極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

文字の大きさ
45 / 105

No.44

しおりを挟む
「では、応接室にご案内いたします。どうぞ、此方へ。セバスチャン、子供達は別室で待機させてくれ。私は、殿下方を案内する」
「かしこまりました」

挨拶を終えたダリルは、子供達を執事長セバスチャンに任せて、クリス達を自ら応接室に案内する。
豪華で品のある応接室には、何人もの使用人達が既に待機していた。

「殿下方は、こちらにお座りください」

そう言って、ダリルは自身の目の前の三人掛けのソファーを示す。そうして、自身は妻ミランダと共に二人掛けのソファーに。クリス達は、その声に従いソファーに腰を下ろす。クリス達が座ると、壁に控えていた使用人が直ぐに紅茶を入れる。

「流石、アベルシュタイン家の使用人ですね。無駄が一つもない」

ルイスが、感心した様に呟く。

「本当に。城の使用人達と大差ないよ」

そう言って、クリスは紅茶の香りを楽しんでから一口飲む。一番身分の高いクリスが先に紅茶を飲んだのを確認してから、ルイスも紅茶を口にする。

「………これは、ローズマリーですか?」
「あら、ルイスさんは紅茶にお詳しいのね。ルイスさんの言う通り、この紅茶はローズマリーですわ」

ルイスの言葉に、ミランダが嬉しそうに答える。

「この紅茶は、隣国の孤児院の子供達が育て広めた事が有名ですよね。母がとても驚いていました」
「えぇ。芳醇なバラの香りに、ほんのりとした甘み…。初めて飲んだ時は、とても驚きましたわ。今では、1番のお気に入りの紅茶なの」

ミランダの話を聞きながら、ルイスはもう一口飲む。

「………しかし、この紅茶は未だ生産量が少なく、非常に入手が困難だと聞きます。よく、手に入れる事が出来ましたね」
「ふふっ。私の為に、夫が自身のツテを使って手に入れてくれたんです」

そう言って、ミランダはソッとダリルの手を握る。ダリルは、甘い雰囲気を出しながら手を握り返す。

「本当に、お二人は仲が良いですね。私も、将来結婚する相手とその様な関係になれればと思います」

クリスの言葉に、ルイスは反応する。
「結婚以前に、殿下には婚約者が居ないじゃないですか」
「未だ、心奪われる人に出会えて居ないからね。………まぁ、先程お会いしたサーシャ嬢はとても美しく目を惹かれたけれどね」

その瞬間。
甘い雰囲気を一変させ、ダリルが冷たい仮面の様な笑みを浮かべてハッキリと言った。

「私の娘は絶対に、何があっても渡しません」

その瞬間、ダリルもアランと同じく娘であるサーシャを溺愛している事を確信した二人であった。






しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...