10 / 42
第一章 悪女と婿にしたい男性ナンバーワン
2-05
「とにかく、そこからノーバック子爵家にも協力してもらうようになったの」
「俺抜きでね」
クライドが不満そうな顔を見て、ダリアは焦った。
「だって、あなたが長期遠征に行っているなんて知らなかったんだもの。ノーバック子爵に了承を得ることができたら、その後王都まで説明にいくつもりだったのよ。だから、ノーバック子爵には、クライドにも了承を得てから実行すると話したんだけど、クライドはしばらく戻らないし、話すと絶対反対するから待たなくていいと仰って」
「まあ確かに、俺がいたら確実に反対して計画を潰してたね」クライドは苦笑した。
「それに、王都は噂の中心になるだろうから、あなたが王都を離れているときが良いと思ったのよ」
「せめて、内々ですませればよかったのに、わざわざ使用人を使って噂をばらまく真似をして」
「表沙汰にしないと、お姉様がマクレディに無理やり戻ってきて無かったことにするかもしれないでしょ。その予防線よ。徹底的にやればお姉様も私の覚悟を理解してくれると思ったの」
「……俺としては、最初に計画を思いついた考えた時点で相談してほしかったよ」
クライドに労るように見つめられ、ダリアは思わず目をそらした。
「それは……。これは結局は私の自己満足だから。他の人を巻き込むわけにはいかないし」
「まあ、実際君とはトレッド様激怒事件以来連絡をとっていないからね、相談しづらいというのもわからないでもないけど。でも結局は君一人が悪者になっただけじゃないか。それに関してはうちの家族もすごく気にしているんだよ」
「私は自分で決めたことだもの。それよりもお姉様を嫁がせるためとはいえ、あなたの家を罰ゲーム扱いにしたことが申し訳なかったわ」
「ノーバック子爵家は本当に弱小で貧乏だから」クライドは笑う。
「うちは本当に感謝しているんだ。兄はクソ真面目だから、メアリの気持ちを汲んであきらめようとしてたし。そんな兄を母は心配してたし、父は自分がマクレディ伯爵領に頼り切っていたせいだと心を痛めていたし」
クライドはふっと真面目な顔になってダリアを真正面から見つめる。
「今のノーバック家の幸せは君のおかげだ。本当にありがとう」
「……そう、よかった……」ダリアは心の底からの笑顔を見せた。
クライドは頬を少し赤らめると目をそらした。
「それで、君がいつまでも悪女のままでいるのが心苦しくてね。君からは噂はそのうち沈静化するだろうから何もせずに静観していてほしいと手紙に書いてあったけど、親から心配だからちょっと見てこいと。なんなら手助けしてこいと。それで今日来たわけ。
君はうちに申し訳ないと言っているけど、うちとしては、隣の領のいじめに耐える弱小領として同情票が集まって動きやすくなったよ」
クライドは笑う。
「お姉様たちはみんな元気でやっているのかしら」
「ああ、みんな元気だよ。メアリびっくりしてたよ。首にしたと聞いていた自分の専属メイドがノーバック家で出迎えてくれるんだから。
……メアリは、まあ、ノーバックに来た当初は君に申し訳ないと落ち込んでいたけど、兄のフォローのお陰かだいぶ落ち着いたようだ。専属メイドが、マクレディの家にいるときより表情がおだやかになったと喜んでたよ」
「ふふ。それならよかった。私は大丈夫よ。元気にやっているわ。公の場にはまだ時期尚早と判断して出ていないだけだから気にしないで、と伝えてちょうだい」
クライドは何か言いたそうな顔をしていたが、大きく息を吐いて、わかった、とだけ言うと、立ち上がろうとした。そして中腰のまま体を止め、ダリアの顔を凝視する。
「ところで君、ちゃんと寝てる?目の下のクマ、すごいよ」
「失礼ね。レディに向かってそんなこと言う?」
「当主の仕事が忙しいのはわかるけどさ、君が倒れたらまた社交界が大盛りあがりだよ。悪女が倒れた、ざまあみろってさ」
立ち上がり、右手を差し出す。
「散歩しようぜ。ひさしぶりに庭を案内してよ」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
2024/06/19 加筆修正しました
「俺抜きでね」
クライドが不満そうな顔を見て、ダリアは焦った。
「だって、あなたが長期遠征に行っているなんて知らなかったんだもの。ノーバック子爵に了承を得ることができたら、その後王都まで説明にいくつもりだったのよ。だから、ノーバック子爵には、クライドにも了承を得てから実行すると話したんだけど、クライドはしばらく戻らないし、話すと絶対反対するから待たなくていいと仰って」
「まあ確かに、俺がいたら確実に反対して計画を潰してたね」クライドは苦笑した。
「それに、王都は噂の中心になるだろうから、あなたが王都を離れているときが良いと思ったのよ」
「せめて、内々ですませればよかったのに、わざわざ使用人を使って噂をばらまく真似をして」
「表沙汰にしないと、お姉様がマクレディに無理やり戻ってきて無かったことにするかもしれないでしょ。その予防線よ。徹底的にやればお姉様も私の覚悟を理解してくれると思ったの」
「……俺としては、最初に計画を思いついた考えた時点で相談してほしかったよ」
クライドに労るように見つめられ、ダリアは思わず目をそらした。
「それは……。これは結局は私の自己満足だから。他の人を巻き込むわけにはいかないし」
「まあ、実際君とはトレッド様激怒事件以来連絡をとっていないからね、相談しづらいというのもわからないでもないけど。でも結局は君一人が悪者になっただけじゃないか。それに関してはうちの家族もすごく気にしているんだよ」
「私は自分で決めたことだもの。それよりもお姉様を嫁がせるためとはいえ、あなたの家を罰ゲーム扱いにしたことが申し訳なかったわ」
「ノーバック子爵家は本当に弱小で貧乏だから」クライドは笑う。
