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No.93 アランside

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地下室を出たアランは、部下と共に娼館の一階へと戻る。地下室へ向かう入り口に、普段は多忙で滅多に店に居ないルージュの支配人が立っていた。

「アラン様、お久しぶりで御座います。挨拶が遅くなり誠に申し訳ありません」

40代半ば程の仕事の出来る風貌の男性が、子供であるアランに頭を下げる。その光景を見た従業員や娼婦達は、驚愕の表情を浮かべる。
関係者でも限られた人物しか行けない地下室から出て来た事もそうだが、何より如何に高位遺族であろうと滅多に頭を下げない支配人が、10歳そこらの子供に躊躇いもなく頭を下げた事に驚いたのだ。

ーー此処は、貴族御用達の高級娼館ルージュ。

この店には、美貌もそうだが高い教養を身に付けた一介の貴族令嬢にも劣らない、一流の女性達が取り揃えられている。

そんな一流の女性と夜を過ごす貴族達。
中には、夢の様な時間に気持ちが緩み自身や他者の重大な秘密を娼婦達に漏らす男達もいる。それらの重大な秘密は、娼婦達を取り仕切る支配人であるこの男の元へと集まるのだ。
支配人自身、集めた秘密で無闇に貴族を脅す様な愚かな男では無い為に、貴族達は安心してお気に入りの娼婦の元へと舞い戻り、また新たな秘密が落とされる。

その為、貴族達は迂闊に支配人である男に大きな態度が取れない。

そんな支配人が、躊躇いも無く頭を下げる子供。皆が、アランに興味を示した。それに気付いた支配人は、アランを自身の執務室へと誘う。

「従業員達が申し訳ありません。此処では無く、私の執務室でお話を致しませんか?丁度、珍しく美味な紅茶を手に入れたばかりでして」
「紅茶好きで有名な貴方がそこまで言うとは。これは、是非とも頂かねば」

そうして、二人は連れ立って執務室に向かう。
二人の背後には、アランの部下である男が無言で付いてくる。

「そうそう、支配人。丁度、私の部下が地下室の奥の部屋を使わせて貰ってるよ」
「あの部屋を使うのは、随分と久し振りですね」
「そうだね。最近は、根性の無い奴が多かったから…」

高級娼館ルージュ。
その地下にある部屋は、代々アベルシュタイン家の者が拷問部屋として利用する部屋だった。娼館には、様々な客と情報が集まる。王家の番犬として、これ程情報収集に事欠かない場所は無い。

「部屋は、かなり汚れてるかも」
「問題ありません。此処は、アベルシュタイン家が代々経営する店なのですから。部屋のどんな汚れを掃除するのも、従業員である我々の仕事の内です」

そう話しているうちに、執務室に着いた。
支配人は、アランと部下の男を部屋に入れ自慢の紅茶を自ら入れると、アランと話し合いを始めたのだった。




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