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メランガのたこ焼き屋近辺にて正義の味方増殖中
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「だからぁー、たこ焼きを5パック——ううん、6パック買ってぇ、5パックを人にあげちゃうような女の子に会いたいのっ!」
しゃがんだら間違いなくパンツが見える長さの、ピンクの超ミニスカート。白のトップスに白の厚底ヒール。ナギにはとうてい真似できない、全身かわいらしいファッション。肩に当たる度に波打つピンクのツインテール、好奇心に満ちたグレーの瞳を持つ可憐な少女。
——ピク、出た……。
耳がキンキンするほどの高音ボイスで、夜の落ち着いたメランガで浮きまくっているのは、サザミナのピクだ。
世のお兄さんたちをメロメロにする、完璧なる妹キャラ。そのピクに詰め寄られ、たこ焼き屋の店主も茹でダコのようになっている。
「い、いや、お嬢ちゃん。5パックあげちゃう女の子って言われてもな。何かこう、もうちょっと特徴みたいなもの、分からないかい?」
「特徴? あ、名前はね、ナギちゃん」
「いやー、たこ焼き買うときは、みんな名乗らないんだよなー」
ピクを相手にしている店主の口調は語尾まで優しい。そんなことに気を取られていたナギは、会話の中で出てきた自身の名前に反応するのが遅れた。
——え? あれ? ピク、私のことを名指しで探してる? え? なんで? って、あ、そういえばこの間イエーには名乗ったな……。
「大丈夫か?」
「あ、すみません」
しゃがんだままだったナギは、さりげなく差し出された手を何の気なしに取って立ち上がる。そしてすぐに後悔した。
「また会ったな」
「あ、え、あ……」
上手く言葉が出なかったのは、王子に手を取られて立ち上がらせてもらったときに何と言うのが正解なのか、ナギには分からなかったからだ。
そんなことを考えたのは、レドの後ろに控えている子爵令息ブルが、王子に失礼なことがないようにと無言のプレッシャーを掛けてきたからでもある。
黒のスーツを綺麗に着こなしたブルの蒼い瞳は、氷のように冷たい眼差しでナギを凍えさせた。肩上までの青みがかった銀髪は理知的な印象だが、初対面の幼い見た目の女に対しての態度は最悪だ。
——いやいや、私ってば、レドが王子とか知らない設定なんですけど? って言うか、サザミナのメンバー、どれだけメランガに侵入してんのよ……。
「どうした? 今日はお前が元気ないのか?」
王子という立場でありながら、気さくにナギに語り掛けてくるレドに、ナギは首を横に振って応えた。確かに元気があるとは言えないが、今ナギがまともに話が出来ないのは別の問題だ。
「フッ、メランガキャッスルの民は、まともに返事も出来ないのか」
失礼にならないようにと、苦肉の策で喋らない方法を選んだナギを、鼻で笑ったのはブルだ。王子よりも偉そうで嫌味な物言いに、ナギは一瞬でブルを相手にする気が失せた。
「あー、私は大丈夫、元気。あなたは?」
ブルを視界の端に追いやって、ナギはレドにだけ笑顔を向けた。
「そうか、それなら良かった。我も元気だ。お陰さまでな」
幸いなことにレドは、ナギのブルに対する非礼に対して何も言わず、ナギに爽やかな笑顔を返した。
ナギの視界の端では、苛立ったブルがナギを睨み付けている。王子に対して敬語も使わないナギを、本当は咎めたいに違いない。
「レド様ーっ、どうしようーっ! たこ焼き屋のおじさん、ナギちゃん知らないって言ってますよーっ!」
たこ焼き屋からレドまでの距離は5メートルくらいだ。ちょっと歩いて来れば良いだけなのに、ピクは大声でレドを呼んだ。
——ちょっ、何で敵地でそんなに不用意な。あっ!?
