できなくても、画面をカメラで撮影する。
そこに導ければ私の仕事は完了。
今回は、どうしようかしら。
トイレの清掃員が、特殊エリアに入るなんて無理。
社員になりすましてバレたら捕まる。
だから、まずは特殊エリアに入れる生体認証データを管理する人を探す。
そして、その人の弱みを握り、脅して情報を取得する。
全体を管理しているような人じゃなくて下っ端がいい。
そんな人は、ちょっとした脅しでビクビクする。
特殊エリアがあるフロアのトイレ清掃員となった。
今は、こんな仕事、人気ないから簡単に潜り込める。
トイレ清掃員なんて、この人でないとできないという仕事でもない。
誰からもバカにされている仕事だから疑われることもない。
1週間ぐらい経った頃、狙っている情報が入ってきた。
「三木さ、来週、この会社の専務がこの特殊エリアを視察に来るんだって。1ヶ月ぐらい前に銀行から来た役員で、この会社を紹介することになったらしい。だから、早急に専務が入場できるように生体認証の手続きを進めて欲しい。管理本部長は、鉄壁な管理をアピールしたいんだとさ。」
「わかった。来週っていったって、今日は金曜日じゃないか。早くしないと。まあ、俺たちのボスは管理本部長だからな。ゴマをすっておかないと。」
「よろしくな。ところで、この商売って、本当にヤクザな仕事だよな。陰で、ウィルスをばら撒いて、危ないと言ってセキュリティソフトを売る。自作自演というか、みんな騙されて、うちの会社がボロ儲けをする。しかも、うちがばら撒いたウィルスだから、駆除の方法は熟知していて、セキュリティソフトはすぐにできる。本当に良くできた詐欺というか、ビジネスというか。」
「そんなこと言うなよ。俺たちは、それで給料もらっているんだから。」
「まあ、そうなんだけど。」
いつものことだけど、このトイレに私は存在していない。
最初はビクビクだったけど、今は、慣れてしまった。
まるで幽霊のよう。
でも、この会社は、人を騙しているんだ。
この仕事の依頼が来たときには少し悩んでいた。
人のために事業している会社にダメージを及ぼすことを。
でも、そんなことは杞憂だったことが分かる。
こんな詐欺会社、この世の中から排除しないと。
その後、しばらく、この三木という男をマークする。
「課長、今度、この会社に誘いたい人がいるんですよ。技術レベルが高くて、昔、一緒に仕事していて協調性もある人なんです。今週の水曜日に、夕食を一緒にするんですが、経費で出してもらっていいですよね。」
「そうか。いつも、三木は優秀な人とのリレーションが豊富だな。ぜひ、お願いするよ。」
「ありがとうございます。期待していてください。」
どうも、リファーラル採用のために交際費を使っているみたい。
また、その日の夕方に廊下の陰で電話している姿も見かける。
「凛、今週の水曜日、高級レストラン、予約できたんだ。一緒に行こうよ。空いてるだろう。わかった。じゃあ、18時に、帝国ホテルのロビーで待ってるね。楽しみにしている。」
あれ、彼女と会社の経費でデートなのかしら。
翌日の朝には、最近、三木さんの誘いで入社した2人がトイレで話していた。
「お前も三木さんの誘いで入ったのか? 俺もだよ。でも、三木さん、居酒屋で奢ってもらって、久しぶりに楽しかったというか、盛り上がってさ。」
「先輩もですか。あの、白木屋ですよね。」
「そうそう。」
「僕も、盛り上がって楽しかったですよ。この会社、とってもアットホームだなって思って転職したんです。」
どうも、会社の経費で高いレストランに彼女と一緒に行く。
彼女は金持ちの男だと好きになる。
他社から引き抜く人とは安い居酒屋で自腹で奢る。
後輩は自腹で奢られたと慕う。
こういうことなのだと思う。
なかなか練られた作戦じゃない。
やはり、悪徳会社にはゲスな社員が大勢住みつくもの。
