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第四章 悪女と誘拐
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クライドはジェーンから手を離すと
「こいつの名前はジェシカ・ワイアット伯爵令嬢。警備隊にこいつの付添メイドが助けを求めに来た。メイドが全部話したよ。こいつがその辺のゴロツキを金で雇って、お前を攫って痛めつけようとしていたって」
ダリアは信じられないというふうにジェーンーージェシカを見つめる。ジェシカは下を向いたままだ。
ジェシカ・ワイアット伯爵令嬢といえば、夜会のときにクライドがエスコートを断ったことで絡んできた女性だ。
顔見知りだったから、偽名を使って常に下を向いて顔を見られないようにしていたのか、今更ながら合点が行った。
「こいつが声をかけたゴロツキが、よりによって密輸団の残党だ。あいつらにとってみれば渡りに船だよ。
ダリアを誘拐して捕まった仲間を解放させても、自分たちが警備隊から追われる立場であることは変わらない。だから仲間を解放した後はジェシカ嬢を脅そうと考えていたらしい。伯爵家のご令嬢が犯罪に手を染めたんだもんな、報酬に逃走の手引と口止め料、なんならワイアット伯爵家でずっと匿ってもらうこともできるしな、犯人としてはおいしい話だよ」
クライドは侮蔑のこもった目をジェシカに向けて吐き捨てるように言った。
「そんな……、なんで……」ダリアは動揺を隠せずにいた。
ずっと下を向いていたジェシカが、顔を上げキッとダリアを睨んだ。
「あなたが! あなたがクライド様を盗るから!」
ジェシカが叫んだ。
「やっぱり俺か」これにはダリアよりもクライドが反応した。
「盗るってなんだよ。俺は君のものではないし、そもそも君とは個人的に会ったことは一度もない。君からの誘いはいつも断っているだろう」
「そうよ! 断られているわ! いつもいつもいつもいつも! あなたの都合に合わせると言っても全然誘ってくれない!」
ダリアはわけも分からず二人の顔を交互に見るだけだ。
「私が誘っても、忙しい、仕事がある、予定が入っているばかり。たった三十分お茶を飲むのさえ断られる。でもこの女のためなら一日休みを空けてわざわざこんなところにまで会いに来る!」
「この女とか言うな」
いきなりジェシカに指を指されたダリアには、クライドのどうでもいいツッコミに反応する余裕もない。
「ほかの女性ならまだしも、この稀代の悪女なんて! クライド様は騙されているのよ! なんでこんな女を助けに来るのよ!」
「ダリアは悪女じゃない」
そんなこと今はどうでもいいとダリアは思ったが、口にすると話が逸れそうなので無視をして、ジェシカに向き直る。
「それは誤解よ、ジェシカさん。クライドは私に頼まれて仕方なく来てるのよ。ノーバック家を経由して来るように伝えているの」
なんとかこの思い込みを解かないといけない。ダリアは対外的に向け用意していた言い訳を口にした。
「仕方なくじゃない。自分から来たくて来てる」
「クライドは黙って!」
ダリアはクライドを睨みつけた。
そして、ふと周りを見ると、犯人はすべて捕まり、建物の外に連れ出されていた。
警備隊長が、ダリアに報告をしたいが取り込み中だったため、話しかけられず突っ立ったままだ。
ダリアはゴホンと咳払いをして、指示を出す。
「ゴロツキどもは警備隊長に任せるわ。ジェシカさんは一旦屋敷に連れていきましょう」
「こいつの名前はジェシカ・ワイアット伯爵令嬢。警備隊にこいつの付添メイドが助けを求めに来た。メイドが全部話したよ。こいつがその辺のゴロツキを金で雇って、お前を攫って痛めつけようとしていたって」
ダリアは信じられないというふうにジェーンーージェシカを見つめる。ジェシカは下を向いたままだ。
ジェシカ・ワイアット伯爵令嬢といえば、夜会のときにクライドがエスコートを断ったことで絡んできた女性だ。
顔見知りだったから、偽名を使って常に下を向いて顔を見られないようにしていたのか、今更ながら合点が行った。
「こいつが声をかけたゴロツキが、よりによって密輸団の残党だ。あいつらにとってみれば渡りに船だよ。
ダリアを誘拐して捕まった仲間を解放させても、自分たちが警備隊から追われる立場であることは変わらない。だから仲間を解放した後はジェシカ嬢を脅そうと考えていたらしい。伯爵家のご令嬢が犯罪に手を染めたんだもんな、報酬に逃走の手引と口止め料、なんならワイアット伯爵家でずっと匿ってもらうこともできるしな、犯人としてはおいしい話だよ」
クライドは侮蔑のこもった目をジェシカに向けて吐き捨てるように言った。
「そんな……、なんで……」ダリアは動揺を隠せずにいた。
ずっと下を向いていたジェシカが、顔を上げキッとダリアを睨んだ。
「あなたが! あなたがクライド様を盗るから!」
ジェシカが叫んだ。
「やっぱり俺か」これにはダリアよりもクライドが反応した。
「盗るってなんだよ。俺は君のものではないし、そもそも君とは個人的に会ったことは一度もない。君からの誘いはいつも断っているだろう」
「そうよ! 断られているわ! いつもいつもいつもいつも! あなたの都合に合わせると言っても全然誘ってくれない!」
ダリアはわけも分からず二人の顔を交互に見るだけだ。
「私が誘っても、忙しい、仕事がある、予定が入っているばかり。たった三十分お茶を飲むのさえ断られる。でもこの女のためなら一日休みを空けてわざわざこんなところにまで会いに来る!」
「この女とか言うな」
いきなりジェシカに指を指されたダリアには、クライドのどうでもいいツッコミに反応する余裕もない。
「ほかの女性ならまだしも、この稀代の悪女なんて! クライド様は騙されているのよ! なんでこんな女を助けに来るのよ!」
「ダリアは悪女じゃない」
そんなこと今はどうでもいいとダリアは思ったが、口にすると話が逸れそうなので無視をして、ジェシカに向き直る。
「それは誤解よ、ジェシカさん。クライドは私に頼まれて仕方なく来てるのよ。ノーバック家を経由して来るように伝えているの」
なんとかこの思い込みを解かないといけない。ダリアは対外的に向け用意していた言い訳を口にした。
「仕方なくじゃない。自分から来たくて来てる」
「クライドは黙って!」
ダリアはクライドを睨みつけた。
そして、ふと周りを見ると、犯人はすべて捕まり、建物の外に連れ出されていた。
警備隊長が、ダリアに報告をしたいが取り込み中だったため、話しかけられず突っ立ったままだ。
ダリアはゴホンと咳払いをして、指示を出す。
「ゴロツキどもは警備隊長に任せるわ。ジェシカさんは一旦屋敷に連れていきましょう」
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