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エピローグ
01
ダリアがクライドからの結婚申込みを断ってから一ヶ月が経った。
そのことについて、誰も何も言わない。そんな話があったことすら幻であるかのようないつもと変わらぬ日常が続いている。
あの日からクライドはマクレディ領に来ていない。手紙も来なくなった。
それは当然だとダリアは思う。むしろ頻繁に来ていた今までが異常だったのだ。
ダリアの心の中を黒い何かが渦巻いているが、それには気づかないふりをして今日も執務室で一人でもくもくと仕事をしている。
外が急に騒がしくなった。
「何かしら?」
ダリアが読んでいた書類から目を離し耳をそばだてると、執務室に向かってくる聞き慣れた足音が響いてきた。
ドアの前でその足音は止まると、ドアが軽快にノックされた。
「どうぞ」
ダリアの返答を待つことなくランダルが答えると、ドアが勢いよく開いて、クライドが笑顔で入ってきた。
「ひさしぶり! ダリア」
もう二度と会うことはないと思っていた人のまさかの訪問に、ダリアはぽかんとした表情を浮かべて固まっていた。そんなダリアに向かってクライドは話し始める。
「ボク、ノーバック家勘当されちゃった。行くところがないからここに置いて」
「は?」
ダリアは何を言われているのか理解できず、眉をひそめた。
「もちろんですよ。いつまででもどうぞ」
なぜかランダルが笑顔で答える。
ニッキーが「遠路お疲れ様でした」と、当たり前のようにクライドに出すコーヒーの準備を始めた。
我に返ったダリアは慌てた。
「え? ちょっと待って、勘当って一体何をやらかしたのよ」
「ノーバックの屋敷でね、巣箱を作っててさ。うちにはマクレディの裏の森のような巣箱を設置できる場所がないから、うちにも欲しいなーと親に言ったらよそはよそ、うちはうち、って。そんなに巣箱を設置したければマクレディさんちの婿になりなさい、って」
「は?」
ダリアの眉間にさらに深いシワが寄る。
「そんなワガママをいう子はもういらない。勘当するから出てけって言われちゃった」
クライドがわざとらしく泣くマネをすると、ランダルもわざとらしく大げさに眉尻を下げた。
「それはそれは大変でしたね。お困りでしょう。うちにはいつまでもいてもらって結構ですよ」
「ありがとうございます。いやー、助かりました」
二人で、わざとらしく大笑いをするのを、ダリアは表情がすとんと抜け落ちた顔で見ていた。
何が起きているのか、何を見せられているのかさっぱり理解できないが、ただとんでもない茶番劇が行われていることだけはなんとなくわかってきた。
そこでクライドがようやくダリアに手紙を一通渡した。
「これうちの父からの手紙」
ダリアは無言で受け取ると、すぐに封を開けた。
そこにはノーバック子爵のサインとともに「愚息クライドは差し上げます。煮るなり焼くなり婿にするなり好きにしてください」と書いてあった。
そのことについて、誰も何も言わない。そんな話があったことすら幻であるかのようないつもと変わらぬ日常が続いている。
あの日からクライドはマクレディ領に来ていない。手紙も来なくなった。
それは当然だとダリアは思う。むしろ頻繁に来ていた今までが異常だったのだ。
ダリアの心の中を黒い何かが渦巻いているが、それには気づかないふりをして今日も執務室で一人でもくもくと仕事をしている。
外が急に騒がしくなった。
「何かしら?」
ダリアが読んでいた書類から目を離し耳をそばだてると、執務室に向かってくる聞き慣れた足音が響いてきた。
ドアの前でその足音は止まると、ドアが軽快にノックされた。
「どうぞ」
ダリアの返答を待つことなくランダルが答えると、ドアが勢いよく開いて、クライドが笑顔で入ってきた。
「ひさしぶり! ダリア」
もう二度と会うことはないと思っていた人のまさかの訪問に、ダリアはぽかんとした表情を浮かべて固まっていた。そんなダリアに向かってクライドは話し始める。
「ボク、ノーバック家勘当されちゃった。行くところがないからここに置いて」
「は?」
ダリアは何を言われているのか理解できず、眉をひそめた。
「もちろんですよ。いつまででもどうぞ」
なぜかランダルが笑顔で答える。
ニッキーが「遠路お疲れ様でした」と、当たり前のようにクライドに出すコーヒーの準備を始めた。
我に返ったダリアは慌てた。
「え? ちょっと待って、勘当って一体何をやらかしたのよ」
「ノーバックの屋敷でね、巣箱を作っててさ。うちにはマクレディの裏の森のような巣箱を設置できる場所がないから、うちにも欲しいなーと親に言ったらよそはよそ、うちはうち、って。そんなに巣箱を設置したければマクレディさんちの婿になりなさい、って」
「は?」
ダリアの眉間にさらに深いシワが寄る。
「そんなワガママをいう子はもういらない。勘当するから出てけって言われちゃった」
クライドがわざとらしく泣くマネをすると、ランダルもわざとらしく大げさに眉尻を下げた。
「それはそれは大変でしたね。お困りでしょう。うちにはいつまでもいてもらって結構ですよ」
「ありがとうございます。いやー、助かりました」
二人で、わざとらしく大笑いをするのを、ダリアは表情がすとんと抜け落ちた顔で見ていた。
何が起きているのか、何を見せられているのかさっぱり理解できないが、ただとんでもない茶番劇が行われていることだけはなんとなくわかってきた。
そこでクライドがようやくダリアに手紙を一通渡した。
「これうちの父からの手紙」
ダリアは無言で受け取ると、すぐに封を開けた。
そこにはノーバック子爵のサインとともに「愚息クライドは差し上げます。煮るなり焼くなり婿にするなり好きにしてください」と書いてあった。
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