今回の高いレストランと居酒屋は尾行して突き止める。
そして、後日、領収書を忘れたからと言って領収書をもらう。
断るお店では、クレジットカード明細の写真を撮った。
依頼主の調べでは、三木さんは、サラ金に多額の借金がある。
今どきの大企業では問題にされる金額。
金曜日にトイレを出た三木さんの後ろにメモを落とす。
あなたの不正を知っていますと書かれたメモを。
さらに、その下にレストランと居酒屋の名前を書いておいた。
利用した日付、金額や、サラ金の情報も。
「すみません。メモみたいものを落としましたよ。」
「僕のじゃないと思いますが・・・。」
「いえ、今お持ちのノートから落ちるのを見ましたけど。」
彼は、メモを見た途端、真っ青になった。
これで脅すことで、生体認証を突破できる。
彼を通じて、特殊エリア内の各種情報は入手できるはず。
私は、依頼主に、一連の情報を提供する。
依頼主は、暴力団を使って彼を脅すと言っていた。
情報を出さないと、上司に不正をバラす。
しかも、生きていられるかわからないって。
私の仕事はここまでで十分。
今回は、依頼主は、このIT会社を脅したらしい。
こんな情報が出回るより、金を出して揉み消した方がいいでしょうって。
依頼主は、これで、たんまり金をゲットしたと聞いた。
だから、私もお金を弾んでもらって500万円をゲットする。
1週間分の収入としては期待以上。
今夜は、妹の世話を家政婦にお願いし、一人で外食に出かけていた。
気晴らしというよりも、これも情報収集の仕事。
富裕層の人達が何を話しているのかを聞いて、仕事の機会を探る。
だから、レストラン代、洋服代等は依頼主が支払ってくれる。
高級ブランドを身につけ、高級レストランに入った。
スリットが入った真紅のチャイナドレスを身に纏う。
私の抜群なスタイルを大胆に見せつけるのは気持ちがいい。
特に、日頃は清掃員の地味な制服でいるから。
誰からも気づかれない生活とは真逆の世界。
依頼主から借りたハイブランドのネックレス、イヤリングもつける。
日常的に、こんなレストランで夕食をとる上級国民だと誰もが思うはず。
年に4回ぐらいだけど、いつも来ている雰囲気を醸し出す。
依頼主からは、男もつけるかと聞かれるけど、断っている。
無駄なお金を使うのが嫌なわけではない。男が不要なだけ。
1人で食事なんて寂しいと思う人もいるようだけど、そんなことはない。
くだらない男の話しを聞きながら、笑顔で相槌を打つなんて時間の無駄。
1人の方がお料理の味をしっかり味わえる。
ワインも1人の方が楽しめる。
最近、1人が好きな女が増えているのも、よく分かる。
今どき、男なんかに頼らなくても楽しく生きていけるから。
戦争とかがあると腕力とかが重要になる。
でも、今は、男が女に勝てることは何一つない。
男は子供を産めないし。女は、精子を買って子供を産める。
重いものだって、機械で運ぶこともできる。
自動車に乗れば、どんな足が速い男よりも早く進める。
でも一人になると、妹のことを考えてしまう自分がいた。
今頃、隔離された部屋で、健やかに眠っているかしら。
中米で、不衛生な部屋に閉じ込められて不安だったでしょう。
見知らぬ男達のおもちゃにされて悔しかったでしょう。
貧しい国では、未だに女は男に虐げられている。
妹も、その被害者になってしまった。
私は、そんな妹を助けることができなかった。
私は、女を虐げる男達に復讐をしたい。
妹をこんなに苦しめた報いを与えたい。
女を大切にしない男なんて、この世の中から消えてしまえばいい。
今回も、数人だけど男達を失脚させてやった。
IT会社の管理本部長やあの下っ端の社員はクビになったらしい。
セキュリティ会社の情報を漏洩した責任を取らされて。
どこも雇ってもらえなくて、今は公園でホームレスになっているとか。
