【完結】あなたにクズでいてほしい ~こちら滅び(予定)の国の兵士専用食堂配膳係~

空野 碧舟

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メランガの悪鬼

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「イタタタ」

 どうやらケガは無さそうだと思いながら、ナギがようやく顔を上げると、そこには大理石のようなピカピカな石造りの床と壁の長い廊下が広がっていた。

 ——いや、長すぎるでしょ。

「な、何、ここ」

 長い廊下は左右に伸びており、先が見えない。悩んだ末、ナギはゆっくりと這うように左へ進んだ。

 しばらくすると、先ほどつまみ出されたドアと同じ模様のドアが左手にあった。蔦のような植物が彫り込まれた大きく頑丈そうなドアは、ナギの力では開けることも困難そうだ。

 同じようにもう少し移動すると、また左手に同じ模様のドア。かなり進んだはずなのに、廊下の突き当たりすら、まだ見えない。

 ドアのない壁は、もしかしたら外壁なのかもしれないが、窓が一つもない。ほどよく明るくはあるため、採光が気になってナギが天井を見上げると、高すぎてはっきりとは見えないが照明があるようだった。

「……ロープレのダンジョンみたい」

 独りごちてから、ナギは自分の台詞にくつりと笑った。扉を一つずつ開けて、ツボやタルを手当たり次第に投げ割ったり、タンスを勝手に開けたりするのが当然のRPGゲーム。そんな非日常さをこの建物に感じたからだ。

 ——笑ってる場合じゃないか。よし、とりあえず、ここから出よう。

 ナギは萎えていた足を奮い立たせて立ち上がると、軽やかに走り出した。手荷物は何もない。白地のTシャツにデニムパンツ、水色のスニーカーという軽装のナギは、走るのに何の邪魔もなかった。

 だがナギが10分ほど走っても、景色は全く変わらなかったのだ。

「なんで……?」

 はあ、と息を整えながら、ナギは足を止めた。

「——ああ、やっぱりいる。面倒くせえなぁ」

「はあっ!?」

 ナギのすぐ後方のドアが開き、あのビッグバナナ男が顔を出していた。ずいぶん移動したと思っていたのに、実際は全く進んでいなかったということに気が付いて、ナギはへなへなとその場に座りこんでしまった。

 ——何これ、やっぱりロープレ?

「多少間抜けでも、サザミナの間諜なら自力で帰るだろうと思っていたが」

「は?」

 「はあ、面倒くせえ」ともう一度呟いて、ビッグバナナ男は自身の長めの前髪をワシャワシャとかき回した。

 コトが終わったのか、男は黒いズボンを履いている。だが灰緑色のシャツは羽織っただけで、ボタンの一つも留めてはいない。先ほども見たはずだが、改めて見ても、覗いている胸筋や腹筋は見事なものだ。

「シュテルン様ー、さっきの貧乳チビ、まだいるのー?」

「ああ。ユト、お前、勝手に帰れ」

「はーい!」

 ドアの奥から叫んだのは、あの金髪美女だろう。貧乳チビと言われたナギは、真実ではあるがイラッとした。だがそれよりも、今のナギにとって重要なのは、ビッグバナナ男の名前だ。

「……シュテルン?」

「ああ、くそ。なんでこんな何もない日に、わざわざアゴーレ様に会いに行かなきゃならんのだ」

「……アゴーレ?……サザミナ…………ユト?」

 そのカタカナの羅列に、ナギは聞き覚えがあった。

「おい、ガキ。お前、どっから来た。何者だ? このメランガの悪鬼、シュテルン様の寝床にどうやって入り込んだ?」

「メランガの悪鬼っ、シュテルンッ!?」

 突然に叫んだナギに、ビッグバナナ男——シュテルンはうるさそうな顔をしたが、ナギは「うわあああああ!!」と、なおも叫ばずにはいられなかった。

「サイッテー!!!!!!」
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