19 / 90
今日から私は(前編)
しおりを挟む
今日も聞こえて来る……
「ごめんなさい。ごめんなさい。お母さんごめんなさい……」
「何であんたって子はこんな事も出来ないの!!」
「ごめんなさい。ごめんなさい。お母さんごめんなさい……」
「………………」
「叩かないで………痛い……やめて……」
「泣くんじゃないよ!!」
「やめて……お願い……叩かないで……」
隣の部屋(家)から毎晩の様に聞こえて来る虐待の実態。
私は何度も児童相談所に連絡してたが、そこは名前だけの機関なのか?私の声には耳を貸してくれなかった。
最初はそう……桜が綺麗に咲いていたっけ。
私が夕飯の買い出しに近くのスーパーに行った帰り道。
散り行く花弁の向こうに、隣の僕が公園の砂場で遊んでいるのを見つけた。
私は暫しの間公園のベンチに座って彼が遊んでいるのを見ていたが、いつしか声をかけていた。
「僕1人で遊んでるの?」
「………………」
「おばさんねーー僕のお家の隣に住んでるの、知ってた?」
「………………」
「これなぁに?」
私は彼が一生懸命にコネコネしている砂の玉を指さして聞いてみた。
「………………」
彼は一生懸命にコネコネしている。
うーーんと私が考え込んでいると、
「………お母さんに知らない人と喋っちゃダメって……怒られるから……」
とボソリッ
「そっかぁじゃあ自己紹介しなきゃね。私はチカって言います。僕のお名前は?」
「………ゆうと………」
「そっかそっか!!ゆうと君かぁ!!これでもう知らない人じゃ無くなったね」
「そうなの?」
彼は手を止めて、つぶらな瞳をこちらに向けて来る。
「そうだよーーだってもう名前を知ってるんだもん。君はゆうと君。私は?」
「……ちかちゃん?……」
「正解!!じゃあそのお団子はなぁに?」
「お団子なんかじゃないや!!最強の玉だ!!」
「最強??強そうだねーーじゃあおばさんも作ろっかな!最強の玉」
確か最初はこんな感じだったと思う。もう少し警戒してたかもな。
それからは彼が1人で遊んでいる所を見つける度に私は彼に声をかけ、泥遊びや、ブランコ、滑り台、鉄棒何でもやった。
一緒に笑い、一緒に泥だらけになり、怒られちゃいけないと同じ様な服を買ってきたりもした。
38歳の独身女性からしてみれば、彼はとても純粋でとても素直でとても可愛かった。
彼の母親は何故彼を叱りつけるのだろうか?彼が何か悪さでもするというか?これ程素直で聞き分けのいい彼が……しかも体罰まで加えて……私には不思議でならなかった。
道路の街路樹から蝉の声が聞こえて来る頃。私は今一度児童相談所に相談してみたが、結果は変わららずじまいの要観察。親権とは一体何なのだろうか?行政とは何をやってる所なのだろうか?私の中の不満は溜まる一方だ。
「ピーーポーー、ピーーポーー」
深夜の静まり返った住宅街を一台の救急車が近づいて来る。何だか嫌な予感がした。
「ごめんなさい。ごめんなさい。お母さんごめんなさい……」
「何であんたって子はこんな事も出来ないの!!」
「ごめんなさい。ごめんなさい。お母さんごめんなさい……」
「………………」
「叩かないで………痛い……やめて……」
「泣くんじゃないよ!!」
「やめて……お願い……叩かないで……」
隣の部屋(家)から毎晩の様に聞こえて来る虐待の実態。
私は何度も児童相談所に連絡してたが、そこは名前だけの機関なのか?私の声には耳を貸してくれなかった。
最初はそう……桜が綺麗に咲いていたっけ。
私が夕飯の買い出しに近くのスーパーに行った帰り道。
散り行く花弁の向こうに、隣の僕が公園の砂場で遊んでいるのを見つけた。
私は暫しの間公園のベンチに座って彼が遊んでいるのを見ていたが、いつしか声をかけていた。
「僕1人で遊んでるの?」
「………………」
「おばさんねーー僕のお家の隣に住んでるの、知ってた?」
「………………」
「これなぁに?」
私は彼が一生懸命にコネコネしている砂の玉を指さして聞いてみた。
「………………」
彼は一生懸命にコネコネしている。
うーーんと私が考え込んでいると、
「………お母さんに知らない人と喋っちゃダメって……怒られるから……」
とボソリッ
「そっかぁじゃあ自己紹介しなきゃね。私はチカって言います。僕のお名前は?」
「………ゆうと………」
「そっかそっか!!ゆうと君かぁ!!これでもう知らない人じゃ無くなったね」
「そうなの?」
彼は手を止めて、つぶらな瞳をこちらに向けて来る。
「そうだよーーだってもう名前を知ってるんだもん。君はゆうと君。私は?」
「……ちかちゃん?……」
「正解!!じゃあそのお団子はなぁに?」
「お団子なんかじゃないや!!最強の玉だ!!」
「最強??強そうだねーーじゃあおばさんも作ろっかな!最強の玉」
確か最初はこんな感じだったと思う。もう少し警戒してたかもな。
それからは彼が1人で遊んでいる所を見つける度に私は彼に声をかけ、泥遊びや、ブランコ、滑り台、鉄棒何でもやった。
一緒に笑い、一緒に泥だらけになり、怒られちゃいけないと同じ様な服を買ってきたりもした。
38歳の独身女性からしてみれば、彼はとても純粋でとても素直でとても可愛かった。
彼の母親は何故彼を叱りつけるのだろうか?彼が何か悪さでもするというか?これ程素直で聞き分けのいい彼が……しかも体罰まで加えて……私には不思議でならなかった。
道路の街路樹から蝉の声が聞こえて来る頃。私は今一度児童相談所に相談してみたが、結果は変わららずじまいの要観察。親権とは一体何なのだろうか?行政とは何をやってる所なのだろうか?私の中の不満は溜まる一方だ。
「ピーーポーー、ピーーポーー」
深夜の静まり返った住宅街を一台の救急車が近づいて来る。何だか嫌な予感がした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる