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第一章 悪女と婿にしたい男性ナンバーワン
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「とにかく、そこからノーバック子爵家にも協力してもらうようになったの」
「俺抜きでね」
クライドが不満そうな顔を見て、ダリアは焦った。
「だって、あなたが長期遠征に行っているなんて知らなかったんだもの。ノーバック子爵に了承を得ることができたら、その後王都まで説明にいくつもりだったのよ。だから、ノーバック子爵には、クライドにも了承を得てから実行すると話したんだけど、クライドはしばらく戻らないし、話すと絶対反対するから待たなくていいと仰って」
「まあ確かに、俺がいたら確実に反対して計画を潰してたね」クライドは苦笑した。
「それに、王都は噂の中心になるだろうから、あなたが王都を離れているときが良いと思ったのよ」
「せめて、内々ですませればよかったのに、わざわざ使用人を使って噂をばらまく真似をして」
「表沙汰にしないと、お姉様がマクレディに無理やり戻ってきて無かったことにするかもしれないでしょ。その予防線よ。徹底的にやればお姉様も私の覚悟を理解してくれると思ったの」
「……俺としては、最初に計画を思いついた考えた時点で相談してほしかったよ」
クライドに労るように見つめられ、ダリアは思わず目をそらした。
「それは……。これは結局は私の自己満足だから。他の人を巻き込むわけにはいかないし」
「まあ、実際君とはトレッド様激怒事件以来連絡をとっていないからね、相談しづらいというのもわからないでもないけど。でも結局は君一人が悪者になっただけじゃないか。それに関してはうちの家族もすごく気にしているんだよ」
「私は自分で決めたことだもの。それよりもお姉様を嫁がせるためとはいえ、あなたの家を罰ゲーム扱いにしたことが申し訳なかったわ」
「ノーバック子爵家は本当に弱小で貧乏だから」クライドは笑う。
「うちは本当に感謝しているんだ。兄はクソ真面目だから、メアリの気持ちを汲んであきらめようとしてたし。そんな兄を母は心配してたし、父は自分がマクレディ伯爵領に頼り切っていたせいだと心を痛めていたし」
クライドはふっと真面目な顔になってダリアを真正面から見つめる。
「今のノーバック家の幸せは君のおかげだ。本当にありがとう」
「……そう、よかった……」ダリアは心の底からの笑顔を見せた。
クライドは頬を少し赤らめると目をそらした。
「それで、君がいつまでも悪女のままでいるのが心苦しくてね。君からは噂はそのうち沈静化するだろうから何もせずに静観していてほしいと手紙に書いてあったけど、親から心配だからちょっと見てこいと。なんなら手助けしてこいと。それで今日来たわけ。
君はうちに申し訳ないと言っているけど、うちとしては、隣の領のいじめに耐える弱小領として同情票が集まって動きやすくなったよ」
クライドは笑う。
「お姉様たちはみんな元気でやっているのかしら」
「ああ、みんな元気だよ。メアリびっくりしてたよ。首にしたと聞いていた自分の専属メイドがノーバック家で出迎えてくれるんだから。
……メアリは、まあ、ノーバックに来た当初は君に申し訳ないと落ち込んでいたけど、兄のフォローのお陰かだいぶ落ち着いたようだ。専属メイドが、マクレディの家にいるときより表情がおだやかになったと喜んでたよ」
「ふふ。それならよかった。私は大丈夫よ。元気にやっているわ。公の場にはまだ時期尚早と判断して出ていないだけだから気にしないで、と伝えてちょうだい」
クライドは何か言いたそうな顔をしていたが、大きく息を吐いて、わかった、とだけ言うと、立ち上がろうとした。そして中腰のまま体を止め、ダリアの顔を凝視する。
「ところで君、ちゃんと寝てる?目の下のクマ、すごいよ」
「失礼ね。レディに向かってそんなこと言う?」
「当主の仕事が忙しいのはわかるけどさ、君が倒れたらまた社交界が大盛りあがりだよ。悪女が倒れた、ざまあみろってさ」
立ち上がり、右手を差し出す。
「散歩しようぜ。ひさしぶりに庭を案内してよ」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