「いっ、たーいっ!」
いつのまにかピクの目の前に立っていたブルが、グーでピクの頭を真上からガツンと殴っていた。それから何やら二人でヒソヒソと話している。
——意外とブルが一番常識人なのかな。いや、でも女の子にグーパンチはやりすぎ……。
ピクが可哀想なくらいうなだれているのは、痛みのせいだけではなく、きっとブルにしつこく叱られているからだろう。
ブルが先ほどのナギに対する苛立ちまでピクに向けているのではないかと、ナギは心配になってきた。
「……聞いてしまった、だろうな」
「え?」
「我の名前だ」
「あ、え、あ、ああ、はい……」
ピクとブルの様子を気にしていたナギに、レドが静かな口調で問いかけてきた。ナギが望んで聞いたわけではないが、ピクの声は確かに聞こえてしまった。聞こえなかったと言うには、無理があるほどはっきりとだ。
「レド、様?」
「ああ」
「え、えーと、様が付くってことはえらい人、なのかな?」
「……知らないのか?」
「え? 何を?」
質問を質問で返されたナギは、困った末に重ねて質問返しだ。
レジナルド・サザミナ・ド・ラオン。ラオン国第2王子にして、サザミナのリーダー。サザミナメンバーとしての仮称がレド。
ナギはそれを知っているが、メランガに住む普通の女が、何をどこまで知っていて良いのかを知らない。
「いや、知らないならいいんだが……。それはそれでショックだな」
「は?」
「いや、いいさ。そのうち分かるだろう。ところで、お前の名前は?」
「ナギです。あの、そのうち分かるってどういう」
「ナギ? お前が、ナギ?」
「あ……」
「そのうち分かる」というのは、そのうち何かが起こるということだろうかと、意味深なレドの言葉に驚いているうちに、ナギはうっかり名前を言ってしまっていた。
——うわ、しまった。
出来うる限り、サザミナのメンバーとはもう関わらないほうが良い。そう考えていたナギだが、思いとは裏腹にどんどんサザミナメンバーとの関わりが増えていく。
——ああー、せめてもうちょっとだけ、目立たない人たちだったら良かったのに……。
しゃがんだら間違いなくパンツが見える長さの、ピンクの超ミニスカート。白のトップスに白の厚底ヒール。ナギにはとうてい真似できない、全身かわいらしいファッション。肩に当たる度に波打つピンクのツインテール、好奇心に満ちたグレーの瞳を持つ可憐な少女。
——ピク、出た……。
耳がキンキンするほどの高音ボイスで、夜の落ち着いたメランガで浮きまくっているのは、サザミナのピクだ。
世のお兄さんたちをメロメロにする、完璧なる妹キャラ。そのピクに詰め寄られ、たこ焼き屋の店主も茹でダコのようになっている。
「い、いや、お嬢ちゃん。5パックあげちゃう女の子って言われてもな。何かこう、もうちょっと特徴みたいなもの、分からないかい?」
「特徴? あ、名前はね、ナギちゃん」
「いやー、たこ焼き買うときは、みんな名乗らないんだよなー」
ピクを相手にしている店主の口調は語尾まで優しい。そんなことに気を取られていたナギは、会話の中で出てきた自身の名前に反応するのが遅れた。
——え? あれ? ピク、私のことを名指しで探してる? え? なんで? って、あ、そういえばこの間イエーには名乗ったな……。
「大丈夫か?」
「あ、すみません」
しゃがんだままだったナギは、さりげなく差し出された手を何の気なしに取って立ち上がる。そしてすぐに後悔した。
「また会ったな」
「あ、え、あ……」
上手く言葉が出なかったのは、王子に手を取られて立ち上がらせてもらったときに何と言うのが正解なのか、ナギには分からなかったからだ。
そんなことを考えたのは、レドの後ろに控えている子爵令息ブルが、王子に失礼なことがないようにと無言のプレッシャーを掛けてきたからでもある。
