ちょっとハッとする話

女と怪鳥

女は海辺に佇んでいた。

女は街の皆に醜いだと罵られ、いつも1人だった。

女は自分の顔が嫌いで嫌いで嘆いていた。

女はいつか皆を見返してやろうと思い、そして女は神様にお願いしたんです。

「どうか神様お願いします。私のこの醜い顔を美しくして下さい」

すると、何と言う事でしょうか。先程まで曇っていた空が割れて、巨躯の怪鳥が空から降りて来た訳です。

「女、美しくなりたいとはどう言う事だ？」

「見てください。この醜い顔を……私はこの顔のせいで誰からも相手にされません」

人の顔を持つ怪鳥は、女の周りをぐるりと一周すると、女の正面で止まり、顔を近づけて来る。

女は思ったんですよ。こんな顔になりたいって。



怪鳥は今日も何か物足りなかった。

怪鳥は人の恐怖を楽しんでいたが、人々はイマイチ怖がってくれなかった。

怪鳥は美しい自分の顔が嫌いで嫌いで嘆いていた。
すると導かれる様に、女の前に辿り着いたと言う訳です。

怪鳥は思ったんです。こんな顔になりたいって。

2人羽は思ったんです。こんな顔になりたいって。

『女.怪鳥、私と顔を交換しましょう』

『神様どうか2人羽(私達)の顔を交換して下さい』

女は怪鳥の顔になった。それはそれは美しい誰もが振り向く様な美人だとか。女は天狗になり、街の人達を見下し、罵り、馬鹿にし始めたっていうじゃないか。それでもその美貌はこの国の王様の耳にまで届き、女はお城に招待されたって訳。

一方。

怪鳥は女の顔になった。それはそれは醜い顔で誰もが驚く様な顔だとか。怪鳥は面白かった。人々が自分を見て怖がり、驚き、逃げ惑う姿が。その噂は王様の耳にまで入り、遂には兵士達に捕獲されてしまったって訳。

招待されて、捕獲されて、お城に向かう道すがら。2人羽を乗せた馬車は並走して走る。

「女……この顔は面白かったぞ。やっと化け物らしい最後を迎えられそうだ」

走る馬車の中で怪鳥が思いを馳せ１羽呟いたそうな。

「怪鳥……この顔のおかげで私はお城に招待されたわ」

走る馬車の中で女は誇らしげに1人呟いたそうな。

2人羽を乗せた２台の馬車が城に向かってひた走る。
そこで待ち受けるのは、栄光か、挫折か、それとも死か……

１つだけ言える事は、顔が変われば、性格も、人生も、寿命でさえも変わってしまうって事。