辺境伯に嫁いだので、可愛い義息子と楽しい辺境生活を送ります ~ついでに傷心辺境伯とのぐずぐずの恋物語を添えて~

空野 碧舟

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不思議ではない……?

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 「あ、いや、まずは謝罪だな。あと、次は」と、エメリーンを見つめたまま謝罪を再開しようとするヒューバートの言葉を遮るように、エメリーンはため息を吐きながら立ち上がった。

「はあ。…………はい」

 エメリーンの差し出した手を、ヒューバートが不思議そうに見つめている。

「とりあえず、立ってください」

「いや、しかし」

 まだ謝罪が終わっていないと言いたそうなヒューバートの腕を取って、エメリーンが引っ張り起こす。とは言っても、体重が違い過ぎるため、ヒューバートは自身の力で立ち上がった。

 見上げる位置に戻ったヒューバートに、エメリーンがふいっと背を向けると、ヒューバートが慌てたように「エメリーン?」と声を掛けてきた。その動揺した声に、エメリーンはもう一度ため息を吐いて、ヒューバートの方に向き直った。

「あのですね。たくさん謝っていただいて申し訳ないですが、だからと言って、すぐに許しますとは私には言えません」

「分かっている。そんなことは私も思っていない」

 静かに答えるヒューバートに、エメリーンは何とも言えない気分になりながら、言葉を続けた。

「旦那様に、謝罪の気持ちがあることは分かりました。……良く、分かりました。でも……」

 言葉に詰まったエメリーンに、ヒューバートは頷いた。

「いや、今はそれで充分だ。聞いてくれてありがとう、エメリーン」

「……っ?」

 まさかお礼を言われるとは思っていなかったエメリーンは、ずっと胸に突っかかっていたものが、ストンと落ちたような感覚になって目を瞬いた。

 そんなエメリーンを見つめながら、ヒューバートが柔らかく微笑む。その笑顔のあまりの美しさに、エメリーンは思わず二歩ほど後退った。

 ――そ、そんな顔で笑えるのね。

「エメリーン?」

 エメリーンの謎の行動に、今度はヒューバートが目を瞬かせた。

「な、何でもありません。少し驚いただけで」

「そうか?」

 小首を傾げるヒューバートを、ふと、何だか可愛いと感じたエメリーンは、そっとヒューバートから視線を逸らした。

 ――可愛い? え? 何、それ?

 ずっとヒューバートの頭頂を見下ろしていたからか、エメリーンは大の大人に対して抱いた「可愛い」という感情に、戸惑っている。

 ――可愛くはないでしょう。旦那様はルイ様じゃないのに。……あ、そうか。ルイ様に似ているわけだから、可愛いと思っても不思議ではないわ。……え? ないのかしら?

「その、エメリーン。何やら考え込んでいるところ悪いが、一つ聞きたいことがあって、聞いても良いか?」

「え? あ、どうぞ?」

「その……、以前、君が言っていた『好きな男のタイプ』とは、どういうタイプだろうか?」

 真剣な眼差しでそんなことを聞いてきたヒューバートが、エメリーンの目には、どこかルイに重なって見えて、やはり何故か可愛いかった。
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