黒のスーツを綺麗に着こなしたブルの蒼い瞳は、氷のように冷たい眼差しでナギを凍えさせた。肩上までの青みがかった銀髪は理知的な印象だが、初対面の幼い見た目の女に対しての態度は最悪だ。
——いやいや、私ってば、レドが王子とか知らない設定なんですけど? って言うか、サザミナのメンバー、どれだけメランガに侵入してんのよ……。
「どうした? 今日はお前が元気ないのか?」
王子という立場でありながら、気さくにナギに語り掛けてくるレドに、ナギは首を横に振って応えた。確かに元気があるとは言えないが、今ナギがまともに話が出来ないのは別の問題だ。
「フッ、メランガキャッスルの民は、まともに返事も出来ないのか」
失礼にならないようにと、苦肉の策で喋らない方法を選んだナギを、鼻で笑ったのはブルだ。王子よりも偉そうで嫌味な物言いに、ナギは一瞬でブルを相手にする気が失せた。
「あー、私は大丈夫、元気。あなたは?」
ブルを視界の端に追いやって、ナギはレドにだけ笑顔を向けた。
「そうか、それなら良かった。我も元気だ。お陰さまでな」
幸いなことにレドは、ナギのブルに対する非礼に対して何も言わず、ナギに爽やかな笑顔を返した。
ナギの視界の端では、苛立ったブルがナギを睨み付けている。王子に対して敬語も使わないナギを、本当は咎めたいに違いない。
「レド様ーっ、どうしようーっ! たこ焼き屋のおじさん、ナギちゃん知らないって言ってますよーっ!」
たこ焼き屋からレドまでの距離は5メートルくらいだ。ちょっと歩いて来れば良いだけなのに、ピクは大声でレドを呼んだ。
——ちょっ、何で敵地でそんなに不用意な。あっ!?
「いっ、たーいっ!」
いつのまにかピクの目の前に立っていたブルが、グーでピクの頭を真上からガツンと殴っていた。それから何やら二人でヒソヒソと話している。
——意外とブルが一番常識人なのかな。いや、でも女の子にグーパンチはやりすぎ……。
ピクが可哀想なくらいうなだれているのは、痛みのせいだけではなく、きっとブルにしつこく叱られているからだろう。
ブルが先ほどのナギに対する苛立ちまでピクに向けているのではないかと、ナギは心配になってきた。
「……聞いてしまった、だろうな」
「え?」
「我の名前だ」
「あ、え、あ、ああ、はい……」
ピクとブルの様子を気にしていたナギに、レドが静かな口調で問いかけてきた。ナギが望んで聞いたわけではないが、ピクの声は確かに聞こえてしまった。聞こえなかったと言うには、無理があるほどはっきりとだ。
「レド、様?」
「ああ」
「え、えーと、様が付くってことはえらい人、なのかな?」
「……知らないのか?」
「え? 何を?」
質問を質問で返されたナギは、困った末に重ねて質問返しだ。
レジナルド・サザミナ・ド・ラオン。ラオン国第2王子にして、サザミナのリーダー。サザミナメンバーとしての仮称がレド。
ナギはそれを知っているが、メランガに住む普通の女が、何をどこまで知っていて良いのかを知らない。
「いや、知らないならいいんだが……。それはそれでショックだな」
「は?」
「いや、いいさ。そのうち分かるだろう。ところで、お前の名前は?」
「ナギです。あの、そのうち分かるってどういう」
「ナギ? お前が、ナギ?」
「あ……」
「そのうち分かる」というのは、そのうち何かが起こるということだろうかと、意味深なレドの言葉に驚いているうちに、ナギはうっかり名前を言ってしまっていた。
——うわ、しまった。
出来うる限り、サザミナのメンバーとはもう関わらないほうが良い。そう考えていたナギだが、思いとは裏腹にどんどんサザミナメンバーとの関わりが増えていく。
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