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第三章 悪女とお茶会
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それからダリアとソニキュアは他愛もない会話を交わした。
ソニキュアは会話も上手く、最初緊張していたダリアも次第にリラックスして会話を楽しめるようになってきた。
やがて、仕事の話に移っていった。
「王都とマクレディ領を繋ぐ街道を整備するそうね」ソニキュアが確認をするように言った。
「はい。決定しただけで、まだ工事は始まっていないのですが」
以前、マクレディの屋敷で、王都と隣接する領の境界周辺で野盗がよく出るという話をクライドから聞いた。
気になったダリアが改めて調べてみると、王都とマクレディ領境界付近での事件は確かに増加傾向にあった。ただほとんどが大きな被害がなく済んでいたために見過ごされていたのである。
これは、街道工事の申請に使えるのではないかとダリアは考えた。
事件が起きた際の管轄は境界できっちり分けられている。そのため、マクレディ領からほんの少しでも王都側に出てしまえば、それは王国の騎士団の管轄となり、マクレディ領の警備隊は関わることができない。
境界は街道の脇に杭が打ち付けられているだけだ。マクレディ領内で事件が増えていたのなら、同じ街道上にある王都側でも同じように事件が増えていると考えていいだろう。
そこで、ダリアは騎士団に協力を仰ぐべく王都にある騎士団本部を訪ねた。
要件は事前に手紙で説明してあるが、今回は騎士団に手を借りることになるので、ダリアも直接訪ねてあらためて協力を依頼することにしたのだ。
ダリアにとって王都は行きたくない場所ではあるが、今回ばかりはそうは言っていられない。
約束した時間の少し前に騎士団本部に馬車をつけると、入り口ではクライドが待っていた。今日の案内係だそうだ。
クライドに案内されるままに騎士団団長の執務室に入ると、団長は笑顔で迎えてくれた。
ダリアが内容を再度説明をし協力をお願いすると、団長はダリアに書類を手渡した。
「はい、王都とマクレディ領の境界付近で起こった事件の報告書」
「え」
まさか今日もらえるとは思わず驚いて変な声が出た。
団長は少し笑うと
「境界付近を狙う野盗にはこちらも手を焼いていてね。ちょうど境界付近で過去に起きた事件の洗い直しをしている最中だったんだよ」
「そうだったんですか」
「うん、本当にちょうどよかった」
団長はダリアの後方に目を向けた。
もらった報告書をペラペラとめくり軽く目を通すと、報告書はわかりやすく丁寧にまとめられていた。
通常、野盗などの単発の犯罪は日付ごとに雑多にまとめられている。ここ数年の書類をすべて調べて、その中から境界付近で起こった事件だけを抜き出してまとめていくのだ。かなりの手間だったに違いない。
「こんなに丁寧に……。本当に助かります。ありがとうございます」
「お礼は、会議で事件の洗い直しを提案して、その報告書を作った人物に言ってくれ。なあ、クライド」
ダリアは振り返り、背後に立つクライドを見た。クライドは 取り澄ました顔で「仕事ですから礼は不要です」とニコリともせずに言った。
「仕事ねぇ。マクレディ領から依頼がくる前から、騎士団用の書類と並行して作っていただろ、お前」
「私、騎士団に依頼することはクライドには言ってませんよ」
ダリアはあわてて訂正したが
「でも、境界付近の野盗についてはクライドから話を聞いていたのでは?」
「……そうですね」
ダリアと団長は、無言でクライドを見た。
「別に法にも騎士団の規律にも違反はしていませんよ。仮にマクレディ領に持ち出すとしても団長の承認を受けるつもりでしたし」
クライドは相変わらずすまし顔だ。
「わかってるよ。お前のお陰で、手詰まりだった事件にようやく光明が見えたからな、これでも感謝しているんだ。ただ部下の手のひらで踊らされた気がしないでもないのがなんとも……」
団長は苦笑した。
執務室から退出するとき団長から
「こちらとしてもあの街道が整備されると助かるんだ。ぜひ勝ち取ってくれ」
と激励された。
騎士団の書類を見ると、王都側の境界で起こった事件はマクレディ側よりかなり多かった。二つを合わせるとかなりの数になる。
今回の申請には、マクレディ港の取扱量が増えたことによる街道の通行量の増加の報告書に、街道で起きている野盗の問題に関する書類を添付し、防犯上の意味からも工事の重要性を訴えた。
それ以外にも父の作った工事計画を見直し、特に問題だった費用部分に関しても、これ以上保留はできないのでマクレディ側が多めに負担することにした。
