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第五章 悪女と結婚
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「なんだみんな賛成なら問題ないね」あっけらかんとクライドが言う。
「ちょっと待って、私は賛成していない」
「何が不満なのさ。イケメン、騎士団員として将来有望、当主たちからの信頼も厚い、ノーバック家当主代理としてすでに仕事はこなしているから君の補佐もできる、非の打ち所のない完璧な婿なのに」
「そういうことじゃなくて。あなたはいいの? 私が相手よ? 嫌われまくっている稀代の悪女よ?」
「いいに決まっているだろ。俺は君が好きなんだから」
満面の笑みを浮かべてのたまうクライドにダリアは言葉を失った。
固まっているダリアを見て、ランダルはニッキーにダリアにもお茶を入れるように命じた。
やがてダリアの前に温かい紅茶が出される。
「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いて」クライドが軽い調子で言う。
ダリアは無言でティーカップを手に取る。
いろいろ思うところも言いたいこともあるが、今はとりあえずお茶を飲む。一口飲んだら少し落ち着いた。
それを見てクライドが話しを続けた。
「うちの兄とメアリとの結婚は、君がメアリを家から追い出す、という暴挙で終わったけど、ノーバック家としてもトレッド様から出入り禁止にされてからいろいろ考えていたんだよ」
「暴挙って」ダリアは不服そうに口をとがらせる。
「出入り禁止になってすぐくらいかな、兄がね、メアリと結婚したいからトレッド様に認めてもらえるようがんばりたいって家族の前で宣言したんだよ。だから父が、メアリが結婚するまでという条件を設けて、それまでは思うようにやっていい、その代わり、メアリが他の男性と結婚したら、すっぱり諦めて他の女性を娶ることを考えなさい、と。
自己主張をあまりしない兄がそこまでいうのは本当に珍しいから、両親と俺は協力していたわけ」
初めて聞く内容に、ダリアは驚いた。
「兄は、マクレディ領の経済に頼り切っているノーバック領の現状を見直して認めてもらう作戦をとることに決めてね。
今まではノーバックのものは近くて需要の多いマクレディ領に納めるのが普通で、実際、運送の手間を考えると、多少値を下げてもマクレディ領に納めるのがお得だったんだけど、それを他の領へも販路を広げて、マクレディへの依存度を減らしていたんだよ」
それにはダリアも気づいていた。ここ数年、ノーバックから入ってくる木材の量が減り、マクレディ領内でも価格が上昇しているのだ。
マクレディ領は発展した豊かな領だが、それは交易によるものが大きい。山地や農地は少ないため、農作物や木材などは自領だけではまかないきれず、他領から買い付けることが多い。ノーバック領は場所も近く輸送コストも抑えられるため、マクレディ領での取扱量が多くなってしまうのは当然だ。
トレッドは、ノーバック領をマクレディに頼り切っていると怒っていたが、実際はマクレディもノーバック領に頼っているのだ。
「俺が王都で当主代理として動いていたからノーバックの次期当主は俺じゃないかと勘ぐっている人もいるみたいだけど、俺は兄に協力して王都で根回しをしているだけで、実際領地を走り回っていたのは兄だから、領民にとって次期当主は兄以外にはいないと思うよ」
クライドは必死だった兄の様子を思い出して、目を細めた。
「そんな簡単に領内の状況を変えられるわけもないんだけど、それでも数年かけて少しづつ上向いていたんだよ」
クライドはそこでコーヒーを一口飲んで続けた。
「そんなときに、トレッド様と奥様が亡くなったという話を聞いて」
ダリアの体が一瞬こわばった。
「ちょっと待って、私は賛成していない」
「何が不満なのさ。イケメン、騎士団員として将来有望、当主たちからの信頼も厚い、ノーバック家当主代理としてすでに仕事はこなしているから君の補佐もできる、非の打ち所のない完璧な婿なのに」
「そういうことじゃなくて。あなたはいいの? 私が相手よ? 嫌われまくっている稀代の悪女よ?」
「いいに決まっているだろ。俺は君が好きなんだから」
満面の笑みを浮かべてのたまうクライドにダリアは言葉を失った。
固まっているダリアを見て、ランダルはニッキーにダリアにもお茶を入れるように命じた。
やがてダリアの前に温かい紅茶が出される。
「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いて」クライドが軽い調子で言う。
ダリアは無言でティーカップを手に取る。
いろいろ思うところも言いたいこともあるが、今はとりあえずお茶を飲む。一口飲んだら少し落ち着いた。
それを見てクライドが話しを続けた。
「うちの兄とメアリとの結婚は、君がメアリを家から追い出す、という暴挙で終わったけど、ノーバック家としてもトレッド様から出入り禁止にされてからいろいろ考えていたんだよ」
「暴挙って」ダリアは不服そうに口をとがらせる。
「出入り禁止になってすぐくらいかな、兄がね、メアリと結婚したいからトレッド様に認めてもらえるようがんばりたいって家族の前で宣言したんだよ。だから父が、メアリが結婚するまでという条件を設けて、それまでは思うようにやっていい、その代わり、メアリが他の男性と結婚したら、すっぱり諦めて他の女性を娶ることを考えなさい、と。
自己主張をあまりしない兄がそこまでいうのは本当に珍しいから、両親と俺は協力していたわけ」
初めて聞く内容に、ダリアは驚いた。
「兄は、マクレディ領の経済に頼り切っているノーバック領の現状を見直して認めてもらう作戦をとることに決めてね。
今まではノーバックのものは近くて需要の多いマクレディ領に納めるのが普通で、実際、運送の手間を考えると、多少値を下げてもマクレディ領に納めるのがお得だったんだけど、それを他の領へも販路を広げて、マクレディへの依存度を減らしていたんだよ」
それにはダリアも気づいていた。ここ数年、ノーバックから入ってくる木材の量が減り、マクレディ領内でも価格が上昇しているのだ。
マクレディ領は発展した豊かな領だが、それは交易によるものが大きい。山地や農地は少ないため、農作物や木材などは自領だけではまかないきれず、他領から買い付けることが多い。ノーバック領は場所も近く輸送コストも抑えられるため、マクレディ領での取扱量が多くなってしまうのは当然だ。
トレッドは、ノーバック領をマクレディに頼り切っていると怒っていたが、実際はマクレディもノーバック領に頼っているのだ。
「俺が王都で当主代理として動いていたからノーバックの次期当主は俺じゃないかと勘ぐっている人もいるみたいだけど、俺は兄に協力して王都で根回しをしているだけで、実際領地を走り回っていたのは兄だから、領民にとって次期当主は兄以外にはいないと思うよ」
クライドは必死だった兄の様子を思い出して、目を細めた。
「そんな簡単に領内の状況を変えられるわけもないんだけど、それでも数年かけて少しづつ上向いていたんだよ」
クライドはそこでコーヒーを一口飲んで続けた。
「そんなときに、トレッド様と奥様が亡くなったという話を聞いて」
ダリアの体が一瞬こわばった。
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