【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?

堀多 ボルダ

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第三章 悪女とお茶会

2-03

「お金に渋い王都にお金を出させるなんてやるわね」
ソニキュアが口の端をあげニヤリと笑うが、その姿も美しい。
「父の代から何度も申請しては保留とされていたので、データだけはたくさんあるんです。あとは周囲の者に助けてもらいました」
「今まで通らなかったものを通したんだもの。あなたの力でもあるのよ」
「そうだとうれしいんですが」まさかソニキュアに褒められるとは思わず、ダリアは頬を染めた。

女性の憧れであるソニキュア・フォックス公爵令嬢と嫌われ者の稀代の悪女、この二人が楽しげに会話している様子をみて、ダリアの悪口を言っていた周囲は困惑していた。

「さて、楽しかったけれどもそろそろ終わらせないと、今度は私のせいであなたが悪く言われるわね」
「いえ、そんなことは」とは言ったが、ダリアも気づいていた。周囲の目が変わってきたことに。

おそらく周囲は、ソニキュアがダリアを糾弾すると思っていたのだろう。それが、仲良く談笑しているから、悪女がソニキュアをたぶらかしているように見えるのかもしれない。

「あなたはもう帰ったほうがいいわね」
「そうします」ソニキュアは近くにいたメイドを呼ぶと、ダリアを出口まで案内するように伝えた。

 ダリアは最後に気になっていたことを尋ねた。
「あの……、もしかして、姉に頼まれたのですか?」
ソニキュアは、ふふ、と楽しそうに笑うと
「違うわよ。あなたの仕事ぶりを聞いて、私が会ってみたいと思ったの」
ダリアは少し驚いた顔を見せたが、すぐ笑顔になった。

「ソニキュア様、本日はありがとうございました。ソニキュア様とお話できて楽しかったです」
「こちらこそ来ていただいて嬉しく思います。あなたと話すことができてよかったわ。またお呼びしてもいいかしら」
「ええ、ぜひ」

その言葉を聞いて、周囲がざわついた。
ソニキュアがダリアを認めたということだ。
ダリアはそのままメイドに促されるままに会場を出たが、会場に来たときとは周囲の目が違っていた。

 ダリアはメイドの後ろをのんびりとついて歩く。お茶会が無事終了したので一安心だ。
それにしてもソニキュア様は素敵だった。自分とはレベルが違いすぎる。

 お茶会会場から少し歩くと、小さな扉の前でメイドが止まった。
「馬車の用意に少々お時間がかかりますのでこちらのお部屋でお待ち下さい」
部屋のドアが開けられ、ダリアが入ると、ドアは静かに閉められた。

 部屋は小さく、中に小さなテーブルとソファーがあるだけだ。
そのソファーに誰かが座っている。

「ダリア!」
その人影が立ち上がって叫んだ。
「お姉様……」
ダリアが追い出した、姉、メアリだった。

「お姉様どうしてここに?」
「ソニキュア様にここで待つように言われたの。私が当主だった時にソニキュア様とは何度かお会いしたことがあって」

そういうことかとダリアは得心した。やはりソニキュア様はすべて知っていたのだ。
「かなわないなあ。私の浅知恵なんてみんな知っているのね。なんだか恥ずかしいわ」

ダリアがつぶやくとメアリは優しく微笑んだ。
「私は救われたわ。私のせいであなたには迷惑をかけたわね。私にもっと勇気があったら……本当にごめんなさい」
「私が勝手にやったことよ。謝ることはないわ。それにクライドを使って助けてくれたでしょう」
「何のこと?」
メアリが不思議そうな顔をした。

「クライドがノーバック家から私を助けるように指示されている、と言ってちょくちょく様子を見にきてくれるのよ」
「ノーバック家は何もしてないわよ。しばらくはあなたの言う通りにしようと話し合って静観していたわよ、クライドにもそう言っていたはずだけど……。あなたが王族主催の夜会に出るだろうと思っていたから、モントーヤ侯爵には手紙を出したけど、それだけよ」
ダリアは唖然とした顔をしている。

「クライドはあなたのことが心配だったのよ、きっと」
「そう……なのかな」
心配かけてしまって申し訳ないという反面、心配してくれていたことがうれしい。
「あなたの仕事ぶりは聞いているわ。私がやりかけだった港の警備の見直しもしてくれたそうね。あなたがいればマクレディ領は安心だわ」

メアリはダリアの手を優しく握り、優しく微笑んだ。
ノーバック家が出入り禁止にされてから初めて見る安らかな笑顔だ。

「ねえ、ダリア。あなたのお陰で私は今幸せよ。本当にありがとう」

ダリアの目から涙があふれた。この笑顔が見たくて、この言葉が聞きたくてずっとがんばってきた。
メアリに握られた手を握り返して、ダリアは黙って何度もうなずいた。
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