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第13話
しおりを挟む13 グレイとの夕食にて
今日1日の疲れ+心読スキルの多用+4杯目の赤ワインが効いており、フワフワとした感じが背中を襲った。
あっちょっとやばいかも…
スキルを使うのはコレで最後にしよう。
見れば体力ゲージも結構減っている。
身体も顔もポッポッと熱って、きっと、真っ赤な顔をしているんだろうな。
早く宿に帰って寝なくちゃ。
以上。
一方、心読スキルの効果は変わらずに、
兵士グレイの心の声を、私の頭に流し込んで来た。
(何か知ってるなら教えて欲しいけどな)
(ほんの些細な事でもいいんだ)
(街道ですれ違ったとか、どんな様子だったとか)
(北に抜ける街道は、森へと続く道とエフォーレの村に繋がる道と別れているが、森への道は現在閉鎖中。なら、彼女はエフォーレ方面から来たと思うが…)
(アガルタに着いた時間から考えると、何処かですれ違っている筈なんだ)
(明日、捜索隊がギルドから出ると言っていた)
(ゴブリンの群れに襲われて無いと良いんだが)
ふぅ……。
一旦は安心。胸を撫で下ろす。
「馬車かぁ~すれ違ったような…無いような…私って、結構ぼけ~っとしてるから」
当たり障りの無い返事。
それから、さりげなく質問。
「でもさぁ、野盗とか盗賊とか…そういう人達に襲われたかもしれないよね?」
「まぁそれならそれでいいんだ。問題はゴブリンかどうかって事だよ」
え?それならそれでいい……?
どういう事なんだろ?
「え?いいの?」私はグレイに再度質問をした。
グレイは手に持ったグラスをくるくると回して答えてくれた。
「冒険者なんて、野盗崩れの連中達さ。
そりゃ結局な、自分の命を賭けて金を儲けてる奴等だ。
いつ死んだって、誰も文句は言えないって事さ」
グレイはグラスのワインをグイッと飲み干す。
「実際、冒険者なんて、俺達兵士からしたら都合の良い捨て駒で。まぁ御者は別としても、彼等が勝手に争って死んだんだったら、それを捌く法律なんてもんはこの街には無いしな。
無いんだよな。
まぁ、それを言ったところでだ。
それより、問題なのは彼等がゴブリンにヤられたかどうかって事だよ」
「ゴブリンだったらまずい……」
グレイは私の目を見て来る。
ジーーっと見つめ合った。
やっぱり不細工だな…私のタイプじゃ無い。
どんな不細工なのかなんて説明したく無いからしないけど、不細工なものは不細工だ。
だけれど彼は優男。
私の質問にはしっかりと答えてくれている。
そういうところ、下心抱えても、しっかりとした対応力は彼がこの街の兵士だから?
それとも、
なんだろう…
「今朝この街を発った冒険者は、一応この街で有名な奴等だったからな。
アイツらがヤられたってなると、いよいよ民間のギルドじゃ手がつけられ無いって事になる」
「そうなると、まずいんだよ」
「何が?」
カウンター席の横に座るグレイ。
私はグレイに向かって首を傾げる。
「…あぁ、もうダメだ」
グレイは頭を掻きむしった。
短髪の髪がモシャモシャと逆だった。
「可愛いな!!可愛い!!君は可愛いよ。だから大丈夫!!俺はこの街の兵士だ!!もう我慢出来ない!!」
「俺の家に来いよ!!」
グレイはドンッとカウンターに手を付き乗り出して私に迫って来た。
はい!豹変。
さようなら~
「ごめんね。それはちょっと…」
「今夜はありがとうね。宿に戻るね」
私はグレイに感謝を込めて別れを告げた。
それでも諦め切れない彼はしつこく誘って来る。
ギュッと肩を掴まれ、グイッと抱きしめてきた。
「ねぇ!」
「お願い!良いじゃん?」
「今夜だけでもいいからさ」
耳元で囁いて来る。
本当に、本当に、本当に、気持ちが悪い。
力づくで振り解いても良かったけれど、彼のプライドも傷付くだろうし、彼はこの街の兵士。無碍にする相手じゃない。
「離してくれませんか?」
「キモいんですけど?」
決め手の一言。
グレイはガックリと肩を落として、私を離し、言葉を失う。
グレイあなたは優しいけれど、不細工だし、我慢も出来ないなんて最低ね。
お洒落なお店に。
美味しいご飯。
美味しいお酒。
ご馳走様。
次は無いかな。
一人、宿に戻り、お風呂も入らずベットの中に潜り込む。
今日は疲れたよ。
それでも、グレイの話は私を安心させてくれた。
あぁ良かった…それは保身の為?
それとも自分では気付いていない罪悪感の為?
人を3人も殺したんだ…
ブスって胸を刺した感覚。
グリっと剣で頭も貫いた時の感触が手に蘇って来て、ベットの中で自分の右手を見つめてみる。
この手が殺した。
この手が…
明日は……
そうだ!
明日はやる事がいっぱいあるから。
寝よう。もう寝ようよ。
グッと強く目を閉じた。
なかなか寝ようとしても、寝付けずに、ゴロゴロとベットを行ったり来たり。
だけど、気付いた時には寝ているだろう。
そして、目が覚めてもきっと、
うん。
元いた世界には戻ない気がする。
私の現実は?
もうこの世界セミファスなのだろう。
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