8 / 15
第一部『異世界転移と冒険者』
冒険者登録
しおりを挟む
◆
冒険者になるためには登録が必要らしい。
詳しいことは、とりあえず冒険者ギルドに行けば分かるだろう。
冒険者ギルドは、街を十字に貫く大通りを東に進んだ突き当りにあった。
「これか。結構デカいな」
5階建ての大きな建物だ。敷地も広い。
俺は「よし」と気合を入れると、開け放たれた正面玄関をくぐった。
内部は冒険者とギルドの職員で賑わっている。
金属の鎧を装備した剣士。漆黒のローブを纏った魔術師。
背丈ほどもありそうな大弓を背負ったハンターもいる。
ギルドの職員は女性が多い。白黒のメイド服に似た制服を着ている。
俺は冒険者たちの間を縫うように奥のカウンターへ向かった。
真新しい服に身を包んだ俺に、周囲から物珍しそうな視線が集まる。
「『新規登録受付』……あれか」
カウンターの一番奥だ。
「あの、冒険者の登録をしたいんですけど……」
受付にいた女性職員に声を掛ける。
歳のほどは十代後半くらいだろうか。
おっとりとした微笑を浮かべた、可愛らしい人だ。
ふっくらとした身体つきに、艷やかな黒髪。
胸のネームプレートには〈アイーシャ〉と書かれている。
「こんにちは。登録はこの街が初めてですか?」
にっこりとした笑顔に、先ほどまでの緊張感がほぐれる。
「はい。すみません、何も分からないので教えてもらえると嬉しいんですが……」
「じゃあ、簡単に説明させて頂きますね」
アイーシャは紙とペンを取り出すと、読みやすい文字で概要を書き連ねていった。
「まず、冒険者にはランクがあります。Fから始まって一番上のAです。初登録の方はFから始まることになります。冒険者はギルドに来た依頼をクリアして報酬をもらいますが、ランクによって受けられる依頼の難易度と報酬が変わってきます」
アイーシャが紙にA~Fのアルファベットを書いて、Aのところには『すごい』。Fのところには『新人さん』と書き込む。
なんだか真剣味が若干足りない気がするが、まあいいか。
ここまではゲームなんかでもよくあるシステムだ。
「そして、A級冒険者の上に『探索者』と言うランクが存在します。これは、大陸奥地や海を超えた先の未踏地帯を探索することを許されたクラスです。『探索者』になるには色々な条件が必要なんですが、大半の冒険者さんにはあまり関係がありませんので割愛しますね。この街のギルドには一人もいませんし」
そう言ってアイーシャは紙に『探索者』と書いて『超すごい!』と書き加えた。
「この大陸は、そんなに未踏の地域が多いんですか?」
「ええ。グランクレフ大陸がこうありますと――」
アイーシャが簡単な地図を描いてくれる。
ちょうどオーストラリアに似た形の大陸を、四等分に区切る。
それぞれを〈テノン王国〉、〈アルトー〉、〈プラソノ神聖国〉、〈バッソ連邦〉の四つで収めているという形だ。
俺たちがいるのは、この左下の〈テノン王国〉だな。
「それぞれの領地で市街、交通、治安の整備が行き渡っているのはおよそ30%と言ったところでしょう。それ以外は、未だ『古代魔帝国』の遺跡が眠る危険地帯となっています」
さらに海を超えた他の大陸は、口伝のレベルでしか情報が残っていないという。
うーむ。思ったよりも修羅の世界のようだ。
まぁ、とりあえず俺にはあまり関係ないかな。
「色々とありがとう。じゃあ、登録させてもらいたいんだけど」
「かしこまりました。では、登録料の方が5千ガルドになりますね」
「うっ。お金かかるんですか」
「……? ええ」
5千。ちょうど全財産だ。
しかし、ここでまごついても仕方がない。
俺は仕方なく残りの銀貨5枚をトレイの上に並べた。
「背水の陣で冒険者か……」
ずいぶん軽くなったポーチに心細さを感じつつ遠い目をしていると、アイーシャが一枚の紙切れを差し出した。
「では、こちらにご記入をお願いしますね」
『冒険者登録用紙』と書かれたその用紙には、色々と項目がある。
俺はその紙を受け取って、後ろの記入用のテーブルに移動した。
【〈冒険者登録用紙〉
名前:コージ
Lv:1
現ジョブ:召喚師
所持スキル:召喚術 400 魔獣語 80 幻獣語 80 神獣語 100 観察 40
得意魔術:なし
召喚師の場合は手持ち召喚獣: 】
ある程度まで埋めた俺は、ここで「うーん」と唸った。
俺自身が魔術を使えるわけではないので得意魔術は『なし』でいいと思うが、『手持ちの召喚獣』をどう書くべきか……。
まさか【リヴァイアサン】と書くわけにもいかないだろ。
討伐されたくないし。
俺は小声でリヴィアに相談した。
「――かくかくしかじかなんだけど、どうしたらいい?」
『じゃあ、適当に〈擬装〉をいじっとくから、〈リヴィア〉って書いといていいよ~』
軽いノリの返事に不安を覚えるが、従う以外ない。
【召喚師の場合は手持ちの召喚獣:リヴィア】
と書き込んで、俺はペンを置いた。
怒られないよな、これ。
冒険者になるためには登録が必要らしい。