しかも、情報漏洩の事実が広がり、このセキュリティ会社は倒産する。
「トイレの花子さん」の被害者がまた増えたと囁かれる。
「おはよう。桃子、今日は元気そうね。」
私の桃子は、妹と二人暮らしをしている。
精神的に不安定で、自殺事件も何回も起こしている。
だから、窓もない独房のような部屋から出すことができない。
部屋には角がないテーブル、トイレしかない。
壁も柔らかい素材で覆っている。
食事も液状のものが中心。
遠出する時以外は、私が食事を運び、世話をする。
気持ちが落ち着いている時は、普通に一人でお風呂に行かせる。
でも、お風呂にはカミソリ等は置いておけない。
湯船に頭を入れて自殺をする可能性もある。
だからシャワーしか使わせず、数分おきに私が安全を確認する。
お父さんは、独立行政法人の海外経済協力基金に勤めていた。
中米の発展支援のため、お母さんと妹を連れて中米で暮らしていた。
私は東京の大学に在籍のため日本に残り、一緒に行っていない。
その時に、中米でクーデターが起こり、両親は殺される。
妹は、ドラッグ漬けにされ、売春をさせられていた。
現地の警察が売春をしているボスを逮捕し、女達を解放する。
これをきっかけに、妹は日本に戻されることになる。
でも、どうやっても、そのドラッグの禁断症状は抜けなかった。
特殊なドラッグらしい。
だから、妹は、今でも、無数の虫が襲ってくると恐怖に叫ぶ。
幽霊や化け物に殺されるとベランダから飛び降りようとする。
笑顔の直後に、いきなり泣き始め、髪を振り乱す。
精神は安定せず、体は痩せ細っていく。
アメリカで、この禁断症状を直す薬が開発されたと聞いた。
ただ、治すためには1億円が必要。
だから、私は、なんとしても1億円を稼がなければならない。
私だけが日本にいて普通の暮らしをしているなんて許されない。
私は、当時、一人の生活が永遠に続けばいいなんて考えていた。
もしかしたら、そんな不謹慎なことを思った報いなのかもしれない。
だから、私は妹を必ず、普通の生活ができるようにする。
そのために、どんなことをしても1億円を手にいれる。
依頼主から次のターゲットとされたのはIT会社。
セキュリティ対策のアプリ、ソフトウェアを展開している。
セキュリティは攻める方と守る方でイタチごっこ。
だから、相手の情報を取得できれば、今の戦いには勝てる。
あっという間に次の戦いに入ってしまうけど、負けるわけにはいかない。
でも、この会社はすごいと思わせれば当面は優位に立てる。
それだけでも莫大なお金を稼げるから、私に依頼が来ている。
今回は、この会社が画期的なロジックを開発したと発表した。
それを泳がせ、適用したらすぐに、そのロジックを破る。
この会社のブランドはボロボロ。
そういう作戦みたい。
そのロジックは、特殊エリアにあるサーバーに格納されている。
サーバーは、ネットには繋がれていない。
その特殊エリア内でしかサーバーにアクセスできない。
外からネットを通じてシステムに侵入できない。
このビルに入らないと絶対にアクセスできないということ。
だから、これまで情報が漏洩したことがない。
このことを、この会社は売りにしてきた。
でも、ITシステムには必ず欠点がある。
例えば、そのエリアに入るには生体認証が必要。
でも、そのデータは必ずどこかで管理されている。
それを膜にして手に付ければ生体認証はクリアできる。
よく映画とかだと、手を切ったり、目の玉をくり抜いて使う。
でも、そんな怖いことはしない。
情報を盗むために、そこまでの犯罪は釣り合わない。
あとは、エリア内の端末のアクセスコードとファイルのありか。
そして、そのファイルのPW。
そのぐらいがあれば十分。
ファイルのコピーができれば最高。
できなくても、画面をカメラで撮影する。
そこに導ければ私の仕事は完了。
今回は、どうしようかしら。
