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第9話
しおりを挟む9 アガルタの街、兵士グレイ
人の足で歩いて約半日程の距離だと思われる。
俺の場合は小一時間くらいで、アガルタの街が見えて来た。
要は、走った。
基本身体能力上昇(大)の効果と、脚力上昇(小)も併さり、馬並の速さで走れた。
また改めて、管理者の加護というスキルの凄さを思い知る形となった。
アガルタの街は俺が想像していたより大きな街だった。
遠くから見ても大きな街だとわかる程、石造建築のグレー色が目に飛び込んで来た。
アガルタの街に続く街道もいつの間にか石畳に変わっていて、街道の周りには麦畑や、綿畑が広がり農作業に従事する者達が、チラホラと街道を歩いていた。
「良い天気だねぇ」
「こんにちわ」
そんなたわいも無い挨拶が飛び交う。
街が近づくにつれて、最初に驚いたのはアガルタの街の城門だ。
高さ10メートルくらいはあるだろうか?
木製のシッカリとした扉に、石を積み上げて築き上げた城壁。
その城壁はアガルタの街をグルリと取り囲んでいるようだ。
随分と堅牢な造りに思える。
城門には門番の兵士が立っていて、身分証の提示を求めて来た。
身分証…。
やっぱり必要だったか。
肩掛け袋の中には、
顔写真付きの冒険者の証が入ってはいたが、俺のモノでは無い。
ちなみに他に入っていた物は、パンと干し肉、水筒、その他薬草と思われる草の瓶詰め、あとは硬貨が入った袋財布だった。
袋財布の中には、金貨が3枚と銀貨が10枚と銅貨が8枚入ってはいたが、それがどれだけの価値かはわからない。
「身分証は??」
門番の兵士がむんずと詰め寄ってくる。
長身でそれなりにの威圧感。
距離がヤケに近くて、少し後ずさった。
ここはとりあえず心読を使わせてもらおう。
門番の兵士、あんた今、何を考えている?
聞かせてもらおうか。
心読!!
(ヤバっめっちゃ可愛いなぁ)
(それにしても可愛いなぁ)
(本物の獣人かな?珍しいな)
(もうちょっと近くで見たいんだけど)
(あんまり近寄り過ぎると変に思われるかな?)
(旅をしてるのかな?名前知りたいな)
(アガルタの街には何日か滞在するのかな?)
(1回でいいからヤらしてくれないかな……)
「だーーーー!!」
つい大声が出てしまった。
「なんだ?どうした?」と兵士は不思議がり顔を更に近付けて来た。
そんな兵士の顔を見て、ちょっと不細工だなコイツと思いながら俺は小声で言う。
「ねぇ、兵士さん視線がさ、エロいよ」
兵士は顔を赤くして、俺から離れようとしたが、俺は右手で兵士の肩を掴んだ。
使えるモノは使わしてもらう。
「私さ、旅をしてて、身分証落としちゃったんだよねぇ。
だけど、ここ通してくれないかなぁ?
今夜の食事、お兄さんと一緒にしたいなぁ。なんて?
ダメかなぁ?」
兵士は少し考え、通っていいぞっと小声で言った。
「わぁありがとう。私の名前はケミロウって言います」
「お兄さんの名前は?」
「グレイだ」
無事に城門を通り抜けて目の前に広がったアガルタの街は、俺が想像していた通りの街並みだった。
中世ヨーロッパを彷彿させる石造建築と、レンガ造りの家々。
やはり、それ程文明が発達しているとは思えない。
街行く人達の中には、耳の長いエルフ族や、肩幅の割には背が低くて団子鼻が特徴的なドワーフ族、大きな耳に小人くらいの身長のホビット達もチラホラと見かける。
これじゃあ本当にゲームの中の世界だな。
昔やり込んだRPGの世界に重ね合わせていた。
こういうどうでもいい事は覚えているのに、俺という人間を思い出す事は出来ない。
なんだか、心にポカンと穴が開いた気分だ。
ただ、前世?というべきなのか?
前世の俺を思い出したところで、躊躇する事無く人を殺せる人間だ。
人を3人殺しておいて罪悪感も湧いて来ない。
どうせロクな人間では無かったのだと思う。
少し重たい気分になったが、今を生きて行こうと思い直した。
先ずは、兵士グレイに教えてもらった宿を探す事だ。
アガルタの街の中心には大きな建物があり、グレイが言うにはその建物の斜向かいに[家鴨達の宿]という宿屋があるという事だった。
なんでも安くて、朝食も付いていると人気の宿だと言う事だ。
街の中心に大きな建物……建物、建物と、城門から伸びるメインストリートを歩いて行く。
街行く人達の視線を感じながら、俺が足を止めたのは、メインストリートの装飾品店だ。
装飾品店の大きなガラス窓に、映っていた。
俺の姿が。
コレが俺?
か?
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