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仲良くなるべく声をかけた目の前のハムスターの様な可愛らしい女の子は、大きな目を更に見開きサーシャを見つめている。
(………どうしたのかしら?私、変な事をした?)
笑顔を浮かべながら、頭の中で必死に考える。そうして、ある事に気が付いた。
(私、落ちてるマカロンを拾っちゃった…!)
前世では、落ちた物は拾って捨てる。それが当たり前だったが、今世のサーシャは侯爵令嬢だ。貴族は、落ちた物を自身で拾わない。側に控える使用人に全てを任せるのだ。
貴族の世界には、『3秒ルール』などと言う庶民の謎のルールは無い。
それなのに、前世の感覚で落ちているマカロンを拾ってしまった。側から見れば、礼儀作法のなっていないと思われる行為だ。
(あーあ、やっちゃったなぁ。普段から気を付ける様にしてたんだけど…)
やはり、長年染み付いた感覚は中々抜けないと再認識しながらも、表面上はなんて事ない様に振る舞いながらマカロンを側にあるお菓子の並ぶテーブルの端に置く。此処におけば、直ぐに支給係の者が片付けてくれるだろう(勿体ないが)。
「私ったら、名乗らずに失礼しました。私、アベルシュタイン家が娘、サーシャ・アベルシュタインと言います」
「あっ!わ、私はトールディン公爵が娘、ティミア・トールディンと言いますっ!」
「まぁ、トールディン公爵家の…。先に話しかけた無礼、お許し下さい」
そう言って、サーシャはティミアに頭を下げる。本来、身分の高い者に身分の低い者が先に話しかけるのは失礼に値する。下手をしたら、不敬罪で訴えられる事もあるのだ。
「そ、そんな!頭を上げて下さい!きょ、今日は、身分関係のない集まりです!だ、だから頭を上げて下さい!」
そう言って頭を上げさせようとするティミアに、サーシャは「おや?」と疑問に思った。
此処に集まっているのは、5歳~7歳程の子供達だ。前世で言えば、幼稚園の年中組から小学一年生程の年齢の子供達の集まりだ。貴族としての教育を受けているとは言え、難しい事柄まで真に理解するのは難しいだろう。それなのに、目の前の少女は本当に物事を理解して話している様に感じた。
ーーそう、まるで前世の記憶のあるサーシャの様に。
だから、サーシャはある言葉を口にした。この世界に生まれてからは、一度も口にしたことのない言葉を。
「『こんにちは』」
懐かしい、もはや遠い記憶の中の二度と行く事は出来ない、もう一つの故郷の言葉。
この世界では馴染みの無い音を聴いて、目の前の少女は驚愕の表情を浮かべた。
「ど、どうして…」
その言葉を聞いて、サーシャは確信した。
彼女も、サーシャと同じ転生者だと。
(………どうしたのかしら?私、変な事をした?)
笑顔を浮かべながら、頭の中で必死に考える。そうして、ある事に気が付いた。
(私、落ちてるマカロンを拾っちゃった…!)
前世では、落ちた物は拾って捨てる。それが当たり前だったが、今世のサーシャは侯爵令嬢だ。貴族は、落ちた物を自身で拾わない。側に控える使用人に全てを任せるのだ。
貴族の世界には、『3秒ルール』などと言う庶民の謎のルールは無い。
それなのに、前世の感覚で落ちているマカロンを拾ってしまった。側から見れば、礼儀作法のなっていないと思われる行為だ。
(あーあ、やっちゃったなぁ。普段から気を付ける様にしてたんだけど…)
やはり、長年染み付いた感覚は中々抜けないと再認識しながらも、表面上はなんて事ない様に振る舞いながらマカロンを側にあるお菓子の並ぶテーブルの端に置く。此処におけば、直ぐに支給係の者が片付けてくれるだろう(勿体ないが)。
「私ったら、名乗らずに失礼しました。私、アベルシュタイン家が娘、サーシャ・アベルシュタインと言います」
「あっ!わ、私はトールディン公爵が娘、ティミア・トールディンと言いますっ!」
「まぁ、トールディン公爵家の…。先に話しかけた無礼、お許し下さい」
そう言って、サーシャはティミアに頭を下げる。本来、身分の高い者に身分の低い者が先に話しかけるのは失礼に値する。下手をしたら、不敬罪で訴えられる事もあるのだ。
「そ、そんな!頭を上げて下さい!きょ、今日は、身分関係のない集まりです!だ、だから頭を上げて下さい!」
そう言って頭を上げさせようとするティミアに、サーシャは「おや?」と疑問に思った。
此処に集まっているのは、5歳~7歳程の子供達だ。前世で言えば、幼稚園の年中組から小学一年生程の年齢の子供達の集まりだ。貴族としての教育を受けているとは言え、難しい事柄まで真に理解するのは難しいだろう。それなのに、目の前の少女は本当に物事を理解して話している様に感じた。
ーーそう、まるで前世の記憶のあるサーシャの様に。
だから、サーシャはある言葉を口にした。この世界に生まれてからは、一度も口にしたことのない言葉を。
「『こんにちは』」
懐かしい、もはや遠い記憶の中の二度と行く事は出来ない、もう一つの故郷の言葉。
この世界では馴染みの無い音を聴いて、目の前の少女は驚愕の表情を浮かべた。
「ど、どうして…」
その言葉を聞いて、サーシャは確信した。
彼女も、サーシャと同じ転生者だと。
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