辺境伯に嫁いだので、可愛い義息子と楽しい辺境生活を送ります ~ついでに傷心辺境伯とのぐずぐずの恋物語を添えて~

空野 碧舟

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長閑な家族のひととき

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「ルイ様のダンス、素敵でしたわ」

 目が覚めたと同時、そんな声が聞こえてきて、ルイは口元がにまにまと動きそうになるのを慌てて堪えながら、もう一度目を閉じた。褒め言葉の続きが聞きたいと思ったからだ。

 がたごとと揺れている感覚から、どうやら馬車に乗っているようだとルイは気が付いた。

 ――あれ? もうパーティはおわったの?

 ルイの頭はふわふわして柔らかいものに包まれているが、それが何かもルイはすぐに気が付いた。
 
 ――ここは、エメリーンさまの、おひざのうえ。

 そこは温かくて幸せな、ルイの好きな場所だ。

「そうだな、実に見事だった。私には真似できそうになかったな」

「っ!」

 エメリーンに続いてヒューバートにも褒められて、ルイは小躍りしたい気分になった。寝たフリをして、じっとしていることは、とても難しいのだとルイは新たな発見をした。

「そうですね。旦那様を投げるには、もっと、いえかなり鍛えないと難しそうです」

「いや、そんなに鍛えなくて良いだろう。というか、私を投げないでくれないか」

 くつくつとヒューバートが笑っている。寝たフリをしたままなのに、ルイもエメリーンがヒューバートを放り投げている姿を想像して、笑いそうになってしまった。

 ――ふふ。ちちうえ、たのしそう。

「それより、君のダンスは美しかったな。視線や指先まで洗練されていた。どこで習ったんだ? 本格的な講師は、まだ付いていなかっただろう?」

「いえ、執事長たちにしっかり教えて頂きましたよ?」

 ルイに基本的なダンスを教えてくれたのは、執事長と侍女頭のレイニーだ。その時に、エメリーンも一緒に習っていた。

 ルイもエメリーンもすぐに習得出来たので、「これなら専門の方をお呼びするまでもないのでは」と、執事長とエメリーンが話し合っていたのをルイも覚えている。

 その後、ルイとエメリーンが二人でダンスの復習をしていたときに、基本のダンスとは別に、ルイとエメリーン専用の振り付けを、遊びながら考えたのだ。

 ――ダンス、たのしかったな。

 ルイとしては、エメリーンと普通のダンスも踊りたかったのだが、すっかり寝てしまっていたのだから仕方がない。それよりルイが気になったのは、エメリーンとヒューバートのダンスだ。二人はきっと踊ったはずだとルイは思っている。

 ――みたかったな。ちちうえとエメリーンさまのダンス……。

 寝たフリをしていたはずのルイだが、程良い馬車の揺れと、頭を撫でているエメリーンの手の心地良さに誘われて、また眠りに落ちていった。

「執事長やレイニーが、あんなダンスを教えられるわけがないだろう。いや、執事長ならあり得るかもしれないが……」

 何やらブツブツ呟いているヒューバートに、エメリーンが自身の口の前に人差し指を当てて、声を抑えるように伝えた。

「ルイ様、少しうとうとしていたみたいですが、また眠ったみたいですから」

「そうか。しかしルイは良く寝るな」

「寝る子は育つ、と言いますよ。ルイ様は、旦那様より大きくなるかもしれませんね」

「そうか。まあ、私たちの領地で生きていくには、大きいくらいで丁度良いだろう」

 ひそひそと話す二人の声が、眠っているルイの耳に聞こえていたのかどうか。その夜、ヒューバートの2倍の大きさに成長したルイは、同じくらい大きくなったエメリーンと、ヒューバートを投げ合う夢を見た。
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