極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

文字の大きさ
95 / 105

No.93 アランside

しおりを挟む
地下室を出たアランは、部下と共に娼館の一階へと戻る。地下室へ向かう入り口に、普段は多忙で滅多に店に居ないルージュの支配人が立っていた。

「アラン様、お久しぶりで御座います。挨拶が遅くなり誠に申し訳ありません」

40代半ば程の仕事の出来る風貌の男性が、子供であるアランに頭を下げる。その光景を見た従業員や娼婦達は、驚愕の表情を浮かべる。
関係者でも限られた人物しか行けない地下室から出て来た事もそうだが、何より如何に高位遺族であろうと滅多に頭を下げない支配人が、10歳そこらの子供に躊躇いもなく頭を下げた事に驚いたのだ。

ーー此処は、貴族御用達の高級娼館ルージュ。

この店には、美貌もそうだが高い教養を身に付けた一介の貴族令嬢にも劣らない、一流の女性達が取り揃えられている。

そんな一流の女性と夜を過ごす貴族達。
中には、夢の様な時間に気持ちが緩み自身や他者の重大な秘密を娼婦達に漏らす男達もいる。それらの重大な秘密は、娼婦達を取り仕切る支配人であるこの男の元へと集まるのだ。
支配人自身、集めた秘密で無闇に貴族を脅す様な愚かな男では無い為に、貴族達は安心してお気に入りの娼婦の元へと舞い戻り、また新たな秘密が落とされる。

その為、貴族達は迂闊に支配人である男に大きな態度が取れない。

そんな支配人が、躊躇いも無く頭を下げる子供。皆が、アランに興味を示した。それに気付いた支配人は、アランを自身の執務室へと誘う。

「従業員達が申し訳ありません。此処では無く、私の執務室でお話を致しませんか?丁度、珍しく美味な紅茶を手に入れたばかりでして」
「紅茶好きで有名な貴方がそこまで言うとは。これは、是非とも頂かねば」

そうして、二人は連れ立って執務室に向かう。
二人の背後には、アランの部下である男が無言で付いてくる。

「そうそう、支配人。丁度、私の部下が地下室の奥の部屋を使わせて貰ってるよ」
「あの部屋を使うのは、随分と久し振りですね」
「そうだね。最近は、根性の無い奴が多かったから…」

高級娼館ルージュ。
その地下にある部屋は、代々アベルシュタイン家の者が拷問部屋として利用する部屋だった。娼館には、様々な客と情報が集まる。王家の番犬として、これ程情報収集に事欠かない場所は無い。

「部屋は、かなり汚れてるかも」
「問題ありません。此処は、アベルシュタイン家が代々経営する店なのですから。部屋のどんな汚れを掃除するのも、従業員である我々の仕事の内です」

そう話しているうちに、執務室に着いた。
支配人は、アランと部下の男を部屋に入れ自慢の紅茶を自ら入れると、アランと話し合いを始めたのだった。




しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...