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No.69
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ティミアの見舞いに行った日から1ヶ月が経った。その間、アベルシュタイン家はいつにも増してバタバタしていて、本日は久し振りにゆっくりと出来る一日だった。
「疲れた~」
そう言いながら、サーシャはベッドに勢い良くダイブする。そんな貴族の令嬢らしからぬ行動を、専属メイドのリラが注意する。
「サーシャ様、ご令嬢がベッドに勢い良くダイブなんてしないで下さい」
「今日くらい許してよ。だって、最近は特に忙しくてゆっくり出来なかったんだから…」
10歳と年上だか、誰よりも側にいて歳の近い自身の専属メイドである彼女の事を、サーシャはとても慕っていた。
「それは仕方ないですよ。1週間後には、サーシャ様の6歳のお誕生日なんですから」
そう、何故これ程までに屋敷内がバタバタしているかと言うと、サーシャの6歳の誕生日が迫っているからだった。
サーシャ本人は、親しい人達だけで祝うだけでいいと思っている。だが、そんな事は貴族の娘として許されない。まして、そこそこの地位にいるアベルシュタイン家だ。当日には、アベルシュタイン家と関係のある多くの貴族を招待しなければならない。
「別に、こじんまりした感じでいいのに…」
そうすれば、これ程までに忙しくなる事は無かった。何よりーー。
「一体、何着ドレスを仕立てるつもりなの…?」
招待客への招待状や会場の準備などは、全て両親や使用人達がやってくれる。それなのに、何故これ程までにサーシャが疲れているのか。それは、当日のサーシャが着るドレスのせいだ。
最初は、明るくふんわりとしたグリーンのドレスの予定だった。採寸も滞りなく終わり、後は仕立てるだけの筈だったのだ。
ーーしかし、サーシャの余りにも美しいその姿を見て、仕立て屋の女主人の職人魂に火が付いてしまったのだ。
『お嬢様は、私の女神ですわ!お嬢様を見ていると、湯水の如く様々なデザインが浮かんできますの!』
そして、その言葉に感化されたミランダと王都一の仕立て屋マダムクラリスが、ああでも無いこうでも無いと言いながらサーシャを着せ替え人形の如く扱ったのだ。
「流石に、一日二十着のドレスを着せられた時は死ぬかと思った…」
「ですが、その頑張りのお陰で漸く奥様達が満足いくドレスを作る事が出来るのです。どうやら、当日のドレスとは別に、十着は作る事が決まった様ですよ」
「いやいや、二着で十分でしょ…」
ドレス一着でも、それなりの値段になるのだ。
本来なら、当主であるダリルが「いくら何でも作り過ぎだ」と注意するべきなのだ。
ーーしかし、現状は。
***
『このデザイン、全て最高だ!天使のサーシャの魅力を最大限に引き出す事が出来る、素晴らしいデザインのドレスだ!マダムクラリス、金に糸目は付けない。素晴らしい物を作ってくれ』
『勿論ですわ。お嬢様に似合う最高の物を、このクラリスの名にかけて作って見せますわ』
***
(いくら何でも、親馬鹿すぎる…!)
前世で成人した分別ある大人の記憶があるサーシャだからよかったものの、前世でまだ子供だったり記憶のない普通の子供だったら、目も当てられない我がまま娘が出来上がっていただろう。
そしていつの日か、取り返しの付かない過ちを犯していただろうと考えるサーシャであった。
「疲れた~」
そう言いながら、サーシャはベッドに勢い良くダイブする。そんな貴族の令嬢らしからぬ行動を、専属メイドのリラが注意する。
「サーシャ様、ご令嬢がベッドに勢い良くダイブなんてしないで下さい」
「今日くらい許してよ。だって、最近は特に忙しくてゆっくり出来なかったんだから…」
10歳と年上だか、誰よりも側にいて歳の近い自身の専属メイドである彼女の事を、サーシャはとても慕っていた。
「それは仕方ないですよ。1週間後には、サーシャ様の6歳のお誕生日なんですから」
そう、何故これ程までに屋敷内がバタバタしているかと言うと、サーシャの6歳の誕生日が迫っているからだった。
サーシャ本人は、親しい人達だけで祝うだけでいいと思っている。だが、そんな事は貴族の娘として許されない。まして、そこそこの地位にいるアベルシュタイン家だ。当日には、アベルシュタイン家と関係のある多くの貴族を招待しなければならない。
「別に、こじんまりした感じでいいのに…」
そうすれば、これ程までに忙しくなる事は無かった。何よりーー。
「一体、何着ドレスを仕立てるつもりなの…?」
招待客への招待状や会場の準備などは、全て両親や使用人達がやってくれる。それなのに、何故これ程までにサーシャが疲れているのか。それは、当日のサーシャが着るドレスのせいだ。
最初は、明るくふんわりとしたグリーンのドレスの予定だった。採寸も滞りなく終わり、後は仕立てるだけの筈だったのだ。
ーーしかし、サーシャの余りにも美しいその姿を見て、仕立て屋の女主人の職人魂に火が付いてしまったのだ。
『お嬢様は、私の女神ですわ!お嬢様を見ていると、湯水の如く様々なデザインが浮かんできますの!』
そして、その言葉に感化されたミランダと王都一の仕立て屋マダムクラリスが、ああでも無いこうでも無いと言いながらサーシャを着せ替え人形の如く扱ったのだ。
「流石に、一日二十着のドレスを着せられた時は死ぬかと思った…」
「ですが、その頑張りのお陰で漸く奥様達が満足いくドレスを作る事が出来るのです。どうやら、当日のドレスとは別に、十着は作る事が決まった様ですよ」
「いやいや、二着で十分でしょ…」
ドレス一着でも、それなりの値段になるのだ。
本来なら、当主であるダリルが「いくら何でも作り過ぎだ」と注意するべきなのだ。
ーーしかし、現状は。
***
『このデザイン、全て最高だ!天使のサーシャの魅力を最大限に引き出す事が出来る、素晴らしいデザインのドレスだ!マダムクラリス、金に糸目は付けない。素晴らしい物を作ってくれ』
『勿論ですわ。お嬢様に似合う最高の物を、このクラリスの名にかけて作って見せますわ』
***
(いくら何でも、親馬鹿すぎる…!)
前世で成人した分別ある大人の記憶があるサーシャだからよかったものの、前世でまだ子供だったり記憶のない普通の子供だったら、目も当てられない我がまま娘が出来上がっていただろう。
そしていつの日か、取り返しの付かない過ちを犯していただろうと考えるサーシャであった。
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