「うちは本当に感謝しているんだ。兄はクソ真面目だから、メアリの気持ちを汲んであきらめようとしてたし。そんな兄を母は心配してたし、父は自分がマクレディ伯爵領に頼り切っていたせいだと心を痛めていたし」
クライドはふっと真面目な顔になってダリアを真正面から見つめる。
「今のノーバック家の幸せは君のおかげだ。本当にありがとう」
「……そう、よかった……」ダリアは心の底からの笑顔を見せた。
クライドは頬を少し赤らめると目をそらした。
「それで、君がいつまでも悪女のままでいるのが心苦しくてね。君からは噂はそのうち沈静化するだろうから何もせずに静観していてほしいと手紙に書いてあったけど、親から心配だからちょっと見てこいと。なんなら手助けしてこいと。それで今日来たわけ。
君はうちに申し訳ないと言っているけど、うちとしては、隣の領のいじめに耐える弱小領として同情票が集まって動きやすくなったよ」
クライドは笑う。
「お姉様たちはみんな元気でやっているのかしら」
「ああ、みんな元気だよ。メアリびっくりしてたよ。首にしたと聞いていた自分の専属メイドがノーバック家で出迎えてくれるんだから。
……メアリは、まあ、ノーバックに来た当初は君に申し訳ないと落ち込んでいたけど、兄のフォローのお陰かだいぶ落ち着いたようだ。専属メイドが、マクレディの家にいるときより表情がおだやかになったと喜んでたよ」
「ふふ。それならよかった。私は大丈夫よ。元気にやっているわ。公の場にはまだ時期尚早と判断して出ていないだけだから気にしないで、と伝えてちょうだい」
クライドは何か言いたそうな顔をしていたが、大きく息を吐いて、わかった、とだけ言うと、立ち上がろうとした。そして中腰のまま体を止め、ダリアの顔を凝視する。
「ところで君、ちゃんと寝てる?目の下のクマ、すごいよ」
「失礼ね。レディに向かってそんなこと言う?」
「当主の仕事が忙しいのはわかるけどさ、君が倒れたらまた社交界が大盛りあがりだよ。悪女が倒れた、ざまあみろってさ」
立ち上がり、右手を差し出す。
「散歩しようぜ。ひさしぶりに庭を案内してよ」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
2024/06/19 加筆修正しました
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。
溺愛されている妹の高慢な態度を注意したら、冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになりました。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナフィリアは、妹であるレフーナに辟易としていた。
両親に溺愛されて育ってきた彼女は、他者を見下すわがままな娘に育っており、その相手にラナフィリアは疲れ果てていたのだ。
ある時、レフーナは晩餐会にてとある令嬢のことを罵倒した。
そんな妹の高慢なる態度に限界を感じたラナフィリアは、レフーナを諫めることにした。
だが、レフーナはそれに激昂した。
彼女にとって、自分に従うだけだった姉からの反抗は許せないことだったのだ。
その結果、ラナフィリアは冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになった。
姉が不幸になるように、レフーナが両親に提言したからである。
しかし、ラナフィリアが嫁ぐことになった辺境伯ガルラントは、噂とは異なる人物だった。
戦士であるため、敵に対して冷血ではあるが、それ以外の人物に対して紳士的で誠実な人物だったのだ。
こうして、レフーナの目論見は外れ、ラナフェリアは辺境で穏やかな生活を送るのだった。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
『姉に全部奪われた私、今度は自分の幸せを選びます ~姉の栄光を支える嘘を、私は一枚ずつ剥がす~』
六角
恋愛
復讐はしない。——ただ「嘘」を回収する。 礼儀と帳簿で宮廷の偽りを詰ませる“監査官令嬢”の華麗なる逆転劇。
王家献上宝飾の紛失事件で濡れ衣を着せられ、家族にも婚約者にも捨てられて追放された子爵家次女リリア。 数年後、彼女は王妃直属の「臨時監査官」として、再び宮廷の土を踏む。
そこで待っていたのは、「慈愛の聖女」として崇められる姉セシリアと、彼女に心酔する愚かな貴族たち。しかし、姉の栄光の裏には、横領、洗脳、そして国を揺るがす「偽造魔石」の陰謀が隠されていた。
「復讐? いいえ、これは正当な監査です」
リリアは感情に流されず、帳簿と証拠、そして真実を映す「プリズム」を武器に、姉が築き上げた嘘の城を一枚ずつ剥がしていく。 孤立無援の彼女を支えるのは、氷のように冷徹な宰相補佐レオンハルトと、豪快な近衛騎士団長カミュ。 やがてリリアは、国中を巻き込んだ姉の洗脳計画を打ち砕き、自分自身の幸せと、不器用な宰相補佐からの溺愛を手に入れる——。
婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
不器用な氷の王子は幼馴染を離さない。元婚約者は勝手に破滅中!
ムラサメ
恋愛
王太子エドワードから「無能な書類女」と蔑まれ、公開婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢エルナ。絶望する彼女の前に現れたのは、隣国の「氷の王子」アルフレッドだった。
強引に彼に連れ去られたエルナだが、実は彼はかつて彼女の後ろをついて回っていた泣き虫な幼馴染で……!?
「昔の俺は忘れろ」と冷徹に振る舞おうとする彼だけど、新生活の準備が過剰すぎて溺愛がダダ漏れ!
一方、エルナを失った母国は経済崩壊の危機に陥り、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが――。