辺境伯に嫁いだので、可愛い義息子と楽しい辺境生活を送ります ~ついでに傷心辺境伯とのぐずぐずの恋物語を添えて~

空野 碧舟

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好きな女のタイプ

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 「分かった。覚えておこう」と答えたヒューバートの声は、エメリーンが想定していたより暗かった。

「旦那様?」

「何でもない。……いや、ここで引いても良いことはないかもしれないな」

 ぶつぶつと呟いた後、ヒューバートは躊躇いがちにエメリーンに聞いた。

「その……、子爵邸で君が会っていた使用人というのは」

「え?」

「あの家で、君を助けてくれていた人、だろうか? とても若い見た目の使用人らしいが」

 バアルやセイディからすでに報告を受けていたのか、リザ(レイ)のことを口にしたヒューバートに、エメリーンは素直に頷く。リザ(レイ)のことを思い出して、エメリーンの顔は自然に綻んだ。

「確かに、彼にはとても助けて貰っていました。……幼い頃から、ずっと」

「……っ、そ、うか」

 何かショックを受けているようなヒューバートを不思議に思いながら、エメリーンは今度は自分の番だと、ヒューバートに質問した。

「はい。では旦那様の好みのタイプをどうぞ」

「あ? ああ、そ、そうだったな……」

 そこから長く続いた沈黙に、ヒューバートは元妻グレイスのことを思い浮かべているのかもしれないなと、エメリーンは思った。

「……私の好みは」

 ようやく口を開いたヒューバートは、チラリとエメリーンを見て、苦笑いを浮かべながら言葉を続けた。

「少し変わった女性なんだが……、強くて優しいところが魅力的な人かな」

「変わった女性……。へぇー、そうなんですね」

 ヒューバートの好みのタイプが、少し変わった女性だと聞いて、エメリーンは先日の舞踏会でヒューバートを囲んでいた女性たちや、以前会った『流星の輝き』の女主人の姿を思い出していた。

 ――あの女性たちも、変わった人なのね。

「世の中には、変わった女性がたくさんいるのね……」

 エメリーンが何やら勘違いをしていることにヒューバートは気付いていたが、それを指摘することはしなかった。

「あー、分が悪いのは分かっているが……、エメリーン、何か私に助けて欲しいことはないか?」

「え? 何ですか? 急に。そんなのある訳……。いえ、ありますね」

「あるのか? 何だ? 何をして欲しい?」

 ヒューバートが、前のめりにエメリーンの話を聞いてきたことに、エメリーンは目を瞬いた。

「あの、私、オルクス子爵領に行きたいです」

「は?」

「実は私、物心ついた頃から、一度も領地にいったことがないんです」

 「ああ、なるほど」と合点の入った顔をしたヒューバートは、オルクス子爵がずっと王都にいる現状を知っているのだろう。

 あごに手を置いて、少しだけ考える姿を見せたヒューバートだったが、答えが出るまでそう時間は掛からなかった。

「良いだろう」

「本当ですか? ありがとうございます、旦那様」

「ただし、行くのは君だけではない」

「え?」

「私とルイと君とで行こう。家族旅行だ」

「ええっ?」

 難しいと思っていた希望がすんなりと通ったことを、エメリーンが喜んだのも束の間、家族旅行と言われて、エメリーンの胸の内に、別の心配が湧き上がってきた。

「あ、あの、オルクス子爵領は、あまり治安が良くないと聞いています。ルイ様を同行させるのは、危険かもしれません」

「そうか。では護衛に誰を付けるかは、慎重に考えよう」

 どうやらヒューバートの中で、ヒューバートとルイの同行は決定事項のようだ。エメリーンはオルクス子爵領行きを嬉しいと思いつつも、ルイを守ることを最優先にしようと心に決めたのだった。
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