トイレの清掃員が、特殊エリアに入るなんて無理。
社員になりすましてバレたら捕まる。
だから、まずは特殊エリアに入れる生体認証データを管理する人を探す。
そして、その人の弱みを握り、脅して情報を取得する。
全体を管理しているような人じゃなくて下っ端がいい。
そんな人は、ちょっとした脅しでビクビクする。
特殊エリアがあるフロアのトイレ清掃員となった。
今は、こんな仕事、人気ないから簡単に潜り込める。
トイレ清掃員なんて、この人でないとできないという仕事でもない。
誰からもバカにされている仕事だから疑われることもない。
1週間ぐらい経った頃、狙っている情報が入ってきた。
「三木さ、来週、この会社の専務がこの特殊エリアを視察に来るんだって。1ヶ月ぐらい前に銀行から来た役員で、この会社を紹介することになったらしい。だから、早急に専務が入場できるように生体認証の手続きを進めて欲しい。管理本部長は、鉄壁な管理をアピールしたいんだとさ。」
「わかった。来週っていったって、今日は金曜日じゃないか。早くしないと。まあ、俺たちのボスは管理本部長だからな。ゴマをすっておかないと。」
「よろしくな。ところで、この商売って、本当にヤクザな仕事だよな。陰で、ウィルスをばら撒いて、危ないと言ってセキュリティソフトを売る。自作自演というか、みんな騙されて、うちの会社がボロ儲けをする。しかも、うちがばら撒いたウィルスだから、駆除の方法は熟知していて、セキュリティソフトはすぐにできる。本当に良くできた詐欺というか、ビジネスというか。」
「そんなこと言うなよ。俺たちは、それで給料もらっているんだから。」
「まあ、そうなんだけど。」
いつものことだけど、このトイレに私は存在していない。
最初はビクビクだったけど、今は、慣れてしまった。
まるで幽霊のよう。
でも、この会社は、人を騙しているんだ。
この仕事の依頼が来たときには少し悩んでいた。
人のために事業している会社にダメージを及ぼすことを。
でも、そんなことは杞憂だったことが分かる。
こんな詐欺会社、この世の中から排除しないと。
その後、しばらく、この三木という男をマークする。
「課長、今度、この会社に誘いたい人がいるんですよ。技術レベルが高くて、昔、一緒に仕事していて協調性もある人なんです。今週の水曜日に、夕食を一緒にするんですが、経費で出してもらっていいですよね。」
「そうか。いつも、三木は優秀な人とのリレーションが豊富だな。ぜひ、お願いするよ。」
「ありがとうございます。期待していてください。」
どうも、リファーラル採用のために交際費を使っているみたい。
また、その日の夕方に廊下の陰で電話している姿も見かける。
「凛、今週の水曜日、高級レストラン、予約できたんだ。一緒に行こうよ。空いてるだろう。わかった。じゃあ、18時に、帝国ホテルのロビーで待ってるね。楽しみにしている。」
あれ、彼女と会社の経費でデートなのかしら。
翌日の朝には、最近、三木さんの誘いで入社した2人がトイレで話していた。
「お前も三木さんの誘いで入ったのか? 俺もだよ。でも、三木さん、居酒屋で奢ってもらって、久しぶりに楽しかったというか、盛り上がってさ。」
「先輩もですか。あの、白木屋ですよね。」
「そうそう。」
「僕も、盛り上がって楽しかったですよ。この会社、とってもアットホームだなって思って転職したんです。」
どうも、会社の経費で高いレストランに彼女と一緒に行く。
彼女は金持ちの男だと好きになる。
他社から引き抜く人とは安い居酒屋で自腹で奢る。
後輩は自腹で奢られたと慕う。
こういうことなのだと思う。
なかなか練られた作戦じゃない。
やはり、悪徳会社にはゲスな社員が大勢住みつくもの。
今回の高いレストランと居酒屋は尾行して突き止める。
そして、後日、領収書を忘れたからと言って領収書をもらう。