2024/06/19 加筆修正しました
「俺抜きでね」
クライドが不満そうな顔を見て、ダリアは焦った。
「だって、あなたが長期遠征に行っているなんて知らなかったんだもの。ノーバック子爵に了承を得ることができたら、その後王都まで説明にいくつもりだったのよ。だから、ノーバック子爵には、クライドにも了承を得てから実行すると話したんだけど、クライドはしばらく戻らないし、話すと絶対反対するから待たなくていいと仰って」
「まあ確かに、俺がいたら確実に反対して計画を潰してたね」クライドは苦笑した。
「それに、王都は噂の中心になるだろうから、あなたが王都を離れているときが良いと思ったのよ」
「せめて、内々ですませればよかったのに、わざわざ使用人を使って噂をばらまく真似をして」
「表沙汰にしないと、お姉様がマクレディに無理やり戻ってきて無かったことにするかもしれないでしょ。その予防線よ。徹底的にやればお姉様も私の覚悟を理解してくれると思ったの」
「……俺としては、最初に計画を思いついた考えた時点で相談してほしかったよ」
クライドに労るように見つめられ、ダリアは思わず目をそらした。
「それは……。これは結局は私の自己満足だから。他の人を巻き込むわけにはいかないし」
「まあ、実際君とはトレッド様激怒事件以来連絡をとっていないからね、相談しづらいというのもわからないでもないけど。でも結局は君一人が悪者になっただけじゃないか。それに関してはうちの家族もすごく気にしているんだよ」
「私は自分で決めたことだもの。それよりもお姉様を嫁がせるためとはいえ、あなたの家を罰ゲーム扱いにしたことが申し訳なかったわ」
「ノーバック子爵家は本当に弱小で貧乏だから」クライドは笑う。
「うちは本当に感謝しているんだ。兄はクソ真面目だから、メアリの気持ちを汲んであきらめようとしてたし。そんな兄を母は心配してたし、父は自分がマクレディ伯爵領に頼り切っていたせいだと心を痛めていたし」
クライドはふっと真面目な顔になってダリアを真正面から見つめる。
「今のノーバック家の幸せは君のおかげだ。本当にありがとう」
「……そう、よかった……」ダリアは心の底からの笑顔を見せた。
クライドは頬を少し赤らめると目をそらした。
「それで、君がいつまでも悪女のままでいるのが心苦しくてね。君からは噂はそのうち沈静化するだろうから何もせずに静観していてほしいと手紙に書いてあったけど、親から心配だからちょっと見てこいと。なんなら手助けしてこいと。それで今日来たわけ。
君はうちに申し訳ないと言っているけど、うちとしては、隣の領のいじめに耐える弱小領として同情票が集まって動きやすくなったよ」
クライドは笑う。
「お姉様たちはみんな元気でやっているのかしら」
「ああ、みんな元気だよ。メアリびっくりしてたよ。首にしたと聞いていた自分の専属メイドがノーバック家で出迎えてくれるんだから。
……メアリは、まあ、ノーバックに来た当初は君に申し訳ないと落ち込んでいたけど、兄のフォローのお陰かだいぶ落ち着いたようだ。専属メイドが、マクレディの家にいるときより表情がおだやかになったと喜んでたよ」
「ふふ。それならよかった。私は大丈夫よ。元気にやっているわ。公の場にはまだ時期尚早と判断して出ていないだけだから気にしないで、と伝えてちょうだい」
クライドは何か言いたそうな顔をしていたが、大きく息を吐いて、わかった、とだけ言うと、立ち上がろうとした。そして中腰のまま体を止め、ダリアの顔を凝視する。
「ところで君、ちゃんと寝てる?目の下のクマ、すごいよ」
「失礼ね。レディに向かってそんなこと言う?」
「当主の仕事が忙しいのはわかるけどさ、君が倒れたらまた社交界が大盛りあがりだよ。悪女が倒れた、ざまあみろってさ」
立ち上がり、右手を差し出す。
「散歩しようぜ。ひさしぶりに庭を案内してよ」
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2024/06/19 加筆修正しました
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