これらを王都側と何度もやりとりをして、ようやく申請が通ったのである。
ソニキュアは会話も上手く、最初緊張していたダリアも次第にリラックスして会話を楽しめるようになってきた。
やがて、仕事の話に移っていった。
「王都とマクレディ領を繋ぐ街道を整備するそうね」ソニキュアが確認をするように言った。
「はい。決定しただけで、まだ工事は始まっていないのですが」
以前、マクレディの屋敷で、王都と隣接する領の境界周辺で野盗がよく出るという話をクライドから聞いた。
気になったダリアが改めて調べてみると、王都とマクレディ領境界付近での事件は確かに増加傾向にあった。ただほとんどが大きな被害がなく済んでいたために見過ごされていたのである。
これは、街道工事の申請に使えるのではないかとダリアは考えた。
事件が起きた際の管轄は境界できっちり分けられている。そのため、マクレディ領からほんの少しでも王都側に出てしまえば、それは王国の騎士団の管轄となり、マクレディ領の警備隊は関わることができない。
境界は街道の脇に杭が打ち付けられているだけだ。マクレディ領内で事件が増えていたのなら、同じ街道上にある王都側でも同じように事件が増えていると考えていいだろう。
そこで、ダリアは騎士団に協力を仰ぐべく王都にある騎士団本部を訪ねた。
要件は事前に手紙で説明してあるが、今回は騎士団に手を借りることになるので、ダリアも直接訪ねてあらためて協力を依頼することにしたのだ。
ダリアにとって王都は行きたくない場所ではあるが、今回ばかりはそうは言っていられない。
約束した時間の少し前に騎士団本部に馬車をつけると、入り口ではクライドが待っていた。今日の案内係だそうだ。
クライドに案内されるままに騎士団団長の執務室に入ると、団長は笑顔で迎えてくれた。
ダリアが内容を再度説明をし協力をお願いすると、団長はダリアに書類を手渡した。
「はい、王都とマクレディ領の境界付近で起こった事件の報告書」
「え」
まさか今日もらえるとは思わず驚いて変な声が出た。
団長は少し笑うと
「境界付近を狙う野盗にはこちらも手を焼いていてね。ちょうど境界付近で過去に起きた事件の洗い直しをしている最中だったんだよ」
「そうだったんですか」
「うん、本当にちょうどよかった」
団長はダリアの後方に目を向けた。
もらった報告書をペラペラとめくり軽く目を通すと、報告書はわかりやすく丁寧にまとめられていた。
通常、野盗などの単発の犯罪は日付ごとに雑多にまとめられている。ここ数年の書類をすべて調べて、その中から境界付近で起こった事件だけを抜き出してまとめていくのだ。かなりの手間だったに違いない。
「こんなに丁寧に……。本当に助かります。ありがとうございます」
「お礼は、会議で事件の洗い直しを提案して、その報告書を作った人物に言ってくれ。なあ、クライド」
ダリアは振り返り、背後に立つクライドを見た。クライドは 取り澄ました顔で「仕事ですから礼は不要です」とニコリともせずに言った。
「仕事ねぇ。マクレディ領から依頼がくる前から、騎士団用の書類と並行して作っていただろ、お前」
「私、騎士団に依頼することはクライドには言ってませんよ」
ダリアはあわてて訂正したが
「でも、境界付近の野盗についてはクライドから話を聞いていたのでは?」
「……そうですね」
ダリアと団長は、無言でクライドを見た。
「別に法にも騎士団の規律にも違反はしていませんよ。仮にマクレディ領に持ち出すとしても団長の承認を受けるつもりでしたし」
クライドは相変わらずすまし顔だ。
「わかってるよ。お前のお陰で、手詰まりだった事件にようやく光明が見えたからな、これでも感謝しているんだ。ただ部下の手のひらで踊らされた気がしないでもないのがなんとも……」
団長は苦笑した。
執務室から退出するとき団長から
「こちらとしてもあの街道が整備されると助かるんだ。ぜひ勝ち取ってくれ」
と激励された。
騎士団の書類を見ると、王都側の境界で起こった事件はマクレディ側よりかなり多かった。二つを合わせるとかなりの数になる。
今回の申請には、マクレディ港の取扱量が増えたことによる街道の通行量の増加の報告書に、街道で起きている野盗の問題に関する書類を添付し、防犯上の意味からも工事の重要性を訴えた。
それ以外にも父の作った工事計画を見直し、特に問題だった費用部分に関しても、これ以上保留はできないのでマクレディ側が多めに負担することにした。
これらを王都側と何度もやりとりをして、ようやく申請が通ったのである。
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