断るお店では、クレジットカード明細の写真を撮った。
依頼主の調べでは、三木さんは、サラ金に多額の借金がある。
今どきの大企業では問題にされる金額。
金曜日にトイレを出た三木さんの後ろにメモを落とす。
あなたの不正を知っていますと書かれたメモを。
さらに、その下にレストランと居酒屋の名前を書いておいた。
利用した日付、金額や、サラ金の情報も。
「すみません。メモみたいものを落としましたよ。」
「僕のじゃないと思いますが・・・。」
「いえ、今お持ちのノートから落ちるのを見ましたけど。」
彼は、メモを見た途端、真っ青になった。
これで脅すことで、生体認証を突破できる。
彼を通じて、特殊エリア内の各種情報は入手できるはず。
私は、依頼主に、一連の情報を提供する。
依頼主は、暴力団を使って彼を脅すと言っていた。
情報を出さないと、上司に不正をバラす。
しかも、生きていられるかわからないって。
私の仕事はここまでで十分。
今回は、依頼主は、このIT会社を脅したらしい。
こんな情報が出回るより、金を出して揉み消した方がいいでしょうって。
依頼主は、これで、たんまり金をゲットしたと聞いた。
だから、私もお金を弾んでもらって500万円をゲットする。
1週間分の収入としては期待以上。
今夜は、妹の世話を家政婦にお願いし、一人で外食に出かけていた。
気晴らしというよりも、これも情報収集の仕事。
富裕層の人達が何を話しているのかを聞いて、仕事の機会を探る。
だから、レストラン代、洋服代等は依頼主が支払ってくれる。
高級ブランドを身につけ、高級レストランに入った。
スリットが入った真紅のチャイナドレスを身に纏う。
私の抜群なスタイルを大胆に見せつけるのは気持ちがいい。
特に、日頃は清掃員の地味な制服でいるから。
誰からも気づかれない生活とは真逆の世界。
依頼主から借りたハイブランドのネックレス、イヤリングもつける。
日常的に、こんなレストランで夕食をとる上級国民だと誰もが思うはず。
年に4回ぐらいだけど、いつも来ている雰囲気を醸し出す。
依頼主からは、男もつけるかと聞かれるけど、断っている。
無駄なお金を使うのが嫌なわけではない。男が不要なだけ。
1人で食事なんて寂しいと思う人もいるようだけど、そんなことはない。
くだらない男の話しを聞きながら、笑顔で相槌を打つなんて時間の無駄。
1人の方がお料理の味をしっかり味わえる。
ワインも1人の方が楽しめる。
最近、1人が好きな女が増えているのも、よく分かる。
今どき、男なんかに頼らなくても楽しく生きていけるから。
戦争とかがあると腕力とかが重要になる。
でも、今は、男が女に勝てることは何一つない。
男は子供を産めないし。女は、精子を買って子供を産める。
重いものだって、機械で運ぶこともできる。
自動車に乗れば、どんな足が速い男よりも早く進める。
でも一人になると、妹のことを考えてしまう自分がいた。
今頃、隔離された部屋で、健やかに眠っているかしら。
中米で、不衛生な部屋に閉じ込められて不安だったでしょう。
見知らぬ男達のおもちゃにされて悔しかったでしょう。
貧しい国では、未だに女は男に虐げられている。
妹も、その被害者になってしまった。
私は、そんな妹を助けることができなかった。
私は、女を虐げる男達に復讐をしたい。
妹をこんなに苦しめた報いを与えたい。
女を大切にしない男なんて、この世の中から消えてしまえばいい。
今回も、数人だけど男達を失脚させてやった。
IT会社の管理本部長やあの下っ端の社員はクビになったらしい。
セキュリティ会社の情報を漏洩した責任を取らされて。
どこも雇ってもらえなくて、今は公園でホームレスになっているとか。
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