詳しいことは、とりあえず冒険者ギルドに行けば分かるだろう。
冒険者ギルドは、街を十字に貫く大通りを東に進んだ突き当りにあった。
「これか。結構デカいな」
5階建ての大きな建物だ。敷地も広い。
俺は「よし」と気合を入れると、開け放たれた正面玄関をくぐった。
内部は冒険者とギルドの職員で賑わっている。
金属の鎧を装備した剣士。漆黒のローブを纏った魔術師。
背丈ほどもありそうな大弓を背負ったハンターもいる。
ギルドの職員は女性が多い。白黒のメイド服に似た制服を着ている。
俺は冒険者たちの間を縫うように奥のカウンターへ向かった。
真新しい服に身を包んだ俺に、周囲から物珍しそうな視線が集まる。
「『新規登録受付』……あれか」
カウンターの一番奥だ。
「あの、冒険者の登録をしたいんですけど……」
受付にいた女性職員に声を掛ける。
歳のほどは十代後半くらいだろうか。
おっとりとした微笑を浮かべた、可愛らしい人だ。
ふっくらとした身体つきに、艷やかな黒髪。
胸のネームプレートには〈アイーシャ〉と書かれている。
「こんにちは。登録はこの街が初めてですか?」
にっこりとした笑顔に、先ほどまでの緊張感がほぐれる。
「はい。すみません、何も分からないので教えてもらえると嬉しいんですが……」
「じゃあ、簡単に説明させて頂きますね」
アイーシャは紙とペンを取り出すと、読みやすい文字で概要を書き連ねていった。
「まず、冒険者にはランクがあります。Fから始まって一番上のAです。初登録の方はFから始まることになります。冒険者はギルドに来た依頼をクリアして報酬をもらいますが、ランクによって受けられる依頼の難易度と報酬が変わってきます」
アイーシャが紙にA~Fのアルファベットを書いて、Aのところには『すごい』。Fのところには『新人さん』と書き込む。
なんだか真剣味が若干足りない気がするが、まあいいか。
ここまではゲームなんかでもよくあるシステムだ。
「そして、A級冒険者の上に『探索者』と言うランクが存在します。これは、大陸奥地や海を超えた先の未踏地帯を探索することを許されたクラスです。『探索者』になるには色々な条件が必要なんですが、大半の冒険者さんにはあまり関係がありませんので割愛しますね。この街のギルドには一人もいませんし」
そう言ってアイーシャは紙に『探索者』と書いて『超すごい!』と書き加えた。
「この大陸は、そんなに未踏の地域が多いんですか?」
「ええ。グランクレフ大陸がこうありますと――」
アイーシャが簡単な地図を描いてくれる。
ちょうどオーストラリアに似た形の大陸を、四等分に区切る。
それぞれを〈テノン王国〉、〈アルトー〉、〈プラソノ神聖国〉、〈バッソ連邦〉の四つで収めているという形だ。
俺たちがいるのは、この左下の〈テノン王国〉だな。
「それぞれの領地で市街、交通、治安の整備が行き渡っているのはおよそ30%と言ったところでしょう。それ以外は、未だ『古代魔帝国』の遺跡が眠る危険地帯となっています」
さらに海を超えた他の大陸は、口伝のレベルでしか情報が残っていないという。
うーむ。思ったよりも修羅の世界のようだ。
まぁ、とりあえず俺にはあまり関係ないかな。
「色々とありがとう。じゃあ、登録させてもらいたいんだけど」
「かしこまりました。では、登録料の方が5千ガルドになりますね」
「うっ。お金かかるんですか」
「……? ええ」
5千。ちょうど全財産だ。
しかし、ここでまごついても仕方がない。
俺は仕方なく残りの銀貨5枚をトレイの上に並べた。
「背水の陣で冒険者か……」
ずいぶん軽くなったポーチに心細さを感じつつ遠い目をしていると、アイーシャが一枚の紙切れを差し出した。
「では、こちらにご記入をお願いしますね」
『冒険者登録用紙』と書かれたその用紙には、色々と項目がある。
俺はその紙を受け取って、後ろの記入用のテーブルに移動した。
【〈冒険者登録用紙〉
名前:コージ
Lv:1
現ジョブ:召喚師
所持スキル:召喚術 400 魔獣語 80 幻獣語 80 神獣語 100 観察 40
得意魔術:なし
召喚師の場合は手持ち召喚獣: 】
ある程度まで埋めた俺は、ここで「うーん」と唸った。
俺自身が魔術を使えるわけではないので得意魔術は『なし』でいいと思うが、『手持ちの召喚獣』をどう書くべきか……。
まさか【リヴァイアサン】と書くわけにもいかないだろ。
討伐されたくないし。
俺は小声でリヴィアに相談した。
「――かくかくしかじかなんだけど、どうしたらいい?」
『じゃあ、適当に〈擬装〉をいじっとくから、〈リヴィア〉って書いといていいよ~』
軽いノリの返事に不安を覚えるが、従う以外ない。
【召喚師の場合は手持ちの召喚獣:リヴィア】
と書き込んで、俺はペンを置いた。
怒られないよな、これ。
0
あなたにおすすめの小説
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる